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警察への虚偽通報はなぜ偽計業務妨害罪になるのか―公務執行妨害罪との境界(AI作成)

第1 問題の所在

警察に虚偽の110番通報をし,警察官を徒労の出動や警戒に従事させた場合,刑法233条の偽計業務妨害罪が問題となる。
警察の仕事は公務であるため,公務執行妨害罪だけが成立し,業務妨害罪の対象にはならないのではないかという疑問が生じる。

結論として,公務であるというだけで業務妨害罪の「業務」から除外されるわけではない。
妨害された公務が,その妨害を強制力によって排除できる性質のものかを,妨害行為との関係で具体的に検討する必要がある。

第2 偽計業務妨害罪と公務執行妨害罪

刑法233条は,虚偽の風説の流布又は偽計を用いて人の信用を毀損し,又はその業務を妨害した者を処罰する。
刑法234条は,威力を用いた業務妨害を処罰する。

これに対し,刑法95条1項の公務執行妨害罪は,公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた場合に成立する。
偽計業務妨害罪は偽計という方法を対象とし,公務執行妨害罪は公務員への暴行・脅迫を対象とするため,妨害方法も構成要件も異なる。

第3 公務が業務妨害罪の「業務」に当たる範囲

公務のうち,強制力を行使する権力的公務について業務妨害罪の成立が否定されるのは,暴行・脅迫に至らない程度の威力や偽計による妨害を,その公務に付与された強制力で排除できる場合があるからである。

したがって,警察官の職務に逮捕その他の強制力を行使する公務が含まれるという抽象的な理由だけでは決まらない。
虚偽通報を直ちに見破ることができず,出動・警戒を余儀なくされる場合,その妨害は逮捕権等の強制力によって排除できない。
このような場合,本来行われるはずであった警ら,立番その他の警察業務は,偽計業務妨害罪による保護の対象になり得る。

第4 東京高裁平成21年3月12日判決

東京高裁平成21年3月12日判決は,インターネット掲示板に,1週間以内に駅で無差別殺人を実行する旨の虚偽の予告を書き込み,閲覧者からの通報を介して警察官8名を駅周辺への出動・警戒等に従事させた事案を扱った。

判決は,掲示板を通じた間接的な通報も直接の110番通報と同視できるとした。
警察は,虚偽であることを直ちに看破できない限り,徒労の出動・警戒を余儀なくされ,虚偽通報がなければ遂行されたはずの警ら,立番その他の業務が妨害されるとした。

妨害された本来の公務に逮捕状による逮捕等の権力的公務が含まれていたとしても,その強制力は虚偽通報による妨害を排除する働きを持たない。
そのため,妨害された警察の公務全体が偽計業務妨害罪の保護対象になると判断した。

第5 虚偽通報をめぐる判断手順

1 虚偽性と故意

通報内容が客観的に誤っていただけでは足りず,行為者が虚偽であることを認識し,警察を誤信させる意図があったかを確認する。
記憶違い,見間違い,推測を事実と誤認した善意の通報は,意図的な虚偽通報と区別する必要がある。

2 偽計

偽計とは,人を欺き,誘惑し,又は相手の錯誤・不知を利用する不公正な方法をいう。
架空の犯罪予告や虚偽の事件通報により,警察に真実の事件であると誤信させる行為は,典型的に偽計が問題となる。

3 妨害された業務

単に警察が通報を受けたというだけでなく,どの職員が,いつからいつまで,どこへ出動し,どの警ら,立番,捜査その他の本来業務が困難になったかを特定する。
人員配置記録,無線指令,110番受理票,勤務日誌等が重要となる。

4 強制力で妨害を排除できたか

警察官が一般に強制力を持つかではなく,問題となる虚偽通報を,その強制力で直ちに排除できたかを検討する。
虚偽を見破れず,安全確保のため対応せざるを得なかった場合は,強制力による排除ができない方向に評価される。

第6 刑事弁護で確認すべき証拠

  • 110番録音,掲示板投稿,SNS投稿,発信履歴,IPアドレスその他の通報内容と発信者を示す資料
  • 行為者が情報を得た経路,虚偽性を認識した時点,冗談・警告・意見表明との区別に関する資料
  • 警察の受理時刻,指令内容,出動人数,警戒時間及び対応場所
  • 虚偽通報がなければ予定されていた警ら,立番,捜査その他の業務
  • 警察が虚偽を看破できた時点と,それまで対応を継続した理由
  • 行為と業務遂行困難との因果関係,妨害の程度及び継続時間

第7 軽犯罪法との関係

軽犯罪法1条31号は,他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者を処罰する。
東京高裁平成21年3月12日判決は,同号が刑法233条,234条及び95条の補充規定であり,これらの罪が成立しないような違法性の程度が低い場合に成立し得ると説明した。

したがって,虚偽通報であれば常に軽犯罪法にとどまるわけではない。
通報内容,出動人数,警戒時間,本来業務への影響などから,業務妨害罪の構成要件と違法性を具体的に検討する。

第8 限界と留意点

意見,批判,苦情又は被害申告が結果的に誤っていたことだけで,直ちに偽計業務妨害罪が成立するものではない。
虚偽の認識と偽計の故意,具体的な業務妨害を証拠に基づいて区別する必要がある。

また,公務と業務妨害罪の関係は,公務の名称だけでなく,妨害行為の方法と,当該公務に付与された強制力がその妨害を排除できるかによって判断される。
本記事は虚偽通報を中心に整理したものであり,公務員への暴行・脅迫,庁舎への侵入,捜索差押えの物理的妨害などは別の検討を要する。

第9 出典