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最高裁判所裁判官会議(AIリライト)

最高裁判所裁判官会議は,長官及び14人の判事が,最高裁判所の司法行政上の重要事項を合議で決定する機関である。
本記事では,法的根拠,開催方法,審査室会議・事務総局会議との関係,非公開の議事録及び「事務総局案を追認するだけか」という論点を,現行規程,開示議事録及び文献に基づいて整理する。

第1 最高裁判所裁判官会議の位置付け

1 法的根拠と構成

裁判所法12条1項は,最高裁判所が司法行政事務を行うのは裁判官会議の議によるものとし,最高裁判所長官がこれを総括すると定めている。

同条2項によれば,裁判官会議は最高裁判所の全裁判官で組織され,最高裁判所長官が議長となる。
最高裁判所は長官と14人の判事で構成されるため,裁判官会議の構成員は合計15人である。

したがって,最高裁判所の司法行政について制度上の意思決定をするのは,長官単独又は最高裁判所事務総局ではなく,裁判官会議である。
最高裁判所公式HPも,規則制定権及び司法行政権は裁判官会議の議決に基づいて行使され,事務総局は裁判官会議を補佐する機関であると説明している。

裁判所法12条は,e-Gov法令検索「裁判所法」で確認できる。

2 裁判官会議が扱う事項

最高裁判所公式HP「最高裁判所の組織」及び「最高裁判所」によれば,裁判官会議が扱う司法行政上の重要事項には,次のものがある。

  • ① 最高裁判所規則の制定
  • ② 裁判官の補職及び転任等の人事
  • ③ 裁判所の経費見積りを含む予算関係事項
  • ④ 裁判所の組織及び司法行政の運営に関する事項

重要な最高裁判所規則については,規則制定諮問委員会の答申等を踏まえて作成された原案を裁判官会議が審議し,決定する。

3 大法廷との違い

大法廷及び小法廷は,具体的な訴訟事件を審理して裁判をするための裁判体である。

これに対し,裁判官会議は,規則,人事,予算その他の司法行政事務を合議によって決定する機関である。
15人の最高裁判所裁判官が参加する点では大法廷と共通するが,扱う事務の性質が異なる。

第2 招集,議決及び開催の実務

1 招集,定足数及び議決

最高裁判所裁判官会議規程の要点は,次のとおりである。

事項規程の内容
招集最高裁判所長官が招集する(2条)
定期招集毎月1回,定期に招集しなければならない(3条1項)
緊急招集緊急の必要がある場合は随時招集できる(3条2項)
事前通知付議事項は,緊急やむを得ない場合を除き,あらかじめ各裁判官に通知する(4条)
定足数裁判官9人以上の出席を要する(5条)
議決出席裁判官の過半数で決し,可否同数のときは議長が決する(11条)
規程改正出席裁判官の3分の2以上の賛成を要する(14条)

同規程6条は,緊急の必要のため裁判官会議を開けないとき,長官が応急の措置を講じ,遅滞なく裁判官会議の承認を得る制度を設けている。

同規程7条は,裁判官会議の議により,司法行政事務の一部を構成員である1人又は2人以上の裁判官に委任できるとしている。

2 「毎月1回」の規程と「原則毎週水曜日」の運用

裁判官会議規程3条1項が定めるのは,毎月1回という最低限の定期招集である。

これに対し,平成28年度(最情)答申第11号によれば,最高裁判所裁判官会議は昭和38年頃からほぼ毎週1回,原則として水曜日に開催されてきた。

『最高裁回想録―学者判事の七年半』31頁~33頁も,在任当時の裁判官会議が原則として毎週水曜日の午前10時30分から開かれていたと記している。

令和7年7月の開示議事録では,同月2日,9日,16日及び23日の各水曜日に,いずれも午前10時30分から会議が開かれている。
したがって,「規程上は毎月1回」であることと,「実務上は原則毎週水曜日」であることは区別して理解する必要がある。

3 出席者と会議時間

裁判官会議規程9条により,最高裁判所事務総長は会議に出席して意見を述べることができる。
ただし,裁判官会議は,事務総長の出席を拒み,又は退席させることができる。

同規程10条により,裁判官会議は,必要と認めるとき,最高裁判所の裁判官でない者を出席させ,説明又は意見を聴くことができる。
実際の議事録には,議題を担当する事務総局の局長又は課長等が説明した旨が記載されている。

令和7年7月の4回の会議時間は,25分,27分,14分及び50分であった。

『最高裁回想録―学者判事の七年半』32頁~33頁は,通常の会議時間を30分から1時間程度とする。
他方,『最高裁判所は変わったか―裁判官の自己検証』17頁は,会議が午後まで続く場合もあったと記している。

このため,会議は短時間で終わることがあるものの,常に10分程度で終わると一般化することはできない。

第3 審査室会議及び事務総局会議との関係

1 審査室会議

平成28年度(最情)答申第11号によれば,審査室会議は,秘書課長を議長とし,各局課の課長等1人が出席して,司法行政上の事項を議題としておおむね週1回開催される会議である。

同答申によれば,審査室会議の設置又は開催を定める最高裁判所規程等はない。
審査室会議は,局課間の情報交換及び認識の共通を図る機会であり,一定の結論又は司法行政上の意思決定をすることを予定していないため,議事録も作成されていない。

2 事務総局会議

事務総局会議では,事務総長を中心として,裁判官会議に付議する案件の原案及び説明資料等が検討される。
審査室会議と異なり,事務総局会議については議事録が作成されている。

令和7年7月の事務総局会議議事録には,事務総長,各局長,秘書課長兼広報課長,審議官,デジタル審議官及び事務総局参事官等が出席者として記載されている。
欠席者がいる回には,担当課長が代理出席している。

