第1 結論
Google Drive,OneDrive及びRobocopyを同時に動かすと,ファイルの取得,読込み,書込み,メタデータ更新,キャッシュ及びネットワーク転送が重なり,PCの応答が遅くなることがある。
とりわけ,クラウド上にだけあるファイルを含む広いフォルダーを大量コピーの対象にすると,コピー処理がファイルの取得を促し,クラウド同期側の処理も増えることがある。
もっとも,同時実行だけでWindows全体のフリーズ原因と断定することはできない。
CPU,メモリ及びディスクに余裕があり,表示系の障害又は電源・ドライバーの問題がある場合は,別の原因候補を確認する必要がある。
再発を減らすための基本は,①大規模な同期と大量コピーを同時に始めない,②対象範囲を小さく分ける,③Robocopyの並列数を必要以上に増やさない,④ログを残す,⑤同期完了及びコピー結果を別々に確認する,という順である。
第2 同時に何が起きるか
クラウド同期フォルダーに見えるファイルは,すべてが同じ状態とは限らない。
ローカルに完全な内容があるファイル,必要時にクラウドから取得するファイル,同期中のファイル及びエラーで未同期のファイルが混在し得る。
大量コピーは,対象ファイルを順に読み,コピー先へ書き込む。
コピー元がオンデマンド取得の領域であれば,読込みに先立ってクラウドからの取得が必要になる場合がある。
同時に同期アプリ,ウイルス対策及び検索インデックスが新しいファイルを処理すれば,画面上では一つのコピーでも複数のプロセスが同じファイル群へアクセスする。
第3 Google Driveのストリーミングとミラーリング
Googleは,Drive for desktopの利用方法をストリーミングとミラーリングに分けている。
ストリーミングではファイルは主としてクラウドに保存され,アクセスしたときにオフラインでも利用できるよう取得される。
ミラーリングでは,マイドライブのファイルがローカル端末とクラウドの双方に保存される。
したがって,ストリーミング領域の大量コピーでは,ローカルに未取得のファイルが連続して取得される可能性を考慮する。
ミラーリング領域ではローカル容量を多く使うため,コピー先の容量だけでなく,ミラーの保存先及び一時領域の空きも確認する。
ストリーミングからミラーリングへ切り替える場合又はその反対の場合は,Googleの案内に従い,切替え前に同期が完了していることを確認する。
フリーズ又は同期エラーの直後にアカウントを切断し,キャッシュを削除し,又は同期方式を変えると,未同期ファイルと原因調査の記録を失うおそれがある。
第4 OneDriveのFiles On-Demand
OneDriveのFiles On-Demandでは,ファイルをエクスプローラーに表示しつつ,オンライン専用の状態にできる。
オンライン専用のファイルを開くと,端末へダウンロードされて利用可能になる。
「このデバイス上で常に保持する」状態のファイルは,端末へダウンロードされ,オフラインでも利用できる。
大量コピーの前には,コピー元の状態アイコンを確認する。
オンライン専用のファイルを大量に含む場合,単純なローカルディスク間コピーとは異なり,ネットワーク取得とローカル書込みが重なることを見込む。
第5 Robocopyのマルチスレッド
Robocopyは,ファイルを一つの場所から別の場所へコピーするWindowsのコマンドである。
`/MT`を指定するとマルチスレッドでコピーでき,スレッド数は1から128まで指定できる。
スレッド数を省略した`/MT`の既定値は8である。
マルチスレッドはコピーを速めることがある一方,同時に読み書きする数も増える。
クラウド取得,バックアップ又はAIのファイル処理と重ねる場合は,最初から大きなスレッド数を指定せず,`/MT:2`又は`/MT:4`のような少ない値から通常業務への影響を確認する方法がある。
これはMicrosoftが示す一律の推奨値ではなく,運用上の試験開始点である。
コピー結果は,画面表示だけでなく終了コード及びログで確認する。
Microsoftの資料では,Robocopyの終了コードが8以上の場合,コピー中に少なくとも一つの失敗があったことを示す。
第6 フリーズの原因と断定しない
コピー又は同期の実行中にPCが固まっても,その処理が唯一の原因とは限らない。
性能ログで,ディスク待ち時間,ディスクキュー,プロセス別I/O,ネットワーク,利用可能メモリ及びコミット使用率を同じ時刻で確認する。
大量コピー中に転送量が多いことは通常の結果でもある。
原因候補を強めるのは,応答停止の直前に待ち時間又はキューが異常に増え,同じ処理を止めると改善し,安全な再現試験でも同じ傾向が出る場合である。
反対に,ディスクに余裕があるのに表示系のエラーが残る場合は,GPU又はディスプレイドライバー等を別に確認する。
第7 安全な実行順序
