社会保険に関するメモ書き


目次
1 総論
2 新規適用の手続
3 社会保険に関する書類の提出先
4 社員採用時等の取扱い
5 定時決定及び随時決定
6 従業員の社会保険料の天引き
7 退職者の社会保険料の天引き
8 健康保険に関するメモ書き
9 厚生年金保険に関するメモ書き
10 介護保険に関するメモ書き
11 令和4年10月1日の,士業への社会保険の適用拡大
12 社会保険料の計算サイト
13 関連記事その他

1 総論
(1) 広義の社会保険には厚生年金保険,健康保険及び介護保険のほか,労災保険及び雇用保険も含まれますところ,本ブログ記事における「社会保険」という用語は,厚生年金保険,健康保険及び介護保険の総称として使っています。
(2) カオナビ人事用語集HP「社会保険とは?【わかりやすく】種類、国保・雇用保険との違い」が載っています。

2 新規適用の手続
・ 以下の事業所は,事実発生から5日以内に,年金事務所に対し,健康保険・厚生年金保険 新規適用届を提出する必要があります(日本年金機構HPの「新規適用の手続き」参照)。
① 常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所
② 常時5人以上の従業員が働いている事業所,工場,商店等の個人事業所

3 社会保険に関する書類の提出先
・ 協会けんぽHPに「年金と健康保険に関する書類の提出先」が載っていますところ,例えば,事業所,採用,給与・賞与,育児休業及び退職・死亡に関する書類の提出先は年金事務所となっています。

4 社員採用時等の取扱い
(1) 社員を採用した場合,5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格取得手続を年金事務所でする必要があります。
(2) 社員が退職した場合,5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続を年金事務所でする必要があります。
(3) 社員に賞与を支給した場合,5日以内に年金事務所に賞与支払届を提出する必要があります。
(4) 給料を改定した場合,改定月より3ヶ月間で条件を満たしたときは随時改定の必要がありますから,年金事務所に月額変更届を提出する必要があります。

 定時決定及び随時改定
(1) 定時決定及び随時改定は,社員の給与から控除する社会保険(厚生年金保険及び健康保険)に関係する手続です。
(2)ア 定時決定は,毎年7月1日時点で雇用している社員すべてが対象になり,4月ないし6月に支払った給与が基になり,毎年9月から翌年8月までの,1年間の社会保険料を決めるために行います。
 定時決定の手続に使用する書類が「被保険者報酬月額算定基礎届」(提出期間は毎年7月1日から同月10日まで)であるため,定時決定を「算定基礎届の手続」という場合があります。
イ マネーフォワードクラウド給与HP「社会保険料の変更に伴う手続きを解説!随時改定の意味など」には以下の記載があります。
 給与から天引きできる社会保険料は、給与を支払った月の前月分です。たとえば9月分の社会保険料は10月分の給与から天引きすることになります。標準報酬月額の変更により社会保険料が変更されるのは9月ですが、実務的には10月分の給与から変更後の社会保険料を控除することを覚えておきましょう。
(3)ア 随時改定は,定時決定の対象期間(4月・5月・6月の3ヶ月)以外で,給与に大きな昇降があったり,給与の雇用形態の変更で固定的な給与の額が著しく変動したときに行います。
 随時改定に使用する書類が「被保険者報酬月額変更届」であるため,随時改定を「月額変更届の手続」という場合があります。
イ マネーフォワードクラウド給与HP「社会保険料の変更に伴う手続きを解説!随時改定の意味など」には以下の記載があります。
 随時改定を行わない場合、正しい額の社会保険料を納めない時期が発生します。過払い・不足の状況となり、精算が必要です不足分の社会保険料については、延滞料が課される可能性もあります。また、虚偽の随時改定を行った場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される恐れがあるので注意しましょう。
(4) 日本年金機構HPに「定時決定(算定基礎届)」及び「随時改定(月額変更届)」が載っています。

6 従業員の社会保険料の天引き
(1) 健康保険・厚生年金保険の保険料の徴収は,日本年金機構(年金事務所)が行うこととされており,事業主は毎月の給料及び賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて,事業主負担分の保険料とあわせて,納付対象月の翌月末日までに納めることになっています(例えば,4月分保険料の納付期限は5月末日です。)(日本年金機構HPの「厚生年金保険料等の納付」参照)。
(2) 健康保険・厚生年金保険では,被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額と税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた標準賞与額(健康保険は年度の累計額573万円,厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)を設定し,保険料の額や保険給付の額を計算します(協会けんぽHPの「標準報酬月額・標準賞与額とは?」参照)。
(3) 賞与に対する社会保険料の天引きが開始したのは平成15年4月からです(M’sHR社会保険労務士法人HP「賞与にかかる社会保険料、確認していますか?」参照)。
(4)ア 全国健康保険協会(協会けんぽ)HP「都道府県ごとの保険料額表」には,平成21年度以降の健康保険及び厚生年金保険の保険料額表が載っています。
イ 協会けんぽの健康保険料の保険料率は都道府県ごとに異なりますところ,大阪府の令和4年3月分以降の場合,健康保険料は10.22%(介護保険第2号被保険者ではない40歳未満の場合)又は11.86%(介護保険第2号被保険者である40歳以上の場合)です(厚生年金保険料は全国一律18.3%です。)。



