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共同運行供用者は自賠法3条の「他人」として請求できるか―同乗所有者・運転交代・運転代行の判断基準(AI作成)

一台の自動車について,所有者,借主,使用権者,運転者又は運転代行業者など複数の者が運行供用者となることがある。このうち事故で死傷した者が,他の運行供用者に対して自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条の「他人」として請求できるかは,運行供用者であるかどうかとは別の問題である。

本記事は,非同乗の所有者,同乗する所有者・使用権者,運転交代及び運転代行を分け,誰に対して「他人」といえるかを検討する順序を整理する。調査基準日は令和8年9月27日である。

第1 結論

1 相手ごとに他人性を判断する

被害者が共同運行供用者であっても,すべての相手に対して一律に自賠法3条の「他人」でなくなるわけではない。被害者と請求相手との二者関係ごとに,具体的運行に対する支配の程度,事故防止の中心的責任及び運行利益を比較する。

したがって,「被害者も運行供用者だから自賠法請求はできない」,又は「同乗していたから被害者である」とだけ結論づけるのは危険である。

2 運転者に対する民法上の請求は別である

被害者がある相手との関係で自賠法3条の「他人」に当たらなくても,運転者の故意又は過失に基づく民法709条の請求まで当然に否定されるわけではない。自賠法3条請求,民法709条請求及び保険請求を分けて整理する。

第2 自賠法3条の「他人」

1 条文上の位置付け

自動車損害賠償保障法3条は,自己のために自動車を運行の用に供する者が,その運行によって「他人」の生命又は身体を害した場合の責任を定める。

運行供用者及び自賠法上の運転者は,原則としてその具体的運行との関係では「他人」に含まれない。ただし,複数の運行供用者がいるときは,形式的な地位だけでなく,相互の運行支配の程度を比較する判例法理が形成されている。

2 所有者・使用権者・運転者を区別する

立場主な確認事項注意点
所有者車両の処分・貸与・返還請求,鍵の管理非同乗でも運行供用者となり得る
使用権者・借主利用目的,期間,経費,行先・運転者の決定所有者より具体的な支配を持つことがある
実際の運転者運転操作,交代の経緯,誰の指示に従ったか自賠法上の「運転者」と民法上の責任を区別
同乗者所有・使用権,指示可能性,事故防止責任単なる同乗か共同運行供用者かを確認
運転代行業者契約,業法上の地位,運転の全面的引受け依頼者との関係で中心的責任が移る場合がある

第3 非同乗の所有者と車内の使用者

1 直接性・顕在性・具体性の比較

最高裁判所第三小法廷昭和50年11月4日判決(昭和49年(オ)第1035号,民集29巻10号1501頁)は,複数の運行供用者がいる場合に,一方の運行支配が間接的・潜在的・抽象的であるのに対し,他方の運行支配と運行利益が直接的・顕在的・具体的であるとき,後者は前者に対して「他人」であることを主張できないとした。

典型例は,所有者から一定期間車を借り,同行者と運転を交代しながら旅行していた使用者が事故で負傷した場合である。車外の所有者よりも,車内で旅行を企画・実行していた使用者の支配と利益が具体的であれば,使用者から所有者への自賠法3条請求は認められにくい。

2 非同乗所有者の責任と被害者の他人性は別の段階である

最初に,非同乗所有者が当該運行について運行供用者かを判断する。次に,被害者も運行供用者である場合,所有者との関係で被害者が「他人」といえるかを判断する。二段階を混同しないことが重要である。

第4 所有者・使用権者が同乗している場合

1 事故防止の中心的責任

最高裁判所第二小法廷昭和57年11月26日判決(昭和55年(オ)第1121号,民集36巻11号2318頁)は,所有者が第三者に運転を委ねて同乗している場合,所有者は運転交代を命じ,又は運転に具体的な指示をすることができ,事故防止について中心的な責任を負うため,特段の事情がない限り,その第三者に対する関係で「他人」に当たらないとした。

同乗して眠っていた,酔っていた,又は現実には指示をしなかったというだけで,当然に中心的責任から離れるわけではない。運転を委ねた経緯,運転者との関係,指示・交代の可能性及び危険の認識を確認する。

2 特段の事情

急病により運転を継続できず,代わった運転者が所有者の制止や減速指示に従わなかった場合,強盗等により車両を奪われた場合その他,所有者が事故防止の中心的責任を現実に果たせなかった事情は,他人性を肯定する方向に働く。

