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記録の保存の在り方に関する委員会(最高裁判所)の議事要旨―第1回から第5回まで,委員,求意見41件の結果及び前身の有識者委員会(AI作成)

第1 委員会の概要

1 設置の経緯と根拠

記録の保存の在り方に関する委員会は,事件記録等の特別保存に関する規則(令和5年最高裁判所規則第9号)9条に基づいて最高裁判所に置かれた常設の委員会である。
規則は令和6年1月30日に施行された。

最高裁判所は,令和5年5月に公表した「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」で,最高裁判所に常設の第三者委員会を置くことが相当であると表明した。
委員会のページは,その理由を,国民共有の財産である歴史的,社会的な意義を有する記録を適切に特別保存に付して後世に引き継ぐためには,裁判所が自ら判断することに加えて,国民の意見や公文書管理等の専門家の知見も取り込む必要があるからであると説明している。

本記事は,令和8年9月19日に確認した委員会のページ,第1回から第5回までの議事要旨及び委員名簿に基づき,各回の内容と,その議論が規則・通達にどう反映されたかを整理する。
あわせて,前身である「事件記録の保存・廃棄の在り方に関する有識者委員会」の議事要旨と調査報告書も取り上げる。
特別保存の制度全体は令和6年全国統一運用・裁判所の特別保存制度,大阪の裁判所に要望する手順は大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所に事件記録の特別保存・保存期間延長を要望する方法で説明している。

2 所掌事務と手続

委員会は,次の事項について意見を述べる(規則10条)。

① 特別保存の要望を受けた裁判所の長が,特別保存に付さない認定をしようとする場合の,その認定の適否(1号)
② 記録等の保存の在り方の見直しや特別保存の運用等に関する事項(2号)
③ 一定の重大な社会事象が生じた場合にこれに関連する記録等の保存に関する事項(3号)

①が主たる事務である。
規則8条は,要望を受けた裁判所の長が特別保存に付さない認定をしようとする場合には,委員会に意見を求めなければならないと定めている。
委員会は,意見を求めた裁判所の長に記録等の提出や説明を依頼し,要望者に意見書の提出を求めることができる(規則16条)。
手続は公開されない(規則17条)。
①の意見は求意見をした裁判所の長に,②・③の意見は最高裁判所長官に,意見書を送付して述べる(規則18条1項)。
庶務は最高裁判所事務総局総務局が処理する(規則15条)。

3 委員

委員会は委員6人で組織され,委員は非常勤である(規則11条)。
委員は,法律又は公文書の管理等に関して優れた識見を有する者の中から最高裁判所が任命し,任期は3年で,再任されることができる(規則12条)。

令和8年6月2日現在の委員は,次のとおりである(五十音順)。

① 佐藤彰紘(弁護士・第一東京弁護士会)
② 髙橋滋(一橋大学名誉教授)
③ 田中史生(読売新聞グループ本社社長室DX統括部長)
④ 土井真一(京都大学大学院法学研究科教授)
⑤ 中島康比古(独立行政法人国立公文書館アドバイザー)
⑥ 深見敏正(弁護士・第一東京弁護士会。東京高等裁判所の部総括判事を務めた)

第1回から第5回までは,佐藤委員に代わり芳野直子委員が出席していた。
第1回で,委員の互選により髙橋委員が委員長に選出され,委員長から深見委員が委員長代理に指名された。
第1回から第5回までの議事要旨には,事務局として,最高裁判所事務総局の小野寺真也総務局長と木村匡彦総務局参事官が出席者として記載されている。

第2 各回の議事要旨

1 第1回(令和6年3月25日)

委員長の互選等のほか,議事要旨の公表方法と,令和6年1月30日より前に終局した事件への新しい運用の遡及適用が議題とされた。

議事要旨については,委員から,個別の事件の求意見案件は事件関係者のプライバシー等に配慮して慎重に記載し,制度や運用の議論はある程度詳しく記載すべきであるとの意見が出され,議事の概要を簡潔にまとめた議事要旨を作成して裁判所のウェブサイトで公表することとされた。
発言者の氏名は記載しないこととされている(別紙3)。

