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破産管財人の選任基準と報酬の決まり方(AIリライト)

破産管財人は,破産者又は破産債権者が選ぶのではなく,破産事件を担当する裁判所が事件ごとに選任する。

破産管財人の報酬も当事者間の契約で決まるのではなく,形成された破産財団,管財業務の難易度及び配当との均衡などを踏まえて裁判所が定める。

本記事では,選任と報酬の法的根拠,国会答弁で示された考慮要素,地方裁判所ごとの運用差,源泉徴収及び報酬決定に対する即時抗告を整理する。

第1 破産管財人の選任

1 破産管財人を選任する者

破産法74条1項は,「破産管財人は,裁判所が選任する。」と定め,同条2項は法人も破産管財人になることができると定めている。

破産規則23条1項は,裁判所は破産管財人を選任するに当たり,その職務を行うのに適した者を選任するものと定めている。

したがって,破産管財人の選任は,破産裁判所が個別事件について行う裁判であり,破産者又は破産債権者が管財人を選ぶ私法上の契約ではない。

2 選任の際に考慮される事情

最高裁判所事務総局民事局長は,令和元年11月15日の衆議院法務委員会において,破産管財人の選任では,次の事情を総合考慮すると説明している。

① 事件の規模,債務の内容,負債額,破産債権者数及び破産原因

② 財産の換価,債権回収その他の管財業務の内容及び難易度

③ 候補者の法曹経験及び破産管財人としての経験

④ 渉外事件,知的財産権,労働問題又は民事介入暴力など,事件処理に必要な特殊分野の経験

⑤ 候補者が担当している未済事件の件数及び進捗状況

⑥ 候補者と事件関係者との利害関係の有無

これらは一般的な考慮要素であり,特定の経験年数又は受任件数だけで選任されることを意味しない。

3 公共調達との違い

法務省民事局長は,令和元年5月15日の衆議院法務委員会において,破産管財人の選任は裁判によって行われるものであり,国が私人と締結する私法上の契約ではないと説明している。

同日の答弁では,破産管財人の費用及び報酬は国の予算ではなく破産財団から弁済され,予納金も破産財団へ組み入れられるため,破産管財人の選任は公共調達に該当しないと説明されている。

もっとも,同答弁は,裁判所の選任が不当に偏っているとの誤解を受けないよう,適正な選任をすべきであるとも述べている。

4 選任の公正性に関する経緯

裁判官弾劾裁判所の公式記録によれば,昭和56年,谷合克行東京地裁判事補が,担当事件の破産管財人からゴルフ用品及び背広の供与を受けたことなどを訴追事由として罷免された。

矢口洪一最高裁判所事務総長は,昭和56年5月13日の衆議院法務委員会において,東京地裁が破産事件の処理を合議体に改めたこと,裁判官の同期又は友人であるという理由だけで破産管財人を選ばないこと及び非訟事件のチェック体制を検討することを説明した。

これは昭和56年当時の事件及び改善策に関する歴史的資料であり,現在の各裁判所の具体的な選任運用を直接示すものではない。

第2 破産管財人の報酬

1 報酬の法的根拠

破産法87条1項は,破産管財人は費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができると定めている。

同条2項は報酬決定に対する即時抗告を認め,同条3項は費用,報酬及び即時抗告の規定を破産管財人代理にも準用している。

破産規則27条は,裁判所は破産管財人又は破産管財人代理の職務と責任にふさわしい報酬額を定めるものとしている。

2 報酬額を決める際の考慮要素

法令には,破産管財人報酬について全国一律に適用される定額表,上限額又は下限額は定められていない。

最高裁判所事務総局民事局長は,令和元年5月15日の衆議院法務委員会において,形成された破産財団の規模,管財業務の難しさ及び手間,職務遂行の適切さ,破産財団の増殖又は事件の早期処理への貢献並びに配当額及び配当率との均衡を総合考慮すると説明している。

竹下守夫編集代表『大コンメンタール破産法』(青林書院,2007年)368頁~371頁も,報酬額は裁判所の裁量に委ねられ,配当額,財団管理及び管財事務処理の労力などを事件ごとに考慮すると説明している。

したがって,形成された財団が一定額を下回れば,常にその全額又は大部分が管財人報酬になると全国一律に説明することはできない。

3 配当との関係及び大阪地裁の過去の運用

破産法148条1項1号及び2号は,破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用並びに破産財団の管理,換価及び配当に関する費用を財団債権としている。

同法152条2項は,破産財団がすべての財団債権を弁済するのに足りない場合,これらの費用に関する財団債権を他の財団債権に先立って弁済すると定めている。

このため,財団が少額である事件では,管財人報酬その他の手続費用を控除すると破産債権者への配当原資が残らないことがあるが,その結果は財団額だけでなく,他の財団債権,管財業務の内容及び裁判所の報酬決定によって異なる。

