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裁判所の人事行政事務―平成27年資料で見る裁判官会議・事務総局・人事局の役割(AI作成)

第1 平成27年資料の位置付け

1 対象文書

本記事は,最高裁判所事務総局が平成27年5月26日の事務総局会議に提出した全14頁の資料「裁判所の人事行政事務の実情について」を,決定主体及び委任先ごとに整理するものである。
同資料が扱うのは,裁判官,司法修習生,裁判官以外の裁判所職員及び検察審査会事務官等に関する任免,給与,服務,人事評価,懲戒,災害補償等である。

この資料は,人事事項のうち,①最高裁判所裁判官会議の議決によるもの,②最高裁判所長官の決裁又は同長官等への委任によるもの,③最高裁判所事務総長への委任又は同事務総長の決裁によるもの,④最高裁判所事務総局人事局長等への委任又はその決裁によるもの,⑤通達等で処理されるものを区分している。
個々の人事について誰が候補者を選び,どのような資料を作成し,どのような理由で結論を出したかを明らかにする文書ではない。

2 裁判官会議における確認と後続決定

平成27年6月3日の最高裁判所裁判官会議議事録によれば,人事局長が別紙第1に基づいて人事行政事務の実情を説明し,裁判所における人事行政事務は従前も同資料のとおり行われており,今後も同様に行うことが確認された。
したがって,同年5月26日の資料は,単なる検討用メモではなく,当時の取扱いを裁判官会議で確認する基礎となった資料である。

平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議議事録には,「裁判所の人事行政事務の実情について」が第3議題として掲げられ,人事局長の説明後に原案どおり決定したと記載されている。
平成28年4月28日の最高裁判所裁判官会議議事録にも同じ題名の第2議題があり,原案どおり決定したと記載されている。

もっとも,平成28年の各議事録にいう別紙と平成27年5月26日の資料について,全項目が同一であることまでは確認できない。
また,令和8年8月27日現在,同じ形式で現在の全決裁・委任事項を一覧化した公表済み後継資料は確認できないため,以下の資料整理は平成27年5月当時の内容として読む必要がある。

3 資料から分かることと分からないこと

資料から直接分かるのは,各人事事項について最終的な議決又は決裁を行う者,委任を受けた者及び通達等による処理の別である。
最高裁判所事務総局人事局が候補者案や資料を準備する場合でも,裁判所法上の決定主体又は資料に記載された決裁者と同一であるとは限らない。

反対に,資料だけでは,候補者の選定過程,裁判官会議に提出される原案の作成過程,審議における個々の意見及び個別人事の理由は分からない。
また,特定の裁判内容,思想,信条又は経歴が個別人事に影響したと推認するための資料でもない。

第2 人事行政の法的主体と最高裁判所事務総局

1 最高裁判所裁判官会議

裁判所法12条1項は,最高裁判所が司法行政事務を行うのは裁判官会議の議によるものとし,最高裁判所長官がこれを総括すると定めている。
同条2項によれば,裁判官会議は最高裁判所の全裁判官で組織され,最高裁判所長官が議長となる。

日本国憲法77条1項は,最高裁判所が裁判所の内部規律及び司法事務処理等に関する規則を定める権限を有すると定めている。
最高裁判所の公式な組織説明は,この規則制定権及び司法行政権が最高裁判所裁判官会議の議決に基づいて行使されると説明している。
したがって,人事資料の作成や日常の事務処理を事務総局が行っていることから直ちに,事務総局自体が裁判官会議に代わる法的な人事決定主体であるとはいえない。

2 最高裁判所長官

最高裁判所長官は,裁判所法12条1項により最高裁判所の司法行政事務を総括し,同条2項により裁判官会議の議長となる。
平成27年資料は,裁判官会議の議決事項とは別に,最高裁判所長官の決裁事項及び同長官又はその指定する者へ委任された事項を列挙している。

この区別から分かるのは,司法行政事務の全てを裁判官会議が個別に議決するのではなく,法令,規則,委任又は既定の運用により,長官その他の者が決裁する事項があることである。
もっとも,長官が司法行政事務を「総括する」ことと,長官が全ての人事を単独で決定することは同じではない。

