令和3年司法試験倒産法第2問について,非金銭債権の届出,再生計画の取消しと再生手続の廃止を検討する。
評価項目と重みは,公式資料を基にした本記事独自の分析であり,法務省の採点基準・配点ではない。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和3年司法試験の選択科目問題の倒産法第2問(PDF実頁4)である。
公式の出題の趣旨・採点実感から33項目を抽出した。
重み5は5項目であり,番号15の破産における金銭化,22の因果関係,26の裁量棄却,30の両方向の衡量,32の必要的廃止である。
Dは役務請求権の内容と議決権額を区別して届け出る。
設問2では,不正の方法,計画成立との因果関係,取消しの裁量を分け,本答案は因果関係を肯定した上で裁量棄却とする。
設問3では,遂行不能が明らかな再生手続を必要的に廃止し,破産原因を認めるときは職権による破産開始を検討する。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
各項目は一つの判定対象を示し,必須,高評価,負例,許容分岐の区分を付す。
負例は,条件付債権化,誤った条項の適用,根拠のない金銭化,共益・財団債権化,双方未履行という別々の誤りを対象とするため,独立の行として掲げる。
根拠欄はPDFの実頁と対象節を示し,記載なしとは該当範囲を実読しても項目固有の命題がないことをいう。
許容分岐はその構成を採る答案だけに適用し,すべての答案へ累積して要求しない。
2 5段階の重み付けの基準
①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
④重み2:一方が軽く触れる補強,又は典型的な誤り。
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項。
本記事は重み4を「採点実感も取り上げた」基準で判断する。
すべての重み4を,公式が個別に「高く評価した」事項とは表現しない。
重み,項目数及び重み合計は,公式得点・合格可能性・科目間の難易度を示さない。
第3 本問の概要
A社はホテル運営と別荘販売を営み,令和3年5月6日に再生開始を申し立て,同日にCを監督委員とする監督命令を受け,5月31日に再生手続が開始された。
届出期限は6月30日,調査期間は8月2日から9日,計画案提出期限は8月31日である。
設問1のDは,4月1日に12月4日の披露宴契約を締結し,4月16日に料金110万円を全額支払った。
設問2は,Fが従業員10名に架空債権を届け出させた不正と,それを除いても半数を一人だけ上回る賛成者,真実を知れば反対した2名という事情を扱う。
Hは翌年4月1日の報告書で事情を知り,4月30日に取消しを申し立てたが,計画は順調に履行され,今後も履行可能である。
設問3は,認可確定後に損失が拡大し,計画弁済の継続が不能となった場合を扱う。
3設問はそれぞれ独立し,試験実施時の法令を用いる。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】Dの権利を披露宴の役務提供を受ける非金銭債権と特定する。 | 4 | 22頁・第2問(金銭債権ではなく役務の提供を受ける権利) | 5頁・第2問(非金銭債権ではある) |
| 2 | 【必須】民事再生法84条1項を挙げ,共益・一般優先債権を除く開始前原因の財産上請求権という定義を示す。 | 4 | 22頁・第2問(再生債権の定義及び要件) | 5頁・第2問(再生債権の定義及び要件) |
| 3 | 【必須】5月31日の開始より前の4月1日の契約を原因として当てはめる。 | 4 | 22頁・第2問(開始前の原因に基づいて生じた) | 5頁・第2問(これに丁寧に当てはめていく) |
| 4 | 【高評価】A社の財産を利用して履行可能な役務であることを財産上請求権の理由とする。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(再生債務者の財産を利用することにより履行可能) |
| 5 | 【負例】役務請求権を開始後の履行不能を条件とする条件付債権と誤って構成しない。 | 2 | 記載なし | 5頁・第2問(停止条件(解除条件)付債権とする答案) |
| 6 | 【負例】本件の役務請求権の再生債権該当性を84条2項2号によって説明しない。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(同条第2項第2号に基づき再生債権) |