遡及適用については,総務局から,一連の記録問題の経緯,新しい運用の概要(別紙4から別紙6まで)及び遡及適用の事務の基本方針(別紙7)が説明された。
基本方針は,廃棄を留保している記録について判例集登載基準と日刊紙2紙掲載基準を遡って当てはめ,特別保存にした事件の一覧を一定期間公開して要望を受け付ける(セーフティネット)というものである。
委員からは,庁名・事件番号・事件名だけの一覧では一般の人が事件を特定できず要望を出しにくいので終局日を載せるなど特定性を高める工夫が必要ではないか,他方で事件を忘れてほしい事件関係者の権利との均衡が問題になる,最高裁判所のウェブサイトから各裁判所の一覧に容易にたどり着けるようにしてほしい,といった意見が述べられた。
また,規則10条3号の「一定の重大な社会事象」について,委員の提案で委員会が判断する手順や,何を「一定の重大な社会事象」とするかの判断方法が決まっていないので,検討が必要であるとの意見が述べられた。

別紙8では,要望を受けた裁判所が選定委員会に意見を求め,選定委員会が原則として毎年11月から12月までの間に意見を具申し,裁判所の長が特別保存に付さない認定をしようとする場合に委員会に意見を求めるという流れが示され,多くの庁では委員会への求意見は年明けになる見込みとされている。

2 第2回(令和6年10月29日)

規則10条1号に基づく初めての審議が行われた。
東京地方裁判所の民事雑事件8件について意見を求められ,いずれも特別保存不相当とされた。

庶務から,第1回の意見を踏まえて,令和6年7月から各裁判所で遡及適用の事務が行われていることが報告された。
また,令和6年1月30日から同年9月30日までに全国の裁判所に特別保存の要望が出された事件は,おおむね100件であると報告された。

3 第3回(令和6年12月20日)

規則10条3号の「一定の重大な社会事象が生じた場合にこれに関連する記録等の保存に関する事項」について,25頁に及ぶ意見交換が行われた。

庶務は,規則10条3号が調査報告書の「一定の重大な社会事象(大震災や疫病等)が生じた場合にこれに関連する記録を保存するよう提言すること」を受けたものであること,行政文書の管理に関するガイドラインの「歴史的緊急事態」と「重要な政策事項」の取扱い,及び日刊紙2紙掲載基準等によって重要な事件記録を選別する枠組みが既にあることを説明した上で,三つの論点を示した。
論点は,「一定の重大な社会事象」とは何か(論点1),どの範囲の記録をどう拾い上げるか(論点2),過去に発生した事象をどう扱うか(論点3)である。

主な意見は,次のとおりである。

① 行政文書ガイドラインの「歴史的緊急事態」は,東日本大震災への対応の会議体の記録が適切に作成されていなかったことを契機に平成24年の改正で設けられ,新型コロナウイルス感染症に係る事態が閣議了解で歴史的緊急事態とされている。
② 違憲判決や判例変更に至るまでの下級審の裁判の積み重ね(非嫡出子の法定相続分の例)は,行政が指定するものとは異なる裁判所に固有の歴史的な事象ではないか。
③ 神戸連続児童殺傷事件は裁判手続としては特殊ではないが,事件が特異で社会への影響が大きかったので,行政の歴史的緊急事態の基準は中核になりうる。
④ 「コロナ」という語を含む事件を全部残すとなると,親の失職を背景とする少年事件の調査記録まで含まれてしまい相当でない。日刊紙2紙掲載基準で必要なものの多くは拾える。
⑤ 同種の訴訟が積み重なると報道されなくなる(原発事故の損害賠償請求訴訟,「過労うつ」の事案)ので,2紙掲載基準から漏れる「落穂」は少なくなく,拾い上げる経路は必要である。
⑥ 運用通達記1の(4)・(5)に行政文書ガイドラインの類型を書き込み,事件終局時の事件担当部の申出で考慮してもらい,要望できることを広報すれば,事務負担を大きくせずに落穂拾いができる。
⑦ 全国的な事象について各裁判所にボトムアップで判断させるのは負担が大きく,委員会が統一的な基準を示すべきである。
⑧ 最初から結論を出せないものについては,暫定的に保存期間を延長して広く残してはどうか(庶務は,網をかけて後から確認するのは現場の作業として難しいと応じた)。
⑨ 過去に終局して記録庫に入った事件を事象で探すことはできないので,要望する側が具体的に事件を特定する必要がある。

委員が過去の事件記録や判決のデータベース化の予定を尋ねたのに対し,庶務は,現在のところその予定はないが,記録も含めたデジタル化や民事判決のデータベース化はこの後順次行われると答えた。