3 事務総局及び人事局

裁判所法13条は,最高裁判所の庶務を掌らせるため,最高裁判所に事務総局を置くと定めている。
裁判所の公式説明では,事務総局は裁判官会議を補佐し,裁判事務の合理的かつ効率的な運用のため,人や設備などの面から裁判部門を支援する機関とされている。

最高裁判所事務総局分課規程9条は,人事局に総務課,任用課,能率課,調査課,公平課及び職員管理官を置いている。
同規程11条によれば,任用課は裁判官の指名・補職等,報酬の決定,人事評価及び服務並びに司法修習生の採用・罷免・考試等を所掌する。

同規程10条,13条ないし16条は,裁判官以外の職員の任免・採用試験・給与・人事評価等を人事局総務課,研修・表彰・服務等を能率課,分限・懲戒等を調査課,不利益処分等に関する審査を公平課,職員団体等を職員管理官の所掌としている。
これは各部署の事務分掌を示すものであり,個々の事項について誰が法的な最終決定をするかは,裁判所法,各規則,委任及び平成27年資料の区分を併せて確認する必要がある。

第3 裁判官及び司法修習生に関する人事行政事務

1 任用,補職及び退官等

平成27年資料1頁は,裁判官会議の議決事項として,①下級裁判所裁判官の任命指名,②補職,③支部勤務命令,④判事補の職権特例指名,⑤所長等の司法行政事務を掌る職及び裁判所調査官等の発令,⑥弁護士職務経験等の外部経験・出向等,⑦法科大学院への派遣,⑧依願退官,⑨罷免の訴追請求及び分限裁判開始の申立て,⑩簡易裁判所判事選考候補者の推薦基準,⑪司法修習生の採用・修習期間・修習終了・罷免を挙げている。
任命指名,補職,退官,分限手続の申立て及び司法修習生の採否等の中核事項が,裁判官会議の議決事項としてまとめられている。

同頁は,最高裁判所長官の決裁事項として,①下級裁判所裁判官指名諮問委員会への諮問及び指名結果等の通知,②職務代行の発令,③事務総局局課長の事務取扱・事務代理,④簡易裁判所判事選考命令,⑤司法修習生の自己都合による採用取消しを含む願出による罷免を挙げている。
また,弁護士職務経験及び法科大学院派遣について受入先等と締結する取決めは,事務総長の決裁事項とされている。

下級裁判所裁判官の任命について,裁判所法40条1項は,内閣が最高裁判所の指名した者の名簿によって任命すると定めている。
現在の指名手続の詳細は,下級裁判所裁判官指名諮問委員会及び「下級裁判所裁判官指名諮問委員会とは―組織・手続・再任不適情報まで(AIリライト)」で確認できる。

2 報酬及び報酬以外の給与

平成27年資料2頁は,判事3号以上及び簡易裁判所判事3号以上への昇給を裁判官会議の議決事項とし,それ以外の報酬の決定を最高裁判所長官の決裁事項としている。
この区分は,「裁判官の昇給」に掲載された資料を読む際の基礎となる。

報酬以外の給与について,裁判官の報酬等に関する法律9条は,官職及び報酬月額の区分に応じ,特別職又は一般職等の例に準じ,最高裁判所の定めるところにより支給するものとしている。
平成27年資料は,これらの法令上「各庁の長」の権限又は所掌事務とされる事項を,最高裁判所長官又はその指定する者へ委任するものとしている。

3 服務,休業及び人事評価

平成27年資料3頁~4頁は,裁判所法52条2号に基づく報酬を得る職務等の許可及び司法修習生に関する規則上の許可を,最高裁判所長官又はその指定する者への委任事項としている。
育児休業及び配偶者同行休業に関して最高裁判所の権限又は所掌事務とされた事項は長官決裁とされ,介護休暇及び年次休暇等は所属裁判所等への委任事項を含む。

