第1 検察事務官の給料を調べるときの基本
検察事務官の給与は,採用時の行政職の俸給と,一定の勤務経験後に適用される公安職の俸給を区別して読む必要がある。
また,俸給月額,諸手当を含む毎月の支給額,税金・社会保険料等を控除した手取り額,年間の支給総額である年収は,同じ数字ではない。
本記事では,令和8年10月8日現在閲覧できる検察庁の公表資料をもとに,初任給の例と給与の仕組みを説明する。
検察庁「検察事務官の勤務条件」は,採用時には一般の国家公務員と同じ行政職の俸給が支給され,一定の勤務経験後には職務の特殊性を考慮した公安職の俸給が支給されると説明している。
具体的な額を確認する際は,適用される俸給表,職務の級及び号俸に加え,金額の基準日と手当の有無を確認することが必要である。
検察事務官の年収は,俸給と諸手当,期末・勤勉手当を合わせた年間の支給総額であり,一律の額ではない。
初任給の月額を12倍しただけの額は,賞与等を含む年収とは異なる。
全国の平均年収として職業紹介サイトの数字を使う場合も,統計の対象が検察事務官だけかを確認する必要がある。
第2 大卒程度・高卒者の初任給と勤務経験後の例
1 公表されている俸給月額の例
検察庁公表の「検察庁Q&A」Q18(PDF13頁)は,令和8年1月時点の俸給表をもとに,3月に大学又は高校を卒業し,4月に入庁した場合の給与例を示している。
その金額と適用俸給表は,次のとおりである。
| 採用区分・時期 | 俸給表・級・号俸 | 俸給月額の例 |
|---|---|---|
| 大卒程度・採用1年目 | 行政職俸給表(一)1級25号俸 | 23万2000円 |
| 大卒程度・採用2年目 | 公安職俸給表(二)1級24号俸 | 26万8000円 |
| 高卒程度・採用1年目 | 行政職俸給表(一)1級5号俸 | 20万300円 |
| 高卒程度・採用5年目 | 公安職俸給表(二)1級20号俸 | 26万1200円 |
この表は,資料が前提とした卒業・入庁時期に対応する例であり,全員に同じ金額が支給されるという意味ではない。
職歴等がある場合の初任給の決定や,採用後の昇格・昇給については,個人の条件をもとに採用庁へ確認する必要がある。
また,年目の異なる金額の差を,俸給表が切り替わることだけによる増額とみなすことも適切ではない。
俸給月額と,地域手当を含む給与の例も区別する必要がある。
名古屋地方検察庁の公式掲載ページにある2026年度若手職員資料(PDF2頁)は,標準的な大卒程度試験合格者について,次の地域手当込みの例を示している。
| 資料の例 | 金額の種類 | 公表額 |
|---|---|---|
| 採用時初任給・行政職 | 地域手当を含む給与の例 | 25万9840円 |
| 1年後・公安職 | 地域手当を含む給与の例 | 30万160円 |
この表は名古屋地検の2026年度資料の例であり,先の表の俸給月額だけの例と金額の範囲が異なる。
差額を勤務地以外の条件も異なる他職種との優劣や,全国の検察事務官の平均月給として扱うべきではない。
他の手当の支給条件や,個人に適用される額は採用庁へ確認する必要がある。
2 公安職への移行時期
検察庁の勤務条件の説明では,公安職の俸給が支給されるまでの勤務経験は,一般職試験の大卒程度試験合格者がおおむね1年,高卒者試験合格者がおおむね5年とされている。
他方,前記Q&Aの表は,大卒程度の採用2年目及び高卒程度の採用5年目を例としている。
「おおむね」という制度の案内と,特定の条件を置いた給与例を区別し,個人の切替月を採用年数だけから断定しないことが必要である。
第3 年収,ボーナス及び手取りの見方
1 年収に含めるもの
年間の支給総額を把握するには,各月の俸給と諸手当の支給額を合計し,さらに期末・勤勉手当を加える。
検察庁は,期末・勤勉手当のほか,通勤手当及び住居手当等の支給があると説明している。
前記Q&AのQ19(PDF14頁)には,扶養手当,地域手当等の案内も掲載されている。
したがって,俸給月額を12倍した金額だけでは,ボーナスや諸手当を含む年収にはならない。
一方,住居手当等には支給条件があるため,全員が全ての手当を上限額まで受け取ることを前提に年収を計算することもできない。
採用初年度については,在職期間等によって期末・勤勉手当の支給額が変わるため,通年勤務の支給例をそのまま初年度の年収として扱わないことが必要である。
年収を計算するときは,まず各月の支給内容を確認し,月ごとの俸給と対象となる手当を合計した後,その年に支給される期末手当・勤勉手当を加える。
考え方は,①1月から12月までの各月の俸給・諸手当の合計,②期末手当,③勤勉手当,という順である。
月ごとの額が変わる場合は,年末の月額を一律に12倍する方法では正確にならない。
