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自治体が保管する遺留金の処理―相続人調査・相続財産清算人・供託の使い分け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

自治体が身寄りのない死亡者の遺留金品を扱う場合には,火葬・葬祭等の費用への充当と,その後に残る遺留金の処理を分けて検討する必要がある。
残金は自治体の収入になると直ちに扱えるものではなく,相続人への返還,相続財産清算人の選任又は要件を満たす弁済供託などの方法を検討する。
本記事は,令和8年10月18日に確認した厚生労働省・法務省の「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引(改訂版)」(令和7年10月第三次改訂)及び民法に基づき,葬祭費等への充当後の残余遺留金を中心に説明する。

火葬の実施主体や葬祭扶助の入口は,葬儀・火葬の実施を参照されたい。
成年後見人が死亡後の財産を引き継げない場合は,相続人が遺産を受け取らないときで扱っている。
自治体の法令に基づく事務と,元後見人の引継ぎを混同せず,それぞれの立場に対応する根拠を確認することが必要である。

第2 清算人の選任と供託の選び方

1 適用した葬祭制度を確認する

生活保護法18条2項に基づく葬祭扶助を適用した場合には,生活保護法施行規則22条の取扱いを確認する。
同手引きは,相続人保護の観点から,相続財産清算人の選任によりがたい場合に弁済供託ができると説明している。
「選任によりがたい場合」には,選任要件を満たさない又は立証が難しい場合のほか,選任してまで管理・清算すべき財産が実際上ない場合や,多数の相続人についての戸籍調査が著しく困難な場合等が含まれる。

墓地埋葬法の適用事例や行旅死亡人の事例では,同手引きは同様の制度選択を定める規定はないとした上で,相続人保護の観点から,清算人の選任によりがたい場合に弁済供託を利用することが望ましいと説明している。
適用法令を区別し,各自治体の事務処理規程と個々の事案に沿って判断する必要がある。

2 金額だけでは決めない

遺留金が予納金の見込額より少ないことや,多いことだけで,常に処理方法が決まるわけではない。
同手引きは,遺留金の額に加え,相続財産を管理・清算すべきか,戸籍調査を含む自治体の負担等も勘案して個別に判断するとしている。
相続財産清算人の選任による方法と,弁済供託の要件を満たすかどうかを,それぞれ確認する必要がある。

3 相続人がいる場合

相続人が判明しているが受取りを拒むという事情だけでは,民法952条の相続財産清算人を選任することはできない。
返還先と返還額を確定し,返還,受領不能又は受領拒絶を理由とする弁済供託などを検討することになる。
家庭裁判所へ申し立てる一般的な手続は,相続財産清算人とはで説明している。

第3 弁済供託の三つの類型

状況検討する供託原因主な確認事項
過失なく返還先の相続人を確知できない債権者不確知合理的な調査の内容と,確知できない事情
相続人は判明しているが所在不明等で返還できない受領不能受領できない事情と,その人に返す額
返還のための弁済の提供をしたが受取りを拒まれた受領拒絶提供・催告,拒絶の経過及び対象額

1 債権者不確知

民法494条2項の供託は,弁済者が過失なく債権者を確知できないことを要する。
同手引きは,関係者への聞き取りや遺留物品の確認等,合理的な範囲の調査をしても相続人の存否,氏名・住所等が判明しない場合について,事例を示している。
常に全国の戸籍を収集し尽くす必要があるという説明ではないが,何も調べずに供託できるという意味でもない。

供託官による受理と,後の訴訟での供託の有効性の判断は別である。
同手引きは,後に供託の有効性が否定されれば返還義務が消滅していなかったことになると注意している。
調査日,相手方,確認資料及び判明した事項を記録しておくことが重要である。

2 受領不能

相続人の存在と氏名を把握したが所在不明で返還できない場合には,受領不能による供託を検討する。
複数の相続人のうち一部だけが所在不明の場合には,その人に返還すべき額を確定させ,その額を供託するという取扱いが手引きに示されている。
所在が分かって受取りを希望する他の相続人についてまで,一括して受領不能と扱うことはできない。

