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令和5年度最高裁民事破棄判決等の実情-19判決・8決定の一覧と代表判例(AI作成)

第1 対象資料と令和5年分の範囲

令和5年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」が扱うのは,令和5年1月から12月までに最高裁判所がした民事の破棄判決19件と破棄決定8件である。
行政事件と労働事件も含まれており,「年度」という題名から4月始まりの会計年度と読むことはできない。

基礎資料は,川﨑直也・山本拓「最高裁民事破棄判決等の実情―令和5年度―」(判例時報2595号,令和6年8月11日号,5頁~30頁)である。
本記事は,AIを用いて,同資料の統計と全件一覧を整理し,代表9裁判について裁判所公表全文を基に判断の意味と限界を説明する。

年次解説は個々の裁判の原文ではなく,事件の所在と破棄理由を把握するための文献である。
以下の全件一覧は年次解説の記載に基づく索引であり,詳しい判例解説は公式全文へのリンクを付した9裁判に限っている。
資料確認の基準日は令和8年10月7日であるが,説明の対象は令和5年当時の裁判であり,現在の事件への適用には適用法とその後の改正・判例を区別する必要がある。

第2 基礎件数と破棄率の分母

1 上告・上告受理申立てと0.6%

年次解説5頁が示す上告と上告受理申立ての件数は,次のとおりである。
単純合計と,並行申立て等を調整した件数は別の数値である。

区分新受既済
上告2369件2253件
上告受理申立て2968件2804件
単純合計5337件5057件
年次解説の調整後件数3254件3111件

上告・上告受理の各件数は,裁判所の「令和5年司法統計年報1民事・行政編」第2表の民事と行政の各欄を足しても確認できる。
例えば,既済の上告は1903+350=2253件,上告受理は2430+374=2804件となる。

年次解説の破棄判決の割合0.6%は,19÷3111×100を小数第1位に丸めたものである。
本記事の再計算では約0.6107%となるが,19÷5057でも,19÷新受件数でもない。
分子は破棄判決の文書数であり,分母も調整後の既済件数であるため,特定の当事者や個別事件の上告成功率を表すものではない。

2 許可抗告35%と資料間の件数差

年次解説5頁は,許可抗告の新受22件,既済20件を示している。
破棄決定8件のうち許可抗告は7件,特別抗告は1件であり,年次解説の既済許可抗告に占める破棄決定の割合は7÷20×100=35%となる。
特別抗告を含む8件を分子にして40%とする計算は,対象を混ぜている。

一方,裁判所が掲載する令和7年9月16日更新版の司法統計年報第2表では,許可抗告は民事と行政を合わせて新受23件,既済21件であり,年次解説の数値と一致しない。
本記事では35%を年次解説の集計による数値として示し,異なる資料の分母へ置き換えない。
また,許可抗告として最高裁に係属した事件の内訳と,許可を求める申立て全体がどれだけ認められるかとは区別する必要がある。

3 差戻し・自判・訴訟終了の内訳

年次解説8頁による結果の内訳は,次のとおりである。
一部破棄を含む結果分類であり,併合事件や並行事件を事件番号の数だけ重ねて数えていない。

裁判の種類結果件数
破棄判決差戻し3件
破棄判決自判15件
破棄判決訴訟終了宣言1件
破棄決定差戻し4件
破棄決定自判4件

破棄判決の根拠は,論旨によるもの17件,職権によるもの1件,両者によるもの1件である。
判例集への登載は,民集10件,集民7件,いずれにも登載されないもの2件であり,破棄決定では順に5件,2件,1件である。

「破棄」は,請求した当事者が最終的に金銭や権利を得たことと同義ではない。
自判には請求を棄却するものがあり,差戻しでは事実や金額の審理が残るため,各事件の主文と当事者の立場を確かめて読む必要がある。

第3 破棄判決19件の一覧

次表は年次解説本文と29頁の一覧表を基に,裁判日順に並べ直したものである。
裁判所はすべて最高裁判所であり,法廷欄の「一」「二」「三」は各小法廷,「大」は大法廷を表す。
事件番号にリンクがある9裁判のうち,この表に掲げるものは7判決であり,残る2決定は第4に掲げている。