大規模な作業は,次の順序で分ける。
① 同期アプリのエラー及び未同期ファイルがないかを確認する。
② コピー元とコピー先の空き容量を確認する。
③ 対象の一部で小規模なコピーを実行し,ログと終了コードを確認する。
④ 通常業務に支障がないことを確認してから対象範囲を広げる。
⑤ クラウドの大規模移行,ローカル大量コピー及びバックアップは,可能な限り時間を分ける。
⑥ 重いAI処理又は遠隔操作を同時に行う必要がある場合は,コピーのスレッド数又は対象範囲を抑える。
コピー元がクラウド領域で,コピー先も同じクラウドの別フォルダーである場合,画面上の移動又はサーバー側コピーと,ローカルPCを経由するコピーでは処理経路が異なることがある。
どの端末が実際にデータを読み書きするかを確認し,同じ移行を別経路で二重に始めない。
第8 停止及び再開の方法
PCの応答が極端に悪くなった場合は,新しいコピー又は同期操作を追加しない。
どの処理を停止するかを決め,停止前に対象,開始時刻,ログの保存先及び進捗を記録する。
クラウド同期アプリ,Robocopy及びバックアップを一度に強制終了すると,どの停止が改善に寄与したか分からなくなる。
再開時は,コピー先に存在するファイル数だけで完了と判断しない。
Robocopyの終了コード及びログ,クラウド同期の完了表示,未同期又は競合ファイル,必要なファイルの再読取りをそれぞれ確認する。
第9 業務データを守るための確認
同期はバックアップと同じではない。
誤削除又は破損が同期される場合があるため,重要な業務データは,同期先とは独立した復旧手段を用意する。
コピー又は同期のログには,利用者名,保存先,事件名,依頼者名及びファイル名が含まれることがある。
外部へ相談するときは,原本ログを保全したうえで作業用コピーを作り,原因分析に不要な識別情報を削除又は置換する。
第10 確認用チェックリスト
① コピー元のファイルはローカル保持か,オンデマンド取得か。
② コピー元,コピー先及び同期キャッシュに十分な空きがあるか。
③ クラウド同期,バックアップ及び大量コピーを同時に開始していないか。
④ Robocopyの`/MT`スレッド数を必要以上に増やしていないか。
⑤ コピーのログ及び終了コードを保存したか。
⑥ 同期の完了表示と未同期ファイルを確認したか。
⑦ PCが重くなった時刻と性能ログを突き合わせたか。
⑧ 停止及び再開を一処理ずつ行ったか。
⑨ 重要データについて同期とは別の復旧手段があるか。
第11 関連記事
Windowsの性能ログ及びイベントログを時刻で突き合わせる方法は,「Windows 11がフリーズした原因を後から調べる方法―最後のコマンド,パフォーマンスモニター及びイベントビューアー(AI作成)」を参照されたい。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/26/windows11-freeze-cause-perfmon-event-viewer/
AIエージェント導入前の保存先及び運用負担は,「個人事業主のAIエージェント導入前チェック―PCトラブル,データ保全と運用負担(AI作成)」を参照されたい。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/26/kojinjigyou-ai-agent-pc-trouble/
第12 出典・参考資料
① Google Drive ヘルプ「Stream & mirror files with Drive for desktop」
https://support.google.com/drive/answer/13401938
② Google Drive ヘルプ「Fix problems in Drive for desktop」
https://support.google.com/drive/answer/2565956
③ Microsoft Support「Save disk space with OneDrive Files On-Demand for Windows」
https://support.microsoft.com/en-us/onedrive/save-disk-space-with-onedrive-files-on-demand-for-windows
④ Microsoft Learn「Robocopy」
https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/robocopy/
⑤ Microsoft Learn「Performance Counters Tools」
https://learn.microsoft.com/en-us/windows/win32/perfctrs/performance-counters-tools