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法廷警察権とは―退廷命令・監置・過料と裁判長の措置の限界(AI作成)

第1 法廷警察権とは

法廷警察権とは,適正かつ迅速な裁判を実現するため,法廷の秩序を維持する権限である。
裁判所法71条は,裁判長又は開廷した一人の裁判官が秩序維持を行い,裁判所の職務の執行を妨げ,又は不当な行状をする者に対して,退廷その他必要な命令・処置を行うことができると定めている。

退廷命令,法廷等の秩序維持に関する法律による監置・過料,措置による損害についての国家賠償請求は,それぞれ根拠と手続が異なる。
本記事は,令和8年10月18日時点で施行されている条文と,以下の最高裁判例を基に,この区別を説明する。

裁判所法の現行条文:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059
法廷等の秩序維持に関する法律の現行条文:https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000286

第2 退廷命令と,法廷の外へ及ぶ範囲

裁判所法71条2項は,秩序を乱す行為に対し,退廷を命じるほか,秩序維持に必要な事項を命じ,又は処置を執る権限を定めている。
同法71条の2により,必要がある場合には警察官の派出を要求でき,派出された警察官は,法廷の秩序維持について裁判長等の指揮を受ける。

最高裁第三小法廷昭和31年7月17日判決(昭和29年(あ)第2084号)は,法廷の秩序を維持するために必要な限り,裁判官が妨害行為を直接目撃し,又は聞き知ることのできる場所まで権限が及ぶとした。
時間についても,開廷中に加え,これに接着する前後を含むとした。

同判決は,多数の傍聴人が騒ぎ,静かに退廷することを拒んだ具体的な事情の下で,退廷命令の執行として建物の外まで退去させたことを認めている。
この判断を,裁判所庁舎のどこでも,いつでも,同じ根拠で規制できるという説明に広げることはできない。
庁舎の管理,入庁時の所持品検査,法廷内の秩序維持は,対象・場所・目的を区別して検討する必要がある。

判決原文:裁判所公開PDF実頁1~2(印刷頁1~2)。
https://www.courts.go.jp/hanrei/51334/detail2/index.html

第3 監置・過料という制裁

1 制裁の対象と上限

法廷等の秩序維持に関する法律2条1項は,裁判所が事件について手続を行う際,その面前その他直接に知ることのできる場所における一定の行為を制裁の対象とする。
秩序維持のための命令・措置に従わない場合のほか,暴言・暴行・けん騒その他不穏当な言動により,職務の執行を妨害し,又は裁判の威信を著しく害する場合が規定されている。

制裁は20日以下の監置,又は3万円以下の過料であり,両方を科すこともできる。
監置は監置場に留置するものであり,退廷を命じるだけの措置とは異なる。
また,この法律の「過料」を,刑法上の「科料」や罰金と混同しないことが大切である。

2 その場の拘束と,制裁を科す裁判

同法3条2項により,対象となる行為があったときは,裁判所はその場で直ちに,裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。
ただし,拘束の時から24時間以内に監置に処する裁判がされなければ,直ちに拘束を解かなければならない。

制裁を科す裁判は決定で行い,対象行為が終わってから1か月を経過した後にはできない(同法4条1項・2項)。
同条3項は,必要な場合に証人尋問その他の証拠調べをすることができると定めている。
その場の拘束,制裁の決定,決定の執行を一つの処分として説明しないようにする必要がある。

3 最高裁が示した制裁の性質

最高裁大法廷昭和33年10月15日決定(昭和28年(秩ち)第1号)は,この制裁を,従来の刑事的・行政的処罰のいずれにも属さない,この法律による特殊の処罰と位置付けた。
多数意見は,監置決定及び保全措置としての拘束について,憲法32条・33条・34条・37条に違反するという主張を退けた。

同決定には,手続保障の説明を異にする奥野健一裁判官の補足意見がある。
判決文の一部だけから,裁判所が自由に身体を拘束できる,証拠調べは一切できない,あるいは不服申立てができないという結論を導くものではない。

決定原文:裁判所公開PDF実頁1~2が多数意見,実頁3~4が補足意見(印刷頁も同じ)。
https://www.courts.go.jp/hanrei/50418/detail2/index.html

