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最高裁判所裁判官の任期・定年・退官|70歳の到達日・在任最終日・罷免との違い(AI作成)

第1 最高裁判所裁判官には固定任期がない

本記事は,最高裁判所裁判官に共通する固定任期の有無,70歳定年の日付計算及び在職終了事由を扱うものである。
最高裁判所裁判官の一覧,任命及び構成は別記事で,長官の欠位及び代理は最高裁判所長官の任期と定年で説明している。

1 70歳は任期ではなく定年である

日本国憲法79条5項は,最高裁判所裁判官が法律の定める年齢に達した時に退官すると定めている。
裁判所法50条がその年齢を70歳とする一方,最高裁判所裁判官について「任命から何年」という任期を定める条文はない。

したがって,「最高裁判所裁判官の任期は70歳まで」という表現は正確でない。
固定任期はなく,70歳が定年であるため,実際の在任期間は任命時の年齢及び定年前に生じた在職終了事由によって変わる。
70歳になる前でも免官,罷免又は死亡によって在職が終わり得ることも,任期と定年を区別すべき理由である。

2 下級裁判所裁判官の10年任期とは制度が異なる

日本国憲法80条1項は,下級裁判所裁判官の任期を10年とし,再任できる旨を明記している。
裁判所法40条3項も,その官に任命された日から10年を経過した時に任期を終え,再任できると定めている。

この10年任期は,高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事についての制度である。
最高裁判所長官及び最高裁判所判事へ同じ任期を当てはめることはできない。

3 国民審査の10年周期は再審査の時期である

日本国憲法79条2項及び最高裁判所裁判官国民審査法2条は,任命後最初の衆議院議員総選挙で国民審査を行い,最初の審査から10年を経過した後に初めて行われる同総選挙で再び審査すると定めている。
ここでいう10年は任期ではなく,次の審査を行う時期を決める期間であり,10年が経過した日に当然に退官したり,再任されたりする制度ではない。
再審査は10年経過後の最初の衆議院議員総選挙で行われるため,最初の審査から常にちょうど10年後に行われるとも限らない。

最高裁判所大法廷昭和27年2月20日判決(昭和24年(オ)第332号,民集6巻2号122頁)は,国民審査の実質を解職制度と捉え,任命を完成させる制度ではないと判示した。
同判決は,任命行為によって任命は完了し,国民審査は不適当と判断された裁判官を罷免する制度であると説明している。

個々の裁判官について審査公報,関与裁判及び個別意見を調べる方法は,最高裁判所裁判官国民審査の判断方法で扱っている。
本記事では,国民審査が任期ではないこと及び定年と接近した場合の処理に対象を絞る。

第2 70歳に達する日と在任最終日

1 年齢は出生の日から起算する

年齢計算ニ関スル法律は,年齢を出生の日から起算し,民法143条を準用すると定めている。
民法143条2項によれば,年による期間を年の初め以外の日から起算するときは,最後の年における起算日の応当日の前日に期間が満了する。

出生の日から70年という期間は,70回目の誕生日の前日に満了する。
より正確には,誕生日の前日が終わる時点で70歳に達するのであり,その時点は誕生日の午前0時と連続しているが,期間が満了する暦日は誕生日の前日である。
このため,日常語でいう誕生日と,法律上の年齢到達日とは暦日が1日異なる。

2 法律上の定年退官日も誕生日の前日である

裁判所法50条は,最高裁判所裁判官が年齢70年に達した時に退官すると定めている。
年齢計算法と合わせると,法律上の定年退官日及び在任最終日は70回目の誕生日の前日となり,誕生日は退官後の最初の日である。

神戸地方裁判所平成14年11月13日判決(平成13年(ワ)第2022号)は,昭和22年8月14日生まれの者について,年齢計算ニ関スル法律及び民法143条により,平成13年8月13日に満54歳となると判断した。
同判決は最高裁判所裁判官の退官を扱ったものではないが,誕生日の前日に年齢へ到達する一般的な計算方法を具体的に示している。

3 三浦守裁判官の在任最終日の計算

最高裁判所の公式プロフィールによれば,三浦守裁判官は昭和31年10月23日生まれであり,平成30年2月26日に最高裁判所判事へ任命された。
現行法をこの生年月日に適用すると,70歳到達日,法律上の定年退官日及び在任最終日は,いずれも令和8年10月22日となる。

この日付は,最高裁判所が公表した生年月日と現行法から導く法的計算である。
令和8年10月23日は退官後の最初の日となるが,この計算は後任者又は後任者の就任日を予測するものではない。

4 「定年退官発令予定日」という表示との違い

本ブログの1年以内に定年退官する予定の裁判官一覧及び一部の経歴記事では,誕生日当日を「定年退官発令予定日」と表示している。
この表示は年齢到達の目安となる誕生日を示すものであり,裁判所法50条及び年齢計算法に基づく法律上の定年退官日とは1日異なる。

裁判所法50条は,70歳に達した時に退官すると定めており,発令を退官の効力要件として書いていない。
したがって,「定年退官発令予定日」という表示とは別に,法律上の在任最終日は誕生日の前日として確認する必要がある。
発令予定日という語だけから,裁判所法上の退官日を誕生日当日と判断することはできない。