3 受領拒絶

受領拒絶による供託には,原則として弁済の提供が必要である。
相続人があらかじめ受領を拒んでいる場合には,返還の準備をした旨を通知し,受領を催告する方法が問題となる(民法493条ただし書)。
拒否の発言だけを記録して供託を済ませるのではなく,提供・催告とその後の対応を整理する必要がある。

複数の相続人のうち一部だけが拒絶する場合には,その人に返還すべき額について供託を検討する。
他方,相続人の一部の氏名が分かっていても,相続人全体が分からず各人への返還額を確定できない場合については,同手引きは残金全部の債権者不確知供託を説明している。
「一部が不明」という表現でまとめず,不明なのが人の範囲か,所在か,返還額かを確認する必要がある。

第4 相続人調査と通知・資料提出

1 何のための調査かを分ける

相続財産清算人の選任申立てでは,相続人のあることが明らかでないことを裏付ける資料が必要になる。
これに対し,弁済供託のための合理的な調査や,事務管理開始の通知をするための調査は,それぞれ目的と判断事項が異なる。
一つの場面で示された説明を,他の場面にそのまま当てはめないことが重要である。

同手引きは,事務管理を開始した場合の通知について,相続人の氏名・所在を知ることができない場合に,通知だけのために調査する必要はないと説明している。
これは,清算人選任や債権者不確知供託に必要な調査まで一切不要とする説明ではない。

2 手元に残す記録と供託所への提出

同手引きは,供託書,代理人による場合の委任状,供託通知書の発送を希望する場合の封筒・切手等を必要書類として挙げ,相続人調査資料等の提出は不要としている。
提出不要であることと,調査・記録が不要であることは区別する必要がある。
自治体内部では,保管開始の根拠,受領額,葬祭費等への充当額,残金,調査,返還の申出,供託額及び供託後の処理をつなげて記録しておくとよい。

供託所は原則として債務履行地にある供託所である。
手引きは,受領拒絶等の場合は通常相続人の住所地が基準となり,過失なく相続人を知ることができない場合は死亡者の住所地,それも不明なら自治体の所在地が基準となると説明している。
案件の供託原因と履行地を整理し,供託所へ事前に相談することが有用である。

第5 物品・預貯金・保管現金を混同しない

現金を供託したからといって,通帳,家財,遺骨等を含むすべての問題が解決するわけではない。
同手引きは,物品供託には取扱機関等の制約があり,実際上困難であること,通帳等も物品に当たることを説明している。
物品の保管・処分,口座からの払戻し,遺体・遺骨の取扱いは,それぞれ対応する根拠と手順を確認する必要がある。

相続財産清算又は弁済供託によって処理できない場合について,同手引きは,適用法令に応じた根拠の下で残余遺留金を歳入歳出外現金として保管することが可能であると説明している。
保管できることを理由に,自治体の歳入へ当然に振り替えたり,独自の期限経過だけで相続人の権利が消滅すると扱ったりしてはならない。

第6 よくある質問

1 すでに長期間保管している遺留金も供託できるか

同手引きは,すでに自治体が保管している遺留金も,所定の要件を満たせば弁済供託による処理が可能としている。
過去の保管分についても,供託原因,調査記録,返還額及び会計処理を確認する必要がある。

2 少額なら戸籍調査を一切しなくてよいか

金額だけで一律に判断することはできない。
清算人の選任によりがたい事情の判断と,供託の要件を満たすための調査を分け,関係者への聞き取りや遺留物品の確認等を含めて検討する必要がある。

3 清算人の予納金は全国一律か

全国一律ではなく,裁判所が個別の事情に応じて判断する。
費用の区分と予納金の返還の考え方は,相続財産清算人の費用・予納金・報酬を参照されたい。

第7 出典

① 厚生労働省・法務省「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引(改訂版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/001575477.pdf)(令和7年10月第三次改訂)17~24頁及び31~36頁(PDF実頁と同じ)。
② 厚生労働省「生活保護制度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html)の遺留金等の手引掲載欄。
③ 民法(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)493条~495条,697条,699条及び951条~959条。