令和3年司法試験環境法第1問について,公式資料から独自に抽出した評価項目と模範解答を示す。
重みは法務省の採点基準・項目別配点ではない。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和3年司法試験の環境法第1問であり,基準日は選択科目実施日の令和3年5月12日である。
評価項目は41項目,重みの合計は149である。
認可の違法性は環境影響評価法33条の横断条項に接続し,C・Dの原告適格と住民訴訟を区別する。
2011年改正は配慮書による早期介入,制度改革は政策・計画・プログラム段階のSEAとして整理する。
健康損害はA県の国賠法2条責任とG社の民法709条責任を,719条の構成と立証対象に結び付ける。
重み5は番号2・3・16・21・30・31・35・41の8項目である。
番号16は原告適格否定後の条件付きの高評価事項であり,重み5の全項目が全ての答案で必須となるわけではない。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
法務省の出題の趣旨及び採点実感の本件関連部分から,一つの判定対象を一項目として抽出した。
必須・高評価・負例・許容分岐と,1~5の重みは別の区分である。
許容された別構成の項目を全答案へ累積要求しない。
表の頁は合冊PDFの実頁である。
「記載なし」は対象範囲を読んだ結果,当該項目の個別明示がないことを示す。
手続的瑕疵についての採点実感の一括評価を,各瑕疵を個別に高く評価したとの記載へ変換していない。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は答案の骨格又は採点実感が強調する評価の分岐,4は出題の趣旨が検討を求め採点実感も評価又は不足の指摘を通じて取り上げた事項,3は一方が明示する中核の理由付け,2は補強又は典型的な誤り,1は控えめに触れる事項とする。
重み4を一律に「両資料が高く評価」と説明しない。
各段階への件数割当てはしていない。
第3 本問の概要
A県は6車線の一般国道を計画し,国土交通大臣の道路法74条認可を申請している。
Pルートには希少な植物Qの群生地と密集市街地があり,移植の有効性,既存発電所との複合影響及び予測データ改ざんが問題となる。
Cは研究・保護活動をする住民,Dは自然保護団体,Fらは健康・生活被害を懸念するE地区住民である。
設問1は認可の違法性とC・Dの行政訴訟,設問2は2011年改正,設問3は現行制度の限界と改革,設問4は供用後の健康損害の賠償と主張立証を問う。
設問4では国への請求を扱わない。
第4 評価項目と重み
1 設問1⑴
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 第一種事業として環境影響評価が必要なことを法2条2項と施行令に接続する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(法第2条第2項) | 記載なし |
| 2 | 法33条2項3号の横断条項により事業利益と環境保全審査を併せて判断する。〔必須〕 | 5 | 35頁・環境法第1問(法第33条第2項) | 34頁・環境法第1問(いわゆる横断条項) |
| 3 | 手続の瑕疵が認可の判断過程に及ぼす影響を示し,裁量逸脱・濫用等の違法性に結び付ける。〔必須〕 | 5 | 35頁・環境法第1問(裁量権の踰越濫用) | 35頁・環境法第1問(認可に及ぼす影響) |
| 4 | 複数案を検討せず不設定理由も示さない点を主務省令3条1項に照らして検討する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(その理由も示されていない) | 記載なし |
| 5 | 不実施案の検討が合理的な場合の努力義務を示してゼロオプションを検討する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(いわゆるゼロオプション) | 記載なし |
| 6 | C・Dの意見に対する事業者見解の未記載を法21条2項4号の瑕疵とする。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(事業者の見解の未記載) | 記載なし |
| 7 | 移植の不確実性を踏まえ,移植以外のQ保全措置を検討しない点を評価する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(移植措置以外のQの保全措置) | 記載なし |
| 8 | トンネル化等の案を検討しないことの妥当性を具体的に評価する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(トンネル化案) | 記載なし |
| 9 | 予測データの改ざんを評価・認可判断の基礎の信頼性の問題として扱う。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(データ改ざん等) | 記載なし |