最高裁判所事務総局の現在の局課等は,最高裁判所事務総局分課規程で確認できる。

3 三段階の事前検討

新藤宗幸『司法官僚―裁判所の権力者たち』52頁~54頁は,月曜日の審査室会議,火曜日の事務総局会議,水曜日の裁判官会議という事前検討の流れを説明している。

清永聡『家庭裁判所物語』169頁~179頁も,昭和41年当時の少年法改正問題を素材として,同様の三段階を描いている。
同書によれば,審査室会議及び事務総局会議で了解された資料が裁判官会議の議題に上がらなかったこともあった。

もっとも,この三段階は,裁判所法又は裁判官会議規程が定める固定的な法定手続ではない。
平成28年度(最情)答申第11号及び近年の開示議事録により確認できる運用と,特定の時期を扱う回想又は研究書の記述とを混同しないことが重要である。

第4 裁判官会議は事務総局案を追認するだけか

1 制度上の決定主体

制度上の決定主体は,あくまで裁判官会議である。
事務総局は,資料収集,原案作成,事前調整及び会議での説明を担う補佐機関であり,事務総局会議の結論だけで最高裁判所の司法行政上の意思決定が成立するわけではない。

2 原案が了承されやすい構造

公開議事録には,事務総長,局長又は課長等の説明を受けて「原案どおり決定」又は「了承」したとの記載が多い。

『最高裁判所は変わったか―裁判官の自己検証』17頁及び『最高裁回想録―学者判事の七年半』31頁~35頁も,事務総局等が作成した案が結果として了承されるのが通常であったと記している。

もっとも,『最高裁回想録―学者判事の七年半』31頁~35頁は,その背景として,全国の裁判所に関する人事,予算及び施設の詳細を15人全員が個別に調査することの困難さ,最高裁判所裁判官が裁判事件の処理に負う大きな負担,規則制定諮問委員会等による事前検討を挙げている。
同書は同時に,事務局側が紛議を招きそうな資料を会議に出さない傾向が生じ得ることにも注意を促している。

他方,新藤宗幸『司法官僚―裁判所の権力者たち』77頁~78頁及び195頁並びに『黒い巨塔 最高裁判所』15頁は,事務総局による原案形成と裁判官会議の運営について,形骸化という批判的評価を示している。

したがって,法的な意思決定権が裁判官会議にあることと,情報収集及び原案形成を担う事務総局が実務上大きな影響力を持つことは,分けて評価すべきである。
公開資料だけから,すべての議題について裁判官会議が事務総局案を機械的に追認していると断定することはできない。

3 異論及び不採用決定の例

『一歩前へ出る司法』101頁には,昭和61年9月,調査官を秘書課長へ異動させる人事案が裁判官会議に付議された際,ある最高裁判所判事が,担当事件を持つ調査官を年度途中に異動させることに異論を述べたとの回想がある。

また,令和7年7月23日の裁判官会議議事録には,人事局長の説明を受け,採用候補者について審議した結果,議事録別紙記載の理由により不採用と決定した旨が記載されている。

もっとも,公開された議事録だけでは,事務総局の当初案が採用案であったのか,不採用案であったのかは分からない。
この事例を「裁判官会議が事務総局案を覆した例」と断定することはできないが,少なくとも,裁判官会議が説明を受けて採用候補者を不採用と決定した例である。

第5 非公開と議事録

1 会議の非公開と議事録の作成

裁判官会議規程8条は,裁判官会議を公開しないと定めている。

同規程12条は,裁判所事務官に議事録を作成させ,出席者の氏名,議事の経過の要領及び結果を記載すると定めている。
議事録には,議長及び出席した最高裁判所事務総長又は裁判所事務官が署名する。

公開された議事録では,人事情報その他の不開示情報が黒塗りとされることがあり,個々の裁判官の発言又は詳細な議論の過程まで常に明らかになるわけではない。

2 議事過程の不開示を扱った裁判例

東京高裁平成17年2月9日判決(平成16年(ネ)第3752号)は,裁判官会議議事録のうち,意見表明,議論等の議事過程又はこれを推知させる部分を不開示とした措置について,国家賠償法1条1項上の違法はないと判断した。

同判決は,裁判官会議規程8条が会議を非公開とするだけでなく,議事録のうち意見表明又は議論等の過程が記載された部分を公にしない趣旨を含むと解している。

議事録の開示状況及び年度別資料は,本ブログ「最高裁判所裁判官会議の議事録」で確認できる。

第6 関連資料

1 規程及び議事録

2 審査室会議の年度別資料

3 会議係の事務処理要領

最高裁判所事務総局秘書課会議係で使用されている事務処理要領その他のマニュアルに関する開示答申は,令和3年10月9日付けの資料案内から確認できる。

出典・参考資料

法令,規程及び公的資料

裁判例

文献

  • ① 最高裁判所事務総局総務局『裁判所法逐条解説』法曹会,1967年,100頁~106頁
  • ② 新藤宗幸『司法官僚―裁判所の権力者たち』岩波書店,2009年,52頁~54頁,77頁~78頁及び195頁
  • ③ 滝井繁男『最高裁判所は変わったか―裁判官の自己検証』岩波書店,2009年,17頁
  • ④ 藤田宙靖『最高裁回想録―学者判事の七年半』有斐閣,2012年,31頁~35頁
  • ⑤ 清永聡『家庭裁判所物語』日本評論社,2018年,169頁~179頁
  • ⑥ 泉徳治・渡辺康行・山元一・新村とわ『一歩前へ出る司法―泉徳治元最高裁判事に聞く』日本評論社,2017年,101頁
  • ⑦ 瀬木比呂志『黒い巨塔 最高裁判所』講談社,2016年,15頁