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賭け麻雀と賭博罪――テンピン・一時の娯楽・常習性の判断(AI作成)

賭け麻雀について、テンピン(1000点を100円に換算する賭け方)なら適法という一般的な基準はない。刑法上の犯罪の成否、起訴するかどうかの判断、公務員に対する懲戒処分・訓告の量定は、それぞれ区別する必要がある。

本記事は、刑法、政府答弁書及び最高裁判決に基づき、この区別を整理する。黒川弘務元東京高検検事長の事件の経緯は、黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題を参照されたい。

第1 賭け麻雀はどのような場合に賭博罪となるか

1 刑法185条の基本構造

刑法185条は、賭博をした者について50万円以下の罰金又は科料を定め、ただし書で「一時の娯楽に供する物」を賭けたにとどまる場合を除外している。

平成18年12月19日付の政府答弁書は、偶然の勝敗により財物の得喪を争う場合に賭博罪を構成するとの一般論を示している。麻雀に技量の差があるという事情だけで、金銭を賭ける行為が当然に適法となるわけではない。

2 具体的な行為と証拠を確認する

令和2年6月5日付及び同月9日付の政府答弁書は、犯罪の成否は、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄としている。麻雀をしたという事実だけではなく、何を賭け、どのように勝敗と金銭等の得喪を結び付けていたのかを確認する必要がある。

3 現金の授受前でも成立する場合がある

法務省刑事局作成の令和2年5月26日答弁資料(当ブログ掲載PDFの76ページ)は、最高裁昭和37年6月26日決定を紹介している。その引用部分では、認定された事実関係の下で金銭を賭けて麻雀遊戯をした以上、勝敗や賭け金の授受に至らなくても、賭博罪の成立に欠けるところはないとしている。

ここで確認したのは、法務省の答弁準備資料に掲載された決定の引用部分である。決定原本の全文を直接確認した紹介ではない。この資料からも、現金を受け渡していないことだけを適法性の根拠とする説明は避ける必要がある。

第2 テンピンと「一時の娯楽に供する物」

1 少額であることと犯罪の成否を分ける

テンピンは換算方法を示す呼称であり、適法性を保証する制度上の区分ではない。賭け金が少額かどうかと、刑法185条ただし書に当たるかどうかは別の問題である。

「一時の娯楽に供する物」という条文を、娯楽目的なら金銭を賭けてもよいという意味に読み替えることはできない。実際の勝敗・精算方法や賭けた対象を確認する必要がある。

平成5年3月29日の参議院法務委員会会議録では、警察庁の説明員が、金銭は金額の多少にかかわらず一時の娯楽に供する物とはいえないとする判例について説明している。また、法務省の政府委員は、賭け麻雀の犯罪の成否を踏まえ、犯情や前科前歴、反省の有無等を総合して公訴提起を判断するとの実務を説明している。犯罪が成立するかと、実際に起訴するかは区別される。

2 「必ずしも高額とはいえない」という答弁の射程

令和2年6月5日付の政府答弁書及び同月9日付の政府答弁書は、黒川氏の賭け麻雀についての「必ずしも高額とはいえない」との国会答弁を、懲戒処分又は監督上の措置の量定に関する説明としている。犯罪の成否について述べたものではない。

6月9日付答弁書は、1000点を100円に換算する賭け方だけについて、必ずしも高額とはいえないとの見解を示したものでもないと説明している。これらの答弁を根拠に、テンピンが法務省によって適法とされたと理解することはできない。

第3 常習賭博罪の常習性は何によって判断されるか

1 賭博の前科は必須ではない

最高裁昭和25年3月10日判決は、常習性を、賭博を繰り返す習癖の問題としている。賭博の前科があることは必須ではない。

判断に当たっては、賭博の種類、賭け金の額、行われた期間・回数、前科の有無等の事情を総合的に検討する。同判決も、具体的な証拠に基づく原審の常習性の認定を是認している。

2 回数だけで自動的に決まるわけではない

この判決から、月に何回なら必ず常習賭博罪となるという一律の基準を導くことはできない。他方、前科がないことや友人同士であることだけで常習性が否定されるわけでもない。期間・頻度・態様等を具体的な証拠と結び付けて判断する問題である。

3 現在の法定刑と過去の事件

現在の刑法186条1項は、常習賭博について3年以下の拘禁刑を定めている。令和7年6月1日の拘禁刑導入前の条文及び昭和25年の判決では「懲役」という用語が用いられている。過去の資料の刑名と現在の条文を混同しないことが必要である。

第4 黒川氏の事件では何が判断されたか

1 人事上の判断と刑事上の判断

令和2年6月9日付政府答弁書は、法務省の調査では黒川氏が人事院の懲戒処分指針にいう「常習として賭博をした職員」に該当するとは認められなかった、と説明している。これは人事上の措置についての政府の説明であり、裁判所が刑法186条1項の常習性を否定した判決ではない。

訓告は法務省の内規に基づく監督上の措置である。国家公務員法上の懲戒処分である免職・停職・減給・戒告とは区別される。処分の検討経緯は、訓告処分に関する内閣答弁書に整理している。

2 不起訴と適法性も別である

起訴猶予という処分は、行為が適法であることを意味しない。黒川氏の事件については、その後の再捜査・略式請求を経て、令和3年3月25日付で罰金20万円の略式命令が出たことが、同年4月2日の衆議院法務委員会会議録で取り上げられている。

略式命令の原本を掲載したものではないため、本記事では会議録で確認できる経緯として紹介する。常習賭博罪についての有罪判決が出た、という説明に置き換えることはできない。

第5 関連記事と資料の使い分け

黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題は事件の経緯と関連する行政資料、訓告処分に関する内閣答弁書は政府の説明、検察官に対する懲戒処分及び監督上の措置は他の処分事例を調べるための記事である。

刑法上の犯罪の成否を検討するときは、条文と裁判例を起点にする。過去の国会答弁は、その答弁が刑事責任・人事上の措置のどちらを説明しているのかを確認して読む必要がある。