2 設問1⑵
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 道路法74条認可の処分性を法的効果から説明する。〔必須〕 | 3 | 35頁・環境法第1問(本件認可の処分性) | 記載なし |
| 11 | 認可前の阻止手段として認可の差止訴訟を特定する。〔必須〕 | 4 | 35頁・環境法第1問(本件認可の差止訴訟) | 34頁・環境法第1問(本件認可の差止訴訟) |
| 12 | Cの居住・研究保護活動が個別に保護される利益に当たるか,関係法令から理由を付して論じる。〔必須〕 | 4 | 35頁・環境法第1問(CとDそれぞれの原告適格) | 34頁・環境法第1問(CとDそれぞ) |
| 13 | Dについて法人格・団体目的と原告適格を分け,法令上の個別保護を理由付きで論じる。〔必須〕 | 4 | 35頁・環境法第1問(CとDそれぞれの原告適格) | 34頁・環境法第1問(CとDそれぞ) |
| 14 | 不可逆的損害等から重大な損害のおそれと補充性を検討する。〔必須/適格肯定枝〕 | 4 | 35頁・環境法第1問(重大な損害のおそれ) | 34頁・環境法第1問(重大な損害のおそれ) |
| 15 | 仮の差止めを認可差止訴訟と組み合わせ,独自の要件を区別する。〔高評価/適格肯定枝〕 | 4 | 35頁・環境法第1問(仮の差止め) | 35頁・環境法第1問(仮の差止め) |
| 16 | 抗告訴訟の適格を否定する場合にも,公金支出差止めの住民訴訟を検討する。〔高評価/適格否定枝〕 | 5 | 35頁・環境法第1問(住民訴訟の可能性) | 35頁・環境法第1問(住民訴訟が活用されている) |
| 17 | 住民訴訟では先行行為の違法と財務会計法規上の違法性を区別して構成する。〔高評価/住民訴訟枝〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(財務会計法規上の違法性) | 記載なし |
3 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 18 | 2011年改正による第一種事業の計画段階配慮書導入を特定する。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(計画段階配慮書手続が導入) | 35頁・環境法第1問(計画段階配慮書手続の導入) |
| 19 | 可能な限り早い段階での検討を事業へ反映させる改正趣旨を説明する。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(可能な限り早期の段階) | 34頁・環境法第1問(計画段階配慮書手続の趣旨) |
| 20 | 法3条の5により環境大臣が計画立案段階で意見を述べられることを示す。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(法第3条の5) | 35頁・環境法第1問(計画立案段階で意見を述) |
| 21 | 法3条の6により主務大臣に環境大臣意見の勘案義務があることを示す。〔必須〕 | 5 | 36頁・環境法第1問(法第3条の6) | 34頁・環境法第1問(主務大臣の意見は環境大臣の意見を勘案) |
| 22 | 早期の否定的意見への事業者の対応が事業変更の可能性を高める効果を説明する。〔必須〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(事業の変更の可能性が高まる) | 記載なし |
| 23 | 個別事業への意見が事業官庁の温暖化政策・法制度改正につながる経路を示す。〔必須〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(温暖化対策を強化する) | 記載なし |
| 24 | 報告書手続の導入のみを答えとして配慮書による早期介入と取り違えない。〔負例〕 | 2 | 記載なし | 34頁・環境法第1問(報告書手) |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 25 | 現行制度が事業者による個別事業段階の手続であるという限界を示す。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(事業者が個別事業段階で行う手続) | 34頁・環境法第1問(現行制度は個別事業) |
| 26 | 事業そのものの中止を十分検討しにくいという限界を示す。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(事業そのものの中止) | 34頁・環境法第1問(事業そのものの中止) |
