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外務省機密費流用事件―松尾克俊事件の判決・認定額・会計管理(AI作成)

第1 外務省機密費流用事件とは何か

外務省機密費流用事件として知られる松尾克俊元要人外国訪問支援室長の事件では、総理大臣の外国出張に関する宿泊費差額の請求・受領・精算が問題となった。裁判所掲載の東京地裁判決は、15回の請求により内閣官房から合計5億600万円余りを詐取した事案として、懲役7年6月を言い渡している。

事件名から、外務省の報償費の全てが裁判の対象になったと理解するのは正確でない。判決の対象は、内閣官房が支給していた宿泊費差額に関する特定の詐欺である。以下では、外務省の初期調査、刑事判決の認定、行政上の改善措置を区別する。

第2 外務省の調査報告書が示した事実と限界

1 調査の対象と方法

平成13年1月25日付調査報告書は、平成5年10月10日から平成11年8月16日まで室長を務めた松尾氏について、任意の事情聴取、任意に提出された銀行口座資料、会計書類、関係者の説明などを調べた資料である。

同報告書は、少なくとも約5400万円の公金が競走馬の購入等に使われた明白な疑いがあるとして、業務上横領の疑いによる告発と懲戒免職が必要であるとした。これは調査段階の嫌疑と処分方針の説明であり、後の詐欺判決の認定額を示したものではない。

2 約3.1億円の蓄積という説明の意味

報告書3(3)は、本人の陳述に基づく特定口座への公金入金累計約5.6億円と、クレジットカード引落し累計約2.5億円を挙げた。その引落しが全て公費支払いであったと仮定しても、差引き約3.1億円が蓄積されたことになると説明している。

この約3.1億円は、特定口座と仮定を用いた調査上の計算である。全口座の資金の流れを確定した額でも、刑事裁判で認定された詐取額でもない。報告書は、任意提出された口座資料だけでは全容解明に限界があり、公金を不正に蓄積した方法についても確証をもって述べるのは困難であると明記している。

第3 東京地裁の掲載判決が認定した詐欺

1 判決言渡し日と判決書の日付

裁判所が公開する判決全文は5頁であり、主文は懲役7年6月、未決勾留日数200日の算入である。

判決言渡し日は平成14年3月12日である。川口外務大臣の同日付コメントは、松尾氏について当日に懲役7年6か月の判決が下されたことを明記している。同年3月22日の衆議院外務委員会でも、3月12日に実刑判決が言い渡された事件として取り上げられている。

裁判例検索の掲載情報とPDF末尾には平成14年3月29日という日付があるが、これを判決言渡し日と同一視してはならない。判決書の日付と判決言渡し日は区別される。本記事では、判決言渡し日を3月12日とし、PDF末尾に記載された3月29日とは区別する。

2 宿泊費差額を水増しして請求した仕組み

判決1頁は、実際のホテル利用料金が法定の宿泊料を上回る場合に、その差額を内閣官房が支給していたことを説明する。被告人は差額の支払請求、現金の受領、事後精算を掌握しており、水増しした額を正当な差額であるように装って請求したと認定されている。

判決1~3頁には15件の事実が記載される。宿泊先が無償提供され差額が生じない場合の請求も含まれている。判決3頁は、請求額を切り上げて現金を支給する取扱いを被告人も認識し、異議なく受領していたことを踏まえ、交付された判示金額を詐取額と認定している。

3 5億600万円余りと私的流用額を区別する

判決3~4頁は、15回にわたる詐取額及び財産的損害の合計を5億600万円余りとする。他方、4頁では、水増し後の宿泊費差額全体について詐欺罪が成立するが、交付金の中には実際に生じた正規の宿泊費差額に充当された部分があり、一部は精算金として返納されたと説明している。

したがって、判決の詐取額を、そのまま個人の遊興等に使った純額や、判決時点の未回収額と同一視することはできない。約5400万円の嫌疑、約3.1億円の口座計算、5億600万円余りの詐取額は、資料の時点・対象・算定方法が異なる数字である。

第4 量刑で重視された事情と被害弁償

1 職務の悪用と公務への信頼

判決3~4頁は、職務上の知識や権限を利用し、2年半余りにわたって犯行を反復したこと、宿泊料単価・宿泊日数・随行員数等の水増しや虚偽の領収証を用いた計画性を重く評価している。財産的損害に加え、公務員や外務省への信頼を失墜させた影響も指摘した。

2 反省・弁償と管理体制の問題

判決4~5頁は、犯行を認めて解明に協力し反省したこと、資産を充てて弁償に努めたことなどを考慮している。8件について国との間で約2億2045万円と遅延損害金の支払に関する和解が成立し、総計3億円弱が支払われ、又は支払われる見込みであったと記載する。後日の全額回収を確認した記載ではない。

管理監督の不備について、判決は、被告人が不十分な審査を積極的に利用した以上、特に有利な事情とみるのは相当でないとする一方、十分な決裁・審査が行われず犯行を助長した側面は否定できないとした。管理上の問題と本人の刑事責任を分けて評価している。

第5 会計管理の改善として公表された措置

調査報告書4・5は、多額の現金の管理を一人に委ねたこと、長期間同一の担当者を配置したこと、公金と私金を同じ口座で扱ったことを問題とした。見積り、支払い、精算関連書類の作成が一人に集中していた点も指摘している。

平成14年3月12日の外務大臣コメントは、総理の外国訪問に必要な経費を平成14年度予算案で外務省に一括計上すること、要人外国訪問支援室の廃止等による指揮命令系統の明確化を改善措置として挙げた。これらは当時の公表内容であり、現在の会計制度全体を説明するものではない。

第6 報償費の問題・他事件との関係

平成22年2月5日付政府答弁書は、過去の外務省報償費が首相官邸における外交用務にも使われていたことや、その後の見直し等について説明する。この予算の使途に関する説明を、松尾氏の15件の詐欺についての判決認定と同じものとして扱うことはできない。

黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題は、別の時期・行為についての事件である。松尾事件の判決と、三井環氏の逮捕又は黒川氏の問題との因果関係を示す資料として、本判決を用いることはできない。

情報公開の対象と不開示を争う手続は、行政機関等に対する情報公開請求の基礎を参照されたい。報償費に関する情報公開の判断と、特定の公金の詐取を認定する刑事判断も、対象と手続が異なる。