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日米行政協定と日米地位協定の違い―刑事裁判権・国会承認・変更点を比較(AI作成)

第1 日米行政協定と日米地位協定は何が違うか

日米行政協定は,旧日米安保条約第3条に基づき,昭和27年に発効した米軍の配備条件に関する協定である。日米地位協定は,新日米安保条約第6条を受けて昭和35年に発効し,行政協定に代わって施設・区域の使用と米軍関係者の地位を定めた協定である。

違いは,根拠となる安保条約,国会承認の手続及び個々の条文にある。施設の使用や合同委員会などの仕組みは引き継がれたが,施設外の措置,税関検査,労務,民事請求,防衛分担金等には変更がある。

ただし,刑事裁判権の比較には,昭和27年の原行政協定,昭和28年の第17条改定,昭和35年の地位協定という3段階が必要である。日本側にも裁判権を認め,競合する事件の第一次の権利を分配する仕組みは,行政協定時代の昭和28年に導入されている。昭和35年に初めて日本が米軍人等の犯罪を裁けるようになった,という説明では時期を誤る。

1 基本事項の比較表

比較項目日米行政協定日米地位協定
根拠旧日米安保条約第3条新日米安保条約第6条
署名昭和27年2月28日,東京昭和35年1月19日,ワシントン
発効昭和27年4月28日昭和35年6月23日
国会承認協定自体について独立した承認を経ていない。砂川事件判決は旧安保条約の委任との関係を判断した国会承認を経た条約である
条文数全29条。第17条は昭和28年に改定された全28条
合同委員会第26条第25条
費用の基本規定第25条。原協定には防衛分担金の規定がある第24条。防衛分担金の規定は置かれなかった
現在の位置付け地位協定第26条第2項により,改正を含め終了した現行の施設使用・関係者の地位を定める基本協定である

署名日・発効日を区別する必要がある。昭和35年1月19日の署名時点で行政協定が終了したわけではない。地位協定第26条は国内の承認手続と公文交換を定め,新安保条約の発効日に効力を生じ,その時に行政協定が終了するとしている。

根拠資料は,行政協定の条約集掲載原本1頁,行政協定第27条・第29条,地位協定全文の冒頭及び第26条である。公式資料へのリンクは第8に掲げる。

2 安保条約の違いと協定の違いを分ける

「旧安保条約から新安保条約への変更」と「行政協定から地位協定への変更」は,関係するが異なる文書の比較である。武力攻撃への対処,事前協議及び安保条約の終了手続は,安保条約と関連する交換公文の問題である。米軍関係者の刑事裁判権,民事請求又は税関検査の変更とは分けて読む必要がある。

安保条約の全体像は「日米安保条約とは」で説明している。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/nichibei-anpo-jouyaku/

第2 刑事裁判権は昭和28年の改定を挟んで比較する

1 昭和27年の原行政協定

原行政協定第17条第2項は,NATO地位協定が米国について発効するまでの間,米軍の構成員・軍属・家族が日本で犯す罪について,米側の専属的裁判権を定めていた。ただし,日本国籍のみを有する家族を除き,米側による裁判権放棄の余地も定めていた。

同条第1項は,NATO地位協定が米国について発効したとき,日本の選択により,その相当規定と同様の刑事裁判権協定を締結する仕組みを置いていた。したがって,原協定の刑事裁判権規定を,昭和27年から昭和35年まで全く変わらなかったものとして説明することはできない。

2 昭和28年の第17条改定

昭和28年9月29日署名の改定議定書は,旧第17条を廃止し,新しい条文に置き換えた。議定書は署名の30日後に効力を生じると定めており,発効日は同年10月29日となる。

改定後の第17条第1項は,日本法で処罰できる日本国内の犯罪について,日本側の裁判権を認めた。第2項は一方の国だけが処罰できる罪の専属的裁判権,第3項は両国の裁判権が競合するときの第一次の権利を定めた。

競合する事件では,構成員又は軍属による公務執行中の作為・不作為から生じた罪や,専ら米国側の財産・安全・関係者の身体等だけに対する所定の罪について米側が第一次の権利を持ち,その他の罪では日本側が持つ。この基本構造は,地位協定第17条にも見られる。

また,日本が裁判権を行使すべき構成員・軍属の身柄が米側の手中にある場合,起訴まで米側が拘禁を続ける規定は,改定後の第17条第5項(c)にも存在する。裁判権の配分と起訴前の身柄の所在を,同じ問題として扱ってはならない。

3 昭和35年の地位協定と過去の事件

地位協定第17条は,昭和28年改定後の裁判権配分の基本構造を引き継いでいる。ただし,全文がそのまま同一という意味ではなく,参照する条約・条項や,発効前の犯罪に関する規定等も確認する必要がある。