| 27 | 複数汚染源の複合影響を個別事業単位で捉える限界を示す。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(複合影響の考慮) | 34頁・環境法第1問(複合影響の考慮) |
| 28 | 環境基本法19条の施策策定実施時の配慮義務をSEAの必要性と結び付ける。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(環境基本法第19条) | 34頁・環境法第1問(環境基本) |
| 29 | 生物多様性基本法25条による早期配慮の趣旨を補強として参照する。〔高評価〕 | 2 | 36頁・環境法第1問(生物多様性基本法第25条も参照) | 34頁・環境法第1問(生物多様性基本法) |
| 30 | 政策・計画・プログラム段階のSEAを,配慮書との段階差を示して提案する。〔必須〕 | 5 | 36頁・環境法第1問(政策・計画・プログラム段階) | 34頁・環境法第1問(政策・計画・プログラム段階) |
5 設問4
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | 道路管理者A県に国賠法2条1項の営造物責任を構成する。〔必須〕 | 5 | 36頁・環境法第1問(国家賠償法第2条) | 35頁・環境法第1問(国家賠償法第2条) |
| 32 | G社に民法709条の不法行為責任を構成する。〔必須〕 | 4 | 36頁・環境法第1問(G社の民法第709条) | 35頁・環境法第1問(G社の民法第709条) |
| 33 | 道路管理者の責任を民法717条だけで処理しない。〔負例〕 | 2 | 記載なし | 34頁・環境法第1問(民法第717条) |
| 34 | 道路管理者に719条の対象となる行為があるかを管理・供用と結び付けて説明する。〔高評価〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(道路管理者には「行為」があるか) | 記載なし |
| 35 | 国賠法2条責任とG社709条責任について719条の適用を検討する。〔必須〕 | 5 | 36頁・環境法第1問(民法第719条の適用) | 35頁・環境法第1問(民法第719条の適用) |
| 36 | 伝統的構成では各行為者ごとに個別因果関係を含む責任成立要件を立証すると明確にする。〔許容分岐/伝統的構成〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(個々の行為者の第709条) | 記載なし |
| 37 | 各人の個別因果関係を要求した上で共同性を加えると719条の独自の意義が乏しいとの批判を示す。〔高評価〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(第719条の存在意義がなくなる) | 記載なし |
| 38 | 有力説では関連共同性と加害行為群を捉え,個別因果関係の扱いを伝統的構成と区別する。〔許容分岐/有力説採用時〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(有力説及び下級審裁判例の立場) | 34頁・環境法第1問(有力説・下級審裁判) |
| 39 | 有力説を採る場合に弱い関連共同性の肯定又は否定を事実と理由から論じる。〔許容分岐/有力説採用時〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(弱い) | 34頁・環境法第1問(弱い関連共同性) |
| 40 | 伝統的構成では客観的共同で足りるとの基準と本件の共同性を説明する。〔許容分岐/伝統的構成〕 | 3 | 36頁・環境法第1問(客観的共同で足りる) | 記載なし |
| 41 | 選んだ719条構成に応じて因果関係・関連共同性等の主張立証対象を一貫させる。〔必須〕 | 5 | 36頁・環境法第1問(立場から記述すること) | 35頁・環境法第1問(関連共同性を含めて的確) |
6 重みの分布
重み1:0項目,重み2:3項目,重み3:17項目,重み4:13項目,重み5:8項目。
総項目数41,重み合計149。
負例と許容分岐も分布に含むが,重みの合計を得点に換算しない。
重み5の番号2・3は環境評価と認可の接続,16は抗告訴訟が利用できない場合の住民訴訟,21は環境大臣意見の勘案,30は上位段階のSEA,31・35・41は賠償責任と共同不法行為の立証構造である。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
答案本文は改行を除いて2272字である。
法令は試験日当時の施行版を用いる。
C・Dの原告適格は否定する構成,設問4は各原因者との個別因果関係を要求する伝統的構成を採る。
公式資料は合理的な理由がある限り原告適格の結論を限定せず,719条の別構成も許容している。
2 答案
1 設問1
(1)認可の違法性
本件は法2条2項・施行令別表第一の第一種事業である。