4 第4回(令和7年3月4日)

規則10条3号について,第3回の意見交換を踏まえ,委員会としての方向性が次のとおり取りまとめられた。

① 「一定の重大な社会事象」は,司法機関として独自に選定することが困難であることから,行政文書の管理に関するガイドラインの「歴史的緊急事態」及び「重要な政策事項」を参考にする。ただし,「重要な政策事項」には裁判が想定されない事項も含まれることに留意する。
② 日刊紙2紙掲載基準等で多くの重要な事件は拾えるが,漏れるものを拾う仕組みを考えておくべきである。事象名が書面にあるものを全部残す方法は相当でなく,拾うべき事件の基準を設けるべきである。
③ 終局した事件を,日刊紙2紙掲載基準や判例集登載基準以外の方法で事後的に拾うことは,裁判所として困難であることは理解できる(ただし,事件を特定して要望することは可能である。)。

運用案として,運用通達を改正して記1の(4)・(5)に行政文書ガイドラインのような具体例を記載すること,行政が歴史的緊急事態等を決定した事象について委員会が残す事件の種類や期間を決めることなどの意見が出された。
最高裁判所で,この方向性を裁判所の実務にどう反映させるかを検討することとされた。

規則10条1号の審議では,さいたま地方裁判所・横浜地方裁判所・仙台地方裁判所の19件について意見を求められ,いずれも特別保存不相当とされた。

5 第5回(令和7年4月25日)

総務局から,執行官の事務に関する記録(強制執行等事件に係るもの)と,裁判所で保存する刑事事件記録の一部(刑事損害賠償命令事件及び判例集に決定等が掲載された事件)を,特別保存の対象として規則及び運用通達で定めることが説明された(別紙1・別紙2)。
執行官の記録には特別保存に相当する規定がなかったこと,刑事損害賠償命令事件は本質が民事事件で,検察官が保管する記録に債務名義等が編てつされないことが理由とされている。
委員からは,強制執行の報道例やノウハウの保存の観点から意義がある,刑事損害賠償命令は本体の刑事事件と一体で検討すべきである,準抗告に対する特別抗告で最高裁判所の判断が出た事件には保存の価値がある,といった意見が述べられた。

総務局から,新運用開始後約1年間の特別保存の統計(別紙3。第3で紹介する。)が報告された。
委員から,規則10条1号の審議内容を年単位でまとめ,特別保存相当とされたものがあれば理由も含めて公表することを検討してもよいとの意見が述べられた。

規則10条1号の審議では,横浜家庭裁判所・神戸地方裁判所・東京地方裁判所の14件について意見を求められ,いずれも特別保存不相当とされた。
次回は令和7年6月27日に開催することとされた。

6 第6回以降

令和8年9月19日時点で,委員会のページに掲載されている議事要旨は第5回までである。
第5回で予告された令和7年6月27日の会議以後の議事要旨は掲載されていない(開催の有無は確認できていない)。

第3 求意見の審議結果と新運用1年目の統計

1 求意見の審議結果

第2回から第5回までに規則10条1号に基づいて意見を求められた事件は,次のとおりである。

回(開催日)求意見をした裁判所と事件の種類件数委員会の意見
第2回(令和6年10月29日)東京地方裁判所(民事雑事件8件)8件いずれも特別保存不相当
第4回(令和7年3月4日)さいたま地方裁判所(民事通常訴訟事件9件),横浜地方裁判所(民事通常訴訟事件3件,少額訴訟事件3件,人事訴訟事件1件),仙台地方裁判所(行政訴訟事件1件,行政訴訟事件(再審事件)2件)19件いずれも特別保存不相当
第5回(令和7年4月25日)横浜家庭裁判所(人事訴訟事件1件,少年保護事件7件),神戸地方裁判所(民事雑事件1件),東京地方裁判所(民事雑事件2件,少額訴訟事件2件,民事通常訴訟事件1件)14件いずれも特別保存不相当