同条第12項は,地位協定の発効前に犯された罪には同条を適用せず,その当時の行政協定第17条の規定を適用すると定める。行政協定が現在は終了していることと,過去の事件の適用法を調べる必要があることは両立する。

現在の身柄引渡しや公務認定には,その後の合同委員会合意等も関係する。詳しくは「日米地位協定の内容をわかりやすく解説」第3を参照されたい。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-chii-kyotei-keiji-saibanken-songai-baisho/

第3 昭和35年に変わった主な内容

外務省の『外交青書1960』は,地位協定を,行政協定の運営経験や他国の協定を参考に改善したものと説明している。以下は,その説明と両協定の条文を照合した主要な変更であり,全条文の差分を列挙したものではない。

1 施設・区域の外で執る措置

原行政協定第3条第1項は,米側が施設・区域の周辺でも,出入の便を図るために必要な権利・権力・権能を持つと定め,施設外での行使について必要に応じた両政府間の協議を求めていた。

地位協定第3条第1項は,日本政府が米側の要請と両政府間の協議を経て,関係法令の範囲内で必要な措置を執る構造に変えている。ただし,米側も両政府間の協議を経て必要な措置を執ることができるとの規定がある。施設外での米側の措置が例外なく全て禁止された,という説明では後半を読み落とす。

現在の横田空域の管制を判断する際には,この変更だけで結論せず,航空交通管制の合意や国内法も確認する必要がある。詳細は「日米地位協定と空域」で扱う。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/nichibei-chii-kyotei-kuiki-yokota/

2 税関検査,労務及び特殊契約者

論点行政協定の規定地位協定での変更
税関検査・第11条第5項命令により出入国する部隊又は構成員,軍事郵便路線上の郵便物等を検査対象から除いていた部隊として行動しない構成員や公用以外の軍事郵便物について,検査免除を縮小した。関税の免除とは別の問題である
労務・第12条日本当局の援助による労務の充足と,日本法による労働条件等を定めていた青書は間接雇用を原則とする建前を説明する。第6項には,解職後に雇用契約が存続するとの最終決定があった場合の通報・協議等の手続が追加された
特殊契約者・第14条米軍のための契約履行のみを目的に日本にいる米国の人・法人等について,証明による利益を定めていた日本政府との協議,指定できる条件及び指定の取消しを明記した。協定第1条の軍属とは別の制度である

ここでいう間接雇用は,日本政府を法律上の雇用主として労働者を使用する形態についての当時の政府説明である。基地内で働く全ての人が同じ雇用形態又は協定上の地位にあるとの意味ではない。

3 民事請求と公務の認定

原行政協定第18条第2項は,公務中の相手国の軍人・政府職員による一定の財産損害について,両国が請求権を放棄するとしていた。地位協定第18条第1項では,財産についての放棄対象を,自国が所有し防衛隊が使用するものに限定している。日本側の防衛隊は同条第11項にいう自衛隊である。

公務中であったかという民事上の争いについても,原行政協定第18条第4項の,当事国が第一次に判断し,相手国が異議を持つときは合同委員会へ付託する仕組みから,地位協定第18条第8項の仲裁へ変更された。仲裁人は同条第2項(b)に従い,司法関係の上級の地位を現在又は過去に有する日本国民から両政府の合意で選ぶ。

これは民事請求の公務認定の問題である。刑事事件における公務証明書の取扱いを定める第17条の制度とは分ける必要がある。また,公務に関する第三者請求を日本側が処理する制度自体は原行政協定にもあり,地位協定で初めて被害者の請求制度が設けられたわけではない。

4 防衛分担金と現在の駐留経費

原行政協定第25条第2項(b)には,輸送等の役務・需品の日本での調達のため,年額1億5500万ドル相当の日本通貨を米側の使用に供する規定があった。ただし,新たな取極が効力を生じるまでの規定であり,この原文の金額が行政協定の全期間を通じて固定されていたという意味ではない。

昭和35年の地位協定第24条には,この防衛分担金の条項が置かれなかった。他方,日本側による施設・区域・路線権の提供等の負担は引き続き定められた。分担金条項の削除を,日本の負担が全てなくなったことと同一視してはならない。

現在の駐留経費負担を調べる場合には,地位協定の原則,別の特別協定及び各年度の予算を確認する必要がある。「思いやり予算」と原行政協定の防衛分担金を,同じ制度の同じ数字として比較することもできない。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-chii-kyotei-churyu-keihi/

第4 国会承認の違いと砂川事件判決

1 行政協定には独立した国会承認がなかった

最高裁大法廷昭和34年12月16日判決の多数意見は,行政協定が特に国会承認を経ていないことを前提に,国会承認済みの旧安保条約第3条による委任の範囲内であると判断した。そのため,行政協定について別の承認を経なかったことを理由に違憲無効とはしなかった。該当箇所は判決PDF5頁である。

