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裁判所支部の機能拡充と地域司法アクセス―新設・弁護士偏在・デジタル化の課題(AI作成)

第1 裁判所支部の機能拡充とは何か

1 支部の数と利用できる機能は別である

裁判所支部の機能拡充とは,支部を新設することだけでなく,既存支部で取り扱える事件,裁判官・調査官の配置,開廷や相談の機会,設備及び手続利用の支援を充実させることである。
支部が近くにあっても,必要な事件を本庁でしか扱わず,開廷日が限られ,必要な調査が別の庁からの出張に依存する場合には,地域住民の利用に負担が残る。

他方,専門的な事件を特定の庁で取り扱うことには,人員と経験を確保する意義もある。
身近な場所で利用できることと,適切な事件処理を行う体制をどう両立するかが,地域司法アクセスの課題である。

2 現在の組織数と取扱事件

裁判所データブック20261頁によれば,地裁支部・家裁支部は各203庁である。
このうち合議事件を扱う支部は地裁・家裁ともに63庁,少年保護事件の審判事務を扱う家裁支部は102庁である。
支部の存在と,すべての事件類型を支部で扱うこととは一致しない。

全国の支部名と権限は,地方裁判所支部及び家庭裁判所支部を参照されたい。
個々の事件での提出先・本庁集約・開廷頻度は,全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度で扱っている。

第2 支部新設と人員配置に関する裁判所側の説明

1 新設・復活は人口だけで決まらない

平成27年5月22日の衆議院法務委員会答弁は,支部を含む裁判所の配置について,人口動態,交通事情,事件数の動向,IT技術の進展等を考慮し,アクセスと司法サービスの質を総合して,国民の利便性を確保する見地から検討するものと説明した。
当時,複数地域に設置要望があることを認識しつつ,直ちに新設・復活が必要な状況とは考えていないと答弁し,必要があれば新設・統廃合を含めて見直すとしている。

これは平成27年当時の答弁であり,個々の地域の現在の人口,交通事情,事件動向についての判断を示すものではない。
支部新設の必要性を検討するには,最新の地域資料を基に,実際に司法サービスを利用する人の負担まで確認する必要がある。

2 非常駐庁は近隣庁からの出張で対応するという説明

令和7年4月10日の参議院法務委員会答弁は,裁判官又は家裁調査官が常駐していない庁では,近隣庁に配置された職員が実情に応じて出向き,事件を担当する体制を取っていると説明した。
全支部への裁判官常駐については,国の予算で運営する公的機関として,業務量に見合った配置を考える必要があるとの立場を述べている。

この説明から,裁判所側が業務量を配置判断の要素にしていることは分かる。
しかし,個別支部の必要人数,出張の十分性,利用者が希望する時期に手続を利用できるかは,この答弁だけでは判断できない。
定員,実際の在籍人数,担当裁判官,開廷日割を区別して調べる必要がある。
下級裁判所の裁判官の配置定員も参照されたい。

第3 家裁支部・家裁出張所での課題

1 家裁調査官の配置と出張による対応

令和8年4月14日の衆議院法務委員会答弁では,家裁調査官が配置されている支部は203庁中113庁,約55%とされた。
同日の答弁は,調査官が配置されていない庁では,近隣庁の調査官が出向くなどして対応すると説明している。

ここでいう配置庁数だけから,調査の質や待ち時間を評価することはできない。
子どもの意向調査,家庭状況の調査等が必要な事件では,担当者との面接方法,調査場所,実施時期を具体的に確認する必要がある。
職務の内容は,家庭裁判所調査官とは―仕事内容,家事・少年事件の調査と調査報告書で説明している。

2 受付出張所でも出張調停等が行われる

同日の答弁によれば,家裁出張所77庁のうち57庁は家事審判・家事調停等を自庁で処理し,20庁はいわゆる受付出張所である。
受付出張所では,受付事務のほか,裁判官又は調停委員会が出張して行う家事審判・家事調停の事務も取り扱う。
令和7年の受付出張所20庁への出張回数は合計221回,出張調停等を行った回数は合計399回と説明された。

この二つの数字は集計対象が異なり,一回の出張と一件の調停を同じ単位として扱うことはできない。
全国合計を20庁で割った値を,特定の出張所の開廷頻度として示すことも適切ではない。
近くの出張所で手続を希望するときは,その場所で審理できる事務,出張実施の判断,利用できる日を担当裁判所に確認する必要がある。

3 日弁連が求める人的・物的基盤の充実

日本弁護士連合会の令和5年10月6日の家裁改善・充実決議は,全家裁支部への裁判官の常駐,家裁調査官の増員,児童室やバリアフリー等の環境整備,出張所の運用改善等を求めている。
子ども,高齢者,障害者等が,身近な場所で必要な司法サービスを利用できることを重視する提言である。

この決議に記載された当時の配置数と,令和8年の国会答弁に記載された配置数は,資料の時点と対象を分けて読む必要がある。
決議が採択されたことを,そこで求めた措置がすべて実施されたことの証明として扱ってはならない。

