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契約書審査の修正コメントの書き方―相手方への説明,社内確認及び最終版のチェック(AI作成)

第1 修正コメントは何を伝えるものか

契約書審査の修正コメントは,条文を書き換えた理由と,次に判断すべき事項を相手に伝えるためのものである。修正履歴だけを送っても,何を守ろうとしているのか,どこまで譲歩できるのか,事実確認が必要なのかが伝わらなければ,交渉は進みにくい。

契約書本文,相手方に送る説明,社内だけで共有する判断資料を使い分ける。社内の予算上限,交渉上の最低条件,未解決の法的懸念,顧客や担当者の個人情報を,相手方へのコメントにそのまま残してはならない。

本稿は企業間の日本語契約を中心に,審査結果を交渉と締結の作業につなぐ方法を整理する。契約書審査全体の順序は,契約書審査の進め方とチェックポイントを参照されたい。

第2 修正理由を書く前に確認すること

1 前提事実と問題点を分ける

例えば,「納期が短すぎる」という評価だけでは,相手方は必要な日数を判断できない。部品調達に何日を要するのか,仕様の確定日がいつか,発注者の資料提供がいつまでに必要かを確認し,条文がその工程に合っていないことを説明する。

未確認の前提は断定しない。「営業担当者に確認したところ」などの情報源と,確認が必要な事項を社内資料に残す。相手方への説明では,合意に必要な範囲で事実と確認事項を示す。

2 変更の必要性と交渉の優先順位を決める

同じ修正履歴でも,適用法令との整合を確保する変更,取引の前提を明確にする変更,事業上受け入れられないリスクを下げる変更,単なる表現整理では重要度が違う。社内で優先順位を決め,全部の修正を同じ強さで要求しない。

法令違反を理由にする場合は,具体的な条文と適用条件を確認する。「不利だから違法」「当社のひな型と違うから無効」といった説明は避ける。修正に応じてもらえない場合の判断は,契約書を修正できないと言われたらで整理している。

第3 相手方へのコメントの基本形

1 事実,支障,提案及び確認事項をつなぐ

相手方へのコメントは,取引上の前提,現行条文では生じる具体的な支障,修正案が支障をどう解消するか,必要な回答という順に組み立てる。すべてを長文にする必要はなく,争点に応じて必要な要素を残す。

要素書く内容
前提誰が何を行い,どの時点でどの情報が確定するか
支障現行条文だと,どの場面で実行できない,又は負担が過大になるか
提案変更する文言と,実現したい取引の状態
確認事項相手方に確認してほしい事実,代案の可否,又は回答期限

2 仕様変更のコメント例

以下は書き方を示す架空の例であり,個別案件にそのまま使用する条項ではない。

「追加機能の実装には,既存の仕様とは別の作業が必要になります。現案では追加作業も当初代金に含まれるように読めるため,追加費用と納期への影響を評価し,双方の書面合意後に着手する形に修正しました。緊急変更の場合の承認者と回答期限について,御社の運用を御確認ください。」

このコメントは,追加作業の存在,代金との関係,合意前の着手を避ける理由,運用上の確認事項を区別している。ただし,具体的な変更手続は契約書本文又は合意した別紙に定める。コメントだけに条件を残したまま,本文を整えずに締結しない。

変更管理の具体的な項目は,システム開発の仕様変更と追加費用を参照されたい。

3 損害賠償上限のコメント例

「本件の対価と当社の保険による対応範囲を踏まえ,損害賠償の上限を設ける案を提示しています。他方,故意・重過失など,上限の対象から除外する事由は別に協議したいと考えています。秘密保持違反も除外対象とする御提案については,対象情報,想定する損害及び保険の対象範囲を確認した上で回答します。」

これは上限額や除外事由が常に適切だという意味ではない。損害の範囲,責任主体,請求の根拠,上限の単位,例外及び保険の支払条件を確認する。交渉のために実在しない保険加入や社内決裁の事実を記載しない。

第4 社内コメントと相手方コメントを混ぜない

1 社内では選択に必要な情報を残す

社内向けには,修正できない場合の具体的な損失,起こり得る条件,回避策,実行責任者,判断期限を残す。法務が契約にコメントした事実と,事業部や決裁者が残るリスクを理解して引き受けた事実は異なる。

社内で残す事項記録の仕方
リスクの内容「責任が重い」だけでなく,事故の場面と負担する費目を記す
残る前提資料提供の予定,保険回答待ち,技術担当者の未回答などを記す
代案の条件金額上限,別紙締結,実行担当者及び実施期限を記す
判断判断者,選択した案,留保条件及び再検討する条件を記す

2 送信前にコメントの読者を確認する

社内だけのコメントを削除した相手方送付用ファイルを別に作り,本文,変更履歴,コメント,添付資料を確認する。単に画面上でコメントを非表示にしただけでは,ファイル内から削除されたとは限らない。使う編集ソフトの機能に応じて,実際に送信するファイルを開き直して確認する。

相手方から戻ったファイルにも,こちらが想定していない修正やコメントが含まれ得る。こちらの修正箇所だけを確認して,最終版全体の比較を省略しない。

第5 コメントのやり取りを交渉記録につなぐ

1 論点ごとに採否と残る条件を整理する

コメントの削除は,論点の解決と同じではない。採用,不採用,代案採用,事実確認待ちを区別し,最終条文又は別紙のどこに合意が反映されたかを記録する。

覚書や別紙で調整する場合は,本体契約と対象取引を特定し,矛盾した場合の適用関係を明らかにする。権限のある当事者が合意したかも確認する。担当者のメールだけで,本体契約の責任制限や変更手続が当然に変更されたと考えない。

2 版を特定し,合意した条件を回収する

ファイル名,作成日,又は管理番号で各版を特定し,送付した版と戻った版を比較する。修正コメントに「別紙で定める」と書いたなら,別紙が完成していることまで確認する。締結予定の版について,未回答のコメントと空欄を一覧にする。

AIで比較や説明案の作成を補助する場合も,入力できる情報の範囲と契約上の許可を先に確認する。AIの出力を採用した理由,前提事実との一致及び最終条文の整合性は人が確認する。AI契約書レビューの実機テストも参照されたい。

第6 締結前に行う最終チェック

最終チェックでは,交渉中に解決したはずの条件が,締結用の本文と添付資料に反映されているかを確認する。文字の修正だけでなく,その変更が他の条項に与える影響を追う。

確認対象確認する内容
定義・当事者名称,対象サービス及び当事者の役割が各条項で一致しているか
条番号・参照先削除や挿入により,参照条項,別紙番号又は目次がずれていないか
期間有効期間,更新,中途終了及び終了後の義務の関係が整っているか
責任損害賠償,補償,解除時の精算及び秘密保持の例外が矛盾していないか
別紙仕様,料金,納期,検収条件及び運用手順の最終版がそろっているか
合意・署名未回答の論点,空欄,社内承認及び締結権限を確認したか

締結後は,更新や通知の期限,検収担当者,変更の承認者などを実行担当者に引き継ぐ。審査担当者の手元だけに確認表を残すと,契約上の権利を使う時期を逃し得る。

第7 参考資料

松尾剛行『実務の落とし穴がわかる!契約書審査のゴールデンルール30』(学陽書房,2024年)12~41頁,182~189頁。取引の目的とリスクを踏まえた審査,事業部との対話,交渉及び最終チェックの考え方を参照した。上記のコメント例と表は,その考え方を踏まえた本稿の整理である。

契約の成立と方式,契約の自由については,民法521条・522条を参照されたい。個別の修正が必要かどうかは,その取引に適用される法令と前提事実に即して判断する。