検察官の給料を調べるときは,俸給月額,毎月の手当,期末・勤勉手当などを分けて見る必要がある。俸給表の月額を12倍した金額は俸給だけの年額であり,手当や賞与を含む総年収ではない。
この記事では,令和8年4月1日現在の裁判所公表表と現行の俸給法を基に,検事・副検事の俸給の読み方と,条件を明示した計算例を示す。
第1 検察官の給与を決める法律
検察官の俸給等に関する法律2条は,俸給月額を別表によると定める。3条により,初任給・昇給などの準則を法務大臣が定め,これに従って各検察官が受ける俸給の号などを決める。
したがって,俸給表に金額があることと,特定の年齢・勤続年数の検事がその号を受けることは別である。年齢だけで号を割り当てた年収表や,「検事は全員この初任給」といった説明はできない。
同法1条は,検事総長・次長検事・検事長,指定職俸給表適用職員の例による号を受ける検事・副検事,その他の検察官で,給与に適用する例を区別している。役職や号が違う検察官の賞与計算を,一律に扱うこともできない。
第2 検事・副検事の俸給月額
次の金額は,裁判所「裁判官・検察官の報酬俸給表」の令和8年4月1日現在の金額から抜粋したものである。現行の俸給法別表とも一致する。検察事務官の給料を示す表ではない。
| 区分 | 俸給月額 |
|---|---|
| 検事20号 | 27万6300円 |
| 検事18号 | 28万5500円 |
| 検事13号 | 35万2100円 |
| 検事9号 | 45万9000円 |
| 検事1号 | 122万4000円 |
| 副検事17号 | 25万7800円 |
| 副検事15号 | 27万6300円 |
| 副検事1号 | 60万4000円 |
これは代表的な号の抜粋であり,初任給や平均給与の一覧ではない。全ての号,検事総長などの金額,過去の基準日の資料は,裁判官・検察官の給与月額表を参照されたい。
検事の号は20号から1号,副検事の号は17号から1号が表に掲げられ,数字が小さい号ほど俸給月額が高い。副検事には法律附則3条による特別の俸給月額もある。「検事」と「副検事」,俸給の「号」と検察庁法上の「級」は区別する必要がある。
第3 初任給と初任給調整手当
1 俸給月額に加わる初任給調整手当
令和8年4月1日現在の公表表は,検事20号の行に月8万7800円,18号の行に月7万5100円の初任給調整手当を掲げている。支給額・対象と制度趣旨は,判事補・検事の初任給調整手当に整理している。
「初任給調整手当」という名前の手当を,俸給そのものや全ての検察官に支給される一律の額と取り違えないことが必要である。
2 計算条件を限定した月額・年額の例
検事20号の俸給月額と,その行に示された初任給調整手当の両方が支給される場合,27万6300円+8万7800円=月36万4100円となる。
両方の金額が12か月変わらず支給されると仮定すると,36万4100円×12=436万9200円である。これは俸給と初任給調整手当の2項目だけの年額である。地域手当などの他の手当,賞与,税金・社会保険料の控除は含まれない。
同じ条件で検事18号を計算すると,28万5500円+7万5100円=月36万600円,12か月分は432万7200円となる。俸給だけの増減と,初任給調整手当を加えた金額の増減は一致しない場合がある。
これらは表の数値を使った条件付き計算であり,新任検事全員の実際の初任給・年収や,特定の年齢の標準年収を示すものではない。
第4 手当・賞与・手取りの違い
1 勤務条件や生活条件による手当
総支給額を把握するには,適用する給与の例と支給要件を確認し,地域手当,広域異動手当,扶養手当,住居手当,通勤手当,単身赴任手当などのうち,実際に支給されるものを加える必要がある。
勤務地,住居や家族の状況,異動の有無などで支給条件が変わるため,俸給表だけから全員共通の総支給額を出すことはできない。
2 賞与を「俸給月額×一定の月数」と決めつけない
期末・勤勉手当などは,適用する給与の例,基準日,在職期間,算定基礎,成績率などを確認して計算する必要がある。俸給だけを算定基礎として,どの検察官にも同じ月数を掛ける説明は正確ではない。
総年収の比較では,同じ年度・同じ条件の金額を使う必要がある。任官した年の在職期間や,途中の昇給・給与改定も結果に影響する。
3 超過勤務手当と手取り
俸給法1条ただし書は,俸給の特別調整額,超過勤務手当,休日給,夜勤手当及び宿日直手当を支給しないと定める。残業時間に比例した超過勤務手当を,検察官の年収に当然に足すことはできない。
額面の給与と,税金・社会保険料などを引いた手取りも異なる。扶養などの条件や各種控除が分からないまま,手取り額を一律に示すことはできない。退職手当も,毎年の勤務に対する給与年収とは分けて比較する必要がある。
第5 平均年収・年齢別年収を調べるときの注意点
公的な職業情報サイトや民間の職業案内に年収が載っていても,その統計の対象が検察官だけなのか,別の職業を含む区分なのか,個別の取材値なのかを確認する必要がある。
この俸給表は,検察官全体の平均年収,年齢別の分布や各号の人数を示していない。そのため,表の上限・下限の中間を取って平均年収としたり,検事総長の俸給を一般の検事の目安としたりすることはできない。
裁判官の年収の条件付き試算も,職や計算条件を確認して読む必要がある。裁判官向けの試算を検察官の年収としてそのまま転用することはできない。
第6 よくある質問
1 検察官の初任給は月27万6300円なのか
27万6300円は令和8年4月1日現在の検事20号の俸給月額である。特定の新任検事に適用する号,初任給調整手当や他の手当を別に確認する必要がある。
2 検察官と検察事務官の給料は同じか
同じではない。検察官には専用の俸給法があり,検察事務官は別の給与制度による。採用案内の給与例がどちらの職を対象とするかも確認する必要がある。検察事務官とはを参照されたい。
3 古いPDFの金額を現在の給料として使えるか
PDFの基準日を確認する必要がある。過去の給与を調べる資料として有用であるが,令和5年などの金額を現在の給与と取り違えないよう,最新版と過去資料の一覧で照合するのが適切である。
第7 出典と関連記事
検察官の俸給等に関する法律1条から3条,別表及び附則3条。
裁判所「裁判官・検察官の報酬俸給表」(令和8年4月1日現在)。
法務省「検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案」(令和7年法律第94号として公布)。