7 退職者の社会保険料の天引き

(1) 日本年金機構HPの「退職した従業員の保険料の徴収」には以下の記載があります。
 従業員が負担する保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで発生し、事業主は、毎月の給与から前月分保険料を控除することができます。
 従業員の方が月の途中で退職した場合は、退職月の前月分の保険料を退職月の給与から控除し、月末に退職した場合は、退職月の前月と退職月の2か月分の保険料を退職月の給与から控除することができます。
 賞与に対する保険料は、支給する賞与から控除することができます。退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません。
(2) 日本年金機構HPの「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」には以下の記載があります。
月の途中から入社した場合
 入社日にて厚生年金の被保険者資格を取得することとなります。保険料は月単位で計算しますので、資格取得した月の保険料から支払う必要があります。
保険料は、会社が被保険者に支払う給与から保険料相当額の被保険者負担分を直接控除し、会社負担分と合わせて翌月末までに国に納めますので、個人で納める必要はありません。
月の途中で退職した場合
 退職した日の翌日に厚生年金の被保険者資格を喪失することとなります。保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納める必要があります。
 なお、月の「末日」に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日となりますので、退職した月分までの保険料を納める必要があります。この場合は、給与計算の締切日によって、退職時の給与から前月分と当月分の社会保険料が控除される場合があります。

 健康保険に関するメモ書き
(1) 高額療養費,傷病手当金,出産手当金,出産育児育児一時金,埋葬料といった健康保険給付を受ける権利の消滅時効は2年であります(健康保険法193条1項)ところ,協会けんぽHPに「健康保険の給付金の申請もれはありますか?健康保険給付の申請期限について」が載っています。
(2) 厚生労働省HPの「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」には以下の記載があります。
傷病手当金の支給期間が、支給開始日から「通算して1年6か月」になります。
 同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となります。
 支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になります。
(3) 社員が75歳に達した時点で,健康保険について被保険者資格喪失届を提出する必要があります。
(4)ア 平成20年4月1日に開始した高齢者医療制度は,①高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえて,65歳から74歳までを対象とする「前期高齢者医療制度」,並びに②75歳以上の人及び65歳以上で寝たきり等一定の障害があると認定を受けた人を対象とする「後期高齢者医療制度」の二つの制度で構成されています(大王製紙健康保険組合HP「高齢者医療制度」参照)。
イ 協会けんぽHPの「高齢受給者証」には以下の記載があります。
 75歳になると後期高齢者医療制度の対象となりますが、それまでの間、後期高齢者医療制度に加入しない70歳以上の方には協会けんぽから「健康保険高齢受給者証」が交付されます。これは医療機関等の窓口において一部負担金の割合を示す証明書で、医療機関等で受診される時は、健康保険証と合せて高齢受給者証を提示する必要があります。
(5) 最高裁平成24年3月6日判決(判例体系に掲載)は以下の判示をした上で,短期給付と通勤災害との間で重複支給が発生した場合,行政不服審査法57条1項所定の不服申立てについての教示をせず,行政手続法所定の手続も執ることなく,給付の決定を撤回し,贈与契約を解除できると判示しました(改行を追加しています。)。
 地公共済法上、療養費及び高額療養費が同法53条に基づく短期給付と、入院附加金が同法54条に基づく短期給付(附加給付)と位置付けられており、それぞれ同法43条1項所定の給付の決定によりその受給権が発生するものと解されるのに対して、本件一部負担金払戻金及び本件見舞金については、地公共済法上、これらを同法に基づく給付と位置付ける規定はなく、これらは、専ら本件定款又は本件要綱が定めるところにより支給されるものと解される。
 したがって、本件一部負担金払戻金及び本件見舞金の支給は、本件定款又は本件要綱で定められたところに従って成立する贈与契約に基づくものというべきである。
(6) 健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は,健康保険法189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に該当します(最高裁令和4年12月13日判決)。