裁判官の人事評価については,平成27年資料が,裁判官の人事評価に関する規則により最高裁判所が定める事項を通達等で処理するものとしている。
現在の評価制度は後記第7の2のとおりであり,平成16年4月から,毎年の評価,評価項目,面談,評価書の開示及び不服申出の手続が規則で定められている。

4 海外出張及び研修所教官等

平成27年資料3頁は,最高裁判所裁判官,事務総局局課長,高等裁判所長官,知的財産高等裁判所長,地方裁判所長及び家庭裁判所長の海外出張並びに1年以上の裁判官の海外出張を,裁判官会議の議決事項としている。
その他の裁判官の海外出張は,最高裁判所長官の決裁事項とされている。

同資料11頁は,司法研修所教官及び所付の発令を裁判官会議の議決事項としている。
裁判官の任免・補職だけでなく,外部経験,派遣,海外出張及び研修担当への発令も人事行政事務に含まれることが分かる。

第4 裁判官以外の裁判所職員に関する人事行政事務

1 任免等の決定及び委任

平成27年資料4頁は,別紙第1に掲げる幹部職等の任免を裁判官会議の議決事項としている。
倫理監督官,再就職等監察官,各種委員会の委員等及び大法廷首席書記官の事務代理は最高裁判所長官の決裁事項とされ,別紙第2の職は事務総長,別紙第3の職は人事局長への委任事項とされている。

民事調停委員,家事調停委員,労働審判員及び専門委員の任免等は,事務総長の決裁事項である。
同じ「任免」であっても,官職の種類・格付け及び法令上の根拠に応じて,裁判官会議,長官,事務総長又は人事局長に分かれている。

2 法令上の権限及び審査事務

平成27年資料4頁~8頁は,裁判所職員臨時措置法によって裁判所職員に準用される一般職国家公務員関係法令について,最高裁判所の権限又は所掌事務を誰が処理するかを整理している。
裁判官会議の議決事項には,勤務条件に関する行政措置要求,不利益処分の審査及び給与決定に関する審査の申立てに対する判定等が含まれる。

事務総長への委任事項には,採用候補者名簿の作成,採用試験受験資格の認定,懲戒手続を進めることについての承認並びに不利益処分,行政措置要求,給与決定及び苦情相談に関する一定の事務が含まれる。
人事局長には総合職試験の採用候補者名簿の管理が委任され,臨時的任用の承認及び養成課程入所者の指名等は人事局長の決裁事項とされている。

一般職試験に基づく採用候補者名簿の管理は,各高等裁判所事務局長への委任事項である。
裁判所職員の人事行政には,最高裁判所内部だけで完結する事項と,高等裁判所又は所属裁判所へ委任される事項が併存している。

3 最高裁判所が定める事項

平成27年資料8頁~10頁は,法令上「最高裁判所が定める」とされた事項を別項として整理している。
指定職俸給表の準用を受ける職員の号俸は裁判官会議の議決事項,級別定数の設定及び改定は最高裁判所長官の決裁事項とされている。

その他の事項は,所要の通達又は決裁により定めるものとされている。
対象となるのは,採用試験,首席書記官・首席家庭裁判所調査官等の任命基準,標準的官職,下級裁判所の事務処理,研修所入所試験,裁判所書記官任用試験,給与・寒冷地手当・俸給調整・本府省業務調整手当,人事評価,育児休業・自己啓発等休業・配偶者同行休業,勤務時間,退職管理及び管理職員等の範囲に関する事項である。

この項目は,既存の「法令上の権限又は所掌事務」と重なるように見えるが,前者が個別の権限・事務を誰が行うかを整理するのに対し,ここでは法令が最高裁判所に具体的な基準等を「定める」ことを委ねた場合の処理方法を整理している。
人事行政における個別処分と,一般的な基準・運用細目の制定を区別するための項目である。

4 裁判官秘書官

平成27年資料10頁は,裁判官秘書官について一般職の職員の例によるとされている事項を,前記の法令上の権限及び最高裁判所が定める事項の例によって処理するとしている。
裁判官秘書官は特別職であるが,給与・勤務条件等の個別制度では一般職の取扱いが参照されるため,資料が独立の項目を設けている。