| 7 | 【負例】特約等の与件がないのに開始による金銭化又は解除を仮定して返還請求権に置き換えない。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(基礎となる事実(特約等)は問題文に示されておらず) |
| 8 | 【負例】Dの役務請求権を共益債権又は破産の場合の財団債権と誤分類しない。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(同法第119条第2号により共益債権) |
| 9 | 【負例】全額前払済みの本件を双方未履行双務契約の解除による請求権として扱わない。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(双方未履行双務契約の解除に基づく損害賠償請求権) |
| 10 | 【必須】民事再生法94条1項により届出期限を6月30日と具体的に示す。 | 4 | 22頁・第2問(債権届出期間内に) | 5頁・第2問(令和3年6月30日まで) |
| 11 | 【必須】届出原因を4月1日の契約締結と具体的に示す。 | 4 | 22頁・第2問(権の内容及び原因) | 5頁・第2問(同年4月1日に締結した契約を原因として) |
| 12 | 【必須】届出内容を12月4日に披露宴のための役務提供を受ける権利と具体的に記載する。 | 4 | 22頁・第2問(債権の「内容」) | 5頁・第2問(同年12月4日に結婚披露宴を開くため) |
| 13 | 【必須】議決権額も具体化する。採点実感の例は既払対価110万円であり,債権内容の金銭化とは区別する。 | 3 | 記載なし | 5頁・第2問(対価として支払った110万円を議決権額として届け出る) |
| 14 | 【高評価】民事再生規則31条も挙げ,法94条の届出事項に加わる記載事項を示す。 | 4 | 22頁・第2問(民事再生規則第31条で定める事項) | 5頁・第2問(このような答案は高い評価となっている) |
| 15 | 【必須】清算型である破産では非金銭債権も金銭化することを制度趣旨に遡って説明する。 | 5 | 22頁・第2問(清算型の手続である破産手続) | 5頁・第2問(金銭化について相違があることを制度趣旨に遡って) |
| 16 | 【必須】破産法103条2項1号イを金銭評価による参加の根拠として示す。 | 4 | 22頁・第2問(破産法第103条第2項第1号イ) | 5頁・第2問(産法第103条第2項第1号イ) |
| 17 | 【必須】破産法111条1項1号により内容でなく額と原因を届ける相違を示す。 | 4 | 22頁・第2問(債権の「額」を届け出る) | 5頁・第2問(債権の「内容」) |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 18 | 【必須】172条の3第1項1号の頭数の過半数要件を踏まえて不正の目的を説明する。 | 3 | 22頁・第2問(議決権者の頭数の過半数の同意) | 記載なし |
| 19 | 【必須】取消事由の根拠を189条1項1号と特定し,不正の方法を検討する。 | 4 | 22頁・第2問(同法第189条第1項) | 5頁・第2問(同号の規定を正確に摘示) |
| 20 | 【高評価】不正の方法は詐欺・強迫・不正な利益供与に加え信義則違反による可決を含むとし,文理・趣旨又は判例の論拠を示す。 | 4 | 22頁・第2問(信義則に反する行為に基) | 5頁・第2問(判例(最決平成20年3月13日民集62巻3号860頁)) |
| 21 | 【必須】Fの架空届出指示とA社の認否を不正の方法へ当てはめる。 | 4 | 22頁・第2問(A社がこれらの債権を認めたこと) | 5頁・第2問(再生債務者がこれらの債権を認めたこと) |
| 22 | 【必須】不正の方法と独立して,不正と計画成立との因果関係を抽出・検討する。 | 5 | 23頁・第2問(成立との因果関係) | 6頁・第2問(この点において評価に大きな差が生じた) |
| 23 | 【必須】架空の10名を除いても過半数となる事実を因果関係に反対する方向で評価する。 | 4 | 23頁・第2問(届出をしなくても過半数の頭数は確保) | 6頁・第2問(虚偽の届出が) |
| 24 | 【必須】不正を知れば反対した2名の事実を因果関係に肯定する方向で評価する。 | 4 | 23頁・第2問(債権者2名の反対により可決することはできな) | 6頁・第2問(債権者2名の反対により可決することはなかった) |
| 25 | 【許容分岐】因果関係を否定する構成では,10名の票を除いても成立する事実を重視する理由と2名の反事実の評価を一貫して示す。 | 3 | 23頁・第2問(これらの事実をどのように評価するか) | 6頁・第2問(れの結論を採っていたとしても) |