裁判日・法廷事件番号・探索する論点結果
令和5年1月27日・二令和3年(受)第968号/精神科医療の説明義務自判
令和5年1月30日・二令和3年(受)第2050号/発信者情報開示と省令の適用時点自判
令和5年3月2日・一令和3年(受)第1176号/執行停止文書と執行の効力自判
令和5年3月6日・一令和3年(行ヒ)第260号/消費税・加算税の正当な理由自判
令和5年3月10日・二令和4年(受)第1019号/固定残業代差戻し
令和5年3月24日・二令和4年(受)第324号/判決手続と控訴の利益差戻し
令和5年3月31日・二令和4年(行ツ)第37号/住民訴訟・当事者死亡訴訟終了
令和5年5月19日・二令和4年(受)第540号/遺言執行者の原告適格一部自判・一部棄却
令和5年6月27日・三令和4年(行ヒ)第274号/退職手当支給制限自判
令和5年7月11日・三令和3年(行ヒ)第285号/職場のトイレ使用制限一部自判・一部棄却
令和5年7月20日・一令和4年(受)第1293号/再雇用者の基本給・賞与一部差戻し・一部却下
令和5年10月16日・一令和4年(受)第648号/人身傷害保険金と控除自判
令和5年10月18日・大令和5年(行ツ)第52号・第53号/参議院議員定数配分一部自判・一部棄却
令和5年10月23日・二令和3年(受)第2001号/建築請負人の回収利益自判
令和5年10月26日・一令和4年(行ヒ)第296号/診療情報不開示と国家賠償自判
令和5年11月6日・二令和4年(行ヒ)第228号・第229号/外国子会社合算税制・訴えの利益一部自判・一部却下
令和5年11月17日・二令和4年(行ヒ)第234号/文化芸術助成の不交付自判
令和5年11月27日・二令和3年(受)第1620号/物上代位と賃料相殺自判
令和5年12月12日・三令和4年(行ヒ)第317号/議員資格の喪失と不当利得自判

表の論点欄は判旨の全文に代わるものではなく,事件を探すための手掛かりである。
リンクを付していない事件の詳細な要件や現在への適用は,事件番号と裁判日を基に個別の裁判本文で確かめることになる。

第4 破棄決定8件の一覧

次表は年次解説本文と30頁の一覧表を基にした決定の索引である。
令和2年(ク)第993号は特別抗告事件であり,残る7件が許可抗告事件である。

裁判日・法廷事件番号・探索する論点結果
令和5年3月29日・三令和4年(許)第13号/電子記録債権と超過差押え差戻し
令和5年4月5日・三令和4年(許)第22号/破産管財人の承認と旧法上の時効中断自判
令和5年5月17日・二令和4年(許)第17号/婚姻費用と父子関係自判
令和5年9月27日・三令和4年(許)第21号/双方連続不出頭自判
令和5年10月6日・三令和5年(許)第9号/土地一部の保全と全部の処分禁止差戻し
令和5年10月19日・一令和5年(許)第1号/共同訴訟の手数料と訴訟救助差戻し
令和5年10月25日・大令和2年(ク)第993号/性別取扱変更の要件差戻し
令和5年10月26日・一令和4年(許)第11号/合併反対株主の通知自判

年次解説の◎・○・△は,民集・集民への登載状況を示す記号である。
事件の重要度や,当事者の申立てが認められやすい順序を示すものではない。

第5 公式全文から読む代表9裁判

1 手続の前提を誤った二つの裁判

(1) 全部勝訴した原告の控訴の利益

最高裁令和5年3月24日第二小法廷判決・令和4年(受)第324号は,第1審で全部勝訴した原告にも,本件の重大な判決手続の違法を理由とする控訴を認めた。
1人の裁判官が審理した後,基本となる口頭弁論に関与していない別の裁判官が,判決書原本に基づかず第1審判決を言い渡した事案である。
原審は控訴を却下したが,最高裁は原判決を破棄して差し戻した。

ここでの例外は,結論に満足していても理由を書き換えたいという希望一般を認めたものではない。
判決手続の違法と再審事由との関係を踏まえた判断であり,事件記録では口頭弁論に関与した裁判官と判決に関与した裁判官を対応させることが考えられる。

(2) 期日の延期と双方連続不出頭

最高裁令和5年9月27日第三小法廷決定・令和4年(許)第21号は,適式に呼び出された当事者双方が2回連続して出頭しなかった場合について,当該期日が延期されたことだけでは訴え取下げ擬制を妨げないとした。
取下げ擬制により訴訟が終了していたため,その後の移送決定はできず,最高裁は移送決定を取り消した。