合計41件で,公表された議事要旨の範囲では,選定委員会の段階で退けられた要望を委員会が覆した例はない。
議事要旨には個別事件の事件番号や理由は記載されていない。

2 新運用1年目の統計

第5回の別紙3によれば,令和6年1月30日から同年12月31日までに全国の裁判所で特別保存に付する認定がされた件数は,次のとおりである。

区分新運用下(令和6年1月30日~同年12月31日)旧運用下(昭和29年~令和6年1月29日。国立公文書館に移管されたものを除く)
民事事件2842件1943件
家事事件69件54件
少年事件86件22件
少年調査記録98件38件
その他20件131件
合計3115件2188件

認定の理由(複数選択あり)は,全国的に社会の耳目を集めた又は当該地方における特殊な意義を有する事件が2042件,世相を反映した事件で史料的価値が高いものが936件と大半を占める。
認定プロセス(複数選択あり)は,日刊紙2紙掲載基準2266件,判例集登載基準455件,事件担当部申出基準372件,要望110件である。
新運用の1年間で,旧運用下の約70年間の累計を上回る件数が特別保存に付された一方,要望による認定は1割に満たない。

第4 議論が規則・通達に反映された点

1 一定の重大な社会事象

令和8年4月27日改正後の運用通達記2の(1)ウは,事件担当部等の申出の対象に,行政文書の管理に関するガイドラインに規定する「歴史的緊急事態」に該当するものと決定された事象又は災害対策基本法97条に規定する「激甚災害」に指定された災害(対象区域を全国として指定されたものに限る。)に関連する事件(記1の(4)及び(5)に該当)を含むことを明記している。
各裁判所の要望の案内ページにも同じ文言が掲げられている。
第4回で取りまとめられた方向性のうち,運用通達に具体例を書き込むという運用案が実現した形である。

2 執行官の記録と刑事損害賠償命令事件

現行の規則別表第一は,29の項に「執行官法(昭和41年法律第111号)第17条第1項の執行記録が作成された事件」,30の項に「刑事損害賠償命令事件」,31の項に民集・集民・刑集・集刑に判決等が登載されたその他の事件を掲げている。
規則3条1号は,執行記録について特別保存に付する認定を行うのは,その事件を担当する執行官の所属する地方裁判所の長であると定めている。
第5回で説明された案が規則化されたものである。
規則は,令和6年3月11日,令和7年10月16日(令和7年11月4日施行)及び令和8年5月14日に改正されている。

3 デジタル化後の記録の保存

第3回で庶務が述べたデジタル化は,令和8年5月21日の改正民事訴訟法の全面施行により進んだ。
同日以後に提起された訴えに係る事件の記録については,「電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程」(令和7年最高裁判所規程第4号)が新設され,事件記録の保存期間は原則10年(電子判決書は50年)とされた(同規程4条・別表)。
紙の民事通常訴訟記録の5年より長い。
同規程7条も,保存期間が満了した事件記録は特別保存に付する認定を行ったものを除いて廃棄すると定めており,電子化後の事件記録も特別保存の対象となる。
詳しくはmints後の裁判記録の保存期間で説明している。

第5 前身の有識者委員会

1 委員と開催状況

最高裁判所事務総局は,令和4年11月25日から令和5年5月23日まで,「事件記録の保存・廃棄の在り方に関する有識者委員会」を15回開催した。
委員は,梶木壽(座長),神田安積及び髙橋滋の3名である。
第1回の冒頭で,堀田眞哉事務総長は,神戸家庭裁判所が神戸連続児童殺傷事件の少年保護事件記録等を特別保存に付すことなく廃棄していたことについて,特別保存を適切に行う仕組みが十分でなかったのは裁判所全体の問題であり,重く受け止め,率直に反省しなければならないと挨拶した。
第15回で報告書案が了承され,令和5年5月に「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」が公表された。

2 意見を聴いた人

委員会は,次の人から意見を聴いた(議事要旨及び別紙)。

① 第4回(令和5年1月23日) 奥山俊宏氏(上智大学教授・元朝日新聞編集委員)
② 第5回(令和5年2月14日) 土師守氏(神戸連続児童殺傷事件の被害者の遺族)及びその代理人弁護士,瀬戸一哉弁護士,金矢拓弁護士
③ 第6回(令和5年2月16日) 宍戸常寿氏(東京大学教授)
④ 第7回(令和5年2月28日) 高埜利彦氏(学習院大学名誉教授・アーカイブズ学)
⑤ 第9回(令和5年3月27日) 奥山氏の追加意見のほか,事務局が聴取した中江美則氏(亀岡暴走事故事件の被害者の遺族)及び濱田正晴氏(オリンパス内部通報事件の元原告)の意見が報告された。