ただし,「体調が悪かった」「任せていた」といった抽象的説明では足りない。発症時刻,症状,交代要請,指示内容,運転者の応答及び運行継続の必要性を裏付ける。

第5 運転代行を利用した場合

1 最高裁平成9年10月31日判決

最高裁判所第二小法廷平成9年10月31日判決(平成5年(オ)第1989号,民集51巻9号3962頁)は,運転代行業者が自動車を使用する権利を有する保有者に当たるとした上で,飲酒した使用権者が交通事故の危険を避けるため専門の運転代行業者に運転を依頼し,代行業者が危険の管理を全面的に引き受けたという事情の下で,依頼者を代行業者及び代行運転者との関係で「他人」と認めた。

この判断は,知人や同乗者への単なる運転交代にそのまま及ぶものではない。運転代行契約,業者性,第二種免許,代行保険,随伴車,業務としての危険引受け及び依頼者の指示可能性を確認する。

2 依頼者の運行供用者性と他人性

運転代行を依頼した者が自動車の使用権を失わず,運行供用者であるとしても,代行業者との関係では「他人」となり得る。運行供用者性の有無と,他の運行供用者に対する他人性の有無を別々に判断する代表例である。

第6 親所有車を子が友人に運転させた場合

1 車外所有者・車内使用者・運転者の三者を分ける

最高裁判所第二小法廷平成20年9月12日判決(平成19年(受)第1040号)は,父が使用を認めていた車を子が運転して外出し,飲酒後に友人が子を乗せて運転した事案で,父を当該運行の運行供用者とした。

差戻審である名古屋高等裁判所平成21年3月19日判決は,父,子及び友人の各関係について他人性を検討した。このような事案では,父に対する請求,実際の運転者に対する請求及び相手方車両側への請求を一括せず,請求相手ごとに法的根拠と過失相殺を整理する必要がある。

2 自賠法請求が否定されても不法行為請求を確認する

実際の運転者との関係で被害者の他人性が否定される場合でも,運転者に運転上の過失があれば民法709条の請求を検討する。ただし,被害者が飲酒運転を容認・誘発した,危険を知りながら運転を委ねたなどの事情は,過失相殺又は損害額の調整で問題となる。

第7 請求関係を一枚の表にする

1 当事者別の整理

請求相手自賠法3条民法上の請求保険・資料
車外所有者運行供用者性と相対的他人性民法709条等自賠責・対人賠償
車内使用者共同運行供用者性と他人性共同不法行為等他車運転特約等
実際の運転者運行供用者又は運転者との関係民法709条運転者の保険
運転代行業者保有者・運行供用者性契約・使用者責任等代行保険
相手方車両側通常の運行供用者責任運転者の不法行為責任相手車自賠責・任意保険

2 既払金と過失相殺

複数の自賠責保険,任意保険又は加害者から支払があるときは,支払日,支払者,受領者,名目,対象損害及び充当関係を一覧にする。他人性の判断と,危険への関与を理由とする過失相殺は別の論点である。

第8 証拠チェックリスト

1 権利と支配

①車検証,売買契約,貸借の合意及び返還予定。
②鍵の保管・交付,使用期間,行先及び目的。
③燃料費,高速料金,駐車料,保険料等の負担。
④誰が運転者,経路,出発・帰着時刻を決めたか。
⑤運転交代を命じ又は具体的に指示できたか。

2 事故防止責任

①飲酒,疲労,眠気,病気及び免許の状況。
②交代を求めた理由と時刻。
③所有者・使用者から運転者への指示と応答。
④運転代行の受付記録,契約,領収書及び業者資料。
⑤ドライブレコーダー,車内録音,位置情報及びメッセージ。

第9 出典と調査範囲

1 一次資料

①自動車損害賠償保障法2条~4条。
②最高裁判所第三小法廷昭和50年11月4日判決(昭和49年(オ)第1035号,民集29巻10号1501頁)。同判決の比較基準を適用した最高裁判所第二小法廷判決も確認した。
③最高裁判所第二小法廷昭和57年11月26日判決(昭和55年(オ)第1121号,民集36巻11号2318頁)。
④最高裁判所第二小法廷平成9年10月31日判決。
⑤最高裁判所第二小法廷平成20年9月12日判決(判例秘書L06310078)及び名古屋高等裁判所平成21年3月19日差戻審判決。

2 実務資料と検索範囲

日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準』講演録編2010の実PDF75頁から89頁までを参照した。講演録の設例回答又は講師見解は,判決そのものではないため,記事では判例法理と区別した。

判例秘書では令和8年9月27日,「共同運行供用者 AND 他人」で民事判例を検索し,86件が表示された。これは語句一致件数であり,他人性を肯定又は否定した裁判例の全件数を示すものではない。