採用日,昇給・昇格,俸給表の切替え,勤務地や扶養関係等の変更がある場合は,該当する月からの額を分けて集計する必要がある。
初年度を調べる場合は,入庁後12か月分の支給総額と,その年の1月から12月までの支給総額のどちらを求めているかも区別すると理解しやすい。
2 手取り額との違い
手取り額は,支給総額から税金及び社会保険料等の控除を差し引いた額である。
控除額は扶養関係等の条件によって変わるため,公表された俸給月額だけから個人の手取り額を確定することはできない。
生活費の見通しを立てるときは,毎月の支給額と控除額,家賃や通勤費の負担,ボーナスの支給時期を分けて確認すると理解しやすい。
3 俸給月額を12倍した額と年収の違い
検察庁Q&Aの令和8年1月を基準とする大卒の給与例(3月大学卒業・4月入庁の場合)を,仮に同じ俸給月額が12か月続くものとして計算すると,次のようになる。
これは俸給部分だけの単純計算であり,実際の採用初年度又は2年目の年収を示すものではない。
| 資料にある大卒の例 | 俸給月額 | 月額×12か月(賞与・諸手当を含まない) |
|---|---|---|
| 採用1年目・行政職俸給表(一)1級25号俸 | 232,000円 | 2,784,000円 |
| 採用2年目・公安職俸給表(二)1級24号俸 | 268,000円 | 3,216,000円 |
実際の年間支給額には,支給条件を満たす地域・住居・通勤等の手当及び期末・勤勉手当等が加わり,年の途中で昇給や俸給表の変更があれば月額も変わる。
採用年の在職期間と賞与の扱いを確認せず,上の計算額を「初年度の年収」と断定するべきではない。
出典:検察庁Q&A,Q18・Q19(PDF実頁13・14頁)。
4 job tagの年収は検察事務官だけの平均か
厚生労働省のjob tag「検察事務官」は,統計データを「その他の法務の職業」等の職業分類に対応する情報と説明し,必ずしもその職業のみの統計を表すものではないと注意している。
ページの職業名だけで,表示された年収を検察事務官だけの平均年収と断定するのは適切でない。
自分の給与を考える場合は,検察庁の俸給表・級・号俸,勤務地及び手当の条件を基に確認する必要がある。
第4 裁判所事務官の初任給と比較するときの注意
裁判所「採用Q&A」は,令和8年4月1日現在の一般職試験採用者の初任給として,大卒程度区分27万8400円,高卒者区分24万360円を示している。
ただし,いずれも東京都特別区内に勤務する場合の例である。
検察庁Q&Aの俸給月額と,この勤務地を前提にした初任給の額を,条件の確認なしに並べて優劣を判断すべきではない。
両資料の大卒程度の例は行政職俸給表(一)1級25号俸,高卒の例は同表1級5号俸である。
比較の際は,まず同じ俸給表・級・号俸かを確認し,次に地域手当等を含む金額かどうか,採用後の適用俸給表や勤務条件がどう変わるかを調べることが必要である。
仕事内容,採用手続及び異動の違いは,検察事務官と裁判所事務官の違いも参照されたい。
第5 昇進と採用前に確認したい事項
検察事務官には,捜査公判部門,検務部門及び事務局部門のそれぞれに上位の役職への昇進があり,部門間の異動や昇進もある。
一定の受験資格に達して試験に合格することによる副検事・検事への道もあるが,通常の昇進と,検察官として任用されるための資格・選考は別の問題である。
詳細は,副検事とは及び副検事の選考資料を参照されたい。
採用前には,①自分の学歴・職歴を前提にした初任給,②勤務地と地域手当,③住居・通勤等の手当の支給条件,④公安職への移行時期,⑤採用初年度の期末・勤勉手当の扱いを,志望する検察庁に確認することが有用である。
職務の全体像は,検察事務官の仕事内容・権限・採用にまとめている。
採用を検討する段階で給与条件を確認する場合は,試験の受験資格と,志望庁の採用対象区分・面接の手続も併せて確認することが必要である。
確認先と手続の順序は,検察事務官になるにはを参照されたい。
宿直・休日勤務,部署ごとの仕事の負担及び育児等との両立を調べる場合は,検察事務官の仕事はきつい?―勤務時間,宿直・休日勤務と向いている人(AI作成)を参照されたい。
第6 出典
① 検察庁「検察事務官の勤務条件」(令和8年6月18日更新)
② 検察庁公表「検察庁Q&A」Q18・Q19(PDF13頁~14頁。給与例の基準は令和8年1月)
③ 裁判所「採用Q&A」「給与,休暇及び福利厚生について」(給与額の基準は令和8年4月1日)
④ 名古屋地方検察庁「検察事務官について」(令和8年6月16日更新)掲載の2026年度若手職員資料,PDF2頁「給与」。地域手当を含む例である。
厚生労働省 job tag「検察事務官」,「労働条件の特徴」内の統計データの説明・注意書き(令和8年10月14日確認)。