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裁判所・法廷で写真撮影,録音又は録画はできるか(AI作成)

第1 結論

1 裁判所で写真撮影,録音又は録画ができるかは,①敷地・玄関・廊下等の庁舎共用部か,②民事訴訟の期日か,③刑事事件の公判廷かをまず分けて考える必要があります。
2 一般来庁者については,各裁判所の案内により,敷地又は庁舎内での写真撮影・録音等が禁止されていることがあります。東京地方裁判所は前庭を含む敷地内で撮影・録音等はできないと案内し,横浜地方裁判所も法廷内に限らず裁判所内での撮影・録音を一切禁止すると案内しています。
3 民事訴訟の期日における撮影,速記,録音,録画又は放送には,民事訴訟規則77条により裁判長等の許可が必要です。刑事事件の公判廷における撮影,録音又は放送には,刑事訴訟規則215条により裁判所の許可が必要です。
4 報道機関の冒頭カメラ撮影は,一般傍聴人が自由に撮影できることの根拠ではありません。代表取材,撮影時間,機材,位置及び対象等の条件の下で,各裁判体が許否を判断する別の運用です。

第2 場所と立場を分けて考える

1 同じ「裁判所での撮影」でも,適用される根拠及び判断主体は同じではありません。
2 敷地,玄関,廊下,待合スペースその他の庁舎共用部では,庁舎管理権者による施設管理と各庁の案内・個別運用が中心となります。
3 民事訴訟の期日及び刑事事件の公判廷では,庁舎管理に加えて,訴訟規則と裁判長又は裁判所の手続運営上の判断が問題となります。
4 報道機関向けの運用基準は,司法行政上の取材対応を整える資料です。当事者,代理人,傍聴人その他の一般来庁者に同一の撮影機会を与えるものではありません。

第3 裁判所の敷地・庁舎内

1 裁判所の庁舎等の管理に関する規程は,裁判所の用に供する建物,土地及び附帯施設を「庁舎等」とし,その管理の仕組みを定めています。撮影への対応は,執務への支障,一般来庁者のプライバシー,裁判所の中立性・公平性,撮影目的及び当該庁の運用等を踏まえて判断されます。
2 東京地方裁判所の「個人での裁判傍聴」は,法廷だけでなく,庁舎内廊下及び庁舎外の前庭を含む裁判所敷地内では写真撮影・録音等はできないと案内しています。横浜地方裁判所の「傍聴のルール」も,法廷内に限らず裁判所内での写真撮影・録音は一切禁止と案内しています。
3 他方,広報行事の記念撮影,報道取材,空き法廷の取材その他について,目的・日時・場所・対象・機材等を限定して許可される場合があります。したがって,「裁判所は常に全面禁止」又は「公開施設だから自由に撮影できる」のいずれともいえません。
4 実際の運用は裁判所及び庁舎によって異なり得ます。撮影禁止の掲示,ウェブサイトの案内及び職員の指示を確認し,必要があれば事前に総務課等へ問い合わせるべきです。

第4 民事訴訟の期日

1 令和8年5月21日施行後の民事訴訟規則77条は,民事訴訟に関する手続の期日における写真撮影,速記,録音,録画又は放送について,裁判長,受命裁判官又は受託裁判官の許可を必要としています。
2 規制対象は法廷内に限られません。期日外の審尋及び民事訴訟法176条2項に基づく書面による準備手続の協議についても同じ取扱いです。ウェブ会議で自宅又は事務所から参加する場合も,無断の録音,録画又はスクリーンショットが自由になるわけではありません。
3 当事者双方が同意していること,端末に録画機能があること又は自分の発言の確認だけを目的とすることは,裁判長等の許可に代わりません。

第5 刑事事件の公判廷

1 刑事訴訟規則215条は,公判廷における写真撮影,録音又は放送について,裁判所の許可を必要としています。
2 民事訴訟規則77条と刑事訴訟規則215条では,条文の対象行為及び適用場面が同一ではありません。刑事事件について,民事訴訟規則の説明をそのまま当てはめることはできません。
3 法廷の入口に掲示された傍聴上の注意及び裁判長・裁判所職員の指示にも従う必要があります。無許可撮影が常に直ちに犯罪になると一括りにするのは正確ではありませんが,制止又は退廷命令,法廷秩序維持法上の問題,肖像・プライバシー侵害等が別途生じ得ます。

