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交通事故治療の流れ―事故直後の受診,検査,手術・リハビリ,治療費と症状固定(AI作成)

第1 結論

交通事故治療では,事故直後の安全確保と救急対応,傷病の診断,保存治療又は手術,リハビリテーション,治療費の支払方法,症状固定後の対応を順に考える必要がある。強い痛み,意識障害,麻痺,呼吸困難,大量出血その他の緊急性が疑われる場合は119番を利用し,救急車を呼ぶべきか迷う地域では救急安心センター事業(♯7119)を利用できる場合がある。

交通事故による打撲,捻挫,骨折,脱臼,関節・靱帯損傷,脊椎・脊髄損傷等は整形外科が扱う。ただし,頭部・顔面,胸部,腹部等の損傷が疑われる場合は,救急外来その他の適切な診療科で全身を評価する必要がある。受診先や検査の種類を事故の当事者だけで決めるのではなく,症状,身体所見及び事故状況を医師に伝え,必要な検査と治療の判断を受けることが基本となる。

保険会社による医療機関への直接支払が終了しても,それだけで医学的な治療が終了したり,法的に症状固定となったりするわけではない。治療を続ける必要性は主治医と相談し,費用負担は健康保険,労災保険その他の制度を別に確認する必要がある。

第2 事故直後の受診

1 救急対応を優先する場合

交通事故では,外見上の傷が小さくても,頭部,頚部,胸部,腹部,骨盤又は脊椎に重大な損傷が生じている場合がある。意識状態がおかしい,手足が動かしにくい,しびれが急に強くなった,呼吸が苦しい,出血が止まらない,強い胸痛・腹痛があるなど,緊急性が疑われる場合は119番による救急要請を優先する。

救急車を呼ぶべきか,直ちに医療機関を受診すべきか判断に迷う場合,導入地域では総務省消防庁の救急安心センター事業(♯7119)に相談できる。♯7119は,医師,看護師又は救急救命士が相談内容に応じて受診先等を案内し,緊急性が高い場合には119番通報への転送又はかけ直しを求める仕組みである。

事故現場での警察への届出,証拠保全,保険会社への連絡等は,交通事故直後の初動チェックリストで整理している。

2 整形外科を受診する意味

日本整形外科学会は,交通外傷による打撲,捻挫,骨折,脱臼,関節損傷及び脊髄損傷等の多くを整形外科が扱うとしている。整形外科では,問診と身体診察に加え,必要に応じてX線,CT又はMRI等の画像検査を行い,投薬,注射,固定,手術及びリハビリテーション等を選択する。

症状が軽く見えても,受診が遅れると,事故直後の症状,身体所見及び画像所見が診療録に残りにくくなる。受診時には,痛む部位だけでなく,頭痛,めまい,吐き気,しびれ,脱力,関節の動かしにくさ等を具体的に伝えることが重要である。

第3 病院・整形外科と整骨院・接骨院の違い

1 医療機関でできること

病院又は診療所の医師は,傷病名を診断し,画像検査,投薬,注射,手術,医学的リハビリテーション等の要否を判断する。事故直後には,骨折・脱臼の有無だけでなく,神経・血管損傷や他部位の合併損傷も含めて評価する必要がある。

2 整骨院・接骨院の位置付け

整骨院・接骨院では柔道整復師が施術を行う。柔道整復師は医師ではなく,診断,投薬,X線・CT・MRI撮影又は手術を行うことはできない。厚生労働省によれば,柔道整復の健康保険給付は骨折,脱臼,打撲及び捻挫等に限られ,骨折・脱臼では緊急の場合を除いてあらかじめ医師の同意が必要である。また,同じ負傷について保険医療機関で治療中の場合,柔道整復の施術が健康保険の対象とならないことがある。

したがって,交通事故後はまず医療機関で診断を受け,整骨院・接骨院を利用する場合も,主治医及び保険者との関係を確認する方がよい。施術費と慰謝料の関係は,整骨院・接骨院と交通事故の施術費で詳しく説明している。