第3 退官・免官・罷免・死亡・懲戒の違い

事由法律上の整理主な根拠身分終了の時点又は効果
70歳到達退官日本国憲法79条5項,裁判所法50条70歳に達した時に身分が終了する。
本人の願出免官裁判官分限法1条最高裁判所を経た願出に基づき,任命権者が免ずる。
回復困難な心身の故障免官日本国憲法78条,裁判官分限法1条・3条・4条・12条分限裁判の確定後,任命権者が免ずる。
弾劾罷免日本国憲法78条,裁判官弾劾法2条・37条罷免裁判の宣告により身分が終了する。
国民審査罷免日本国憲法79条2項・3項,国民審査法32条・35条出訴期間の経過又は訴訟の終了・確定時に身分が終了する。
死亡死亡による在職終了国民審査法5条は失官と死亡を別記する。死亡時に在職が終了する。
懲戒戒告又は1万円以下の過料裁判所法49条,裁判官分限法2条それだけでは裁判官の身分は終了しない。

1 退官と免官は効果原因が異なる

定年による退官は,70歳到達という客観的事実によって裁判所法50条上の効果が生じるものであり,制裁ではない。
本人の願出又は心身の故障による免官とは,根拠条文も手続も異なる。

裁判官分限法1条は,回復困難な心身の故障のために職務を執れないと裁判された場合及び本人が免官を願い出た場合に,任命権者が免ずることができると定めている。
本人の願出は最高裁判所を経る必要がある。
最高裁判所裁判官の心身故障に関する分限事件は,同法3条・4条により最高裁判所大法廷が第一審かつ終審として扱う。

心身故障の分限裁判が確定しただけで,直ちに免官の手続が完了するわけではない。
同法12条は最高裁判所から内閣への通知を定め,同法1条は任命権者による免官を予定している。

2 罷免には弾劾と国民審査がある

裁判官弾劾法2条は,職務上の義務への著しい違反又は裁判官としての威信を著しく失うべき非行を弾劾による罷免事由としている。
同法37条によれば,弾劾裁判による罷免は罷免裁判の宣告によって効力を生じる。
また,同法41条により,訴追後は終局裁判まで本人の願出による免官もできない。

国民審査による罷免は,弾劾裁判のような限定された非行を要件としない。
もっとも,罷免を可とする投票が多かった場合でも投票日に直ちに身分が終了するわけではなく,効力発生時期は国民審査法35条が別に定めている。

3 死亡と懲戒は別の事由である

死亡は,退官,免官又は罷免という法的行為とは別の在職終了事由である。
国民審査法5条も,裁判官が「その官を失い,若しくは死亡した」場合を分けて書いており,死亡を他の身分終了事由と同一視していない。

懲戒は身分終了を目的とする制度ではない。
裁判官分限法2条が定める懲戒は戒告又は1万円以下の過料であり,懲戒裁判だけで退官,免官又は罷免となるものではない。

第4 国民審査と定年が近接する場合

1 審査期日の前日までに70歳となる裁判官

国民審査法5条3項・5項は,審査の告示の日から審査期日の前日までに70歳に達するため「審査に付される裁判官とならなかった」場合を明記し,その裁判官を氏名の告示順序から除く。
国民審査の前に定年退官する裁判官を,審査対象者として投票用紙へ残さないための処理である。

年齢計算では誕生日の前日が70歳到達日となるため,誕生日が審査期日当日である裁判官は,審査期日の前日に70歳へ達することになり,この取扱いの対象となる。
これに対し,誕生日が審査期日の翌日であれば,70歳到達日は審査期日そのものであり,同条の「審査の期日の前日まで」という期間には入らない。
誕生日が1日違うだけで審査対象となるかが分かれ得るため,ここでも誕生日ではなく法律上の年齢到達日を用いる必要がある。

2 投票後,罷免の効力発生前に定年退官した場合

国民審査法32条により罷免を可とされた裁判官も,投票日に直ちに罷免されるわけではない。
同法35条1項は,審査無効又は罷免無効の訴えを提起できる30日間が経過した日を原則的な罷免日とし,訴えが提起された場合は訴訟が係属しなくなった日又は裁判が確定した日を罷免日としている。

この効力発生までの間に,裁判官が定年退官その他の理由で官を失うことがある。
同法35条3項は,罷免を可とされた裁判官が罷免されるべき日前に官を失ったときは,国民審査によって罷免されたものとみなすため,先に定年退官したことだけで国民審査の法的効果が消えるわけではない。
同項は,在職終了と国民審査による罷免の法的評価を分けて処理する規定である。

出典・参考資料

1 法令

日本国憲法78条~80条(e-Gov法令検索)
裁判所法(昭和22年法律第59号)40条,48条~50条(e-Gov法令検索)
年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号)(e-Gov法令検索)
民法(明治29年法律第89号)143条(e-Gov法令検索)
裁判官分限法(昭和22年法律第127号)1条~4条・12条(e-Gov法令検索)
裁判官弾劾法(昭和22年法律第137号)2条・37条・41条(e-Gov法令検索)
最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律第136号)2条・5条・32条・35条~38条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

最高裁判所大法廷昭和27年2月20日判決(昭和24年(オ)第332号,民集6巻2号122頁,裁判所ウェブサイト)
神戸地方裁判所平成14年11月13日判決(平成13年(ワ)第2022号,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料・文献

最高裁判所「三浦守」(生年月日及び最高裁判所判事任命日)
②最高裁判所事務総局編『裁判所法逐条解説』(法曹会,昭和42年)151頁~156頁