この判断を,政府が「協定」と名付ければ内容を問わず国会承認が不要になるとの一般原則に広げることはできない。また,判決は昭和35年の地位協定の署名前に出されており,後の地位協定の全条項・全運用を判断したものではない。

2 地位協定は国会承認条約である

地位協定全文の公布情報は,昭和35年6月19日の国会承認と,同月23日の承認を通知する公文交換・発効を記載する。外務省の現在の制度説明も,地位協定を国会承認条約としている。第26条第1項は,日米それぞれの国内法上の手続に従う承認を定める。

国会承認を経た協定本文と,その交渉で到達した了解を記録する合意議事録,実施に関する合同委員会合意を,同じ文書として扱ってはならない。国会承認の有無の違いと,実際の制度の妥当性・改善の評価も,別々に検討する必要がある。

第5 引き継がれた仕組みと過去の資料の読み方

1 施設の使用と合同委員会

地位協定第2条第1項(b)は,行政協定の終了時に米側が使っていた施設・区域を,新制度の下で両政府間の合意があったものとみなす。文書が切り替わったことを,その日に全ての基地が返還され,再提供されたことと説明するのは正確でない。

施設が協定の目的のため不要になったときに返還する仕組みも,行政協定と地位協定の双方の第2条にある。施設の使用条件の変更,返還,領域の主権及び施政権は区別する必要がある。

合同委員会も,行政協定第26条に既に定められていた。地位協定では第25条が根拠となる。現在の構成や合意の公開は「日米合同委員会とは」を参照されたい。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-goudou-iinkai-kengen-goui-koukai/

2 古い条番号を現在の協定へそのまま当てはめない

行政協定の第24条は敵対行為に関する協議,第25条は費用,第26条は合同委員会である。地位協定では第24条が費用,第25条が合同委員会,第26条が承認・発効である。同じ条番号でも問題が異なる。

さらに,地位協定第17条第12項と第18条第13項は,発効前の犯罪や請求権に関する旧規定の扱いを定める。過去の事件では,犯罪又は請求権が生じた時点と,当時の改定後の条文を確認する必要がある。

行政協定時代の個別合意についても,全てが現在まで同じ内容で有効,又は全てが一律に消滅したと決め付けない。公表文,その後の改正・失効の合意及び対象事項を個別に確認する。協定本文の終了と,過去の事件・個別文書の扱いを分けることが,歴史資料を現在の問題に引用する際の要点である。

第6 よくある疑問

1 地位協定は行政協定の名前を変えただけか

名称だけの変更ではない。根拠となる条約,国会承認の手続及び第3で説明した内容に変更がある。一方,施設使用や裁判権の基本構造には継続する部分もある。変化と継続を論点ごとに確認すべきである。

2 行政協定は今も米軍駐留の根拠か

行政協定は,地位協定第26条第2項により昭和35年6月23日に終了した。現在の一般的な枠組みは現行安保条約第6条と地位協定である。ただし,過去の犯罪・請求権については,第5のとおり当時の規定を調べる場合がある。

3 昭和35年の地位協定で刑事裁判権の問題は解決したか

日本側の裁判権を認める基本構造は昭和28年改定で導入され,地位協定へ引き継がれた。裁判権が認められること,第一次の権利を行使できること,起訴前に身柄を確保すること,十分な証拠を得られることは異なる。制度の変更を説明するだけで,現在の課題が全て解消したと評価することはできない。

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第8 出典

①外務省・日米行政協定及び第17条改定議定書の日本語・英語文。原協定第2条・第3条・第11条・第12条・第14条・第17条・第18条・第25条~第29条,議定書の前文・改定第17条及び発効・署名文を参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/htmls/A-S38(3)-243.html-243.html)
署名・発効情報は,条約集掲載原本第1分冊1頁も参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/A-S38(3)-243_1.pdf-243_1.pdf)

②外務省・日米地位協定全文。冒頭の公布情報,第2条・第3条・第11条・第12条・第14条・第17条・第18条・第24条~第28条及び署名欄を参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf
条文別の文書・関連情報の索引:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/

③外務省『外交青書1960』「二 平和と安全の確保」。行政協定から地位協定への主な変更の説明を参照。制度改善に関する評価は,当時の政府の説明である。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1960/s35-1-2.htm

④最高裁大法廷昭和34年12月16日判決・昭和34年(あ)第710号,刑集13巻13号3225頁。主文及び多数意見1頁~6頁,特に国会承認に関する5頁を参照。
https://www.courts.go.jp/hanrei/55816/detail2/index.html
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-55816.pdf

⑤外務省「在日米軍関連」。地位協定を国会承認条約,合意議事録を行政取極とする制度説明を参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/