| 26 | 【必須】189条1項のできるという文言を示し,取消事由があっても裁量棄却できると説明する。 | 5 | 23頁・第2問(裁量により申立てを棄却する) | 6頁・第2問(裁判所に裁量的判断が許されている) |
| 27 | 【高評価】取消しの方向の事情として重要な決議の公正と手続的正義を論じる。 | 4 | 23頁・第2問(取り消す方向の要素) | 6頁・第2問(手続的な正義を重視する視点) |
| 28 | 【高評価】同様の不正を他の事案で誘発するおそれを取消しの補強理由とする。 | 3 | 記載なし | 6頁・第2問(他の事案においても同様の不正行為) |
| 29 | 【高評価】順調な履行と今後の継続可能性を,取消しとの比較による債権者の経済利益に結び付ける。 | 4 | 23頁・第2問(棄却する方向の要素) | 6頁・第2問(再生債権者にとって経済的利益がある) |
| 30 | 【高評価】取消し・棄却の双方の事情に目を向け,自説の裁量判断を理由付ける。 | 5 | 23頁・第2問(分析・検討をすること) | 6頁・第2問(反対の要素にも目を向けて論述) |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | 【必須】194条を示し,大きな損失と弁済継続不能を遂行見込みの欠如へ当てはめ,廃止とする。 | 4 | 23頁・第2問(同法第194条を摘示して) | 6頁・第2問(再生計画を遂行できないことが明らか) |
| 32 | 【必須】194条の廃止は必要的であり,設問2の裁量的取消しと区別する。 | 5 | 23頁・第2問(再生手続の廃止は必要的) | 6頁・第2問(再生手続の廃止は必要的) |
| 33 | 【必須】250条を示し,廃止確定後に破産原因を認めるときは職権で破産開始を決定できると説明する。 | 4 | 23頁・第2問(職権による破産手続開始の決定) | 6頁・第2問(「職権」によることができる) |
4 重みの分布
重み1は0項目,重み2は1項目,重み3は9項目,重み4は18項目,重み5は5項目である。
総項目数は33,重みの合計は126である。
番号15は清算型手続の比較軸,22は評価差の大きかった因果関係の独立検討,26は取消事由と裁量の区別,30は手続的正義と経済合理性の衡量,32は廃止の必要性という骨格を対象とする。
重み5の各項目と適用条件は次のとおりである。
番号15【必須】:清算型である破産では非金銭債権も金銭化することを制度趣旨に遡って説明する。
適用条件:設問1の当該検討を行う答案。区分が高評価の事項を,重みだけを理由に最低限必須の記載へ格上げしない。
番号22【必須】:不正の方法と独立して,不正と計画成立との因果関係を抽出・検討する。
適用条件:設問2の当該検討を行う答案。区分が高評価の事項を,重みだけを理由に最低限必須の記載へ格上げしない。
番号26【必須】:189条1項のできるという文言を示し,取消事由があっても裁量棄却できると説明する。
適用条件:設問2の当該検討を行う答案。区分が高評価の事項を,重みだけを理由に最低限必須の記載へ格上げしない。
番号30【高評価】:取消し・棄却の双方の事情に目を向け,自説の裁量判断を理由付ける。
適用条件:設問2の当該検討を行う答案。区分が高評価の事項を,重みだけを理由に最低限必須の記載へ格上げしない。
番号32【必須】:194条の廃止は必要的であり,設問2の裁量的取消しと区別する。
適用条件:設問3の当該検討を行う答案。区分が高評価の事項を,重みだけを理由に最低限必須の記載へ格上げしない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験実施日の令和3年5月12日に施行されていた法令を基準とする。
答案は改行を除いて1903字であり,設問1から順に問題・規範・事実評価・効果を示す。
因果関係と裁量判断の結論は本答案の選択であり,別の結論を採る答案を一律に排除しない。
2 答案
1 設問1
(1)Dが有するのは,12月4日に結婚披露宴を開くための役務の提供を受ける非金銭債権である。
民事再生法84条1項は,再生債務者に対し,再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で,共益債権又は一般優先債権でないものを再生債権とする。
Dの権利は,A社の会場,設備等の財産を利用して履行できる給付を目的とするから,財産上の請求権である。
その原因は開始決定の5月31日より前の4月1日の契約であり,履行期が開始後でも再生債権となる。