宇賀克也裁判官の補足意見は,交通機関の事故や相手方による訴訟妨害など,やむを得ない事情による不出頭について,例外を認める余地を論じている。
多数意見の判断を,呼出しの適法性や欠席の事情を問わない機械的な処理へ広げることはできない。
期日の扱いについては,双方連続不出頭と期日の延期も参照されたい。

2 賃金の名称や割合で結論を決めない

(1) 固定残業代と賃金体系全体

最高裁令和5年3月10日第二小法廷判決・令和4年(受)第1019号は,運送会社の賃金について,名目上の時間外手当の額や計算式だけでなく,賃金体系全体から通常賃金と割増賃金を判別できるかを問題とした。
本件では通常の労働時間の賃金に当たる部分が混在し,区別できないとして,未払賃金と付加金の審理のため差し戻した。

判決は固定残業代の制度一般を無効としたものでも,最高裁が請求額全額の支払を確定したものでもない。
本記事では,雇用契約,賃金規程,給与明細,制度変更時の説明と実際の労働時間を突き合わせ,どの支払が何の対価かを先に整理する読み方を採る。

(2) 再雇用者の基本給・賞与

最高裁令和5年7月20日第一小法廷判決・令和4年(受)第1293号は,定年後の有期再雇用者の基本給と賞与について,旧労働契約法20条による不合理性判断の前提となる性質・目的の検討が不十分であるとして,一部を差し戻した。
使用者側の上告に基づく判断であり,労使交渉の経緯も検討対象とされた。

定年前の60%を下回れば一律に違法になるという数値基準を最高裁が定めたものではない。
基本給と賞与を別々に扱い,職務,責任,配置変更の範囲及び各給付の目的に沿って読む裁判である。
本件が旧法を適用したことと,現在の待遇差に関する規律とは分けて考える必要がある。

3 権利の時間軸と支払の性質を分ける

(1) 物上代位と差押え前の相殺合意

最高裁令和5年11月27日第二小法廷判決・令和3年(受)第1620号は,抵当権設定登記後に取得した賃貸人に対する債権と,物上代位による差押え後の期間に対応する賃料債権とを,差押え前に直ちに相殺する旨の合意を扱った。
最高裁は,その合意の効力を抵当権者に対抗できないとし,賃料の取立請求を認めた。

草野耕一裁判官の意見は結論に賛成しつつ,経済的な理由を論じ,敷金や賃借人に固有の事情に関わる債権などにも言及している。
これは多数意見と同じ理由付けでも,反対意見でもない。
類似事件を読む際は,登記,債権取得,相殺合意,差押えの各時点と,賃料が対応する期間を分けることが考えられる。

(2) 人身傷害保険金と自賠責保険金の立替払

最高裁令和5年10月16日第一小法廷判決・令和4年(受)第648号は,保険会社による複数の支払を一括して損害賠償額から控除した原審の処理を改めた。
本件の保険金額3000万円の範囲内の支払については,人身傷害保険金としての性質と代位の範囲を踏まえ,被害者側の賠償請求を保護する処理をした。

これに対し,保険金額を超える別の支払は,人身傷害保険金ではなく自賠責保険金の立替払として控除の対象とした。
支払通知や示談書の名称だけでなく,約款上の保険金額,支払ごとの合意,支払額及び代位の範囲を区別することが,控除額の計算につながる。
すべての支払を控除できないとも,すべてを全額控除できるともいえない。

4 行政裁量と国家賠償の審査対象

(1) 退職手当の全額不支給

最高裁令和5年6月27日第三小法廷判決・令和4年(行ヒ)第274号は,公立学校教員の飲酒運転を理由とする退職手当の全額不支給について,処分庁の裁量判断が逸脱・濫用に当たるかを審査した。
裁判所が自ら適切と考える支給額を選び直す方法を採らず,本件処分を違法とはしなかった。

宇賀裁判官は,長年の勤務,退職手当の後払い賃金や生活保障としての性質,他の職員との比較などを重視し,上告棄却を相当とする反対意見を述べた。
多数意見と反対意見は,どの考慮要素をどの程度重くみるかで異なる。
この裁判を,公務員が飲酒運転をすれば退職手当は必ず全額不支給になるという一般則へ置き換えることはできない。