5 裁判所法80条に基づく通達

平成27年資料10頁は,裁判所法80条に基づき通達で定められる事項として,①下級裁判所の任命権に属する職員の採用,昇任,配置換,分限及び懲戒等について協議又は事務総長等の承認を求める事項,②級別定数,昇給号俸数の合計及び勤勉手当の支給総額の管理等の給与調整,③裁判所職員の兼業,④裁判所職員の海外渡航を挙げている。
下級裁判所が任命権を持つ職員についても,最高裁判所による司法行政上の監督及び予算管理に基づく協議・承認・調整が行われる構造を示す部分である。

第5 裁判官,裁判所職員及び司法修習生に共通する事項

1 災害補償

平成27年資料10頁~11頁は,災害補償の実施に関する審査の申立て等に係る判定を,原則として裁判官会議の議決事項としている。
人事院事務総長に相当する権限・事務は最高裁判所事務総長へ委任され,その他の法令上の権限・所掌事務は事務総長決裁,最高裁判所が定める事項は通達によるものと整理されている。

2 留学費用の償還

裁判所職員の留学費用の償還に関する規則により最高裁判所が定める事項は,最高裁判所事務総長の決裁事項とされている。
同規則の運用に必要な事項は,事務総局の所管局課長の決裁により定めるものとされている。

3 委員への応嘱,注意及び研修所人事

他官庁に設置された各種委員会の委員等への応嘱及び最高裁判所に勤務する裁判官・職員に対する裁判所法80条に基づく注意は,最高裁判所長官の決裁事項である。
これに対し,司法研修所教官及び所付の発令は裁判官会議の議決事項であり,「注意」と「任命・補職」は決定主体が異なる。

第6 別紙が示す任免権限の段階

1 最高裁判所自らが行う範囲

平成27年資料12頁の別紙第1は,最高裁判所自らが任免等を行う官職として,①最高裁判所事務総長,②司法研修所教官・司法研修所長,③裁判所職員総合研修所長,④最高裁判所図書館長,⑤事務総局事務次長,⑥事務総局審議官・家庭審議官,⑦司法研修所事務局長,⑧最高裁判所大法廷首席書記官,⑨高等裁判所事務局長,⑩民事調停官・家事調停官,⑪弁護士職務従事職員である裁判所事務官を掲げている。
裁判所組織全体又は最高裁判所の中枢に関わる官職が中心である。

2 最高裁判所事務総長に委任された範囲

同資料12頁~13頁の別紙第2は,長官・判事秘書官,裁判所職員総合研修所教官,最高裁判所図書館副館長・課長,裁判所調査官,事務総局の局課長・職員管理官・厚生管理官,参事官・審査官,研修所の事務局幹部,各裁判所の首席書記官・次席書記官・総括主任書記官,首席家庭裁判所調査官等,各裁判所の事務局長・次長及び検察審査会事務局長・課長等を掲げている。
最高裁判所に勤務する一定の上位級職員及び検察審査会の一定の職員も,事務総長への委任範囲に含まれる。

3 最高裁判所事務総局人事局長に委任された範囲

同資料14頁の別紙第3は,最高裁判所に勤務する裁判所書記官,裁判所速記官,裁判所事務官及び裁判所技官のうち一定の下位級職員,医療職俸給表の適用を受ける職員等を,人事局長への委任範囲としている。
行政職俸給表(一)の3級以下の検察審査会事務官についても,検察審査会事務官の補職に限って人事局長への委任範囲とされている。

以上の別紙は,官職の重要性及び職務の級に応じ,最高裁判所自らの議決,事務総長への委任及び人事局長への委任という段階を設けていたことを示す。
ただし,現在の個別官職名,俸給表及び委任範囲は改正される可能性があるため,平成27年当時の資料として参照すべきである。

第7 現在の人事行政制度との関係

1 現在の人事局の組織

令和6年2月14日改正を含む最高裁判所事務総局分課規程では,人事局に総務課,任用課,能率課,調査課,公平課及び職員管理官が置かれている。
裁判官の指名,補職,報酬,人事評価及び服務は任用課,裁判官以外の職員の任免・採用試験・給与・人事評価等は主として総務課,分限・懲戒等は調査課の所掌である。

