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生成AIの利用料が予算を超えないために―従量課金の約款で確認する5項目と社内規程の定め方(AI作成)

第1 本記事の対象

1 予算超過が起きている場面

日本経済新聞の令和8年9月10日の記事は,複数の大規模言語モデルを選べる企業向けAIサービスを使う日用品メーカーで,月々の予算を約200万円超過する状態が令和8年4月から6月まで続いたと報じている。
同じ記事は,同社の契約では利用量が一定の範囲に収まれば定額で済むが,超えると超過分が加算される仕組みであり,利用量の上限が個人単位ではなく企業単位で決まっていたこと,発行アカウント数の1%にも満たない利用者が利用量の8割近くを占めていたことも報じている。
同じ記事は,採用書類の点検にAIを使っていた会社で,半月ほどで1か月分の予算を使い切ってAIが使えなくなった例も紹介している。
これらは報道による事例であり,本記事では当事者の公表資料までは確認していない。

株式会社LayerXが令和8年6月30日に公表した調査(同年6月12日~13日,AI利用コストを管理・把握している担当者400名へのインターネット調査)では,会社全体の月間のAI利用コストの平均は約274万円であり,73.3%が,AI利用コストが既に経営課題になっている又は1年以内に経営課題になると回答している。

2 本記事の範囲と基準日

本記事は,会社が事業のために契約する生成AIサービスについて,利用料が予算を超えないように契約の段階で確認すべき事項と,社内規程で定めておくべき事項を整理するものである。
社員が使いすぎた場合に本人へ負担を求めることができるかは,社員のミスやAIの使いすぎで会社が損害を受けたとき,本人に請求できるか―茨石事件・福山通運事件と労働基準法16条・24条で扱っている。
料金の体系と規約は短い期間で変わるため,本記事の記載は令和8年9月13日時点で各社の公表資料を確認した結果である。

第2 料金の型と利用料が膨らむ仕組み

1 従量課金と利用上限付きの定額

(1) 従量課金

API(プログラムから生成AIを呼び出す方式)の利用料は,入力と出力のトークン(AIが文章を処理する単位)の量に単価を掛けて計算するのが一般的である。
Anthropicの料金表は,モデルごとに100万トークン当たりの入力単価と出力単価を示しており,例えば同社のClaude Opus 5は入力5ドル,出力25ドルである。
このように使った分だけ課金される方式では,利用が止まらない限り利用料も増え続ける。

(2) 利用上限付きの定額と追加利用

利用者ごとの定額プランでは,一定の利用量の上限が設けられていることが多い。
Anthropicの料金ページは,同社の有料プランの利用量を5時間ごとの枠で管理し,有料プランには週ごとの上限もあるとしている。
同社のヘルプセンターによれば,上限に達した後も使い続けるには利用者が設定画面で追加利用(usage credits)を有効にする必要があり,その利用分は標準のAPI単価で課金される。
つまり,定額プランでも,追加利用を有効にした時点で従量課金に移ることになる。

GitHubは,令和8年6月1日から,GitHub Copilotの全プランを利用量に応じた課金に移し,各プランに月ごとの込みの利用枠を設けた上で,込みの枠を使い切ったときに安価なモデルへ切り替わる仕組みを廃止したと公表している。
定額の範囲で使えると考えていたサービスでも,提供者の方針で課金の方式が変わることがある。

2 利用料が膨らむ仕組み

(1) 出力と思考の課金

Anthropicの料金表では,現行のモデルはいずれも出力の単価が入力の単価の5倍である。
同社の技術文書によれば,モデルが回答の前に行う思考(推論)の分も出力トークンとして課金され,同社の一部のモデル(Claude Opus 4.5及びClaude Opus 4.6以降の世代のモデル)では,前のやり取りの思考の内容が次のやり取りで入力として再び課金される。
長い会話を続けると,過去のやり取りを読み直す分だけ入力が増える。

(2) 自律的に動く使い方

同じ質問をしても,AIエージェント(自律的に作業を進める仕組み)に長時間の作業をさせると,AIが自分で何度も呼び出しを繰り返すため,利用量は大きくなる。
日本経済新聞の令和8年6月9日の記事は,国内の大手企業で,社員1人がAIエージェント同士に夜通し会話をさせるなどの作業を繰り返し,5月だけで1000万円を使っていたと報じている。
また,Anthropicは,同社のClaude Opus 4.7以降のモデルで使うトークナイザー(文章をトークンに分ける方式)が,同じ文章から約30%多くのトークンを生むことがあるとしており,モデルを替えると単価が同じでも利用料が変わり得る。