Dは全額前払済みであり,双方未履行の双務契約を前提とする同法49条による履行選択・共益債権化の場面ではない。
(2)Dは6月30日までに,B地裁へ,4月1日の契約を原因として,12月4日に披露宴を開くための役務の提供を受ける権利を,その内容として届け出る(同法94条1項)。
議決権の額は,非金銭債権につき開始時の評価額による(同法87条1項3号ハ)。
本件では,評価の基礎となる具体的資料として既払対価が示されているから,110万円として届け出る。
これは議決権の評価であり,役務請求権自体が返金請求権へ当然に転化するという意味ではない。
民事再生規則31条に従い,D及び代理人の氏名・住所,国内の通知等を受ける場所等も届出書に記載する。
(3)全事業廃止後に破産手続が開始された場合は,清算手続として債権を金銭化し,非金銭債権も開始時の評価額をもって参加する(破産法103条2項1号イ)。
したがって,同法111条1項1号により,債権の「内容」ではなく,金銭評価した「額」と原因を届け出る。
事業継続を通じた再生を図り,役務提供を受ける権利をその内容のまま届け出る再生手続と異なる。
2 設問2
(1)民事再生法189条1項1号の取消事由は,「再生計画が不正の方法により成立したこと」である。
計画案の可決には,議決権額による要件に加え,議決権者の頭数の過半数の同意が必要である(同法172条の3第1項1号)。
Fが従業員10名に架空債権を届け出させ,A社がこれを認めた行為の該当性が問題となる。
多数決を通じた適切な権利調整と少数債権者保護の趣旨から,「不正の方法」は詐欺,強迫,不正な利益供与等による可決に限らず,信義則に反する行為による可決を含むと解する。
Fの行為は,頭数要件を確実に充足しようとする意図的な議決権操作であり,公平誠実な手続追行に反するから,不正の方法に当たる。
(2)さらに,「により」という文言から,不正と計画成立との因果関係が必要である。
確かに,架空債権者10名を除いても,賛成者は半数を一人だけ上回っており,単にその票数を除くだけなら可決可能である。
しかし,不正を知れば反対した債権者が2名おり,この2名を賛成者から除けば過半数に達しない。
本件の不正は票数の水増しにとどまらず,その事実を秘したまま真実の債権者に賛成させ,計画を成立させたものと評価できる。
よって,因果関係を認め,取消事由があると解する。
Hは4月1日に初めて知り,4月30日に申し立てており,同法189条2項の一月・二年の期間制限にも抵触しない。
(3)同条1項は取消決定を「することができる」とし,裁判所には裁量がある。
したがって,取消事由があっても申立てを棄却できる。
取消しの方向では,債権者の意思を集約する重要な決議を組織的に操作した点を重視すべきであり,これを容認すれば他の事案で同様の不正を誘発するおそれもある。
他方,計画は滞りなく履行され,今後も継続可能であり,取消しの場合と比較して債権者一般の回収利益を確保できる事情は棄却の方向に働く。
手続的正義と経済合理性を比較すると,本件では継続履行による債権者一般の利益を重視し,取消申立てを棄却するのが相当である。
3 設問3
Cが監督委員に選任されているから,認可確定だけで手続が当然に終結するわけではない(同法188条1項)。
手続継続中に,収支の悪化と大きな損失によって計画に基づく弁済を継続できなくなった以上,計画を遂行する見込みがないことが明らかである。
裁判所は,再生債務者等若しくは監督委員の申立てにより又は職権で,手続廃止の決定をしなければならない(同法194条)。
設問2の計画取消しと異なり,廃止は必要的であり,裁量によって履行不能の手続を存続させることはできない。
さらに,廃止決定が確定し,A社に破産手続開始原因があると認めるときは,裁判所は,職権で破産法に従った破産手続開始決定をすることができる(同法250条1項)。
廃止をしたことから破産開始が当然に導かれるのではなく,開始原因を確認して牽連破産の可否を判断する。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
設問1の第1段落が番号1~9,届出の段落が番号10~14,破産との比較が番号15~17に対応する。
設問2は,頭数・不正方法の段落が番号18~21,因果関係が番号22~24,裁量が番号26~30に対応する。
番号25は不採用の否定構成に関する条件付き項目である。
設問3は番号31~33に対応する。
(2) 非金銭債権の内容と議決権額
役務請求権が財産上の請求権となる理由は,その履行に再生債務者の財産を利用できる点にある。
