目次
1 司法研修所構内の写真撮影は,裁判所の庁舎等の管理に関する規定に基づいて禁止されていること
2 司法研修所構内の写真撮影の弊害が分かる文書は存在しないこと
3 関連記事その他
1 司法研修所構内の写真撮影は,裁判所の庁舎等の管理に関する規定に基づいて禁止されていること
(1) 平成31年3月27日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 文書の整理について
本件対象文書は, 「司法修習生が司法研修所構内の写真を撮影した場合,司法修習生がそのような行為をすることが,具体的にどの法的義務に違反することとなるかの説明が記載してある文書の最新版」と整理した。
イ アの整理に基づき,司法研修所において文書の探索をしたが,該当する文書は存在しなかった。
苦情申出人は,本件対象文書が本当に存在しないかどうか不明であると主張するが,裁判所において,裁判所の庁舎等の管理に関する規程を直接の根拠にして写真撮影を禁止し,司法研修所も同規程第1条に規定する「庁舎等」に該当するため同規程を根拠に撮影行為を禁止しているものであることから,それ以上に写真撮影を行った場合に具体的にどの法的義務に違反することとなるかを検討する必要はない。
ウ よって,本件申出に係る文書は作成又は取得しておらず,原判断は相当である。
(2)ア 平成29年度(最情)答申第16号(平成29年7月3日答申)には以下の記載があります。
苦情申出人は,司法研修所の建物等が規程の定める「庁舎等」に当たらないなどとして,開示された規程の他に対象文書とすべき文書が存在するはずであると主張する。
しかし,規程1条によれば,規程における「庁舎等」とは「裁判所の用に供する建物及び土地並びにこれらに附帯する工作物その他の施設」をいうのであるから,最高裁判所の機関である司法研修所の建物等が「庁舎等」に当たることは明らかである。
また,苦情申出人は,規程は裁判所構内の写真撮影を禁止しているにすぎず,司法研修所構内の写真撮影を禁止しているわけではないと主張するが,司法研修所の建物等が「庁舎等」に当たらないことを前提とするものであり,採用することはできない。
そのほか,開示された規程以外に対象文書とすべき文書が存在することをうかがわせる事情は認められない。
したがって,最高裁判所において,開示された規程以外に開示申出文書に該当する文書を保有していないと認められる。
なお,規程2条において,庁舎等の管理をする者は,最高裁判所にあっては最高裁判所事務総局経理局長と定められているところ,当委員会庶務に確認させた結果によれば,司法研修所の建物等の管理に関する権限については,最高裁判所事務総局経理局長から司法研修所長に委任されているとのことであるが,このような権限の委任は,司法研修所構内の写真撮影を禁止していることと関連性を有するものではないから,本件の判断に影響しない。
(2) 文中の「規程」は,裁判所の庁舎等の管理に関する規程(昭和43年6月10日最高裁判所規程第4号)のことです。
2 司法研修所構内の写真撮影の弊害が分かる文書は存在しないこと
・ 平成31年3月27日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
苦情申出人は,司法研修所構内の写真撮影をすることが禁止されていることからすれば,本件開示対象文書は存在すると主張するが,司法研修所においては,裁判所の庁舎等の管理に関する規程を直接の根拠にして写真撮影を禁止しているものの,撮影行為の弊害について文書を作成した上での検討はしていない。
したがって,本件開示申出に係る文書は作成しておらず,取得もしていないことから,判断は相当である。
3 関連記事その他
(1) 昭和23年に法廷内での写真撮影が禁止された理由は,「戦後、法廷内が報道カメラによって秩序を乱された事が要因だった」ということで、被告人のプライバシーへの配慮などではなかったみたいです(イラストレーター榎本よしたかHPの「裁判中の撮影禁止の意外な理由(テレビ朝日/禁止の真相)」参照)。
(2)ア 人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決まります(最高裁平成17年11月10日判決)。
イ 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,①氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,③氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となります(最高裁平成24年2月2日判決)。
(3) 以下の資料を掲載しています。
① 裁判所の庁舎等の管理に関する規程(昭和43年6月10日最高裁判所規程第4号)
② 裁判所の庁舎等の管理に関する規程の運用について(昭和60年12月28日付の最高裁判所事務総局経理局長依命通達)
(4) 以下の記事も参照して下さい。
・ 司法修習生の罷免
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
・ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
・ 司法修習生の罷免等に対する不服申立方法
・ 71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止
・ 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
・ 司法修習生の逮捕及び実名報道