第3 約款で確認する5項目

1 課金方式と上限の単位

(1) 課金方式

最初に確認するのは,契約するプランが従量課金か,利用上限付きの定額か,定額の枠を超えると従量で加算される方式かである。
同じ提供者でも,個人向けの定額プラン,組織向けの席単位のプラン,API契約で方式が異なることがある。

(2) 上限を設定できる単位

次に,利用量や支出の上限を,組織全体でしか設定できないのか,部署や利用者ごとに設定できるのかを確認する。
第1の1の日用品メーカーの例は,上限が企業単位でしか決まっていなかったため,少数の利用者の使い方が全体の予算を圧迫したものである。
GitHubは,管理者が企業,コストセンター及び利用者の単位で予算を設定できるとしている。
AnthropicのAPIは,組織の月の支出上限を利用区分ごとの上限より低く設定することができ,ワークスペースごとの上限も設定できる。

2 上限に達したときの扱い

上限に達したときに,利用が止まるのか,追加料金で使い続けられるのか,自動的に追加購入されるのかは,提供者とプランによって異なる。
AnthropicのAPIでは,利用区分ごとの月の支出上限に達すると翌月まで利用が止まり,組織が自分で設定した上限に達したときもリクエストが受け付けられなくなる。
GitHubは,込みの利用枠を使い切ったときに,公表単価での追加利用を認めるか支出を上限で止めるかを組織が選べるとしている。
Anthropicの追加利用(usage credits)には,残高が一定額を下回ると自動的に購入する設定もある。

止まる設定にすれば予算を超えることはないが,業務が止まる。
第1の1の採用書類の点検の例のように,月の途中でAIが使えなくなることを避けたい業務では,上限の水準と,上限に近づいたときの通知の宛先を先に決めておく必要がある。

3 予算と通知の機能

管理者が利用状況を確認できる画面があるか,上限に近づいたときに通知が届くか,通知の宛先を変えられるかを確認する。
第1の1の日用品メーカーの例では,利用状況を確認して初めて一部の利用者への偏りが分かっている。
LayerXの調査では,AI利用コストの把握に課題を感じる担当者が82.8%であった。

4 料金と約款の変更

(1) 提供者による変更の予告期間

Anthropicの事業者向け規約(2025年6月17日発効)は,同社が公表した料金を更新でき,更新は公表から30日後又は顧客が通知を受けた時のいずれか早い時点で効力を生ずるとしている(本記事による要約)。
OpenAIのサービス契約(日本語版,2025年12月1日更新)は,料金ページに掲載される価格の変更は掲載日から14日後に有効となるとしている。
変更の予告期間が短い場合,予算の見直しが間に合わないことがあるため,更新の通知を受け取る担当者を決めておくことが考えられる。

(2) 民法の定型約款の規定との関係

日本法が適用される定型約款であれば,約款の変更は民法548条の4の要件を満たす必要がある。
同条1項は,変更が「相手方の一般の利益に適合するとき」(1号),又は契約をした目的に反せず,変更の必要性,変更後の内容の相当性等に照らして合理的なものであるとき(2号)に,個別に合意をすることなく契約の内容を変更できるとしている。
もっとも,Anthropicの事業者向け規約は,欧州経済領域,スイス及び英国以外の顧客についてカリフォルニア州法を準拠法とし,同州の裁判所を管轄としているため,民法の規定がそのまま適用される場面ばかりではない。
また,会社が事業のために契約する場合は,消費者契約法の「消費者」に当たらない(同法2条1項)。

5 アカウントでの利用の責任

Anthropicの事業者向け規約は,顧客のアカウントでの全ての利用について顧客が責任を負い,アカウントが侵害されたと考えるときは速やかに同社に通知するとしている(本記事による要約)。
OpenAIのサービス契約も,アカウントの認証情報を複数の利用者で共有しないこと及び不正アクセスを認識した場合に速やかに通知することを顧客に求めている。
APIキー(APIを呼び出すための鍵)が漏れて第三者に使われた場合の利用料も,これらの規定の下では原則として顧客の負担になると考えられる。
APIキーの管理者と,漏洩が疑われるときの停止手順も,契約の段階で決めておくことが考えられる。
漏洩した鍵で第三者に使われた分の利用料を争うことができるかは,生成AIやクラウドの高額な利用料の請求を争えるか―ダイヤルQ2事件の最高裁判決の射程と下級審の裁判例で扱っている。

第4 社内規程で定める事項

1 規程の位置付け

生成AIの利用ルールを全社員に適用する場合,常時10人以上の労働者を使用する事業場では,就業規則に定めるか,就業規則から委任した規程として定めることになる(労働基準法89条10号参照)。
規程に違反した場合に懲戒をするのであれば,懲戒の種類及び事由を就業規則に定めておく必要があり(同条9号参照),懲戒の有効性は労働契約法15条により判断される。

