第1 高卒で裁判所事務官を目指すときの確認順序
高校卒業見込みの人や卒業後間もない人は,裁判所職員採用一般職試験の高卒者区分を確認することになる。
ただし,「高卒」という最終学歴だけで受験資格は決まらない。
卒業日等の条件があり,高卒者区分の受験と,採用後に裁判所書記官を目指すための入所試験も別の制度である。
まず受験資格,次に試験科目と日程,その後に勤務希望地・給与・採用後の進路を確認すると,自分が選ぶ経路を整理しやすい。
本記事は,令和8年10月10日に確認した裁判所の公式案内を基に,高卒者区分を中心に説明する。
令和8年度の申込受付と第1次試験は既に終了している。
裁判所事務官の職務の全体像は,裁判所事務官とは―仕事内容,書記官との違い,採用と働き方を,試験区分全体の比較は,裁判所職員採用試験とはを参照されたい。
第2 受験資格は卒業日と受験年度を照合する
1 令和8年度の高校卒業者・卒業見込み者
(1) 卒業日と年度の基準日を確認する
令和8年度の受験案内2頁によれば,主な対象は,令和8年4月1日において,高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者と,令和9年3月までに卒業する見込みの者である。
同案内は,前者について令和6年4月1日以降の卒業者が該当すると説明する。
(2) 受験資格となる学歴と最終学歴を区別する
卒業後に進学又は就職した場合も,最終学歴の名称だけで判断せず,受験資格となる卒業日を確かめる必要がある。
案内9頁のフローチャートは,「受験資格となる学歴」と「最終学歴」を分けて示している。
例えば,令和7年3月に高校を卒業し,令和9年3月に専修学校専門課程を修了する見込みの例では,受験資格となる学歴は高校卒業,最終学歴は専門学校修了見込みとして扱われる。
高校卒業から何年も経過している人が,高卒という理由だけでこの区分を受験できるわけではない。
翌年度に受験する場合は,令和8年度の卒業日をそのまま使わず,当該年度の受験案内で確認する必要がある。
2 高校卒業以外の資格と,受験できない場合
最高裁判所が高校卒業者等に準ずると認める者にも資格がある。
令和8年度の案内は,中学校卒業後2年以上5年未満の者で主な卒業要件に該当しない者,高等専門学校の第3学年修了者等,専修学校の指定された高等課程の修了者等,高等学校卒業程度認定試験の合格者等の例を挙げる。
それぞれに基準日や修了・合格からの期間等の条件がある。
自分の学校・課程・修了時期が例に当てはまるか曖昧な場合は,受験資格の詳細資料と案内9頁のフローチャートを確認し,申込前に案内掲載の問合せ先へ確認すべきである。
高卒認定に合格した事実だけで,期間条件まで満たすとは限らない。
また,日本国籍を有しない者,国家公務員法38条の規定に該当する者は受験できないとされる。
学歴に関する条件とは別に確認する必要がある。
3 高卒者でも大卒程度区分を確認する場合
裁判所の採用Q&Aは,大卒程度区分の総合職・一般職について,試験年度の4月1日に21歳以上30歳未満であれば,学歴に関係なく受験できると説明する。
21歳未満の場合の資格は試験の種類によって異なる。
したがって,高卒者区分の卒業時期の条件を満たさない人も,生年月日等によっては大卒程度区分を検討できる。
ただし,大卒程度区分では試験科目・難易度の水準・申込時期等が異なる。
「大卒程度」は大卒の学歴を取得したことを意味せず,高卒者区分と同じ準備で受験できるという意味でもない。
第3 高卒者区分の試験科目と合格者の決め方
1 基礎能力・作文・人物試験を分けて準備する
令和8年度の高卒者区分の受験案内2頁は,次の3種目を掲げる。
大卒程度区分にある憲法・民法等の専門試験の構成と混同してはならない。
| 試験種目 | 内容・時間 | 配点比率 |
|---|---|---|
| 基礎能力試験 | 多肢選択式45題。知能24題・知識21題。1時間40分 | 9/20 |
| 作文試験 | 文章表現力,課題の理解力等をみる記述式1題。50分 | 3/20 |
| 人物試験 | 人柄・資質・能力等をみる個別面接 | 8/20 |
基礎能力試験と作文試験は第1次試験日に実施される。
ただし,作文の評定は第1次試験の合格者決定には使われず,最終合格者を決める際に他の試験種目の成績と総合される。
第1次合格後から作文の準備を始めればよいという日程ではない。
筆記の準備では,まず裁判所「試験問題」の高卒者区分を選び,基礎能力と作文を別に確認する。
公式問題の探し方と復習方法は,裁判所事務官の過去問と勉強の進め方にまとめている。
2 配点比率と素点・標準点は同じではない
公式の合格者決定方法は,希望勤務地を管轄する高等裁判所ごとに区分して判定すると説明する。
