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期間の末日に訴状を出す時刻―mintsの到達時刻,夜間・休日の当直受付,夜間ポスト,郵送及びファクシミリ(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象

本記事は,消滅時効の完成日,出訴期間の末日その他の期間の末日に訴えを提起する場面で,訴状がいつ裁判所に提出されたと扱われるかを整理する。
基準日は令和8年10月17日であり,民事訴訟法,民法,民事訴訟規則,最高裁判所事務総長通達,裁判所ウェブサイトの公表資料及び裁判例を基にしている。
控訴状その他の書面にも共通する部分があるが,ここでは民事訴訟の訴えの提起を中心に扱う。

2 結論

①mintsで提出した訴状は,その内容が裁判所のファイルに記録された時に裁判所に到達したものとみなされるため,執務時間後の夜間でも,その日のうちに記録されればその日の提起となる。
②紙の訴状は,執務時間外でも当直員が受け付ける扱いがあり,夜間ポストへの投函がその日のうちにされたと証拠で認められれば,その日に訴えが提起されたと判断した裁判例がある。
③郵送では,発送した日ではなく,裁判所に届いた時が基準となる。
④訴状はファクシミリでは提出できない。
⑤訴訟代理人である弁護士は原則としてmintsで提出しなければならず,紙で提出できるのは裁判所のシステム障害等の例外の場合に限られる。

第2 期間の末日の考え方

1 時効の完成猶予は訴えを提起した時に生じる

民法147条1項は,「裁判上の請求」等の事由がある場合には,その事由が終了するまでの間は時効が完成しないと定める。
民事訴訟法147条は,「訴えが提起されたとき、又は第百四十三条第二項(第百四十四条第三項及び第百四十五条第四項において準用する場合を含む。)の書面が裁判所に提出されたときは、その時に時効の完成猶予又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求があったものとする。」と定めている。
また,民法141条は,日・週・月・年で定めた期間について,「期間は、その末日の終了をもって満了する。」と定める。
そのため,期間の末日に訴えを提起する場合は,その日の終了までに訴えの提起があったといえるかが問題となる。

訴えの提起は,「訴状を裁判所に提出してしなければならない。」(民事訴訟法134条1項)。
以下では,提出の方法ごとに,いつ「提出」があったと扱われるかを見ていく。

2 期間の末日が休日に当たる場合

(1) 民事訴訟法上の期間

民事訴訟法95条3項は,「期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。」と定める。
控訴期間など民事訴訟法上の期間は,この規定により休日の翌日まで延びる。
裁判所の休日は,日曜日及び土曜日,国民の祝日に関する法律に規定する休日並びに12月29日から翌年1月3日までの日である(裁判所の休日に関する法律1条1項)。

(2) 消滅時効の期間

消滅時効の期間には民法の期間の規定が適用され,民法142条は,「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。」と定める。
民事訴訟法95条3項と異なり,「取引をしない慣習がある場合に限り」という条件が付いている。
時効期間の末日が休日に当たる場合にこの規定がどう適用されるかを判断した最高裁判所の判決は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索では確認できなかった。
休日の翌日に延びることを前提にせず,休日より前の開庁日までに訴えを提起しておくのが安全である。

第3 mintsで提出する場合

1 ファイルに記録された時に到達する

民事訴訟法132条の10第3項は,「電子情報処理組織を使用する申立て等は、当該電子情報処理組織を使用する申立て等に係る事項がファイルに記録された時に、当該裁判所に到達したものとみなす。」と定める。
mintsによる訴えの提起は,訴状の内容が裁判所のファイルに記録された時に裁判所に到達したことになる。
裁判所の執務時間を過ぎた夜間でも,期間の末日のうちにファイルに記録されれば,その日に訴えが提起されたことになる。

2 記録された時を残しておく

到達の時期は,裁判所の受付の事務がいつ行われたかではなく,ファイルに記録された時で決まる。
夜間に提出した訴状について裁判所の処理が翌開庁日になっても,期間の末日のうちに記録されていれば,その日の提起であることに変わりはない。
提出直後のmintsの画面を保存しておけば,記録された時を後から示しやすい。