2 定めておく事項

(1) 利用の枠組み

①会社が契約した公認のサービスと,業務で使ってよい範囲を定める。
②利用者ごとの利用上限と,上限に近づいたときの通知及び相談先を定める。
③作業の重さに応じて使うモデルの目安を示す(簡単な作業に最上位のモデルを使わない)。
④長時間の自律稼働や最上位モデルの常用など,利用料が高額になりやすい使い方を事前承認の対象にする。

(2) 運用と点検

①管理者が月ごとに利用状況を確認し,突出した利用者には使い方を確認する。
②利用量そのものを人事評価の指標にしない。
③社員が個人で契約したサービスの利用料を立て替えて精算する運用があるかを把握する。

日本経済新聞の令和8年6月6日の記事は,米国のアマゾンで,AIの使用量が多い技術者をたたえる順位表が作られ,本来は不要な用途にAIを使う例もあったことから,幹部の指示で取りやめになったと報じている。
LayerXの調査では,AI利用コストの管理上の課題として従業員が個人で立て替えた分の把握を挙げた担当者が25.1%あり,個人の契約で業務の情報を扱う経路にもなるため,運用と点検の③を置く意味がある。

3 定めてはならないこと

「上限を超えた利用料は本人の負担とする」のように,社員の負担額をあらかじめ決めておく定めは,損害賠償額の予定を禁止する労働基準法16条に反するおそれがある。
利用料を給料から一方的に差し引くことも,賃金の全額払を定める同法24条1項により原則としてできない。
いずれも,第1の2に掲げた記事で扱っている。

4 全面的な禁止は避ける

利用料が膨らむことを理由に生成AIの利用を全面的に禁止すると,社員が会社の認めていないサービスを業務に使うおそれがある。
日本経済新聞の令和8年9月10日の記事も,AIの利用を制限することは,会社が認めていないAIサービスの無断利用を招き,機密情報の漏洩につながりかねないとする専門家の説明を紹介している。
この問題は,シャドーAIの問題点――営業秘密,個人情報保護法及び懲戒処分をめぐる法的枠組みで扱っている。

第5 関連する山中弁護士ブログの記事

生成AIやクラウドの高額な利用料の請求を争えるか―ダイヤルQ2事件の最高裁判決の射程と下級審の裁判例は,生成AIやクラウドの利用料が高額になった場合に,サービス提供者の請求を争うことができるかを,ダイヤルQ2事件の最高裁判決とその後の下級審の裁判例に沿って扱っている。

総務省「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」(令和8年3月公表)――対象・脅威・対策と実務上の限界は,攻撃によって利用量を急増させる脅威と,支出上限の設定を扱っている。

米国のフロンティアAI規制-Claude Fable 5・Mythos 5停止,大統領令14409,FRONTIER Act及びコロラド州法は,外国の規制によるモデルの提供停止と,再提供後の定額プランでの扱いの変化を扱っている。

第6 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索「民法」548条の2~548条の4
e-Gov法令検索「消費者契約法」2条1項
e-Gov法令検索「労働基準法」16条,24条及び89条
e-Gov法令検索「労働契約法」15条

2 事業者の規約・公表資料

①Anthropic「Commercial Terms of Service」(2025年6月17日発効。D.5,H.1,M.3及びM.7)
②Anthropic「Pricing」(令和8年9月12日確認)
③Anthropic「Rate limits」(Spend limitsの項,令和8年9月12日確認)
④Anthropic「Extended thinking」(令和8年9月12日確認)
⑤Anthropic「Pricing(Claudeの料金プラン)」(令和8年9月12日確認)
⑥Anthropic「Manage usage credits for paid Claude plans」(Claudeヘルプセンター,令和8年9月12日確認)
⑦OpenAI「OpenAI サービス契約」(2025年12月1日更新。3.1及び6.6)
⑧GitHub「GitHub Copilot is moving to usage-based billing」(2026年4月27日)
⑨GitHub「Updates to GitHub Copilot billing and plans」(2026年6月1日)

3 調査・報道

①株式会社LayerX「企業のAI利用・コスト管理に関する実態調査 2026」(令和8年6月30日公表)
②日本経済新聞「AI利用料の予算超過相次ぐ、月200万円超も コスパ意識し活用拡大へ」(令和8年9月10日)
③日本経済新聞「AI浪費、社員1人で月1000万円 企業活用「やってる感」の落とし穴」(令和8年6月9日)
④日本経済新聞「Amazonやウーバー、社員の「AI無駄遣い」抑制 1人月24万円の制限も」(令和8年6月6日)