第4 診察と画像検査

1 問診と身体診察

医師は,事故の発生状況,受傷部位,症状の出現時期,既往症,受傷前の症状等を確認し,腫れ,変形,圧痛,関節可動域,筋力,感覚,腱反射及び歩行状態等を診察する。画像だけでなく,症状と身体所見が解剖学的に整合するかを確認することが重要である。

2 X線・CT・MRI

骨折の診断では一般にX線撮影が用いられる。骨折の部位や疑われる傷病に応じて,複数方向からの撮影,反対側との比較,時間を置いた再撮影又は隣接関節を含む撮影が必要となる場合がある。

CTは,骨盤や関節内骨折等の複雑な骨折形態,骨片の位置又は手術計画を詳しく確認する場合に有用である。MRIは,X線で明瞭でない骨折,椎間板,靱帯,半月板,関節唇,脊髄その他の軟部組織を評価する場合に用いられる。ただし,すべての患者にすべての検査が必要なわけではなく,医師が症状と診察所見に応じて選択する。

3 画像に異常がない場合

最初のX線で骨折が確認できなくても,骨折が完全に否定されるとは限らない。日本整形外科学会も,転位のない骨折やX線に写りにくい骨折ではCT等が役立つ場合があると説明している。一方,MRIで認められる加齢性変化が事故による症状の原因とは限らない。陰性画像も陽性画像も,撮影時期,撮影方法,症状及び身体所見と併せて評価する必要がある。

交通事故事件での画像・神経学的所見の位置付けは,交通事故の入通院慰謝料に影響する他覚所見で整理している。

第5 保存治療・手術・リハビリテーション

1 保存治療

手術を行わない治療を保存治療という。傷病に応じて,安静,薬物療法,ギプス・装具等による固定,物理療法,運動療法等が選択される。固定は損傷部を安定させるために必要である一方,必要以上に長い固定は関節拘縮や筋力低下につながる場合がある。

2 手術治療

骨折・脱臼の転位,不安定性,関節面の損傷,神経・血管損傷,開放骨折又は保存治療で十分な整復・固定を得られない場合等には,手術が検討される。骨折手術では,プレート,スクリュー,髄内釘等で骨折部を安定させる方法があるが,具体的な適応は骨折部位・型,軟部組織損傷及び患者の全身状態等によって異なる。

3 リハビリテーション

運動器のリハビリテーションは,痛みを軽減するだけでなく,関節可動域,筋力,バランス,歩行,食事・更衣等の日常生活動作及び生活の質を回復・維持するために行われる。開始時期と負荷は,骨折部の安定性,手術内容,合併損傷等により異なる。自己判断で固定を外したり運動を始めたりせず,医師・理学療法士・作業療法士等の指示に従う必要がある。

第6 主な傷病ごとの治療経過

1 骨折

骨折治療の基本は,骨折部を適切な位置に戻し,必要な安定性を確保しながら骨癒合と機能回復を図ることである。骨癒合は,年齢,栄養状態,喫煙,糖尿病その他の全身状態,骨折部位・型,感染,骨欠損及び固定性等の影響を受ける。

同じ「骨折」でも,鎖骨,手関節,大腿骨,膝,足関節,骨盤又は脊椎では,治療法も荷重・可動域訓練の時期も異なる。骨癒合までの期間だけで治療終了を決めることはできず,画像,疼痛,関節可動域,筋力及び生活・就労上の機能を併せて評価する。

2 頚椎捻挫・外傷性頚部症候群

頚椎捻挫では,まず骨折,脱臼及び神経損傷等を除外し,頚部痛,頭痛,肩こり,めまい,しびれ等の症状を評価する。日本整形外科学会は,骨折・脱臼がない場合,頚椎カラーによる長期間の固定や過度の安静が症状の長期化につながる可能性を説明している。ただし,安静・運動の内容と開始時期は個々の病態により異なるため,主治医の指示を優先する。

