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交通事故による退職で失った退職金差額の請求―因果関係,勤続継続の蓋然性及び立証資料(AI作成)

◯本ブログ記事は専ら,AIで作成したものです。

第1 退職金差額とは何か

交通事故による傷害又は後遺障害のために退職し,事故がなければ将来受け取ることができた退職金より実際の退職金が少なくなった場合,その差額を損害として請求することがある。

もっとも,退職した事実だけで差額全額が認められるわけではない。事故と退職との相当因果関係,事故がなければ基準時まで勤続した蓋然性,その場合の退職金額及び現実に受領した退職金額を具体的に立証する必要がある。後遺障害逸失利益との重複にも注意する。

第2 請求が認められるための三段階

1 事故が退職の原因であること

診断書上の就労制限,復職の試み,休職期間,配置転換の検討,事業主との面談,退職勧奨又は退職届の理由などから,事故と退職との因果関係を示す。自己都合退職という形式だけで決まるものではないが,事故と無関係な転職希望,人間関係又は会社の経営事情が併存するときは,原因を分けて検討する。

2 事故がなければ勤続した蓋然性があること

定年まで必ず在職したと仮定するのではなく,事故前の勤続年数,年齢,職種,勤務成績,雇用の安定性,過去の転職歴,会社の存続可能性,定年制及び再雇用制度の実態を確認する。役員就任又は昇進を前提にする場合は,その実現可能性を別に立証する。

3 差額を合理的に算定できること

就業規則又は退職金規程の計算式,将来の基本給・等級・勤続年数,自己都合・会社都合・定年の各支給率,既払額及び支給時期を確定する。将来受領するはずだった額を現在受領する場合には,中間利息控除が必要になる。

第3 肯定・否定の方向に働く事情

肯定方向否定・減額方向
長期勤続,正規雇用,定年制と退職金規程が明確,事故前の勤務が安定,復職努力をしたが医学的に困難,会社が将来額を証明短期勤続,転職歴,会社又は制度の継続が不確実,役員就任・昇進が未確定,退職理由が事故以外,算定の基礎となる給与・支給率が未確定

2012年版赤い本講演録の裁判例一覧は,退職金差額をめぐる多数の下級審を比較し,勤続年数,退職時年齢,勤務先の規模・安定性,定年まで勤務する蓋然性及び退職金規程の確実性が判断を分けることを示している。ただし,同講演録は2012年当時の公刊裁判例を素材とするもので,現在の裁判例を網羅するものではない。

第4 判例秘書で本文を確認した裁判例

1 東京高裁平成22年10月28日判決

JR東日本の従業員が死亡した事案で,約13年の勤続,毎年の定期昇給,大手企業であること,60歳定年及び再雇用制度の利用実態などを踏まえ,退職金の損害276万7232円を認めた。事故がなければ一定時点まで勤続した蓋然性と金額の基礎が比較的明確であった肯定例である。

2 東京地裁令和5年2月21日判決

将来の取締役報酬及び退職慰労金との差額が請求された事案で,将来取締役に選任されたか,会社の事業が継続したか,報酬・退職慰労金がいくらになったかが不確実であるなどとして,請求を認めなかった。裁判所が逸失利益について大学卒全年齢平均賃金を基礎にしたこととの関係も指摘されている。

この対比から,給与所得者の規程に基づく退職金と,将来の役員就任や会社業績に左右される退職慰労金は,予測可能性が大きく異なることが分かる。

第5 計算方法

基本的な考え方は,次のとおりである。

事故がなければ基準時に受領したと見込まれる退職金の事故時現在価値-現実に受領した退職金=退職金差額

実際には,現実の退職金をいつ受領したか,将来退職金をいつ受領する想定か,事故時又は症状固定時のどちらに割り戻すか,事故後に別の勤務先で退職金を得る見込みがあるかを確認する。税引前・税引後のどちらを比較するかについても,請求書と証拠の前提を統一する。

後遺障害逸失利益に賃金センサスを用いる場合,退職金相当分が基礎収入に含まれるか,又は別途計上すると重複するかが争点になり得る。差額請求の対象期間・原因と逸失利益の対象期間・基礎収入を対照し,二重計上を避ける。

第6 立証資料

  • 就業規則,退職金規程,労働協約及び改定履歴
  • 在職証明書,給与明細,源泉徴収票,人事評価,昇給・昇格履歴
  • 会社作成の退職金計算書及び「事故がなければ」の試算書
  • 退職届,退職証明書,休職・復職・配置転換に関する書類
  • 診断書,主治医意見書,産業医意見書及び職場との面談記録
  • 会社の定年制・再雇用制度と実際の利用率を示す資料
  • 現実に支給された退職金の支給通知・入金記録

会社に試算を依頼するときは,「現在退職した場合」だけでなく,事故前の等級・昇給実績を前提に,定年時又は合理的な退職想定時点の計算根拠を記載してもらうことが重要である。

第7 実務上の注意

退職金差額は,将来の勤続と制度の存続を前提にするため,長期間になるほど不確実性が増す。請求額を一つだけ示すのではなく,定年時,早期退職時,再雇用終了時など合理的な複数のシナリオを示し,どの事実が結論を左右するかを明確にするとよい。

また,退職の前に,休職制度,傷病手当金,障害年金,労災保険,合理的配慮,配置転換及び短時間勤務の可能性を確認する。これは損害額を減らすためだけではなく,被害者の雇用と生活基盤を維持するためにも重要である。

第8 調査範囲と出典

2026年9月27日に判例秘書で「退職金差額 AND 交通事故」を検索した結果は38件であり,上記東京高裁平成22年10月28日判決(L06520830)及び東京地裁令和5年2月21日判決(L07830612)の本文を確認した。38件全部の本文を精査したものではなく,非公刊裁判例,和解及び他データベースの収録範囲は不明である。

①公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2012年版』PDF実ページ19頁~38頁(講演「交通事故による退職と退職金差額」)
②東京高等裁判所平成22年10月28日判決(判例秘書L06520830)
③東京地方裁判所令和5年2月21日判決(判例秘書L07830612)