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最高裁判所裁判官国民審査の判断方法|審査公報・関与裁判・多数意見・個別意見の調べ方(AI作成)

第1 審査公報だけで判断を完結させない

1 この記事が扱う範囲

最高裁判所裁判官国民審査について資料に基づいて判断するには,審査公報を入口とし,最高裁判所の裁判官紹介ページ,関与した裁判の判決又は決定の原文,必要に応じて報道機関の質問回答や専門的な解説へ進むのが確実である。
本記事は,特定の裁判官について罷免を可とするか否かの結論を示すものではなく,読者が原典を確認して判断材料を作る手順を説明するものである。

国民審査の時期,審査対象者及び制度全体は「最高裁判所裁判官国民審査」が扱い,第25回,第26回及び第27回の対象者と資料は,それぞれ「令和3年10月31日執行の第25回最高裁判所裁判官国民審査」,「令和6年10月27日執行の第26回最高裁判所裁判官国民審査」及び「令和8年2月8日執行の第27回最高裁判所裁判官国民審査」が扱う。
本記事で確認する法令及び公開資料の基準日は,令和8年8月24日である。
国民審査の10年周期と固定任期・70歳定年との違いは,最高裁判所裁判官の任期・定年・退官で説明している。

2 四つの資料を役割別に使う

各資料は,同じ情報を繰り返しているのではなく,作成主体と収録範囲が異なる。
最初に次の役割を区別しておくと,一つの資料から言えないことを断定しにくくなる。

資料主に確認できること単独では確認できないこと
審査公報経歴,最高裁判所で関与した主要な裁判,裁判官としての説明全関与事件,第三者による評価,法廷意見に加わった各裁判官固有の理由
最高裁判所の裁判官紹介ページ略歴,心構え,年別の主要な裁判,判決全文への導線全関与事件又は全個別意見の網羅性
判決・決定の原文主文,法廷意見,個別意見,事件番号,関与裁判官法廷意見に加わった各裁判官の起案上の寄与又は内心
報道・専門的な解説争点の背景,質問への回答,複数事件の比較原文を確認していない要約の正確性,回答されなかった事項

令和6年11月22日の政府答弁書は,審査公報に加え,日頃の報道及び最高裁判所ウェブサイトを判断材料として挙げている。
ただし,複数の資料が存在することと,特定の裁判官の全判断が公開されていることは別であるため,本記事では資料ごとに確認できた範囲を記録する。

第2 審査公報で分かることと分からないこと

1 法令上の掲載事項

最高裁判所裁判官国民審査法53条は,都道府県の選挙管理委員会に対し,裁判官の氏名,経歴その他審査の参考となる事項を掲載した審査公報の発行を義務付けている。
同法施行令23条は,氏名,生年月日及び経歴のほか,最高裁判所で関与した主要な裁判その他の参考事項を掲載すると定めている。

したがって,審査公報は国民審査のために法令が予定した公式資料である。
もっとも,施行令が求めているのは「関与した主要な裁判」であり,全関与事件の一覧ではない。

2 掲載文は原則として裁判官が提出する

同法施行令24条1項によれば,審査対象の裁判官が掲載文を中央選挙管理会へ提出する。
同令26条は,その写しを都道府県の選挙管理委員会が原文のまま掲載するものとしている。

掲載文が提出されないときは,中央選挙管理会が掲載文を作成し,その旨を付記する例外がある。
通常の提出原稿については,本人がどの裁判を「主要」として選び,どのように要約したかも判断材料になるが,本記事では審査公報を中立的な評価書又は全件目録とは扱わない。

3 現在は1000字の法定制限がない

審査公報の掲載文にはかつて1000字の制限があったが,平成15年政令第320号による施行令改正で字数及び写真等の制限が撤廃された。
現行の国民審査法施行令23条から26条までに1000字制限はない。

平成15年改正後も紙面の大きさその他の実際上の制約はあり得るが,それは現行法上の1000字制限とは区別すべきである。
また,改正前の審査公報を現在の情報量と同じ条件で評価すると,その当時の制度的制約を見落とすことになる。