平成27年資料は「誰が決定又は決裁するか」を中心とし,分課規程は「事務総局内のどの部署が事務を担当するか」を定める。
両者を組み合わせることにより,裁判官会議等の決定と,人事局による立案・資料作成・発令その他の実務を区別できる。

2 裁判官の人事評価

裁判官の人事評価に関する規則1条は,判事,判事補及び簡易裁判所判事について,公正な人事の基礎とするとともに能力の主体的な向上に資するため,毎年人事評価を行うと定めている。
評価項目は,事件処理能力,部等を適切に運営する能力及び裁判官として職務を行う上で必要な一般的資質・能力である。

評価権者は,原則として所属裁判所の長であり,地方裁判所長又は家庭裁判所長が行った評価は,高等裁判所長官が調整・補充する。
評価権者は裁判官の独立に配慮して多面的・多角的な情報を把握し,裁判官本人から職務状況の書面提出を受けて面談する。

評価書は裁判官本人の申出により開示され,記載内容について不服を申し出る手続も設けられている。
制度の実施方法及び外部情報の取扱いは,裁判所の「裁判官の新しい人事評価制度の概要について」及び「裁判官人事評価情報の提供方法と人事評価制度(AIリライト)」で確認できる。

3 任命,異動及び再任

日本国憲法80条1項及び裁判所法40条1項によれば,下級裁判所裁判官は最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命し,任期は10年で,再任されることができる。
人事局が指名・補職等に関する事務を所掌することと,任命指名が裁判官会議の議決事項であることは区別する必要がある。

裁判所法48条は,法律で定める場合を除き,裁判官を本人の意思に反して免官,転官,転所,職務停止又は報酬減額できないと定めている。
平成14年の裁判所の人事制度に関する研究報告は,当時の異動について,高等裁判所管内の異動は主として各高等裁判所,全国単位の異動は事務総局人事局が立案し,原則として2か月以上前に内示した上で,本人の承諾があれば裁判官会議の決定を経て発令すると説明している。
同報告は,裁判官の異動は転所に関する保障があるため,全て本人の同意の下に行われているとも説明している。

この説明は平成14年時点の公式報告であり,令和8年現在の全ての異動実務をそのまま証明するものではない。
毎年4月1日付けの人事と裁判官会議の関係は,「毎年4月1日付の裁判官人事と最高裁判所裁判官会議(AIリライト)」に整理している。

第8 司法行政上の監督,裁判官の独立及び分限・懲戒

1 司法行政上の監督の限界

日本国憲法76条3項は,全ての裁判官がその良心に従い独立して職権を行い,憲法及び法律にのみ拘束されると定め,同法78条は裁判官の身分を保障している。
裁判所法80条は,最高裁判所が各級裁判所及びその職員を監督すること,高等裁判所が管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督すること等を定めている。
一方,同法81条は,司法行政上の監督権によって裁判官の裁判権に影響を及ぼし,又はこれを制限することはできないと定めている。

裁判所法82条は,裁判所の事務の取扱方法に対する不服を,80条の監督権により処分するものとしている。
最高裁昭和41年4月14日第一小法廷判決(昭和38年(オ)第1306号,集民83号167頁)は,訴訟手続上の裁判に対する不服は訴訟法所定の方法によるべきであり,裁判所法82条に基づく司法行政監督上の措置を求めることはできないとした。

2 注意と分限・懲戒の区別

平成27年資料は,最高裁判所に勤務する裁判官・職員に対する裁判所法80条に基づく注意を最高裁判所長官の決裁事項とする一方,裁判官の罷免の訴追請求及び分限裁判開始の申立てを裁判官会議の議決事項としている。
司法行政上の注意,分限事件の申立て及び裁判による懲戒は,同じ手続ではない。