9 厚生年金保険に関するメモ書き
(1) 厚生年金保険の保険料率は,年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられてきましたが,平成29年9月を最後に引上げが終了し,厚生年金保険料率は18.3%で固定されています(日本年金機構HPの「厚生年金保険料額表」参照)。
(2) 日本年金機構HPの「年金の給付に関するもの」に,老齢年金関係,障害年金関係,遺族年金関係等に関するパンフレットが載っています。
(3)ア 社員が70歳に達した時点で,「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を提出し,従業員が厚生年金保険の被保険者資格を喪失する関係で,厚生年金保険料の徴収を終了する必要があります。
イ 日本年金機構HPの「年金額を増やすために、70歳を過ぎても厚生年金保険に加入できますか。」には以下の記載があります。
 会社に勤めていても70歳になれば、厚生年金保険に加入する資格を失います。
 ただし、老齢の年金を受けられる加入期間がなく、70歳を過ぎても会社に勤める場合は、老齢の年金を受けられる加入期間を満たすまで任意に厚生年金に加入することができます。これを高齢任意加入被保険者といいます。
 ただし、既に老齢または退職を事由とする年金を受け取る権利がある場合は、高齢任意加入被保険者になることはできず、70歳を過ぎて厚生年金保険に加入できません。

10 介護保険に関するメモ書き

(1) 介護保険制度は,介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みであり,公費(税金)や高齢者の介護保険料のほか,40歳から64歳までの健康保険の加入者(介護保険第2被保険者)の介護保険料(労使折半)等により支えられています(協会けんぽHPの「介護保険制度と介護保険料について」参照)。
(2) 社員が40歳に到達した時点で介護保険料の徴収を開始し,社員が65歳に達した時点で介護保険料の徴収を終了する必要があります。
(3) 介護のほんねHP「介護保険制度の歴史について2000~2021年までの流れを教えてください!」が載っています。

11 令和4年10月1日の,士業への社会保険の適用拡大

(1) 令和4年10月1日以降,常時5人以上の従業員(勤務弁護士が従業員に含まれるかどうかは勤務実態によります。)を使用している個人経営の法律事務所についても社会保険が適用される結果,事業主たるボス弁等を除き,日本弁護士国民年金基金を脱退することとなります(令和2年改正後の厚生年金保険法6条1項1号)。
(2) 東京都弁護士国民健康保険組合HP「令和4年10月からの士業の適用拡大に係る届出書類等について」には以下の記載があります。
令和4年10月1日から、使用関係が常用的な勤務弁護士・従業員(被用者)あわせて5人以上の個人の法律事務所は、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金保険の強制適用事業所に該当します。
弁護士国保加入者は、健康保険の適用除外承認を受けることで、協会けんぽに加入せず、弁護士国保に残ることができますので、ご検討ください(弁護士法人に所属され、すでに健康保険被保険者適用除外承認を受けている方はお手続きは不要です。また、被用者5人未満の個人の法律事務所は強制適用の対象ではありません(協会けんぽと厚生年金保険の任意適用事業所は除く))。
(3)ア 日本年金機構HPに「令和4年10月から5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所は社会保険への加入が必要です。」及び「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」が載っています。
イ 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所HP「法律事務所・弁護士法人の社会保険」,及び「令和4年10月1日から新たに社会保険の適用となる事業とは」が載っています。


12 社会保険料の計算サイト
・ 生活や実務に役立つ計算サイトkeisan「厚生年金保険料の計算」及び「健康保険料の計算」が載っています。

13 関連記事その他
(1)ア 厚生労働省HPの「社会保障全般」には,毎年3月下旬及び9月下旬に「厚生労働省関係の主な制度変更について」が掲載されています。
イ 弁護士の確定申告HP「弁護士開業にまつわる社会保険の手続」が載っています。
(2) 厚生労働省HPの「労働保険関係各種様式」に年度更新申告書計算支援ツール(エクセルファイル)が載っています。
(3)ア ①昭和35年10月から昭和49年10月までに発行された国民年金手帳(厚生省発行)は茶色,水色又は薄橙色であり,②昭和49年11月から平成8年12月までに発行された年金手帳(社会保険庁発行。国民年金と厚生年金とで同じでした。)はオレンジ色であり,③平成9年1月から平成21年12月までに発行された年金手帳(社会保険庁発行)は青色であり,④平成22年1月から令和4年3月までに発行された年金手帳(日本年金機構発行)は青色であり,⑤令和4年4月に年金手帳の制度が廃止され,基礎年金番号通知書が発行されるようになりました(取手市HPの「あなたの年金手帳は何色?色が違う理由は?(くろまめ)」参照)。
イ 厚生年金については,昭和29年5月から昭和49年10月までの間,保険証が交付されていました(マネーフォワードクラウド給与の「2022年4月に年金手帳が廃止 – 厚生年金と国民年金で変わること」参照)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働保険に関するメモ書き



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