第3 関与した主要な裁判の原文を探す手順

1 審査公報の原版と事件情報を保存する

対象回の審査公報は,都道府県選挙管理委員会の公式ページからPDFを取得する。
検索するときは「第27回 国民審査 審査公報 PDF」のように回次又は執行年を加え,検索結果の抜粋ではなく,選挙管理委員会の掲載ページとPDF本体を開く。

公報からは,①事件名又は事件の内容,②裁判年月日,③大法廷又は小法廷の別,④結論の要約,⑤個別意見への言及を転記する。
事件番号が書かれていない場合もあるため,公報の要約文をそのまま検索できるように保存しておく。

2 最高裁判所の裁判官紹介ページで補う

次に,最高裁判所の「最高裁判所の裁判官」から対象者の紹介ページを開き,年別の主要な裁判を確認する。
公報と紹介ページで選ばれた事件又は説明の切り口が異なる場合は,どちらかを誤りと決めず,それぞれが選択した資料として記録する。

紹介ページから判決全文へ直接リンクされている事件は,そのリンクを優先する。
紹介ページに見当たらない事件があっても,それだけで関与していないとは判断できない。

3 事件番号,裁判年月日及び固有語で検索する

裁判所の「裁判例検索」では,①事件番号,②裁判年月日,③事件名又は判示事項に含まれる固有語,④裁判官名の順に検索する。
事件番号と裁判年月日は同名事件を区別しやすいため,公報又は紹介ページで分かる限り両方を使う。

検索結果では,裁判所名,裁判年月日,事件番号,事件名及び掲載誌を照合してから原文を開く。
事件の概要が似ているだけの別事件を採用せず,公報の説明と原文の争点及び結論が一致することまで確認する。

4 裁判所ウェブサイトで見つからない場合

裁判所の「掲載判例の説明」は,裁判例情報に全ての判決等が掲載されているわけではないと明記している。
そのため,裁判官名又は事件名で検索して表示されなかったことを,裁判が存在しないこと又は対象者が関与していないことの根拠にはできない。

裁判所ウェブサイトで見つからない場合は,判例雑誌の書誌,図書館の所蔵,認証付き判例データベース及び信頼できる評釈から事件番号と掲載誌を探す。
原文を取得できなければ,「裁判所HP未掲載」又は「原文未確認」と記録し,二次資料の要約を原判決の判示内容として書き換えない。

第4 法廷意見,多数意見及び個別意見の読み分け

1 主文,法廷意見,個別意見の順に読む

判決又は決定を開いたら,まず裁判所名,裁判年月日,事件番号及び法廷を確認し,次に主文で結論を確認する。
その後に法廷意見の判断枠組み,事実への当てはめ及び救済を読み,最後に裁判書末尾の個別意見と裁判官の表示を確認する。

裁判要旨又は報道見出しは争点を素早く知るために有用であるが,理由の一部,手続上の判断又は個別意見を省くことがある。
要旨だけで読み終えると結論と理由の対応を確認できないため,国民審査の判断材料にするときは原文へ進む。

2 「多数意見」より法廷意見と一致状況を記録する

裁判所法11条は,裁判書又は電子裁判書に各裁判官の意見を表示することを定めている。
裁判所として示された結論と理由は法廷意見であり,全員一致の場合も,反対意見等がある場合もある。

「多数意見」という言葉は,個別意見と対比して説明するときには分かりやすいが,全員一致の事件まで機械的に多数意見と記録すると,一致状況が見えなくなる。
調査表では「法廷意見」と記載した上で,「全員一致」又は「個別意見あり」を別欄に記録する方が正確である。

3 補足意見,意見及び反対意見を区別する

本記事では,①補足意見は法廷意見の結論及び理由に加わりながら説明を補うもの,②意見は結論は同じでも理由が異なるもの,③反対意見は結論が異なるものとして読み分ける。
複数の裁判官が一つの個別意見に共同で加わる場合もあるため,個別意見の表題と末尾の裁判官表示を併せて確認する。

用語の詳しい説明は「最高裁判所の少数意見」が扱っている。
新しい記事又は報道で「少数意見」と一括されている場合も,原文では補足意見,意見又は反対意見のどれであるかを確認する。