第4 弁護士ゼロ・ワン支部と司法アクセス

1 ゼロ・ワン支部の意味と最新の地図

弁護士ゼロ・ワン支部は,地裁支部の管轄地域を単位として,弁護士が全くいない地域又は一人しかいない地域を指す。
裁判官が常駐していない支部とは,別の分類である。

日弁連の弁護士ゼロワンマップは,令和8年4月1日現在,弁護士ゼロ支部0か所,ワン支部1か所とし,ワン支部として岡山地裁新見支部を示している。
これは同日現在の地域区分による人数の指標であり,各市町村の相談体制や個別事件の受任可能性を網羅する資料ではない。

2 人数の改善だけではアクセスの充足を判断できない

弁護士が複数いる地域でも,事務所の所在地,交通手段,相談できる分野,費用,利益相反等によって,依頼先への到達には違いが生じる。
支部管内全体の人数と,利用者が実際に相談・依頼できることとは分けて検討する必要がある。

裁判所側の担当体制が整っていても相談・依頼先へのアクセスが難しい場合があり,弁護士側の体制が整っていても必要な裁判手続が本庁に集約されている場合がある。
裁判所配置と弁護士偏在を一つの人数で説明せず,両面から地域の利用環境を確認することが重要である。

第5 民事裁判のデジタル化は何を改善し,何を残すか

1 民事訴訟のデジタル化と他の手続の区別

裁判所の民事裁判手続デジタル化の案内は,令和8年5月21日施行の改正民事訴訟法等による手続を説明している。
オンライン申立てやウェブ会議の利用は,書類提出や期日参加に伴う移動負担を軽減する可能性がある。

一方,同案内は,民事執行,倒産,労働審判等の非訟手続,人事訴訟及び家事事件手続は,令和8年5月21日施行のオンライン申立て等の対象外と説明している。
民事訴訟のオンライン化を,支部で扱うすべての手続のオンライン化と理解してはならない。
手続の種類と開始時点によって,適用制度と利用方法を確認する必要がある。

2 機動的審理運営と地域司法への影響

東北弁護士会連合会の令和8年7月3日決議は,裁判官が事件係属庁にいない日でもオンライン機器で手続を進める機動的審理運営に,柔軟な期日開催という補助的な意義を認める一方,恒常化による地域司法の存在感の希薄化や施設統廃合への懸念を述べている。
これは同連合会の評価と要請であり,そのような施設統廃合が決定されたことを示す資料ではない。

制度・運用の根拠は,民事訴訟の機動的審理運営とはを参照されたい。
技術によって期日の開催機会を増やすことと,裁判官・調査官の地域での継続的な活動を確保することを,別々に評価する必要がある。

3 対面の必要性と利用支援

デジタル化の利便性は,機器,通信環境,操作能力,手続の性質等に左右される。
日弁連の令和5年家裁決議も,子どもの心情・意向調査等の直接対面の意義と,ITを利用することが難しい人への配慮を指摘している。

地域司法アクセスを検討するときは,オンラインで代替できる場面を増やすだけでなく,紙による手続や対面での利用が必要な人について,窓口,案内,設備及び人的支援を確保することが課題になる。
デジタル化が進んだことだけを理由に,地域における裁判所機能の維持が不要になったとは判断できない。

第6 地域の利用環境を確認する観点

観点確認する事実主な確認先
取扱事件支部で扱う事件と本庁等へ集約された事件管轄表,申立書提出先一覧,個別手続案内
担当体制常駐・出張,担当部,開廷日割,調査の場所担当裁判官一覧,裁判所窓口
移動負担公共交通,所要時間,通院・介護等との両立利用者の具体的事情と地域の交通資料
相談・依頼弁護士の所在地,受任可能性,費用,相反弁護士会,法律事務所,法テラス等
デジタル利用対象手続,通信環境,機器,利用支援裁判所の最新案内,担当部

この表は,個別の地域や事件について検討するための観点であり,全国の支部の優劣を順位付けするものではない。
具体例としては,稚内支部の司法アクセスを参照されたい。

第7 関連記事と出典

1 関連記事

地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度
稚内支部の司法アクセス
下級裁判所の裁判官の配置定員

2 出典

裁判所データブック20261頁。
平成27年5月22日衆議院法務委員会答弁,令和7年4月10日参議院法務委員会答弁。
令和8年4月14日衆議院法務委員会発言21,23,83。
日本弁護士連合会子ども・高齢者・障害者を含む住民の人権保障のために,地域の家庭裁判所の改善と充実を求める決議(令和5年10月6日),弁護士ゼロワンマップ(令和8年4月1日現在)。
東北弁護士会連合会民事訴訟デジタル化に関する改正法の全面施行を受けて,より身近で利用しやすい民事司法の実現を求める決議(令和8年7月3日)。
裁判所民事裁判手続のデジタル化。