3 弁護士は原則としてmintsで提出する

(1) 電子申立ての義務

民事訴訟法132条の11第1項は,委任を受けた訴訟代理人等が申立て等をするときは,mints等の電子情報処理組織を使用する方法により「これを行わなければならない。」と定める。
同条3項は,「裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができない場合には、適用しない。」としている。
この例外により書面で申立て等をするときは,その事由がある旨とその具体的内容を記載した書面を添付しなければならない(民事訴訟規則52条の14)。

(2) 事務所側の不具合と夜間

最高裁判所事務総局民事局の「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(令和8年10月2日更新版)11頁は,時効成立の直前等に事務所のPCから電子申立てができないときの代替策として,事務所内の他のPCやタブレット,スマートフォンのテザリング,裁判所設置端末の利用を挙げている。
ただし,同頁は,裁判所設置端末の利用を「開庁時間中のみ」としている。
期間の末日の夜間に事務所側の不具合が起きると取り得る手段が少なくなるため,弁護士は末日の前日までにmintsで提出を終えておくのが基本となる。
mints自体に障害が起きた場合の紙提出は,「mints障害時の紙提出と期限管理」で説明している。

第4 紙で提出する場合

1 紙で提出できる人

民事訴訟法132条の11第1項の義務を負うのは,委任を受けた訴訟代理人等であり,本人として訴えを提起する当事者は紙の訴状で提出できる。
弁護士が紙で提出できるのは,同条3項の例外に当たる場合に限られる。

2 執務時間外の当直受付

(1) 通達の定め

最高裁判所事務総長通達「事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについて」(平成4年8月21日総三第26号。令和8年7月17日総三第436号まで改正)は,「執務時間外における事件の受付に関する事務は、当直員に取り扱わせることができる。」と定める。
当直員が書類を受領したときは,書類に当直受付日付印を押し,当直文書受付簿に所要の事項を記載する(当直員が封書を開封しない取扱いの裁判所では,封筒に当直受付日付印を押す)。
当直員が受け付けた書類を事件簿に登載するときは,「受付」の箇所に当直受付の日付を記載するとされている。
執務時間外に提出した紙の書類は,当直受付の日付で受け付けられることになる。

(2) 東京の例

東京簡易裁判所のウェブサイトは,夜間・休日に民事事件関係の書類を提出する場合について,「開庁日の午後5時から翌日(翌日が裁判所の休日に当たるときは,翌日以降の直近の開庁日)の午前8時30分までの間は,東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎(東京都千代田区霞が関1-1-4)の南門(南門の位置は,所在地の地図をご覧ください。)で,警備員に申し出てください。」と案内している。
東京家庭裁判所のウェブサイトも,家事事件関係の書類について同じ時間帯に同じ南門で警備員に申し出るよう案内している。
東京地方裁判所について同じ趣旨の案内は,今回確認した範囲では見当たらなかった。
当直受付の窓口や時間帯は庁舎・支部ごとに異なり得るので,期間の末日に紙で提出する可能性がある場合は,提出先の裁判所に前もって確認しておく必要がある。

3 夜間ポストへの投函と知的財産高等裁判所令和6年1月30日判決

(1) 事案

知的財産高等裁判所令和6年1月30日判決(令和5年(行ケ)第10018号)は,商標登録を取り消した審決の取消しを求める訴えについて,出訴期間内に訴えが提起されたかが争われた事件である。
出訴期間の末日は,休日のため令和5年2月20日まで延びていた。
原告代理人の事務所の従業員は,同日の午後9時3分ないし4分頃に,訴状を知的財産高等裁判所の夜間ポストに投函したと主張した。
被告は,訴状が開庁時間内に提出されておらず,訴状には翌21日の受領印が押されているから,翌日に到達したとみなすべきであると主張した。