4 全員一致でも個別意見が付く場合がある

最高裁大法廷令和4年5月25日判決・令和2年(行ツ)第255号,同年(行ヒ)第290号~第292号は,在外国民が国民審査権を行使できなかった制度について判断した。
原文では法廷意見の結論が全員一致である一方,その理由と救済について説明を加える補足意見が付されている。

この例から分かるとおり,「全員一致」と「個別意見なし」は同じ意味ではない。
裁判官紹介ページに全員一致と表示されていても,原文末尾まで確認する必要がある。

第5 裁判官の立場を誤読しないための確認事項

1 結論と理由を分ける

同じ結論に加わった裁判官でも,権利の範囲,審査基準,違法性の理由又は救済方法について異なる説明をすることがある。
個別意見を比較するときは,「賛成又は反対」だけでなく,どの法的命題に同意し,どこから理由が分かれたかを記録する。

反対に,異なる事件で結論が違っても,事実関係,適用法令又は請求された救済が違えば,直ちに立場が変わったとはいえない。
事件ごとの争点と判断枠組みを揃えてから比較する必要がある。

2 手続上の判断と実体判断を分ける

請求が退けられた事件でも,理由が期間,訴えの適法性,当事者適格又は救済方法にある場合,権利の有無や合憲性を全面的に否定したとは限らない。
主文の勝敗だけでなく,裁判所が実体判断へ進んだか,どの請求について判断したかを確認する。

調査表では,①手続上の結論,②実体上の判断,③救済の可否を別欄にする。
この三つを一つの「賛否」にまとめると,裁判官の立場を実際より単純に見せることになる。

3 一件の裁判から恒常的な立場を推測しない

一つの主要裁判は,その事件で表明された判断を示すにとどまり,他の争点に対する立場又は将来の判断を確定するものではない。
同じ分野について複数の事件があるときは,時期,事案,法改正及び救済の違いを並べて確認する。

公報に掲載された事件だけを評価対象とすると,本人が選んだ事例に調査範囲が限定される。
少なくとも裁判官紹介ページの年別一覧と照合し,同一論点で異なる結論又は異なる理由を示す事件がないかを確認する。

4 個別意見がないことから個人の理由を断定しない

法廷意見に加わった裁判官が,合議の中でどの理由を重視し,文章のどの部分に寄与したかは,通常の裁判書から分離できない。
個別意見がないことを,「独自の考えがない」,「全ての理由に積極的に賛成した」又は「法廷意見を主導した」と読み替えるべきではない。

確認できるのは,裁判書に表示された法廷意見,個別意見及び関与の事実である。
確認できない内心や寄与度は,評価表の「不明点」に残す。

5 罷免可率を裁判内容の代わりにしない

国民審査の罷免可率には,裁判内容への評価以外の要因が含まれ得る。
第1回から第21回までを対象とした実証研究では,複数候補による20回のうち右端の候補の罷免可票が最も多かった回は11回であったが,右から左へ完全に逓減したのは3回であった。

この研究は掲載順の影響を無視できないことを示す一方,個々の裁判に対する有権者の評価が全く反映されないと証明するものではない。
また,第21回までの結果を対象とした分析であるため,近年の審査へ数値をそのまま外挿しない。

第6 比較表を作って判断材料を固定する

1 最低限記録する項目

複数の裁判官又は複数の事件を比較するときは,評価語を先に置かず,原典から確認できる事項を同じ列で記録する。
次の表は,審査公報から原文へ進むための最小構成である。

項目記録する内容
資料の状態裁判所原文,商用データベース原文,公的要約,二次資料のみ,原文未確認
事件の同定裁判所,裁判年月日,事件番号,法廷,事件名,掲載誌
争点裁判所が答えた具体的な法的問題
法廷意見結論,判断枠組み,当てはめ,救済
対象者の位置法廷意見,補足意見,意見,反対意見,不関与
個別意見法廷意見と異なる点又は補った点
公報との関係公報が記載した点と省略した点
不明点原文から確定できない寄与度,未収録事件,未確認資料

2 事実確認の確度をそろえる

表の各行には,「裁判所原文確認済」,「公的資料による要約」,「二次資料」,「原文未確認」のいずれかを付す。
二つの記事の説明が一致していても,事件番号,裁判年月日,主文及び判示内容の最終確認にはならない。