3 調査で明らかになった事実

報告書と議事要旨によれば,次の事実が明らかになった。

① 2項特別保存に付された件数は,各庁の運用要領の策定前の約50年間で332件にとどまり,策定後の約2年間で1035件に増えた。外部からの要望で特別保存に付されたものは,策定前の約50年間で14件,策定後の約2年間で37件である。
② 報告書は,神戸連続児童殺傷事件を含む少年事件の廃棄事案52件と,憲法判例百選に掲載された民事事件の廃棄事案35件等について,当時の関係職員へのヒアリングを行った。
③ 大分地方裁判所は,2項特別保存に付された記録6件分を誤って廃棄していた。熊本地方裁判所でも,1項特別保存に付された記録を誤って廃棄した事案があった。
④ 運用要領の策定後にも,東京地方裁判所がオリンパス内部通報事件(平成28年に終局)の記録を廃棄していた。同事件の元原告の濱田正晴氏が委員会に提出したメモには,裁判所から「2022年2月16日に廃棄した」との返事を得たことが記載されている(第9回別紙3)。

4 報告書が採用しなかった意見

報告書は,常設の第三者委員会の設置,地域面を含む日刊紙2紙掲載基準,要望者への結果の通知,特別保存にした事件の一覧の公開等を打ち出した。
他方,次の意見は採用しなかった(報告書44頁~45頁)。

① 判決の内容だけでなく,主張や書証の史料的価値に着目した基準を新設する(瀬戸弁護士の意見)
② 株主代表訴訟など一定の類型の事件を自動的に保存する(奥山氏の意見)
③ 保存期間を延長し,特別保存の判断を後の時期にも行う(宍戸氏の意見)。報告書は,民事訴訟事件の記録の5年の保存期間は相当であるとした。
④ 紙の記録を一括して電子化する(膨大なコストを理由に慎重な検討を要するとした)
⑤ 廃棄した記録を復元する(何がつづられていたか確定できないとして困難とした)

③について,常設委員会の第3回でも,暫定的に保存期間を延長する案が再び議論されている。
その後,令和8年5月21日以後に提起された訴えに係る事件の記録は,前記第4の3のとおり保存期間が原則10年とされたが,その理由は公表資料では確認できなかった。

第6 弁護士の実務から見た意味

① 特別保存の大半は日刊紙2紙掲載基準で機械的に拾われている。報道の少ない事件や,判決文だけでは経過が分からない事件の記録を残すには,要望が必要である。
② 委員会が扱った41件はすべて特別保存不相当とされた。要望は,選定委員会の段階で認められるよう,類型への該当性と記録を残す必要性を具体的な資料で示して組み立てる必要がある。
③ 歴史的緊急事態(新型コロナウイルス感染症に係る事態)や全国を対象とする激甚災害に関連する事件は,現在は事件担当部の申出の対象として明記されている。これらの事件を担当したときは,終局時に担当部に申出を促すことや,自ら要望することが考えられる。
④ 過去に終局した事件は,要望する側が事件を具体的に特定しなければならない。事件番号,終局日,当事者名,報道の紙名と掲載日を控えておくことが役に立つ。
⑤ 記録は廃棄されると復元できない。依頼者のために記録を残しておく必要がある事件では,特別保存のほか保存期間の延長の要望も検討し,事務所の手元の写しの保存方針も決めておく。

第7 出典

① 最高裁判所「記録の保存の在り方に関する委員会」及び委員名簿(令和8年6月2日現在)
② 議事要旨:第1回(令和6年3月25日),第2回(令和6年10月29日),第3回(令和6年12月20日),第4回(令和7年3月4日),第5回(令和7年4月25日)
③ 事件記録等の特別保存に関する規則(令和5年最高裁判所規則第9号。令和8年5月14日改正まで反映したもの)
④ 事件記録等の特別保存に関する規則の運用について(通達)(令和8年4月27日改正まで反映したもの)
⑤ 電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程(令和7年最高裁判所規程第4号)
⑥ 事件記録の保存・廃棄の在り方に関する有識者委員会について(第1回から第15回までの議事要旨及び別紙)
⑦ 裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書(最高裁判所事務総局,令和5年5月。本体11頁~14頁,44頁~45頁)
⑧ 裁判所「事件記録等の特別保存について」