大阪地方裁判所・大阪弁護士会破産管財手続運用研究会編『破産管財手続の運用と書式〔第3版〕』(新日本法規,2019年)307頁は,当時の大阪地裁では,形成された財団が40万円以下の場合,その全額を破産管財人報酬として配当を実施しない運用が行われていると説明している。

同書332頁は,当時の大阪地裁の一般管財手続では,残郵券及び計算報告集会後1か月以内に生じる3万円以下の財団残を包括的に追加報酬とする運用が行われていると説明している。

もっとも,40万円及び3万円という金額は破産法又は破産規則に定められた全国基準ではなく,2019年刊行の書籍が紹介する大阪地裁の当時の運用である。

最高裁判所事務総局民事局監修『破産事件における書記官事務の研究―法人管財事件を中心として―』(法曹会,2013年)308頁の裁判所アンケートでも,残った予納金及び予納郵便切手を提出者へ還付する運用と追加報酬にする運用とが併存し,追加報酬の上限も1万円又は3万円とする例が紹介されている。

したがって,現在の具体的事件における取扱いは,担当する破産裁判所又は部の最新の運用を確認する必要がある。

4 破産管財人報酬の源泉徴収

最高裁平成23年1月14日第二小法廷判決(平成20年(行ツ)第236号・同年(行ヒ)第272号,民集65巻1号1頁)は,弁護士である破産管財人が自らに支払う管財人報酬は,所得税法204条1項2号所定の弁護士の業務に関する報酬に該当し,破産管財人が源泉徴収義務を負うと判断した。

他方,同判決は,破産手続開始前の雇用関係に基づく退職手当等の破産債権に対する配当について,破産管財人は所得税を源泉徴収する義務を負わないと判断している。

国税庁の質疑応答事例「破産管財人報酬」も,弁護士である破産管財人の報酬は源泉徴収の対象になると説明している。

破産管財人として行う業務と弁護士業務の関係については,司法研修所弁護教官の業務と破産管財人業務の違いに関する記事も参照されたい。

5 報酬決定に対する即時抗告

破産法87条2項は,報酬決定に対する即時抗告を認めている。

破産法9条によれば,即時抗告をすることができるのは,当該裁判について利害関係を有する者である。

したがって,財団債権者,破産債権者又は破産者が常に当然に抗告権を有すると一律に断定することはできず,報酬決定によって法的利益を害されるかを個別に検討する必要がある。

破産法13条により準用される民事訴訟法332条によれば,報酬決定の告知を受けた者は,告知を受けた日から1週間の不変期間内に即時抗告をしなければならない。

『大コンメンタール破産法』371頁は,破産管財人以外の抗告権者には報酬決定が個別に告知される態勢がないため,これらの者については報酬決定を知った時から即時抗告期間が進行し,破産手続終了後は即時抗告をすることができないと説明している。

福岡高裁那覇支部令和6年4月26日決定(令和6年(ラ)第14号・裁判所ウェブサイト未掲載)は,申立債権者である破産債権者の即時抗告を受け,600万円とされた破産管財人報酬を400万円に変更した事例である。

TKCローライブラリーの判例紹介によれば,同決定は,予納金297万円,破産債権総額約4億3102万円,形成された破産財団約1264万円という事情の下で,報酬を600万円とした場合の配当原資が約367万円,配当率が約0.8%になることなどを考慮し,600万円という報酬額は破産裁判所の裁量権の範囲を明らかに逸脱すると判断した。

この決定は申立債権者の抗告が認められた一事例であり,すべての破産債権者に当然に抗告権があることまで示したものではない。

破産手続に関するその他の資料は,倒産事件に関するメモ書きに整理している。

第3 出典

① 法令・裁判所規則 e-Gov法令検索・破産法e-Gov法令検索・民事訴訟法及び裁判所・破産規則

② 裁判例 最高裁平成23年1月14日第二小法廷判決及び福岡高裁那覇支部令和6年4月26日決定(令和6年(ラ)第14号・裁判所ウェブサイト未掲載)

③ 公文書・歴史資料 第198回国会衆議院法務委員会第16号・令和元年5月15日第200回国会衆議院法務委員会第8号・令和元年11月15日第94回国会衆議院法務委員会第13号・昭和56年5月13日及び裁判官弾劾裁判所「弾劾裁判所の歴史・昭和50年代」

④ 文献 竹下守夫編集代表『大コンメンタール破産法』(青林書院,2007年)368頁~371頁,大阪地方裁判所・大阪弁護士会破産管財手続運用研究会編『破産管財手続の運用と書式〔第3版〕』(新日本法規,2019年)307頁及び332頁並びに最高裁判所事務総局民事局監修『破産事件における書記官事務の研究―法人管財事件を中心として―』(法曹会,2013年)308頁

⑤ ウェブ資料 国税庁「破産管財人報酬」及びTKCローライブラリー「倒産法」最新判例