司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること

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1 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないこと
(1) 平成30年度(最情)答申第64号(平成31年1月18日答申)は以下のとおりです。
   本件対象文書を見分した結果によれば,本件不開示部分は,①謝金(半月の単価)の額,②謝金内容の単価,③謝金支給額,④謝金税額,⑤差引支給額であると認められる。このような記載内容に照らして検討すれば,上記①及び②については,対象となる弁護教官等の人数が非常に少ないことに照らし,すでに開示されている弁護教官等の氏名及び各支給月における担当クラス数の情報と,上記②についてはこれらに加えて繁忙期・閑散期の別による謝金区分の情報と,それぞれ照合することにより,特定の弁護教官等に対する各月の謝金の支給額が容易に推知され得るものであり,上記③から⑤については,すでに開示されている弁護教官等の氏名と併せて法5条1号に規定する個人識別情報であるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
   苦情申出人は,本件不開示部分について,個人識別情報ではなく,事業を営む個人の当該事業に関する情報である旨を主張する。しかし,最高裁判所事務総長の上記説明によれば,弁護教官の事務は,司法修習生に対する講義,研究・演習,起案講評等を内容とするものであり,弁護士の業務とはいえない。
   そうすると,本件不開示部分は,個人識別情報と認められ,同条2号に規定する事業を営む個人の当該事業に関する情報とは認められない。
(2) 本件対象文書は以下のとおりです。
① 平成29年4月1日付け司法研修所作成「平成29年度の弁護教官等の謝金について」
② 平成29年1月10日付け「支給調書」

2 破産管財人として行う業務は弁護士業務であること

(1) 弁護士である破産管財人は,所得税法204条1項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負います(最高裁平成23年1月14日判決)。
(2) 国税庁HPの質疑応答事例「破産管財人報酬」には以下の記載があります。
   破産管財人報酬は、弁護士の業務に関する報酬又は料金として、源泉徴収の対象となります。
   破産管財人の業務は、弁護士法第3条第1項《弁護士の職務》に規定する「一般の法律事務」には該当しませんが、同法第30条の5《業務の範囲》の業務を定める法務省令(弁護士法人及び外国法事務弁護士法人の業務及び会計帳簿等に関する規則)第1条第1号《弁護士法人の業務の範囲》にいう業務に該当するとともに、弁護士は、正当の理由がなければ、法令により官公署の委嘱した事項を行うことを辞することができないものとされています(弁護士法第24条)。
   したがって、弁護士法は、弁護士の使命及び職責にかんがみ、弁護士が破産管財人の地位に就きその業務を行うことを予定しているものと考えられます。
   また、所得税法第204条第1項第2号に規定する「弁護士の業務」を弁護士法第3条第1項に規定する「一般の法律事務」に限定すべき理由はなく、弁護士としての専門的知識をもって行う業務も同号にいう「弁護士の業務」に含まれると考えられます。
   以上のことから、弁護士が破産管財人として行う業務は、「弁護士の業務」に該当し、破産管財人報酬は、弁護士の業務に関する報酬又は料金に該当することとなります。
(3) 国税不服審判所平成14年2月25日裁決には以下の記載があります。
A 弁護士の職務については、弁護士法第3条第1項では、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」と規定しているところ、かかる弁護士法第3条第1項に規定する職務を行ったことに伴い支払われた報酬は、通常、所得税法第204条第1項第2号に規定する弁護士の業務に関して支払われた報酬に当たると解するのが相当である。
   そして、ここに、委嘱とは、一定の事実行為又は事務をすべきことを他人に依頼することであり、法律事務とは、訴訟事件、非訟事件及び行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して、鑑定、代理、仲裁、和解等を行うことと解されている。
B 破産管財業務について、上記Aに照らして判断すると、K地裁では、上記イの(ハ)にあるとおりの選任過程を経て、破産管財人が選任されるに至るのであるから、破産管財人の選任が弁護士法第3条第1項に規定する、官公署の委嘱に基づくものであることは明らかである。
   また、破産管財人の主な職務は、破産財団をもって総債権者に公平な配当を実現することにあり、そのために破産財団に属する財産を管理、処分する必要があるが、かかる破産財団の換価処分の過程においては、双務契約に関する処理(破産法第59条)のほか、逸失した財産を破産財団に取り戻するために訴え等により否認権を行使すること(破産法第76条)、破産財団に関する訴訟の追行(破産法第162条)などをする場合があること、破産管財人は、配当を受領する破産債権者の範囲及び債権額を確定しなければならないが、その届出債権については債権確定訴訟を追行しなければならない場合もあり得ること(破産法第244条以下)などにかんがみると、破産管財業務にはもともと法律的判断を伴う事務を行うことが予定されているといえるから、破産管財業務であるという一事をもって直ちに弁護士法第3条第1項にいう法律事務への該当性が否定されるものではない。

3 弁護士の立場で行われた講演等の収入は事業所得の総収入金額に該当すること

・ 国税不服審判所平成15年3月11日裁決には以下の記載があります。
(イ)事業所得とは、前記1の(3)のイのとおり、事業から生ずる所得をいう旨規定されており、また、この事業の範囲については所得税法施行令第63条において、各種の事業が列記されている。
 そして、弁護士業は、所得税法施行令第63条第11号に規定するその他のサービス業に該当すると解される。
(ロ)弁護士としての所得の稼得形態は、弁護士法第3条第1項に規定する弁護士の職務(以下「本来の弁護士の職務」という。)を行うことによるものだけに限られているものではないから、弁護士業に係る事業所得の総収入金額には、本来の弁護士の職務を行ったことに伴い支払われる報酬のほか、講演料、出演料、印税、原稿料等の収入であっても、その講演等が弁護士の立場で行われたもの、あるいは、その内容が弁護士としての知識や経験等に基づくものであって、本来の弁護士の職務と直接の結び付きが認められるものは、所得税法上事業所得以外の各種所得に係る収入金額又は総収入金額として特に明示されているものを除き、これに含まれると解するのが相当である。

4 「司法研修所弁護教官の任期,給料等」も参照してください。

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