(2) 判断

判決は,従業員の陳述書と交通系ICカードの利用履歴等から,訴状が同月20日のうちに夜間ポストに投函されたと認定し,同日に訴えが提起されたと判断した。
判決は,「裁判所の開庁時間内に本件訴状が提出されなかったことをもって、同日に訴えが提起されたと認定できないとか、法定の期間内に本件訴えが提起されたといえないことにはならない。」と述べている。
また,受付印の日付については,「本件訴状に存在する受付印の押された日に本件訴えが提起されたとみなすべきと解する根拠はない。」とした。
この判決に対しては上告及び上告受理の申立てがされたが,令和6年10月2日に上告棄却及び上告不受理の決定がされている(裁判所ウェブサイトの裁判例情報の表示)。

(3) この判決から分かること

この事件は審決取消訴訟の出訴期間の事案であり,消滅時効の事案ではない。
もっとも,訴状がいつ裁判所に提出されたかの認定という点では,時効の完成日に紙の訴状を提出する場合と同じ問題である。
受付印の日付は提出日を決めるものではなく,提出の時期は証拠によって認定される。
夜間ポストや当直受付に訴状を出すときは,投函・提出した時刻を後から立証できるよう,提出者の記録,写真,交通機関の利用履歴等を残しておくのが安全である。
なお,この事件は令和5年2月の提出であり,弁護士にmintsによる電子申立ての義務がなかった時期のものである。

4 受付日付印の性質

前記の事務総長通達は,受付日付印について「使用日以外の日付を表示するために使用してはならない。」と定める。
受付日付印は押した日の日付を示すものであるから,夜間に投函された書類に翌朝の日付が押されることがある。
知的財産高等裁判所の上記判決は,そのような場合でも,投函された日を証拠で認定して提出日を判断した。

第5 郵送とファクシミリ

1 郵送は裁判所に届いた時が基準となる

特許法19条は,特許庁に提出する書類を郵便で提出した場合について,郵便局に差し出した日時に「特許庁に到達したものとみなす。」と定めている。
民事訴訟法には,このように郵便の差出しの日時で裁判所に到達したものとみなす規定は見当たらない。
そのため,訴状を郵送する場合は,裁判所に届いた時が提出の時となり,期間の末日に発送しても間に合わない。
郵送を使うときは,配達に要する日数と,配達日が裁判所の休日に当たらないかを確認して,余裕を持って発送する必要がある。

2 訴状はファクシミリで提出できない

民事訴訟規則3条1項は,裁判所に提出すべき書面はファクシミリで提出できるとしつつ,「民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定により手数料を納付しなければならない申立てに係る書面」や「その提出により訴訟手続の開始、続行、停止又は完結をさせる書面」等を除いている。
訴状はこれらに当たるため,ファクシミリでは提出できない。
ファクシミリで提出できる書面については,「裁判所が受信した時に、当該書面が裁判所に提出されたものとみなす。」とされている(同条2項)。

第6 期間の末日に備える実務

期間の末日に訴えを提起する可能性がある事件では,次の点を前もって確認しておく。
①期間の満了日を計算し,末日が休日に当たる場合の扱いを確かめる。
②弁護士が代理する事件では,末日の前日までにmintsで提出を終える。
③補助者アカウントを使う事務所では,弁護士のアカウントとの紐付けを平時に確認しておく。
④本人が紙で提出する場合や,例外として紙で提出する場合に備え,提出先の裁判所の当直受付・夜間ポストの有無と場所を確かめる。
⑤提出・投函した時刻を記録し,mintsで提出したときは記録日時の分かる画面を保存する。
⑥mintsに障害が起きたときは,裁判所ウェブサイトの「重要なお知らせ」等で障害を確認し,紙提出の要否を判断する。

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第8 出典

民事訴訟法(e-Gov法令検索)
民法(e-Gov法令検索)
特許法(e-Gov法令検索)
裁判所の休日に関する法律(e-Gov法令検索)
民事訴訟規則(裁判所ウェブサイト)
最高裁判所事務総長通達「事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについて」(裁判所ウェブサイト)
東京簡易裁判所「夜間・休日における東京簡易裁判所に対する書類の提出について」
東京家庭裁判所「夜間・休日における東京家庭裁判所に対する書類の提出について」
最高裁判所事務総局民事局「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(令和8年10月2日更新版)
知的財産高等裁判所令和6年1月30日判決(令和5年(行ケ)第10018号)