再生開始だけで契約が解除されることや,返金請求権へ転化することを仮定してはならない。
議決権は民事再生法87条1項3号ハによって評価するが,権利の内容と同一の欄ではない。
採点実感は対価110万円を議決権額とする届出の具体例を示し,本答案もこの額を採った。
この例を,割安な契約を含むすべての事件で対価と評価額が必ず等しいという一般規範に広げるものではない。
番号14は高評価項目であり,規則31条の氏名・住所や通知先等の記載へ接続する。
(3) 不正・因果関係・裁量の三つの段階
番号22では,不正行為があることと,その行為によって計画が成立したことを区別する。
10名を除いても可決できた事実は因果関係を否定する方向に,2名が真実を知れば反対した事実は肯定する方向に働く。
採点実感は,両事実に自らの評価を与えていれば,因果関係についていずれの結論も評価する。
否定構成を採る場合は,頭数操作自体が結果を変えていない点を重視しつつ,2名の意思形成への影響を成立原因として評価しない理由を説明する。
本答案の肯定構成と,この否定構成の双方を一つの答案で無条件に成立させる必要はない。
番号26と30は,取消事由があっても取消しが義務的ではないことを対象とする。
重要な決議の不正を容認しない手続的正義と,他事案での同種不正の誘発防止を挙げた上で,順調な履行と継続可能性による債権者の経済利益を比較する。
本答案は後者を重くみて棄却したが,両方向の事情を評価して取消しとする構成も排除されない。
(4) 必要的廃止と牽連破産
番号32は,設問2の裁量取消しとの対比で,遂行見込みのない手続の廃止が必要的であることを示す。
番号33は,廃止から破産へ自動的に移るのではなく,廃止決定の確定と破産原因を確認して,裁判所が職権で開始できる点を対象とする。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
110万円以外の評価額を採るには,給付価値等に即した評価の根拠が必要であるが,本問にはその算定資料までは示されていない。
計画変更,廃止後の債権復活,既に手続が終結した場合の対応は,必要的廃止と職権破産という本問の中心を圧迫しないよう答案では詳論していない。
Hの申立期間は答案中で簡潔に処理したが,公式資料由来の独立した加重項目には加えていない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
①令和3年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目(AI作成)
②令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①米国のチャプター11と日本の民事再生手続の徹底比較(AI作成)
関連実務の紹介であり,後年の記事を令和3年の法状態の根拠として用いるものではない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①令和3年司法試験問題・選択科目(倒産法第2問:実頁4)
②令和3年司法試験論文式試験出題の趣旨(倒産法第2問:実頁22~23)
③令和3年司法試験の採点実感・選択科目(倒産法総論:実頁1の対象部分,第2問:実頁4~6,関連総括:実頁6~7)
2 法令
①民事再生法・令和3年3月1日施行版(84条,87条,94条,172条の3,174条,188条,189条,194条,250条等)
②破産法・令和3年4月28日施行版(103条2項1号イ,111条1項1号等)
③裁判所掲載の民事再生規則(31条)
3 裁判例
出題の趣旨・採点実感は,最決平成20年3月13日・民集62巻3号860頁の不正の方法に関する考え方を示している。
この決定の原文自体は本記事作成時に取得できていないため,直接確認した判示とは区別する。
最決平成29年12月19日・平成29年(許)第19号の裁判所原文も確認したが,同決定は住宅資金特別条項付き小規模個人再生の認可審査に関するものである。
同決定の法廷意見と補足意見,認可時の審査と本問の認可確定後の取消しを区別して用いる。
4 確認状態
問題文,公式資料の対象部分,当時版法令の本則を実読した。
採点実感が示す評価の強さと,法令原文による制度内容の確認を分け,項目化・重み・具体的結論は本記事の分析としている。
出題の趣旨実頁22にある議決権額の「過半数」という表現に対し,当時法172条の3第1項2号は「二分の一以上」とするので,額と頭数の要件を混同しない。
裁判所の規則掲載本文は制定・改正表示と31条を確認したものであり,試験当時までの全改正履歴を独立に検証したことを意味しない。
確認日は令和8年10月16日である。