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国地方係争処理と代執行訴訟―地方自治法の手続・高裁の専属管轄・出訴期間(AI作成)

第1 国地方係争処理と代執行訴訟の違い

国地方係争処理は,地方公共団体がその事務に関する国の関与を争うための制度である。
これに対し,地方自治法245条の8の代執行等は,法定受託事務の違法な処理等について,勧告,指示及び高等裁判所の命令を経て,所管大臣が都道府県知事に代わって必要な事項を行う制度である。
国が自治体の不作為の違法確認を求める同法251条の7の訴えもあるが,違法確認判決だけで大臣が知事に代わって処分する権限を得るわけではない。

以下では,令和8年10月9日に確認した地方自治法及び普通地方公共団体に対する国の関与等に関する訴訟規則に基づき,国の関与の取消し,国の不作為の違法確認,自治体の不作為の違法確認及び代執行のための命令請求を区別する。
辺野古をめぐる裁判例は,これらの手続が実際に使われた例として取り上げる。

手続誰が何を求めるか主な根拠・特徴
国の関与の取消し・国の不作為の違法確認自治体の長等が,審査申出の相手方となった国の行政庁を被告にする。251条の5。委員会への審査申出を経る。自治体の区域を管轄する高裁の専属管轄。
自治体の不作為の違法確認是正の要求・指示をした大臣が,措置を講じない自治体の行政庁を被告にする。251条の7。自治体側の申出・提訴期間が経過するまで提訴できない。
代執行のための命令請求所管大臣が,知事に必要な事項を行うよう命じる判決を求める。245条の8第3項。法定受託事務が対象。勧告・指示を経て提訴し,命令不履行後に代執行できる。

第2 国地方係争処理委員会への審査申出

1 対象となる国の関与と対象外の行為

国地方係争処理委員会は,総務省に置かれ,国の行政機関による関与に関する審査申出を処理する機関である(地方自治法250条の7)。
同法250条の13第1項は,普通地方公共団体の長その他の執行機関が,担任する事務に関する是正の要求,許可の拒否その他の処分・公権力の行使に不服がある場合に,関与を行った国の行政庁を相手方として文書で審査を申し出ることができると定める。
国の不作為については同条2項,法令に基づく協議が調わない場合については同条3項の制度がある。

国が行った行為であれば全て対象になるわけではない。
地方自治法245条は,自治体が固有の資格において名宛人となる関与を定義し,支出金の交付・返還に係るものを除くほか,同条3号括弧書きで審査請求等に対する裁決等を除いている。
また,同法250条の13第1項各号は,代執行手続における同法245条の8第2項の指示や,同条8項に基づいて知事に代わって事項を行うこと等を審査申出の対象から除いている。

特に,同法245条の7の「是正の指示」と,同法245条の8第2項の代執行手続中の指示は,条文と不服の処理方法を分けて確認する必要がある。
後者についても前者と同じ委員会手続を必ず経る,という理解は正確ではない。

2 30日の申出期間と90日の審査期間

同法250条の13第1項の審査申出は,国の関与があった日から30日以内に行うのが原則である(同条4項)。
天災その他やむを得ない理由がある場合の例外,同理由がやんだ日から1週間以内という期間及び郵送等に要した日数の扱いは,同条4項ただし書から6項に定められている。
申出に先立って,相手方となる国の行政庁への通知も必要である(同条7項)。

委員会は,申出があった日から90日以内に審査及び勧告を行う(同法250条の14第5項)。
自治事務については違法性に加え,自治体の自主性・自立性を尊重する観点からの不当性を審査するのに対し,法定受託事務については違法性を審査する(同条1項・2項)。
委員会が勧告した場合,国の行政庁は勧告に示された期間内に必要な措置を講じ,委員会へ通知する(同法250条の18)。

