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72時間援助中の弁護人選任届―当番弁護士から被疑者国選へ移るときの注意点(AI作成)

第1 結論―援助利用と弁護人選任を分けて確認する

1 弁護人選任届を当然に提出するとは限らない

当番弁護士として接見したこと,逮捕後の弁護活動について法律援助を利用すること,私選弁護人として選任されたこと及び被疑者国選弁護人に選任されたことは,それぞれ別の事柄である。
法律援助を利用しているという理由だけで,刑事訴訟法上の弁護人選任届を当然に提出すべきであるとは限らない。

適式な弁護人選任届を提出すると,私選弁護人が選任されたことになる。
その状態は,被疑者国選弁護人の選任要件や,私選から国選へ移るための手続に影響するため,「念のため弁護人選任届を出しておく」という処理は避ける必要がある。

2 本記事の対象と資料の限界

本記事は,逮捕後から勾留決定までの間に,当番弁護士が勾留前の法律援助を利用して活動し,勾留後も被疑者国選弁護人としての選任を希望する場面を対象とする。
令和8年10月8日時点の法令,裁判所及び法テラスの公表資料並びに公開されている地域資料を基礎とする。

援助申込書,継続希望の通知方法,辞任届,国選弁護人選任請求書及び指名要望書の組合せは,地域及び時期により異なる。
実際の事件では,所属弁護士会,法テラス地方事務所及び事件を扱う裁判所の現行書式・連絡方法を確認する必要がある。

第2 当番弁護士・72時間援助・私選・国選の違い

1 当番弁護士としての初回接見

当番弁護士制度は,身体拘束を受けた被疑者に弁護士が速やかに接見し,黙秘権,今後の手続及び弁護人選任について説明するための制度である。
当番弁護士として接見したという事実だけで,その弁護士が刑事訴訟法上の私選弁護人又は国選弁護人になるわけではない。

被疑者が私選受任を希望するか,勾留前援助を利用して国選選任へつなげるか,初回接見だけで終了するかを区別する必要がある。

2 72時間援助・被疑者国選勾留前援助

いわゆる72時間援助又は被疑者国選勾留前援助は,逮捕後から勾留決定までの弁護活動に必要な費用を援助する実務上の制度である。
援助利用の申込み又は決定は,それ自体として私選弁護人の選任又は国選弁護人の選任を生じさせるものではない。

援助の対象期間,資力要件,申込期限,勾留を阻止して釈放された場合の費用及び国選に選任されなかった場合の取扱いは,利用する制度の現行規程・書式で確認する必要がある。

3 私選弁護人の選任

刑事訴訟法30条は,被告人又は被疑者がいつでも弁護人を選任できることを定める。
刑事訴訟規則17条によれば,公訴提起前の弁護人選任は,被疑者その他の選任権者と弁護人が連署した書面を,事件を取り扱う検察官又は司法警察員へ差し出して行う。

この書面が通常の弁護人選任届である。
援助申込書,担当弁護士であることを知らせる通知書又は意見書は,弁護人選任届と同じ書面ではない。

4 被疑者国選弁護人の選任

刑事訴訟法37条の2は,勾留状が発せられた被疑者が,貧困その他の事由により弁護人を選任できないときに,裁判官へ国選弁護人の選任を請求できることを定める。
勾留されたという事実又は法テラスへ候補者の指名を求めたという事実だけで,国選弁護人の選任が完了するわけではない。

法テラスの国選弁護等関連業務の案内が説明するとおり,法テラスによる候補者の指名・通知と,裁判所又は裁判官による国選弁護人の選任は別の段階である。
担当弁護士は,候補者としての指名だけでなく,裁判官による選任及び選任通知の受領まで確認する必要がある。

第3 弁護人選任届を提出する前の確認

1 援助担当者の立場を先に確定する

弁護人選任届を作成する前に,①当番接見だけで終了するのか,②勾留前援助を利用するのか,③通常の私選事件として受任するのかを確定する。
同じ弁護士が接見と意見書提出を担当していても,制度上及び刑事手続上の立場は同じとは限らない。