筆記試験では,素点をそのまま合計するのではなく,平均点・標準偏差と配点比率を用いて算出した標準点が使われる。
人物試験にも判定に基づく標準点がある。
第1次合格者は基礎能力試験の標準点順に決められる。
最終合格者は,作文の素点が下限以上で,人物試験の判定がAからCの受験者について,全種目の標準点の合計順に決められる。
作文の下限は満点の20%から50%を基本に定めるとされるため,その幅の特定の数字を一律の合格基準とはできない。
高裁別の最終合格最低点,作文の下限の得点及び基礎能力の正答数は別の情報である。
過年度資料を利用する際の注意は,裁判所職員採用試験の倍率・合格最低点・採用者数を参照されたい。
第4 申込み・試験日程・面接で確認すること
1 令和8年度の日程と,これから受験する人の確認先
| 手続・試験 | 令和8年度の日程 |
|---|---|
| 申込受付 | 7月1日午前10時~7月10日。終了済み |
| 第1次試験 | 9月13日。終了済み |
| 第1次合格発表 | 10月6日 |
| 第2次・人物試験 | 10月16日~10月29日の指定日(土日を除く) |
| 最終合格発表 | 11月13日 |
上表は令和8年度の受験案内1頁を基にした日程である。
人物試験の自分の受験日は人物試験受験票で確認する。
翌年度の日程として流用せず,裁判所「受験案内」と採用情報の最新のお知らせを確認する必要がある。
申込みは事前登録と申込受付の2段階であり,事前登録だけでは完了しない。
令和8年度の案内4頁は,顔写真のアップロードや受験票のダウンロード・スマートフォンへの保存についても期限を定める。
受験する年度の方式・期限を確認し,登録の完了と必要ファイルの保存まで済ませる必要がある。
2 面接では,採用時の事務官の仕事を理解する
裁判所の採用Q&Aは,人物試験を裁判所職員としての適格性を判断するものとし,専門科目等の知識を問う試験ではないと説明する。
他方,仕事を調べずに「法律に関わりたい」とだけ答える準備では,採用時の職務を具体的に説明しにくい。
事務官は裁判部で裁判事務を補助するほか,事務局で総務・人事・会計等も担当する。
書記官を将来の目標としていても,まず事務官として担う仕事と,自分の学校生活・アルバイト・協働経験をどう結び付けるかを整理するとよい。
これは準備の提案であり,公式の質問集又は採点基準ではない。
面接カードの各項目,個人の活動と協働経験の分け方,説明の一貫性は,裁判所事務官の面接対策を参照されたい。
第5 勤務地・採用・給与を確認する
第1次の筆記試験地は,希望する勤務地にかかわらず選べるが,人物試験地は希望勤務地を管轄する高裁管内から選ぶ。
令和8年度高卒者区分の案内3頁では,第1次試験地が希望高裁管内にある場合,第2次の試験地を第1次と異なる場所にはできないとされる。
筆記の受験地を選ぶことと,勤務地を選ぶことは別である。
最終合格すると高裁管内ごとの採用候補者名簿に登載され,推薦・採用諾否の意向照会等を経て採用される。
令和8年度の案内5頁は,原則として令和9年4月1日採用とする一方,希望勤務地や欠員状況によっては名簿の有効期間内に推薦・採用されない場合があると説明する。
詳しくは,最終合格した後の手続を参照されたい。
同案内6頁の高卒者区分の初任給は,令和8年4月1日現在,東京都特別区内に勤務する場合の例として月額24万360円である。
全国共通の手取りではない。
初任給と諸手当・賞与の読み方は,給料・年収の記事を,採用後の勤務範囲は,転勤・異動の記事を参照されたい。
第6 高卒採用から書記官を目指す進路
高卒者区分の受験案内6頁は,事務官として一定期間在職した後,書記官養成課程の入所試験を受験できると説明する。
高校卒業者の事務官採用試験と,採用後に書記官を目指す試験は同じではなく,採用だけで自動的に書記官になるものでもない。
裁判所職員総合研修所規程4条3項は,第二部の対象として,法学部以外の大学・短期大学の卒業者等のほか,最高裁判所が短期大学卒業者と同等以上の学力を有すると認める者等を定める。
「高卒採用者は全員,無条件に第二部へ入所できる」と読み替えることはできない。
入所試験の受験資格と学力の認定等を確認する必要がある。
同規程7条の原則的な入所期間は,第一部が1年,第二部が2年である。
採用区分,入所資格,入所試験,養成課程を分けて将来の進路を考えるべきである。
制度の詳細は,裁判所職員総合研修所を参照されたい。
第7 出典・関連資料
① 令和8年度一般職試験・高卒者区分の受験案内(1頁~6頁,9頁)
② 高卒者区分の受験資格の詳細
③ 高卒者区分の合格者決定方法
④ 裁判所「採用Q&A」
⑤ 裁判所職員総合研修所規程(4条,6条,7条)
⑥ 裁判所職員の記事一覧