第3 自治体側の訴え―地方自治法251条の5

1 取消しと国の不作為の違法確認

同法250条の13第1項又は2項による審査申出をした自治体の長等は,委員会の審査結果・勧告や国の措置に不服がある場合等に,高等裁判所へ訴えを提起できる(同法251条の5第1項)。
求めるのは,審査申出に係る違法な国の関与の取消し,又は審査申出に係る国の不作為の違法確認であり,委員会の判断それ自体を被告として争う制度ではない。
被告は原則として審査申出の相手方となった国の行政庁であり,権限の承継や被告とすべき行政庁がない場合の扱いも同項に定められている。

協議が調わない場合の同法250条の13第3項の審査申出を,そのまま同法251条の5第1項の提訴要件と同じに扱うことはできない。
同項が提訴の前提として掲げるのは,同法250条の13第1項又は2項による申出である。

2 出訴期間は起算点別に確認する

同法251条の5第2項の出訴期間は,下表のとおりである。
最初の関与から一律に30日ではなく,委員会の通知,国の措置に係る通知又は法定期間の経過を起算点とする。

提訴できる場合出訴期間
委員会の審査結果又は勧告に不服がある。審査結果又は勧告内容の通知があった日から30日以内。
勧告を受けた国の行政庁の措置に不服がある。その措置についての委員会の通知があった日から30日以内。
申出から90日経過しても委員会が審査又は勧告をしない。申出の日から90日を経過した日から30日以内。
国の行政庁が勧告に基づく措置を講じない。委員会の勧告に示された期間を経過した日から30日以内。

関与の日,申出の日,各通知の日及び勧告に示された期間を,文書と受領記録に結び付けて整理する必要がある。
30日の審査申出期間,90日の委員会審査期間及び30日の出訴期間を,一つの期限として管理してはならない。

第4 国側の不作為違法確認―地方自治法251条の7

同法245条の5第1項若しくは4項による是正の要求,又は同法245条の7第1項若しくは4項による指示を行った大臣は,法定の条件の下で,措置を講じない自治体の行政庁を被告として,不作為の違法確認を求めることができる(同法251条の7第1項)。
対象は,相当の期間内に是正要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じなければならないのに,これを講じない不作為である。

同項は,①自治体側が審査を申し出ず措置も講じない場合,②審査を申し出たが委員会の通知後に取消訴訟を提起せず措置も講じない場合,③委員会が90日を経過しても審査等をせず,自治体側が取消訴訟を提起せず措置も講じない場合等を定める。
審査申出・訴えの取下げの扱いも同項に含まれる。
大臣側は自治体側の法定の申出・提訴期間が経過するまで提訴できない(同条2項)。

この訴えの判決が直接命じるのは「違法の確認」である。
代わって処分を行うための同法245条の8の要件・段階まで満たしたことにはならず,両訴訟の効果を区別する必要がある。

第5 代執行等―地方自治法245条の8

1 法定受託事務と三つの実体的要件

都道府県知事に対する同条の措置は,所管大臣の所管法律・政令に係る知事の法定受託事務の管理・執行について,①法令若しくは大臣の処分への違反,又は事務の管理・執行を怠ること,②同条1項から8項までの措置以外で是正することが困難であること,③放置すると著しく公益を害することが明らかであることを要する(同条1項)。
是正の指示が適法と判断されたことだけで,補充性や公益侵害の要件まで自動的に満たされる制度ではない。

ここでいう代執行は,地方公共団体の事務を代わって行う制度である。
私人の代替的作為義務を対象とする行政代執行法の手続や,私人が行政庁に処分を求める義務付け訴訟と,根拠・対象・原告を混同してはならない。

2 勧告・指示・命令判決・代執行の順序

① 所管大臣は,文書で違反等を指摘し,期限を定めて是正等を勧告する(1項)。
② 知事が期限までに勧告事項を行わないときは,大臣は文書で期限を定めて実行を指示できる(2項)。
③ 知事が指示の期限までに事項を行わないときは,大臣は高裁へ訴えを提起し,その事項を行うよう命じる裁判を求められる(3項)。
④ 高裁は請求に理由があると認めるとき,知事に期限を定めて事項を行うよう命じる(6項)。
⑤ 知事が判決の期限までになお事項を行わないとき,大臣は事前に日時・場所・方法を通知して,知事に代わって事項を行うことができる(8項)。