第4 制裁の裁判に対する不服申立てと補償

地裁・家裁・簡裁又はその裁判官がした制裁の裁判に対しては,告知された日から5日以内に,法令違反を理由として高裁へ抗告できる。
申立書は原裁判所に提出する(法廷等の秩序維持に関する法律5条1項・2項)。
高裁又はその裁判官がした制裁の裁判については,その高裁に異議を申し立てる仕組みがあり,抗告に関する規定が準用される(同条4項)。

抗告には当然に執行を停止する効力はないが,抗告裁判所や原裁判所が執行停止をすることはできる(同条3項)。
抗告・異議についての高裁の裁判に対しては,憲法違反や所定の判例違反を理由とする最高裁への特別抗告が定められており,その提起期間も5日である(同法6条)。

制裁の裁判が同法5条又は6条によって取り消され,既に制裁の執行を受けていた場合には,同法8条の補償の仕組みがある。
これらは同法に基づく制裁の裁判についての制度であり,退廷命令一般に5日以内の抗告ができるという意味ではない。

第5 裁判長の裁量の限界とレペタ判決

1 傍聴人のメモを原則として尊重すること

最高裁大法廷平成元年3月8日判決(昭和63年(オ)第436号,レペタ訴訟)は,裁判を認識・記憶するための傍聴人のメモについて,憲法21条1項の精神に照らして尊重されるべきものとした。
通常は公正かつ円滑な訴訟運営を妨げることはなく,特段の事情がない限り,傍聴人の自由に任せるべきであるというのが多数意見の説明である。

一方,具体的な訴訟運営への支障がある場合の規制まで否定したものではない。
多数意見は法廷警察権について裁判長の広範な裁量を認めているが,そのことと,あらゆる制限が妥当になることとは別である。

2 措置の合理性と国家賠償法上の違法性を分けること

同判決は,当該事件のメモ禁止措置を,合理的根拠を欠いた法廷警察権の行使と評価した。
その上で,国家賠償法1条1項の違法な公権力の行使に当たるかについては,目的・範囲からの著しい逸脱や方法の甚だしい不当性など,特段の事情を要すると説明した。
そして,措置が行われた当時の運用等も踏まえ,当該事件では国家賠償法上違法とまではいえないとした。

したがって,「裁判長の判断だから適法である」という要約も,「メモ禁止が不合理なら必ず国家賠償が認められる」という要約も正確ではない。
この判決の国家賠償に関する基準を,監置・過料への不服申立ての要件にそのまま置き換えることもできない。

判決原文:裁判所公開PDF実頁2~7(印刷頁2~7)。
https://www.courts.go.jp/hanrei/52213/detail2/index.html

第6 起立・服装・所持品検査との関係

弁護士が発言時に起立する慣行についての昭和27年通知は,弁護士の法廷での発言に関する歴史資料である。
傍聴人を対象とする裁判所傍聴規則や,前記法律の制裁要件と一括して,起立しなければ直ちに監置されるという説明をすることはできない。
通知と当時の日弁連の意見は,法廷における弁護士の起立問題で整理している。

バッジや衣服の表示の制限,庁舎入口での所持品検査,撮影・録音の可否についても,適用される規則や具体的な行為を確認する必要がある。
それぞれ,法廷での服装・バッジと表現の自由,全国の下級裁判所における所持品検査,裁判所・法廷での撮影・録音・録画を参照されたい。

初めて傍聴する際の予定の調べ方や当日の流れは,裁判所の傍聴方法にまとめている。
過去の最高裁口頭弁論の配布資料は,「傍聴人の皆様へ」の資料集を参照されたい。

第7 主な出典

裁判所法71条・71条の2・72条:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059
法廷等の秩序維持に関する法律2条~8条:https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000286
裁判所傍聴規則:https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/kisokusyu/sonota_kisoku/sonota_kisoku_08/index.html

最高裁昭和31年7月17日判決:刑集10巻7号1127頁。
最高裁昭和33年10月15日決定:刑集12巻14号3291頁。
最高裁平成元年3月8日判決:民集43巻2号89頁。
各裁判例の原文へのリンクと参照箇所は,該当する説明の直後に掲げている。