環境影響評価法(以下「法」という。
)3条の2,3条の3及び配付主務省令3条1項は,配慮書段階で位置等の複数案を原則として設定し,設定しない場合には理由を示すことを求める。
希少なQの群生地を通るのに,費用対効果のみでPルートを選び,別ルートも不設定理由も示さない点は問題である。
不実施案も,検討が合理的なら含める努力義務がある(同条2項)。
輸送量増が僅少との意見はその合理性を検討する材料となる。
準備書への意見に配意して検討し,評価書に意見への見解を記載すべきところ,移植の実効性を疑うC・Dの意見への見解がない点は法21条1項・2項4号に反する。
評価書後の実験でも全株が消滅しており,一部移植を代償措置とする評価の合理性は乏しい。
生息地の回避・低減を優先して別の保全措置を検討すべきである。
Fらについては,既存発電所との複合影響を含む調査・予測・評価を要する。
データ改ざんは評価の基礎を損ない,環境基準以下との記載だけで保全配慮は尽くせない。
トンネル化や換気所のSPM除去装置等も実行可能性を含め検討すべきである。
本件認可は道路法74条・配付施行令19条及び別表第四を通じ,法33条2項3号に該当する。
国土交通大臣は事業利益の審査と同条1項の環境保全審査を併せて判断し,拒否し,又は必要な条件を付すことができる。
手続の瑕疵が認可に影響する程度を検討すべきであり,重大な瑕疵のある評価を前提とし,Qや複合汚染,代替策を看過して認可すれば,裁量権の逸脱・濫用となる。
(2)行政訴訟
認可はA県が適法に新設事業を行うための法的地位を定める行政処分である。
申請中なので,国を被告に認可の差止訴訟を提起し,仮の差止めを申し立てることが考えられる。
差止訴訟の原告適格は行訴法37条の4第3・4項,9条2項により判断する。
道路法と法の目的,保護利益及び侵害態様を考慮するが,自然保護利益は通常公益として保護される。
Cの長年の研究・保護活動には意義があるものの,法令が研究対象の存続利益をC個人に保護する趣旨までは認め難い。
Dも,NPOの法人格や保護目的だけでは個別利益の保護又は団体訴権は生じない。
意見提出資格とも異なり,両者の原告適格は否定する。
仮に適格を肯定するなら,群生地喪失の不可逆性から重大な損害のおそれを認め,他の適当な方法の有無を検討し,(1)の違法を主張する。
仮の差止めには償うことのできない損害,緊急性,本案の理由及び公共の福祉の要件を別途要する。
適格否定後も,A県住民Cは住民監査請求を経て,県の執行機関・職員を被告とする公金支出差止めの住民訴訟を検討できる(地方自治法242条,242条の2第1項1号)。
Dも県内に住所を有する法人なら同様である。
先行する環境評価の違法だけで支出が当然違法とはならない。
需要増の僅少性を裏付け,代替案と比べ支出が著しく不合理で最少経費最大効果の原則等に反することなど,財務会計上の義務違反を具体化する。
対象支出の相当な確実性,監査・出訴期間,公益上の制限も満たす必要がある。
2 設問2
2011年改正は,第一種事業の位置・規模等を決める前に配慮書手続を導入した(法3条の2以下)。
環境保全を可能な限り早く検討し,事業へ反映する趣旨である。
主務大臣は環境大臣の意見を求め(3条の4第2項),環境大臣は配慮書について意見を述べられ(3条の5),主務大臣はこれを勘案して事業者への意見を述べる(3条の6)。
石炭火力の否定的意見に事業者が計画立案段階で対処する必要が生じ,事業変更の可能性が高まる。
その積重ねが事業官庁のエネルギー関連法による温暖化対策強化を促した。
意見を許認可への拒否権と解してはならない。
3 設問3
配慮書は事業者が個別事業を前提に位置・規模等を検討する制度であり,事業自体の中止や複数汚染源の累積・複合影響,広域の生態系への配慮に限界がある。
環境基本法19条は国の施策策定・実施時の環境配慮を求め,生物多様性基本法25条も早期配慮を重視する。
これらを具体化し,政策・計画・プログラム段階の戦略的環境影響評価(SEA)を導入する。
交通政策全体から不実施案・既存道路活用を含む代替策を比較し,広汎・多様な影響を評価する。
住民・専門家の参加,評価・採否理由の公開を保障し,計画決定と後続事業へ反映させる。
4 設問4
A県には国賠法2条1項により請求する。
通常の道路供用が沿道住民に受忍限度を超える健康被害を生じさせ,通常有すべき安全性を欠くという供用関連瑕疵を構成する。
A県について公務員の過失の立証は不要である。
G社には排出防止義務違反の過失等による民法709条責任を追及する。
道路管理・供用も719条の「行為」と評価できる。
共同不法行為について,ここでは各原因者と損害の個別因果関係を要求する伝統的構成を採る。
客観的共同で足りるとし,同一地域の住民への汚染が競合している点から共同性を認め,719条1項前段による連帯責任を求める。
Fらは各排出・曝露と各人の疾病・損害の因果関係,A県の瑕疵,G社の過失等を立証する。
環境基準超過だけでは足りず,濃度・居住歴,疫学・医学的知見等を総合する。