勾留後に被疑者国選弁護人としての選任を希望する場合は,援助申込書,国選希望の通知,資力申告及び候補者の指名要望等の現行書式を一体として確認する。
通常の私選事件用の弁護人選任届について,提出要否を地域の現行手順で確認しないまま先に提出してはならない。

2 地域の切替手続を他地域へ流用しない

東京弁護士会LIBRA平成30年6月号は,当時の東京における勾留前援助から被疑者国選への切替えとして,弁護人選任届,辞任届及び国選関係書類を組み合わせる流れを紹介している。
これは地域及び時点を限定した実務資料であり,全国共通の法定手続を示すものではない。

地域によっては,72時間援助中に通常の弁護人選任届を提出せず,所定の通知書等によって国選への継続希望を連絡する運用がある。
大阪で活動する場合も,東京その他の地域の公開資料を流用せず,大阪弁護士会及び法テラス大阪の現行書式・連絡方法を確認する必要がある。

3 「72時間援助中だけ効く弁選」と考えない

全国共通の法令上,「72時間援助中に限って効力を有し,勾留時に自動的に失効する弁護人選任届」が定められているわけではない。
通常の弁護人選任届を提出すれば,費用援助の期間だけに限定されない私選弁護人の選任として取り扱われる可能性がある。

勾留前の活動を行う必要があることと,通常の私選弁護人選任届を提出すべきことを直結させず,援助制度の現行手順に従う必要がある。

第4 勾留前に意見書を提出するとき

1 現在の立場を正確に表示する

弁護人選任届を提出していない場合,意見書に単に「弁護人」とだけ記載すると,検察庁又は裁判所が弁護人資格を確認できず,連絡先又は書面の取扱いが不明確になることがある。
意見書には,実際の立場に応じて,当番弁護士,勾留前援助の担当弁護士又は弁護人となろうとする者であることを記載し,弁護人選任届の提出状況を誤解させないようにすることが有用である。

援助利用申込書,援助決定又は担当通知に関する書面を示す場合も,それが刑事訴訟規則17条の弁護人選任届の代用になると説明してはならない。

2 提出・回付・結果連絡を別々に確認する

意見書には,被疑者名,事件,勾留質問前の検討を求める趣旨,提出日時,担当弁護士の直接連絡先及び結果連絡の依頼を明記する。
提出後は,書面を受け付けた者,裁判官又は検察官への回付予定及び結果確認の方法を記録する。

検察官又は裁判所が意見書を受領したことと,援助担当弁護士に結果を通知する法的義務が当然に生じることは同じではない。
連絡を待つだけでなく,予定時刻を決めて検察庁又は裁判所へ確認する必要がある。

3 勾留決定の通知と勾留請求却下を区別する

刑事訴訟法79条及び207条1項は,勾留の裁判をしたとき,弁護人がいる場合には直ちにその弁護人へ通知することを定める。
京都地裁令和6年10月24日判決(令和6年(ワ)第350号)は,弁護人選任届を提出した私選弁護人への勾留通知が遅れたことについて,刑事訴訟法79条・207条1項に反する職務上の義務違反を認めた。

同判決は,適式に選任された私選弁護人への勾留状発付の通知を扱ったものであり,弁護人選任届を提出していない援助担当弁護士への通知又は勾留請求却下の連絡まで判示したものではない。
今回確認した法令及び裁判所公表裁判例からは,弁護人選任届のない援助担当者へ勾留請求却下を通知すべき一般的な法的義務は確認できないため,個別の連絡依頼と独自確認が必要である。

第5 勾留後に被疑者国選へ移るとき

1 本人の国選請求意思と必要書類を確認する

被疑者国選は,援助担当弁護士が希望するだけで開始する制度ではない。
被疑者本人の国選弁護人選任請求,資力申告,資力が基準額以上である場合の私選弁護人選任申出等,刑事訴訟法37条の2・37条の3が求める手続を確認する。