原文が見つからない事件は,評価から黙って除外せず,未確認のまま残す。
反対方向の事件を探しても見つからなかった場合も,「存在しない」とせず,検索した媒体と検索語を記録する。

3 比較の単位を争点に合わせる

裁判官を一つの尺度で順位付けするより,表現の自由,選挙,刑事手続,家族法など争点ごとに比較する方が,判決理由との対応が明確になる。
同じ事件に複数の争点があるときは,争点ごとに法廷意見と個別意見の関係を分ける。

資料が不足して結論が変わり得るときは,そこで評価を止める。
原文未確認による空白を埋めるために,裁判官の経歴,出身分野又は他事件の立場から理由を推測しない。

第7 投票方法について最低限確認する事項

1 罷免を可とする場合は×,可としない場合は無記載である

国民審査法15条は,罷免を可とする裁判官の欄には自ら×を記載し,罷免を可としない裁判官の欄には何も記載しない方式を定めている。
○,チェックその他の記号は使用せず,実際の投票では投票所の説明と投票用紙に従う。

最高裁大法廷昭和27年2月20日判決・昭和24年(オ)第332号は,国民審査を解職の制度と捉え,×の記載がない投票を罷免を可としない投票として扱う方式を合憲とした。
制度の合憲性に関する旧来の裁判例は,「最高裁判所裁判官国民審査制度の合憲性に関する最高裁判所の判決」も扱っている。

2 特定の裁判官だけについて法定外の棄権記号を書く方式はない

最高裁第一小法廷昭和47年7月20日判決・昭和45年(行ツ)第118号は,特定の裁判官について棄権の意思を示すために法定外の記載をする方式は認められていないとした。
国民審査法22条は,×以外の事項を記載した投票の効力を定めているため,独自の記号を付けないことが必要である。

3 罷免の可否は一人ずつ集計される

国民審査法32条によれば,罷免を可とする投票が罷免を可としない投票より多い裁判官が罷免を可とされる。
ただし,同条の定める投票総数が選挙人名簿及び在外選挙人名簿の登録者総数の1%に達しない場合は除かれる。

この集計要件は,有権者が裁判内容を調べる際の評価基準ではなく,投票後に罷免の可否を決める法定要件である。
判断材料の調査では,罷免可率の高低と判決理由の分析を混同しない。

第8 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索「最高裁判所裁判官国民審査法」15条,22条,32条及び53条(令和8年8月24日確認)
e-Gov法令検索「最高裁判所裁判官国民審査法施行令」23条~26条(令和8年8月24日確認)
e-Gov法令検索「裁判所法」11条(令和8年8月24日確認)

2 裁判例

最高裁大法廷昭和27年2月20日判決・昭和24年(オ)第332号・民集6巻2号122頁(解職制度及び無記載票の取扱い)
最高裁第一小法廷昭和47年7月20日判決・昭和45年(行ツ)第118号(特定の裁判官についての棄権表示及び投票の効力)
最高裁大法廷令和4年5月25日判決・令和2年(行ツ)第255号,同年(行ヒ)第290号~第292号・民集76巻4号711頁(在外国民の国民審査権及び補足意見の確認例)

3 公的資料・ウェブ資料

①最高裁判所「最高裁判所の裁判官」(令和8年8月24日確認)
②裁判所「裁判例検索」及び「掲載判例の説明」(令和8年8月24日確認)
③長野県選挙管理委員会「最高裁判所裁判官国民審査 審査対象裁判官情報」(第27回審査公報掲載ページ,令和8年8月24日確認)
④衆議院「第163回国会法務委員会第5号(平成17年10月14日)」(平成15年の字数及び写真等の制限撤廃に関する答弁)
⑤衆議院「最高裁判所裁判官の国民審査における情報提供の充実と実効性確保に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質215第7号,令和6年11月22日)
⑥国立国会図書館日本法令索引「最高裁判所裁判官国民審査法施行令の改正沿革」(平成15年政令第320号,令和8年8月24日確認)

4 文献

①西川伸一「最高裁判所裁判官国民審査および国民審査公報の実体分析―国民審査の実質化をめざして―」政経論叢79巻3・4号,2011年,161頁~230頁(掲載順に関する分析は161頁~164頁)