(2) 不開示処分の違法と国家賠償法上の違法

最高裁令和5年10月26日第一小法廷判決・令和4年(行ヒ)第296号は,刑事施設内の診療情報の不開示について,対象となった行政機関個人情報保護法の解釈を誤ったことと,国家賠償法上の違法を分けた。
処分当時の公表裁判例や審査会答申等を踏まえ,担当者に通常尽くすべき職務上の注意義務違反があったとはいえないとして,国家賠償請求を棄却した。

処分の取消しにつながる法令解釈の誤りがあっても,国家賠償が当然に成立するわけではない。
本件は当時の法令と解釈状況を前提とする判断であり,現在の診療情報の開示範囲や,異なる公務員の行為についての責任をそのまま決めるものではない。

5 土地一部の権利を全部の仮処分で保全できる場合

最高裁令和5年10月6日第三小法廷決定・令和5年(許)第9号は,1筆の土地の一部についての所有権移転登記請求権を保全するため,土地全部への処分禁止仮処分を求めた事件である。
原則として一部分を超える範囲には保全の必要性がないが,密行性や迅速性を保ちつつ分筆登記の申請に必要な情報を提供する上で客観的な障害があり,申請が不可能又は著しく困難である場合には,全体を対象とする必要性を検討する余地を認めた。

登記請求権の存在・内容と債務者の不利益も含めた検討が残るとして,最高裁は事件を差し戻した。
最高裁自身が土地全部への仮処分命令を発したものではない。
登記資料や境界・分筆に関する資料から障害を具体化する読み方については,土地全部を対象とする処分禁止仮処分も参照されたい。

第6 原資料と関連する記事への入口

年度別の記事と判例時報の掲載号は,最高裁民事破棄判決等の実情(平成元年度~令和7年度)―年度別記事と判例時報の掲載号の一覧にまとめている。

年度内の裁判を時系列で探すときは,最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分)から,令和5年分の公表一覧へ進むことができる。
同一覧は刑事事件も含むため,本記事の民事・行政・労働事件の年次集計とは対象と数え方を分けて読む必要がある。

翌年の令和6年分の破棄判決19件・破棄決定2件は,令和6年度最高裁民事破棄判決等の実情で一覧にしている。

年度をまたいだ件数や分野の検討には,平成21年度から令和7年度までの最高裁民事破棄判決の分析がある。
原判決の点検順序は原判決監査チェックリスト,差戻し後の争点整理は民事の破棄差戻審で扱っている。
本記事の各事件を現在の事件に引用するときは,引用する判断と主文,適用時点及び残った争点を,その事件の裁判本文に戻って照合するのが出発点となる。

第7 出典・参考資料

1 統計・データ

①最高裁判所事務総局「令和5年司法統計年報1民事・行政編」第2表,資料8頁(PDF22頁)。
裁判所の掲載案内による版は令和7年9月16日更新版である。

2 裁判例

以下は,第5の解説に用いた最高裁判所の判決・決定全文である。
頁の表示は各裁判所公表PDFの頁である。

①最高裁令和5年3月24日第二小法廷判決・令和4年(受)第324号,1頁~2頁,民集77巻3号803頁。
②最高裁令和5年9月27日第三小法廷決定・令和4年(許)第21号,1頁~5頁。
③最高裁令和5年3月10日第二小法廷判決・令和4年(受)第1019号,1頁~9頁。
④最高裁令和5年7月20日第一小法廷判決・令和4年(受)第1293号,1頁~7頁。
⑤最高裁令和5年11月27日第二小法廷判決・令和3年(受)第1620号,1頁~9頁,民集77巻8号2188頁。
⑥最高裁令和5年10月16日第一小法廷判決・令和4年(受)第648号,1頁~10頁。
⑦最高裁令和5年6月27日第三小法廷判決・令和4年(行ヒ)第274号,1頁~7頁。
⑧最高裁令和5年10月26日第一小法廷判決・令和4年(行ヒ)第296号,1頁~4頁。
⑨最高裁令和5年10月6日第三小法廷決定・令和5年(許)第9号,1頁~3頁。

3 文献

川﨑直也・山本拓「最高裁民事破棄判決等の実情―令和5年度―」,判例時報2595号,令和6年8月11日号,5頁~30頁。
本文の統計は5頁・8頁,全件索引は29頁~30頁及び本文の事件別解説による。
全件索引の事件について本記事の解説9裁判と同じ範囲の個別全文確認を示すものではない。