頚椎捻挫の治療期間を「1か月」「3か月」「6か月」等の数字だけで決めることはできない。初期症状,神経学的所見,画像,治療への反応,既往症,仕事内容及び日常生活上の支障を経時的に確認する必要がある。

3 靱帯・半月板・腱・関節唇等の損傷

靱帯,半月板,腱又は関節唇等の損傷では,単純X線で直接確認できない場合がある。診察所見と必要な画像検査を組み合わせ,安定性,疼痛,関節可動域及び日常生活上の支障に応じて,保存治療,手術及びリハビリテーションを選択する。

第7 治療期間を考える際の注意

1 治癒・骨癒合・社会復帰は同じではない

治療経過を理解するためには,傷病の治癒,骨癒合,入院終了,通院終了,リハビリ終了,職場復帰及びスポーツ復帰を区別する必要がある。画像上骨癒合しても,可動域制限や筋力低下のためリハビリが続く場合がある。反対に,治療を継続しながら就労を再開する場合もある。

2 標準的期間は個別事件の上限ではない

加藤義治『医師と損保のための分かりやすい交通事故外傷ガイドQ&A整形外科編』には,多数の傷病について診断から治癒又は症状固定までの治療アルゴリズムが掲載されている。ただし,同書自身が,記載された期間は全身合併症等のない患者が標準的治療を受けた場合の理想的な期間であり,高齢者又は合併症のある患者では長くなる場合があると注意している。

したがって,書籍,保険会社の目安又は過去の裁判例に記載された月数だけを根拠に,個別患者の治療必要性を否定することは適切でない。主治医の診断・治療計画,検査所見,症状の推移及び機能回復を確認する必要がある。

第8 治療費の支払方法

1 任意保険会社の直接支払

相手方任意保険会社が医療機関へ治療費を直接支払う対応は,実務上「一括対応」と呼ばれることがある。これは保険会社の支払方法であり,医学的な治療継続の要否を決定する制度ではない。

保険会社から支払終了の連絡を受けたときは,支払終了日,理由,主治医の見解,健康保険等への切替え及びその後の請求方法を確認する。対応方法は,交通事故で治療費を打ち切られた場合で説明している。

2 健康保険

業務中又は通勤中の事故でなければ,交通事故による治療にも健康保険を利用できる。協会けんぽは,第三者行為による負傷について健康保険を利用した場合,「第三者行為による傷病届」を速やかに提出するよう案内している。加入している健康保険組合等により提出先や様式が異なるため,保険者へ確認する必要がある。

健康保険を利用しても,加害者側の賠償責任が当然になくなるわけではない。交通事故と健康保険の関係は,交通事故と健康保険で整理している。

3 労災保険

業務中又は通勤途中の交通事故では,健康保険ではなく労災保険の対象となる場合がある。相手方の自賠責保険・任意保険と労災保険の双方が関係する場合には,重複填補を避けるための調整が行われる。勤務先,労働基準監督署又は弁護士に早めに確認する方がよい。

第9 診療記録と経過を残す

交通事故治療では,後から記憶だけで経過を再現することが難しい。初診日,受診した医療機関,診断名,症状の部位・強さ・出現時期,画像検査,投薬・注射・固定・手術・リハビリの内容,医師から受けた説明及び次回受診の指示を時系列で整理する方がよい。

仕事や生活への影響についても,欠勤・早退,家事・育児の制限,歩行距離,睡眠,運転,更衣等の具体的な変化を残す。診療明細書,領収証,処方内容,紹介状,画像データ及び休業関係資料も保管する。

