第1 令和8年度は34校中21校で入学定員を下回った
令和8年度(2026年度)の法科大学院について,文部科学省の学校別資料を集計すると,入学者選抜を実施した34校のうち21校で,入学者数が入学定員を下回っている。
本記事では,この状態を「定員割れ」と呼ぶ。
学校数の割合は約61.8%であり,文部科学省が公表した人数から本記事で計算したものである。
全国の入学定員は2157人,入学者数は2049人であり,人数で計算した入学定員充足率は約95.0%である。
全国の人数比が約95%であることと,半数を超える学校で定員割れが生じていることは両立する。
学校によって定員の大きさが違い,定員を超えて入学者を受け入れた学校もあるためである。
比較の基準は,文部科学省の資料1-4(各法科大学院の令和3年度から令和8年度までの入学者選抜実施状況等)に掲載された令和8年4月1日現在の人数である。
34校は当年度の入学者選抜実施校の数であり,募集停止校まで含む学校数とは区別する。
人数は当年度の入学者数であり,全学年の在籍者数ではない。
第2 全国34校の定員充足率一覧
1 表の見方と計算方法
入学定員充足率は,入学者数を入学定員で割って100を掛けた割合である。
以下の表は同じ文部科学省資料にそろえ,充足率を小数第2位で四捨五入して小数第1位まで示した。
定員割れの判定は丸めた充足率ではなく,元の人数の大小で行っている。
大学独自の公表資料と人数が異なる場合でも,全国比較表の一部だけを大学公表値に差し替えてはいない。
例えば同志社大学の入学者数は,文部科学省資料では74人,大学の2026年度入試結果では73人である。
両者の差の理由を推測で決めず,出典の違いを残す。
2 国立・公立の法科大学院
| 法科大学院 | 入学定員 | 入学者数 | 充足率 | 定員との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道大学 | 50人 | 46人 | 92.0% | 未充足 |
| 東北大学 | 50人 | 52人 | 104.0% | 超過 |
| 筑波大学 | 36人 | 35人 | 97.2% | 未充足 |
| 千葉大学 | 40人 | 39人 | 97.5% | 未充足 |
| 東京大学 | 230人 | 202人 | 87.8% | 未充足 |
| 一橋大学 | 85人 | 83人 | 97.6% | 未充足 |
| 金沢大学 | 15人 | 18人 | 120.0% | 超過 |
| 名古屋大学 | 50人 | 48人 | 96.0% | 未充足 |
| 京都大学 | 160人 | 158人 | 98.8% | 未充足 |
| 大阪大学 | 80人 | 92人 | 115.0% | 超過 |
| 神戸大学 | 80人 | 80人 | 100.0% | 同数 |
| 岡山大学 | 24人 | 23人 | 95.8% | 未充足 |
| 広島大学 | 20人 | 21人 | 105.0% | 超過 |
| 九州大学 | 45人 | 56人 | 124.4% | 超過 |
| 琉球大学 | 16人 | 16人 | 100.0% | 同数 |
| 東京都立大学 | 40人 | 44人 | 110.0% | 超過 |
| 大阪公立大学 | 30人 | 28人 | 93.3% | 未充足 |
3 私立の法科大学院
| 法科大学院 | 入学定員 | 入学者数 | 充足率 | 定員との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 学習院大学 | 30人 | 28人 | 93.3% | 未充足 |
| 慶應義塾大学 | 220人 | 201人 | 91.4% | 未充足 |
| 上智大学 | 40人 | 26人 | 65.0% | 未充足 |
| 専修大学 | 28人 | 22人 | 78.6% | 未充足 |
| 創価大学 | 28人 | 17人 | 60.7% | 未充足 |
| 中央大学 | 160人 | 122人 | 76.3% | 未充足 |
| 日本大学 | 60人 | 34人 | 56.7% | 未充足 |
| 法政大学 | 30人 | 39人 | 130.0% | 超過 |
| 明治大学 | 40人 | 44人 | 110.0% | 超過 |
| 早稲田大学 | 200人 | 214人 | 107.0% | 超過 |
| 愛知大学 | 20人 | 19人 | 95.0% | 未充足 |
| 南山大学 | 20人 | 19人 | 95.0% | 未充足 |
| 同志社大学 | 70人 | 74人 | 105.7% | 超過 |
| 立命館大学 | 70人 | 62人 | 88.6% | 未充足 |
| 関西大学 | 40人 | 37人 | 92.5% | 未充足 |
| 関西学院大学 | 30人 | 33人 | 110.0% | 超過 |
| 福岡大学 | 20人 | 17人 | 85.0% | 未充足 |
集計すると,定員未充足が21校,定員と同数が2校,定員超過が11校となる。
入学定員の合計2157人と入学者数の合計2049人は,資料の合計欄と一致する。
学校全体の結果であり,この表だけから既修者・未修者それぞれの募集枠の充足状況は判断できない。
第3 定員割れと高い入試倍率が両立する理由
1 充足率と競争倍率では分母が違う
競争倍率は受験者数を合格者数で割った値であり,入学定員充足率は入学者数を入学定員で割った値である。
前者は選抜の受験・合格段階,後者は最終的な入学段階を表している。
合格者数と入学者数は同じ人数ではないため,一方の比率だけで他方を判断することはできない。
| 令和8年度の例 | 日本大学 | 立命館大学 |
|---|---|---|
| 入学定員 | 60人 | 70人 |
| 受験者数 | 495人 | 828人 |
| 合格者数 | 55人 | 146人 |
| 入学者数 | 34人 | 62人 |
| 競争倍率 | 9.00倍 | 5.67倍 |
| 入学定員充足率 | 56.7% | 88.6% |
