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社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用(AIリライト)

第1 社会保険の適用

1 この記事で扱う社会保険

「社会保険」は広い意味では労災保険及び雇用保険を含むことがあるが,本記事では,事業所と従業員に関係する健康保険,厚生年金保険及び介護保険を中心に扱う。労災保険及び雇用保険については,労働保険の加入・保険料・労災給付・雇用保険の手続で説明している。

健康保険は業務外の疾病,負傷,出産及び死亡に関する給付を行い,厚生年金保険は老齢,障害及び死亡に関する給付を行う。業務上又は通勤による傷病は原則として労災保険の対象であり,健康保険と労災保険を傷病の原因に応じて区別する必要がある。

2 法人と個人事業所

国,地方公共団体又は法人の事業所で,常時従業員を使用するものは,業種及び従業員数を問わず健康保険及び厚生年金保険の強制適用事業所となる。したがって,法人は,代表者1人だけの事業所であっても,その代表者に労務の対償として報酬を支払う場合,原則として適用を受ける。

個人事業所は,現在,常時5人以上の従業員を使用する法定17業種の事業所が原則として強制適用となる。弁護士,司法書士,社会保険労務士,税理士等が行う法律又は会計に係る業務は,令和4年10月から法定業種に追加された。

令和11年10月からは,常時5人以上を使用する個人事業所について業種要件が撤廃される。ただし,施行時に強制適用事業所でない既存の個人事業所には当分の間適用しない経過措置があるため,「令和11年10月からすべての既存個人事業所が直ちに加入する」と理解するのは正確でない。

強制適用の対象でない個人事業所も,従業員の半数以上の同意を得て厚生労働大臣の認可を受ければ,任意適用事業所となることができる。適用事業所となった後は,加入を希望しない従業員だけを制度から外すことはできない。

3 通常の労働者と短時間労働者

適用事業所に常用的に使用される者は,原則として健康保険の被保険者となり,そのうち70歳未満の者は厚生年金保険の被保険者にもなる。1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が同一事業所の通常の労働者の4分の3以上である者は,雇用形態又は名称にかかわらず加入対象となる。

4分の3基準を満たさない短時間労働者も,現在は,厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上である企業等の特定適用事業所において,①週の所定労働時間が20時間以上,②所定内賃金が月額8万8000円以上,③2か月を超えて使用される見込みがある,④学生でないという要件を満たせば加入対象となる。任意特定適用事業所及び国・地方公共団体の事業所にも別の適用関係がある。

短時間労働者の所定内賃金要件は令和8年10月に撤廃される。企業規模要件は,令和9年10月に36人以上,令和11年10月に21人以上,令和14年10月に11人以上へ段階的に縮小され,令和17年10月に撤廃される予定である。現在の加入判定と将来の適用時期を混同しないことが必要である。

4 法律事務所と弁護士国民健康保険

常時5人以上を使用する個人経営の法律事務所は,令和4年10月以降,原則として健康保険及び厚生年金保険の強制適用事業所である。弁護士法人は,従業員数にかかわらず法人事業所として強制適用を受ける。

弁護士国民健康保険組合の組合員等が所定の要件を満たす場合,健康保険の適用除外承認を受け,健康保険には加入せず,厚生年金保険だけに加入する取扱いを選択できることがある。弁護士国保への加入だけで健康保険の適用が当然に除外されるものではなく,組合の資格要件を確認した上で,年金事務所を通じた適用除外承認の手続が必要である。

第2 資格取得・資格喪失と標準報酬

1 事業所と従業員の届出

事業主は,新たに強制適用事業所となったときは,事実発生から5日以内に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を年金事務所へ提出する。従業員が被保険者資格を取得したときも,原則として資格取得日から5日以内に資格取得届を提出する。

資格取得日は,適用事業所に使用されるに至った日等である。試用期間中であること又は給与計算上の締日が到来していないことだけを理由に,資格取得を本採用日又は翌月まで遅らせることはできない。

退職による資格喪失日は,原則として退職日の翌日であり,事業主は資格喪失日から5日以内に資格喪失届を提出する。同じ月に資格を取得して喪失した場合や,月末退職と月途中退職とでは保険料の取扱いが異なり得るため,資格取得日,退職日及び次の資格取得日を個別に確認する必要がある。

2 標準報酬月額の定時決定と随時改定

健康保険料及び厚生年金保険料は,実際の報酬を一定の幅に区分した標準報酬月額に保険料率を乗じて計算する。原則として,毎年4月から6月までに支払われた報酬の平均を基に標準報酬月額を決定し,その年の9月から翌年8月まで適用する手続が定時決定であり,事業主は算定基礎届を提出する。

基本給,日給単価等の固定的賃金が変動し,変動月以後3か月の報酬平均による標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に原則として2等級以上の差が生じるなどの要件を満たしたときは,4か月目から随時改定を行う。残業時間の増減だけでは固定的賃金の変動に当たらないが,固定的賃金の変動後の3か月に支払われた残業手当は報酬平均に含まれる。