同法251条の7の違法確認判決を,③の命令判決の代わりに用いることはできない。
また,同法245条の7の是正の指示と,上記②の指示は別の規定であるため,手続経過を記載するときは条項を明示すべきである。

3 上告と代執行後の処理

命令請求訴訟の高裁判決に対する上告期間は1週間であり,上告には執行停止の効力がない(同条9項・10項)。
したがって,上告したことと,代執行が当然に止まることは同じではない。

大臣の請求に理由がない旨の判決が確定した時に既に代執行が行われている場合,知事は判決確定後3か月以内に,処分取消し,原状回復その他必要な措置を執ることができる(同条11項)。
市町村長の法定受託事務については,同条12項の準用と読替えを確認する必要がある。

第6 高裁の専属管轄と迅速な審理

1 高裁が第一審となる

同法251条の5第1項の訴えは自治体の区域を管轄する高裁の専属管轄であり,同法251条の7の訴えにもその規定が準用される(251条の5第3項,251条の7第3項)。
同法245条の8第3項の命令請求訴訟も,都道府県の区域を管轄する高裁の専属管轄である(245条の8第7項)。
沖縄県に関する後記裁判例では,福岡高裁那覇支部が控訴審ではなく第一審として審理している。

一般の取消訴訟で問題となる行政事件訴訟法12条の地裁の管轄や「特定管轄裁判所」とは,根拠も裁判所の審級も異なる。
通常の取消訴訟の提訴先と高裁支部所在地の扱いは,行政事件訴訟の特定管轄裁判所を参照されたい。

2 提訴後の通知・15日以内の初回期日・理由書

同法251条の5の原告は,提訴後直ちに被告へ文書で通知し,通知の日時・場所・方法を高裁へ知らせる(同条4項)。
高裁は提訴から15日以内の日を口頭弁論期日として指定する(同条5項)。
これらは同法251条の7の訴えにも準用され,代執行の命令請求訴訟にも対応する規定がある(251条の7第3項,245条の8第4項・5項)。
「15日以内」は初回の口頭弁論期日の指定についての規定であり,判決を15日以内に言い渡すという意味ではない。

訴訟規則1条は,訴状に請求の根拠となる法令を記載し,証拠となる文書の写しを添付することを求める。
同規則2条は,主張及び証拠の申出を全て最初の口頭弁論期日に行うことを原則とし,裁判所の許可がある場合を例外としている。
受領文書,審査の申出,委員会の通知,勧告・指示及び措置の経過を,提訴前から整理する必要がある。

同法251条の5第6項の上告期間も1週間であり,同法251条の7に準用される。
訴訟規則3条は,上告理由書及び上告受理申立て理由書の提出期間を10日とする。
上告の期間と理由書の提出期間を混同せず,送達書類と裁判所の通知に従って管理する必要がある。

同法251条の5第8項・9項,251条の7第4項及び245条の8第14項には,行政事件訴訟法の準用に関する特則がある。
一般の取消訴訟の被告,出訴期間及び執行停止等の規定を,これらの訴えへ一括して当てはめることはできない。

第7 辺野古裁判で見る手続の使い分け

1 平成28年―国側の不作為違法確認

最高裁平成28年12月20日第二小法廷判決(平成28年(行ヒ)第394号,民集70巻9号2281頁)は,地方自治法251条の7第1項の不作為違法確認訴訟である。
委員会の通知後,知事が法定期間内に是正の指示の取消訴訟を提起せず,承認取消しを取り消さなかったため,大臣側が提訴した。
最高裁は,上告を棄却し,知事が指示に係る措置を講じないことを違法とした原審の結論を是認した。

同判決が本件で認めた「相当の期間」は,本件指示の内容とそれまでの事実経過を踏まえた判断である。
あらゆる是正の指示について,1週間経過すれば必ず不作為が違法になる,という一般的な期限を定めたものではない。