第6 報道機関の法廷内カメラ取材

1 日本新聞協会の「法廷内カメラ取材の標準的な運用基準」は,代表取材を前提とし,携帯用小型スチールカメラ及びビデオカメラの台数,撮影要員,撮影位置,撮影対象等を定めています。
2 撮影は,裁判官の入廷開始から裁判官全員の着席後・開廷宣告前までの2分以内とされ,刑事事件では被告人が在廷しない状態で行うものとされています。
3 同基準の付記は,撮影の許否が各裁判体の決定事項であり,原則的に認めない裁判体又は制限的に運用する裁判体もあり得ると明記しています。したがって,報道機関にも当然の撮影権があるわけではありません。
4 最高裁判所広報課の「広報ハンドブック(令和2年3月版)」は,この運用に関する裁判所内部の広報実務を説明する資料です。令和2年3月時点の資料であるため,現行規則,現在の各庁の案内及び個別の裁判体の判断と区別して読む必要があります。

第7 法廷内撮影に関する最高裁判例

1 最高裁大法廷昭和33年2月17日決定・刑集12巻2号253頁は,公判廷における取材活動であっても,審判の秩序を乱し,被告人その他の訴訟関係人の正当な利益を不当に害するものは許されないとしました。その上で,写真撮影等を裁判所の裁量による許可にかからせる刑事訴訟規則215条は憲法に違反しないと判断しました。
2 同決定の事案は,新聞社の写真班員が,開廷後の撮影は許可しない旨を事前に告げられたにもかかわらず,裁判長の制止に従わず壇上へ上がって被告人を撮影したというものです。判例の射程を,静かな手控え又は庁舎外観の撮影にそのまま広げるべきではありません。
3 最高裁第一小法廷平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁は,人がみだりに自己の容ぼう等を撮影されない人格的利益を有するとし,撮影場所,目的,態様,必要性等を総合考慮して不法行為法上の違法性を判断する基準を示しました。同判決は,刑事訴訟規則215条の許可なく法廷内に小型カメラを持ち込み,手錠・腰縄姿の被告人を隠し撮りした事情を考慮しています。

第8 肖像・プライバシーは別に確認する

1 庁舎管理上又は訴訟規則上の撮影許可が得られた場合でも,撮影対象者の肖像,プライバシー,個人情報及び事件関係者の安全への配慮が不要になるわけではありません。
2 人物が偶然映り込む可能性,氏名・事件番号・提出書類・端末画面が読める可能性,撮影後にウェブサイト又はSNSで公表する予定の有無を分けて検討する必要があります。
3 撮影する行為と,撮影した画像又は音声を公表する行為は別の行為です。撮影時に許可を受けても,利用目的外の公表まで当然に許されるとは限りません。

第9 撮影等を希望するときの確認事項

1 対象となる裁判所,庁舎,場所及び日時を特定する。
2 写真,動画,音声又は画面撮影のいずれを行うのかを特定する。
3 一般来庁,当事者・代理人としての出頭,取材又は広報行事参加のいずれであるかを明らかにする。
4 撮影対象,目的,使用機材,人数,所要時間,公開先及び保存期間を整理する。
5 ウェブサイトの案内,現地の掲示及び職員の指示を確認し,必要な許可の申出先を担当書記官又は総務課等に確認する。
6 許可条件を記録し,人物・書類・端末画面の映込み対策及び撮影後のデータ管理を決める。
7 許可が得られない場合は,手書きメモ,期日調書・事件記録の閲覧その他の代替手段を検討する。

第10 一次資料及び関連記事

1 一次資料等
・ 民事訴訟規則(裁判所公表・令和8年5月21日更新)
・ 刑事訴訟規則(裁判所公表・令和8年5月21日更新)
・ 東京地方裁判所「個人での裁判傍聴」
・ 横浜地方裁判所「傍聴のルール」
・ 日本新聞協会「法廷内カメラ取材の標準的な運用基準」
・ 最高裁大法廷昭和33年2月17日決定・刑集12巻2号253頁
・ 最高裁第一小法廷平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁
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