3 賞与と育児休業等

賞与については,税引前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を乗じる。標準賞与額の上限は,健康保険では毎年4月1日から翌年3月31日までの累計573万円,厚生年金保険では1か月当たり150万円であり,事業主は支給日から5日以内に賞与支払届を提出する。

産前産後休業及び育児休業の期間については,事業主の申出により,被保険者負担分と事業主負担分の保険料が免除される。育児休業等終了後に報酬が低下した場合の標準報酬月額改定や,3歳未満の子の養育期間中に標準報酬月額が低下した場合の従前標準報酬月額のみなし措置は,保険料免除とは別の手続である。

第3 令和8年度の保険料

1 大阪支部の健康保険料等

令和8年度の協会けんぽ大阪支部の健康保険料率は10.13%である。40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者には介護保険料率1.62%が加わり,令和8年4月分からは子ども・子育て支援金率0.23%も加わる。

健康保険料,介護保険料及び子ども・子育て支援金は,原則として事業主と被保険者が折半する。健康保険料率は都道府県支部又は健康保険組合により異なり,年度ごとに改定され得るため,大阪支部以外の事業所又は別年度の計算にはそのまま使用できない。

2 厚生年金保険料

厚生年金保険料率は18.3%であり,事業主と被保険者が折半する。厚生年金保険料率は平成29年9月に段階的な引上げが終了しているが,標準報酬月額又は標準賞与額が変われば,実際の保険料額も変わる。

3 給与からの控除と納付

事業主は,被保険者負担分を給与及び賞与から控除し,事業主負担分と合わせて,原則として対象月の翌月末日までに納付する。毎月の保険料は資格取得月から発生し,原則として資格喪失日の属する月の前月分まで発生するため,給与の当月払い・翌月払いと,保険料の当月控除・翌月控除を区別して就業規則及び給与計算を設計する必要がある。

第4 健康保険

1 マイナ保険証と資格確認書

令和6年12月2日以降,新たな健康保険証は発行されていない。従来の健康保険証も令和7年12月1日までにすべて有効期限を迎えており,現在は,マイナンバーカードを健康保険証として利用登録したマイナ保険証,又は保険者が交付する資格確認書により受診する。

資格取得届の処理直後等でオンライン資格確認に情報が反映されていない場合に備え,日本年金機構が交付する資格情報のお知らせ等の使い方を確認する必要がある。マイナ保険証を保有していない者等には資格確認書が交付されるが,交付方法及び有効期限は加入先の保険者によって確認する。

2 傷病手当金

被保険者が業務外の病気又はけがの療養のため仕事に就けず,連続する3日間を含み4日以上休み,休業期間について十分な報酬を受けられないときは,健康保険の傷病手当金の対象となる。最初の連続3日間は待期であり,4日目から支給対象となる。

1日当たりの支給額は,原則として,支給開始日前12か月間の各月の標準報酬月額の平均額を30で除し,その3分の2に相当する額である。同一の傷病についての支給期間は,支給開始日から通算して1年6か月であり,暦の上で一律に1年6か月を経過した日に終了する制度ではない。

退職日までに継続して1年以上被保険者であり,資格喪失時に傷病手当金を受けているか,受けることができる状態であるなどの要件を満たせば,退職後も残りの期間について継続給付を受けられることがある。退職日に出勤して労務に服した場合等は要件判断に影響するため,退職前に保険者へ確認する必要がある。

3 被扶養者

健康保険の被扶養者の認定では,続柄,生計維持関係,同居又は別居の別及び今後1年間の収入見込みを確認する。一般の年間収入基準は130万円未満であり,60歳以上又は一定の障害がある者は180万円未満を基準とするが,被保険者の収入との関係や別居時の仕送り額等も審査対象となる。

令和8年4月1日以降,給与収入だけが見込まれる者については,労働条件通知書等に記載された賃金から算定した年間収入が基準額未満であり,同居時は原則として被保険者の年間収入の2分の1未満,別居時は被保険者からの援助額未満であるなどの要件を満たせば,労働契約内容に基づいて被扶養者と認定する取扱いが導入された。年金収入,事業収入等の他の収入が見込まれる場合は,従前どおり将来の年間収入見込みを総合して判断する。

令和7年10月1日以降,扶養認定日が属する年の12月31日時点で19歳以上23歳未満である者については,配偶者を除き,年間収入要件が150万円未満に引き上げられた。年齢要件に該当しても,生計維持関係等の他の要件がなくなるわけではない。

最高裁令和4年12月13日判決(令和3年(行ヒ)第120号,民集76巻7号1872頁)は,健康保険組合が被保険者に対して親族等が被扶養者に該当しない旨を通知する行為は,健康保険法189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に当たるとした。被扶養者認定を争う場合は,単なる事実上の連絡とみなして放置せず,通知内容及び不服申立期間を確認する必要がある。