転院や診療科の変更をする場合は,それまでの画像と診療情報を次の医療機関へ引き継ぐ。受診の空白が生じた場合は,その理由と期間中の症状を説明できるようにしておく。

後遺障害の認定を検討する場面では,初診から症状固定まで,症状の訴え,診察所見及び検査結果がどのように推移したかを診療記録等で確認できることが重要である。専門診療科の受診が事故から遅れた症状や,症状固定時に初めて記載された症状は,事故との因果関係又は症状の継続性の検討で問題となり得る。もっとも,受診の遅れや記載漏れだけで機械的に結論が決まるわけではなく,紹介の経過,治療内容,画像・検査所見その他の資料を総合して検討される。

後遺障害の等級,認定手続及び必要資料の全体像は,交通事故の後遺障害の総合案内で説明している。

第10 治療終了・症状固定・後遺障害

1 支払終了と症状固定を区別する

任意保険会社による直接支払の終了,医療機関への通院終了及び症状固定は別の概念である。症状固定とは,一般に,治療を続けても症状の改善が見込みにくい状態をいうが,その時期は傷病,治療内容及び経過によって異なる。

むち打ち症についての判断要素は,むち打ち症の症状固定時期で説明している。

2 症状が残った場合

症状固定後に障害が残った場合は,後遺障害診断書,事故直後からの画像,診療録,検査結果及びリハビリ記録等をそろえて,自賠責保険の後遺障害等級認定を検討する。症状固定前から,主治医に残っている症状と生活・就労への影響を具体的に伝えることが重要である。

後遺障害診断書の作成時期と必要資料は,交通事故の後遺障害診断書で整理している。

第11 よくある質問

1 痛みが軽くても受診した方がよいか

事故直後には症状が目立たず,後から痛みやしびれが現れることがある。受診の要否を自己判断せず,事故状況と症状を医療機関又は♯7119等に伝えて相談する方がよい。緊急性が疑われる場合は119番を優先する。

2 レントゲンに異常がなければ治療は不要か

単純X線に写りにくい骨折や,靱帯・半月板・椎間板等の軟部組織損傷もある。反対に,MRI上の変化が事故による症状の原因とは限らない。症状,診察所見,撮影時期及び検査目的を医師に確認する必要がある。

3 保険会社が治療費を払わなくなれば通院できないか

保険会社の直接支払が終了しても,治療継続の医学的要否は主治医と相談する。健康保険,労災保険又は自己負担による通院を検討し,領収証・診療明細書を保管する。

4 いつ弁護士へ相談すべきか

重傷事故,手術予定,後遺症が見込まれる場合,保険会社から治療費支払終了の連絡を受けた場合,休業損害や過失割合に争いがある場合は,示談前に相談する方がよい。大阪で交通事故を弁護士に相談・依頼するときでは,相談前に準備する資料を説明している。

第12 出典と本記事の位置付け

本記事は,整形外科外傷の診断,保存治療・手術,リハビリテーション及び一般的治療経過について,加藤義治『医師と損保のための分かりやすい交通事故外傷ガイドQ&A整形外科編』(保険毎日新聞社,2024年)を中心に参照した。同書の書誌情報は国立国会図書館サーチで確認できる。

国立国会図書館サーチ「医師と損保のための分かりやすい交通事故外傷ガイドQ&A 整形外科編」

安全な受診先,傷病及び検査・治療の一般論については,次の公的・学会資料も参照した。

総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」
日本整形外科学会「整形外科と外傷」
日本整形外科学会「骨折」
日本整形外科学会「外傷性頚部症候群」
日本整形外科学会「整形外科と接骨院(いわゆる整骨院)」
日本リハビリテーション医学会「運動器のリハビリテーション」
厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」
協会けんぽ「第三者行為による傷病届」
厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」

本記事は交通事故治療の一般的な流れを説明するものであり,個別の診断・治療を代替しない。具体的な受診,検査,固定,手術,運動及び通院終了の判断は,実際に診察した医師の指示に従う必要がある。交通事故治療が現在の形になるまでの経緯は,交通事故外傷治療の歴史で説明している。