この構成には,個別の709条責任が既に成立するなら719条に共同性を追加する独自の意義が乏しいとの批判がある。
有力説では弱い関連共同性等による個別因果関係の立証軽減が問題となるが,構成を混在させず,採った立場に即して主張立証する。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
設問1⑴は番号1~9,1⑵は10~17,設問2は18~24,設問3は25~30,設問4は31~41に対応する。
条件付きの高評価事項と別構成の項目は,枠内答案の全てに累積して要求していない。
(2) 認可と争訟方法
横断条項と裁量審査の接続(番号2・3)を先に閉じる。
C・Dの原告適格を否定しても,県住民としての公金支出差止めは別の入口になる(番号16)。
Dの県内の拠点という事実のみから地方自治法10条の住所を確定せず,法人住民に当たる条件を明示した。
財務会計法規上の違法(番号17)は,先行する事業計画の違法を言い換えるだけでは足りない。
(3) 改正とSEA
番号21は主務大臣による環境大臣意見の勘案を要求する。
早期の意見が事業変更を促し,それが部門政策の変更に波及する経路まで示す(番号22・23)。
番号29の生物多様性基本法25条は早期配慮の補強であり,それだけから政策段階の一般的SEA手続が現行法上存在すると推論していない。
番号30は改革提案として政策・計画・プログラム段階を対象にする。
(4) 共同不法行為の許容分岐
出題の趣旨は,各原因者の個別因果関係を要求する構成と,有力説・下級審裁判例による構成の双方を許容する。
前者では客観的共同を説明し,各排出源から被害者への因果関係を立証する。
後者を選ぶなら,弱い関連共同性と加害行為群の捉え方に応じて個別因果関係の立証軽減を論じる(番号38・39)。
(5) 弱い関連共同性の理由付け
肯定方向には,同じ地域・時期に同種物質が継続排出され,一体の汚染を形成する点が働く。
否定方向には,道路供用と発電所操業の社会的結合が乏しく,単なる汚染の競合では足りないとの考え方がある。
これらは本問への当てはめ候補であり,特定の下級審判示を確認したものではない。
採用構成の要件と立証対象を示し,弱い関連共同性という語だけから連帯責任を導かない。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
2500字以内のため,住民監査請求・出訴期間は条文に従うとの指示に圧縮し,個別の起算日は与件にないので作らなかった。
住民訴訟の差止めは公金支出を対象とし,認可の取消しと同じ効果を直接求めるものではない。
大気汚染防止法25条の無過失責任は検討可能だが,公式資料の中心はG社709条とA県国賠法2条を719条へ接続する点なので,枠内では主ルートを優先した。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
①令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①令和7年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)
環境法を含む別年度の選択科目の一覧であり,問題や適用法の基準日は本記事と異なる。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①令和3年司法試験・選択科目問題:環境法第1問・資料の実頁28~31頁。
②令和3年司法試験論文式試験問題出題の趣旨:35頁の環境法第1問から36頁の第2問直前まで。
③令和3年司法試験の採点実感・選択科目:34~35頁の環境法第1問と科目総論,38頁の今後の出題・学習。
全資料を取得したが,他科目及び環境法第2問の本文は本記事の根拠に用いていない。
2 法令
環境影響評価法:試験日以前の最新施行版。
環境基本法:試験日以前の最新施行版。
行政事件訴訟法:試験日以前の最新施行版。
地方自治法:試験日以前の最新施行版。
生物多様性基本法:試験日以前の最新施行版。
国家賠償法:試験日以前の最新施行版。
民法:試験日以前の最新施行版。
大気汚染防止法:試験日以前の最新施行版。
環境省「改正環境影響評価法等について」の9・23・28・42・43・45・65・66・72頁も,早期段階と政策段階の区別の確認に用いた。
3 裁判例
公式出題の趣旨における伝統的多数説・判例と有力説・下級審裁判例の整理を踏まえた。
個別判決原文の実読による直接の判示引用はしていない。
したがって,特定判決が本問と同じ事実で同じ結論を示したとするものではない。
4 確認状態
当時施行版の法令文言と公式資料の該当記載を確認した。
公式資料の内容と,本記事による評価単位の切分け・重み・事実への適用は区別される。
原告適格,財務会計上の違法及び共同性についての本問への結論は独自の法的評価である。
確認日は令和8年10月16日であり,後発法を本問の当時法へ持ち込んでいない。