日本大学では495÷55=9倍である一方,34÷60×100≒56.7%である。
立命館大学でも828÷146≒5.67倍でありながら,62÷70×100≒88.6%となる。
いずれも,定員割れと高い競争倍率が同時に見られる例である。
日本大学では合格者55人が入学定員60人を下回っており,合格者全員が入学しても定員には届かない。
出典は日本大学の統計情報と立命館大学の入試Dataである。
2 人数表だけで辞退理由や進学先を断定しない
文部科学省の資料1-3の注記によれば,全国集計の志願者数・受験者数・合格者数は,併願者を含む延べ人数である。
全国の延べ合格者数から入学者数を引き,その差をそのまま入学辞退者の実人数とすることはできない。
個人の進学先や学校を選んだ理由も,この人数表だけでは分からない。
第4 全国の充足率と過年度の推移をどう読むか
1 人数の充足率と学校数の割合は異なる
全国の充足率約95.0%は,2049÷2157×100で計算した人数の比率である。
これに対し,定員割れ校の割合約61.8%は,21÷34×100で計算した学校数の比率であり,分母が違う。
全国の充足率も,各学校の充足率を単純平均した値ではない。
2 同じ年度の定員と入学者数を併記する
文部科学省の資料1-2「志願者数・入学定員数・入学者数・入学定員充足率の推移」に基づき,直近3年度を比べると次のとおりである。
充足率は人数から計算し,小数第2位で四捨五入して小数第1位まで示した。
| 年度 | 入学定員 | 入学者数 | 充足率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度(2024年度) | 2197人 | 2076人 | 94.5% |
| 令和7年度(2025年度) | 2157人 | 2058人 | 95.4% |
| 令和8年度(2026年度) | 2157人 | 2049人 | 95.0% |
令和6年度から令和7年度にかけては,入学者数が減る一方で,入学定員も減り,充足率は上昇している。
令和7年度と令和8年度は定員が同じで,入学者数は9人減少した。
充足率の上昇又は低下だけを見ず,分母の定員と分子の入学者数を合わせて確認することが必要である。
第5 定員割れに関するよくある質問
1 定員割れの法科大学院なら誰でも入れるか
定員割れだけを理由に,誰でも合格できるとは判断できない。
日本大学の令和8年度の例でも,入学定員を満たしていない一方,受験者495人に対する合格者は55人である。
志望校の当該年度・コース・選抜方式の結果と募集条件を確認する必要がある。
2 同志社大学法科大学院は定員割れしているか
令和8年度の学校全体では,文部科学省資料の定員70人に対して入学者74人であり,本記事の定義では定員割れではない。
大学公式ページの入学者数73人を用いても,同じ結論となる。
ただし,文部科学省資料の令和7年度は定員70人に対して入学者63人で定員を下回っており,どの年度を指しているかで答えが異なる。
3 定員割れと募集停止は同じか
同じではない。
定員割れは入学者数と定員の比較であり,募集停止は募集そのものを実施しないという別の状態である。
文部科学省の資料1-4でも,駒澤大学の募集停止は注記で区別されており,募集停止校を入学者ゼロの定員割れ校として34校に加えてはいない。
4 入学者が前年より減れば定員割れになるか
前年より減ったことだけでは,定員割れとはいえない。
例えば明治大学は文部科学省資料で令和7年度58人から令和8年度44人へ減っているが,令和8年度の定員40人は上回っている。
前年との増減と,当年度の定員との比較は分けて考える必要がある。
第6 進学先を比べるときに確認したいこと
定員充足率は入学状況を把握する指標であり,それだけで教育の質や司法試験合格の見込みを示すものではない。
学校全体の人数と,既修者・未修者のコース別の募集条件を分けて確認し,進級・修了の状況,司法試験実績,学費・奨学金,学修支援も合わせて比べることが有用である。
各指標の年度・対象者・分母をそろえて確認したい。
第7 関連記事
① 日本大学法科大学院の2026年度入学動向―競争倍率9倍と定員充足率56.7%の読み方
② 法政大学法科大学院の2026年度入学動向―定員30人に対する39人の受入れとコース構成
③ 法科大学院等特別委員会とは-役割,構成及び令和8年の審議課題
第8 出典
① 文部科学省・第124回資料1-4(各法科大学院の令和3年度から令和8年度までの入学者選抜実施状況等。PDF1頁,令和8年4月1日現在)。
https://www.mext.go.jp/content/20260706_mxt_senmon02-000050783_5.pdf
② 文部科学省「志願者数・入学定員数・入学者数・入学定員充足率の推移」(第124回資料1-2,PDF1頁)。
https://www.mext.go.jp/content/20260706_mxt_senmon02-000050783_3.pdf
③ 日本大学大学院法務研究科「統計情報」(入学定員及び入学者数,令和8年4月1日現在)。
https://www.law.nihon-u.ac.jp/lawschool/admissions/05/
④ 立命館大学法科大学院「入試Data」(2026年度試験結果)。
https://www.ritsumei.ac.jp/lawschool/admission/admission-data.html/
⑤ 同志社大学法科大学院「2026年度」(入試結果)。
https://law-school.doshisha.ac.jp/entrance_ex/result/result_2026/
⑥ 文部科学省「令和8年度法科大学院入学者選抜の全体像」(第124回資料1-3,PDF1頁)。
https://www.mext.go.jp/content/20260706_mxt_senmon02-000050783_4.pdf
人数及び学校数の集計,充足率,割合及び増減の計算は,上記公表値に基づいて本記事で行ったものである。