2 令和2年―裁決と「国の関与」の区別

最高裁令和2年3月26日第一小法廷判決(令和元年(行ヒ)第367号)は,埋立承認取消しを取り消す裁決について,地方自治法251条の5による取消しを求めた事件である。
最高裁は,沖縄防衛局が埋立承認等の相手方となる立場は行政不服審査法7条2項の固有の資格には当たらないとし,本件裁決が国の関与から除かれる裁決等に当たるとの原審判断を維持した。

同判決は,他方で,国の機関等が固有の資格で相手方となる処分に対して,行政不服審査法に基づくものとして裁決がされた場合の扱いも説明している。
したがって,「裁決という名称なら例外なく国の関与でない」とだけまとめると,判示の条件を落とすことになる。

3 令和5年9月―自治体側の是正指示取消訴訟

最高裁令和5年9月4日第一小法廷判決(令和5年(行ヒ)第143号)は,地方自治法251条の5第1項1号に基づく是正の指示の取消請求事件である。
変更不承認を取り消す裁決後も,知事が同じ理由に基づいて変更を承認しないことについて,同法245条の7第1項所定の法令違反に該当すると判断し,上告を棄却した。
令和2年判決で争われた裁決の取消しと,この事件で争われた是正の指示の取消しは,対象行為が異なる。

4 令和5年12月―代執行のための承認命令

福岡高裁那覇支部令和5年12月20日判決(令和5年(行ケ)第5号)は,地方自治法245条の8第3項に基づく変更承認命令請求事件である。
同判決は,法令違反等,補充性及び公益侵害の各要件を検討し,知事に変更承認を命じた。
主文の期限は,判決正本の送達を受けた日の翌日から起算して3日以内であり,行政機関の休日に関する法律1条1項の休日を除くとされている。

この「3日」は個別判決が設定した履行期限であり,地方自治法が全ての代執行事件に一律に定めた期限ではない。
同判決は代執行の要件を満たすと判断する一方,付言では,国の関与を必要最小限とし自治体の自主性・自立性に配慮する原則を踏まえ,相互理解に向けた対話による抜本的解決を望む旨を述べている。
訴訟上の結論と,政策上の対立が解消したことは別である。

第8 確認する文書と関連制度

手続を選ぶ際は,①争う対象となる行為と根拠条項,②自治事務・法定受託事務の区分,③申出人・原告・被告,④審査申出の対象除外,⑤起算点を示す受領記録,⑥審査申出・提訴・上告の各期限,⑦判決が確認するのか命じるのか,を順に確認する必要がある。
裁決,是正の指示,代執行手続中の指示及び実際の代執行を,まとめて一つの「国の処分」と呼ぶだけでは,手続の違いが分からなくなる。

都道府県の関与を市町村側が争う場合は,同法251条の3の自治紛争処理委員による審査と,同法251条の6の訴えを確認する。
市町村の不作為に関する都道府県側の訴えは,同法252条に定められている。
これらを国地方係争処理委員会が直接処理する国の関与の制度と同一視してはならない。

第9 関連記事

高裁支部の一覧,担当区域及び第一審として扱う事件は,高等裁判所支部で整理している。
通常の取消訴訟の提訴先は,行政事件訴訟の特定管轄裁判所,辺野古をめぐる政策・工事の経緯は,普天間飛行場の返還合意と辺野古代替施設を参照されたい。

第10 出典

① e-Gov法令検索「地方自治法」(245条,245条の7・8,250条の7・13・14・18,251条の5・6・7,252条)
② 裁判所「普通地方公共団体に対する国の関与等に関する訴訟規則」(平成12年最高裁判所規則第4号,平成25年最高裁判所規則第1号による改正を掲載)
③ 最高裁平成28年12月20日第二小法廷判決・全文
④ 最高裁令和2年3月26日第一小法廷判決・全文
⑤ 最高裁令和5年9月4日第一小法廷判決・全文
⑥ 福岡高裁那覇支部令和5年12月20日判決・全文