裁判所法49条は,裁判官の職務上の義務違反,職務懈怠又は品位を辱める行状があったときは,裁判によって懲戒するものと定めている。
裁判所ウェブサイトで事件符号「分」又は「分ク」により確認できる分限・懲戒事件として,最高裁昭和33年10月28日大法廷決定(昭和33年(分ク)第1号,集民34号399頁),最高裁平成10年12月1日大法廷決定(平成10年(分ク)第1号,民集52巻9号1761頁),最高裁平成13年3月30日大法廷決定(平成13年(分)第3号,集民201号737頁),最高裁平成30年10月17日大法廷決定(平成30年(分)第1号,民集72巻5号890頁)及び最高裁令和2年8月26日大法廷決定(令和2年(分)第1号,集民264号41頁)がある。

3 人事行政資料から個別の裁判内容を評価できないこと

裁判官の人事評価に関する規則3条2項は,人事評価に当たり裁判官の独立に配慮することを求めている。
裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書も,係属事件の裁判内容等に影響を及ぼすことや,確定裁判の内容の当否を問題にすることは許されないと整理している。

平成27年資料は決定・委任の経路を示す資料であって,個々の裁判官の評価内容又は個別事件の判断と人事結果との因果関係を示す資料ではない。
人事行政の組織構造に対する制度上の評価と,個別人事の理由に関する事実認定は分ける必要がある。

第9 関連記事

裁判所の司法行政全体については,「司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長(AIリライト)」参照。
最高裁判所事務総局の組織については,「最高裁判所事務総局規則」及び「最高裁判所事務総局人事局の事務分掌」参照。

裁判官会議の一次資料については,「最高裁判所裁判官会議の議事録」参照。
裁判所職員に関する各論は,「裁判所職員に関する記事の一覧」から確認できる。

第10 出典・参考資料

1 法令・規則

① 日本国憲法76条3項,77条1項,78条及び80条1項(e-Gov法令検索)
② 裁判所法12条,13条,40条,48条,49条,52条,80条~82条(e-Gov法令検索)
③ 裁判官の報酬等に関する法律9条(e-Gov法令検索)
④ 裁判所職員臨時措置法(e-Gov法令検索)
⑤ 最高裁判所「裁判官の人事評価に関する規則」(平成16年最高裁判所規則第1号)
⑥ 最高裁判所「最高裁判所事務総局規則」(昭和22年12月1日最高裁判所規則第10号,資料1頁~3頁)
⑦ 最高裁判所「最高裁判所事務総局分課規程」(昭和22年12月1日最高裁判所規程第5号,資料1頁~4頁)

2 公文書・裁判所資料

① 最高裁判所事務総局「裁判所の人事行政事務の実情について」(平成27年5月26日事務総局会議資料,資料1頁~14頁)
② 最高裁判所「平成27年6月3日の最高裁判所裁判官会議議事録
③ 最高裁判所「平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議議事録」(PDF1頁)
④ 最高裁判所「平成28年4月28日の最高裁判所裁判官会議議事録
⑤ 最高裁判所「最高裁判所の組織
⑥ 最高裁判所「裁判官の新しい人事評価制度の概要について」(平成16年4月)
⑦ 裁判官の人事評価の在り方に関する研究会「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」(平成14年7月16日付研究会報告書)
⑧ 裁判官の人事評価の在り方に関する研究会「第4 我が国の裁判官の人事評価の在り方に関する検討」(平成14年7月16日付研究会報告書)

3 裁判例

① 最高裁昭和41年4月14日第一小法廷判決(昭和38年(オ)第1306号,集民83号167頁,裁判所ウェブサイト)
② 最高裁昭和33年10月28日大法廷決定(昭和33年(分ク)第1号,集民34号399頁,裁判所ウェブサイト)
③ 最高裁平成10年12月1日大法廷決定(平成10年(分ク)第1号,民集52巻9号1761頁,裁判所ウェブサイト)
④ 最高裁平成13年3月30日大法廷決定(平成13年(分)第3号,集民201号737頁,裁判所ウェブサイト)
⑤ 最高裁平成30年10月17日大法廷決定(平成30年(分)第1号,民集72巻5号890頁,裁判所ウェブサイト)
⑥ 最高裁令和2年8月26日大法廷決定(令和2年(分)第1号,集民264号41頁,裁判所ウェブサイト)