4 退職後の医療保険

退職後の医療保険には,①従前の健康保険の任意継続,②家族が加入する健康保険の被扶養者,③国民健康保険,④加入先に制度がある場合の特例退職被保険者という選択肢がある。任意継続は,退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり,資格喪失日から20日以内に申請することを要し,加入期間は原則として2年以内である。

任意継続では事業主負担がなくなるため,保険料を全額本人が負担する一方,被扶養者の追加による保険料増額はない。国民健康保険料は世帯の所得及び自治体により異なるため,退職時の一時点だけでなく,翌年度の所得減少,扶養家族の人数及び任意継続からの資格喪失申出も含めて比較する必要がある。

5 75歳到達時の取扱い

健康保険の被保険者又は被扶養者は,原則として75歳の誕生日に資格を喪失し,後期高齢者医療制度の被保険者となる。65歳以上75歳未満で一定の障害がある者も,後期高齢者医療広域連合の認定を受けて加入できるが,75歳到達による加入とは要件が異なる。

第5 厚生年金と国民年金

1 70歳到達後の届出

厚生年金保険の被保険者資格は,原則として70歳の誕生日の前日(70歳に達した日)に喪失する。ただし,適用事業所で引き続き使用される70歳以上被用者には在職老齢年金による支給停止等の仕組みが適用される。

同一の適用事業所で70歳到達前から引き続き使用され,70歳到達前後の標準報酬月額相当額が同額である場合は,事業主による70歳到達届の提出は原則として不要である。相当額が異なる場合や,70歳以上で新たに使用される場合等は,原則として事実発生から5日以内に届出をする。

2 在職老齢年金

令和8年4月から,在職老齢年金の支給停止基準額は月65万円である。老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合,超過額の2分の1に相当する額を基準として老齢厚生年金の一部又は全部が支給停止となる。

この仕組みは老齢厚生年金に関するものであり,老齢基礎年金は支給停止の対象にならない。賃金及び賞与の変動,退職又は年金額改定により計算が変わり得るため,日本年金機構の最新資料で確認する必要がある。

3 令和8年度の国民年金保険料

令和8年度の国民年金第1号被保険者の定額保険料は月額1万7920円である。前納による割引額及び付加保険料の有無は納付方法により異なるため,定額保険料と実際の納付額を区別する必要がある。

4 20歳前傷病による障害基礎年金

国民年金法30条の4は,初診日に20歳未満であった傷病による障害について,一定の要件の下で障害基礎年金を支給する。保険料拠出を給付要件としない一方,本人所得による支給制限等があり,通常の障害基礎年金と完全に同じ仕組みではない。

最高裁平成19年9月28日判決(平成17年(行ツ)第246号,民集61巻6号2345頁)は,20歳前に初診日がある学生に障害基礎年金が支給されなかった事案において,平成元年改正前に学生を強制加入の対象とせず任意加入だけを認めたことや,その学生に無拠出制年金を支給する規定を設けなかったことは,憲法25条及び14条1項に違反しないとした。同判決は改正前制度と当時の立法措置を対象とするため,現行制度の適用を直接判断したものではない。

大分地裁令和6年3月1日判決(令和元年(ワ)第367号)は,交通事故の損害賠償において,20歳前傷病による障害基礎年金の逸失利益性を否定した。もっとも,これは下級審判決であり,確定又は控訴審の有無を公開情報から確認できていない上,刊行された実務書には反対方向の見解もあるため,確立した一般論として扱うことはできない。

第6 介護保険

1 第1号被保険者と第2号被保険者

市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者は介護保険の第1号被保険者となり,40歳以上65歳未満の医療保険加入者は第2号被保険者となる。第1号被保険者の保険料は市町村が条例で定め,第2号被保険者の保険料は加入する医療保険の保険料と一体的に徴収される。

第1号被保険者は要介護又は要支援状態となった原因を問わず給付対象となり得るが,第2号被保険者は,加齢に伴う特定疾病により要介護又は要支援状態となった場合に限られる。健康保険料に介護保険料が加算される年齢と,介護サービスの給付要件を区別する必要がある。

第7 出典・参考資料

1 法令

2 行政資料

3 裁判例

4 文献

  • ① 近藤美穂監修『聴ける!実用法律書 改訂新版 図解で早わかり 社会保険・労働保険の基本と手続きがわかる事典』三修社,令和8年,14頁~18頁,26頁~30頁,52頁,58頁~60頁
  • ② 中込一洋『交通事故事件 社会保険の実務』学陽書房,令和2年,222頁~223頁
  • ③ 『第2版 弁護士・社労士・税理士が書いたQ&A労働事件と労働保険・社会保険・税金』日本加除出版,令和2年,52頁~53頁,111頁