勾留質問時に使用する書類,留置施設を通じて提出する書類及び弁護士が裁判所又は法テラスへ提出する書類を区別し,誰がどの原本を持っているかを記録する。

2 私選弁護人の有無を確認する

通常の弁護人選任届を既に提出している場合は,その私選弁護人の選任関係が残っていないかを確認する。
被疑者本人以外の者が選任した弁護人がいる場合を含め,私選弁護人の存在は被疑者国選の選任要件に影響する。

辞任を要する地域・事件では,辞任届を提出したという内部記録だけでなく,提出先,受領日時及び受理を確認できる資料を保存する。
他方,援助中に弁護人選任届を提出しない運用では,通常私選を前提とする辞任手続を機械的に挟まない。

3 指名・選任・通知を最後まで追跡する

法テラスが同じ弁護士を候補者として指名すること,裁判官が国選弁護人に選任すること及び選任通知が弁護士へ届くことを,別々に確認する。
勾留への不服申立て,接見及び家族への連絡を誰が担当するかが不明確にならないよう,移行中の連絡先と役割も決めておく。

勾留請求が却下されて釈放された場合は,被疑者国選弁護人が選任されない。
援助事件の終結報告,勾留阻止に関する費用の取扱い及び釈放後の弁護活動を私選又は別の援助制度で継続するかを,それぞれ確認する必要がある。

第6 受任時・意見書提出時のチェックリスト

1 受任時

①当番接見だけで終了するのか,72時間援助を利用するのか,通常私選として受任するのかを確定する。
②本人が勾留後の被疑者国選を希望しているかを確認する。
③援助申込書と刑事訴訟法上の弁護人選任届を別書類として管理する。
④所属弁護士会及び法テラス地方事務所の現行書式・提出順序・休日連絡方法を確認する。
⑤通常の私選弁護人選任届を提出する必要があるかを,援助手順に照らして判断する。

2 意見書提出時から国選選任まで

①意見書に現在の立場,弁護人選任届の提出状況,直接連絡先及び結果連絡の依頼を書く。
②提出先,受領者,提出日時,回付予定及び結果確認時刻を記録する。
③勾留状発付と勾留請求却下を区別し,連絡を待つだけでなく自ら結果を確認する。
④本人の国選選任請求・資力申告と,弁護士側の継続希望・指名関係書類を混同しない。
⑤法テラスの候補者指名,裁判官の国選選任及び選任通知の受領を順に追跡する。
⑥釈放された場合は,援助の終結処理とその後の受任関係を本人へ説明する。

第7 関連記事と出典

1 関連記事

弁護人選任届の署名押印と申立資格では,公訴提起前後の弁護人選任届の方式,準抗告時の資格確認及び控訴後の保釈請求を整理している。
弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権では,私選・国選弁護人制度全体を扱っている。
被疑者の逮捕では,逮捕後72時間の身柄手続及び被疑者国選制度の教示を説明している。
大阪地裁の令状事務では,勾留意見書の回付,休日保釈及び国選の指名・選任・通知を区別している。

2 一次資料・公的資料

①刑事訴訟法30条,32条,37条の2,37条の3,38条の2,79条及び207条
②刑事訴訟規則17条,18条,60条及び60条の2
③京都地裁令和6年10月24日判決(令和6年(ワ)第350号。裁判所ウェブサイト掲載)
④法テラス「国選弁護等関連業務の手続」及び国選弁護関連FAQ
⑤東京弁護士会LIBRA平成30年6月号(地域・時点を限定した実務資料)

京都地裁令和6年10月24日判決は裁判所公式PDFで全文を確認した。もっとも,同判決は選任済みの私選弁護人への勾留通知を扱ったものであり,選任届未提出の援助担当弁護士への通知又は勾留請求却下の連絡へ射程を広げることはできない。