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物流2法・改正物流特殊指定が運送契約に与える影響-荷待ち・荷役・書面交付・再委託への対応(AI作成)

物流2法による規制は,運送会社だけの問題ではない。
発荷主,着荷主,元請運送事業者,貨物利用運送事業者及び実運送事業者の間で,誰が何を依頼し,誰の指示で荷待ち・荷役が生じ,誰がその対価を負担するかを,契約と記録の双方で明らかにする必要がある。
本記事は,令和8年10月8日現在の制度を前提に,物流効率化法,貨物自動車運送事業法,取適法及び令和9年4月1日施行の改正物流特殊指定が契約実務に与える影響を整理するものである。

第1 結論-運送契約を三層で見直す必要があること

1 令和7年から令和9年までの施行時期

(1) 既に施行された制度

令和7年4月1日から,物流効率化法に基づき,発荷主及び着荷主を含むすべての荷主に,積載効率の向上,荷待ち時間の短縮及び荷役等時間の短縮に向けた努力義務が課された。
同日から,貨物自動車運送事業法に基づく運送契約締結時等の書面交付,健全化措置及び実運送体制管理簿に関する制度も始まった。

令和8年1月1日から取適法が施行され,一定の規模要件を満たす発荷主から運送事業者への特定運送委託が対象取引に加わった。
令和8年4月1日からは,物流効率化法の特定荷主に関する中長期計画,定期報告及び物流統括管理者の制度が施行され,貨物自動車運送事業法の書面交付等の規律も貨物利用運送事業者へ拡張された。

(2) 施行前又は施行内容が残る制度

令和9年4月1日から,改正物流特殊指定が施行される。
従来の発荷主と物流事業者との取引に加え,一定の着荷主が,発荷主の委託先である運送事業者に契約外の荷役,長時間の荷待ち又はやり直し等をさせ,その負担により発荷主の利益を不当に害する場面が規制対象となる。

これとは別に,令和7年法律第60号による適正原価及び事業許可の更新制度等には,公布後3年以内に施行される部分が残る。
現在の義務,令和9年4月に向けて準備する事項及び施行内容が今後具体化する事項を区別する必要がある。

2 基本契約,個別発注及び現場記録を連動させること

(1) 三層で管理する理由

契約対応は,基本契約書を一度差し替えるだけでは足りない。
基本契約には役割分担,単価体系,再委託,追加作業,変更手続及び証拠保存の共通ルールを置き,個別発注には運送区間,日時,貨物,運賃,荷役・附帯業務,待機時間料及び特別費用を具体的に記載する必要がある。
さらに,予約受付,入退場,荷待ち,作業開始・終了,現場指示,追加作業の承認及び実運送事業者の通知を記録し,契約条件と実際の履行を結び付ける必要がある。

(2) 形式対応だけでは足りない理由

見直しの単位は「契約書」ではなく,「基本契約+個別発注+現場記録」である。
この三層が食い違うと,書面交付義務を形式的に満たしても,無償の荷待ち・荷役,発注後の条件変更,実運送事業者の不明確化又は価格協議の形骸化を防げない。

第2 物流2法,取適法及び物流特殊指定の役割

1 物流効率化法は発荷主と着荷主の運用を対象とすること

物流効率化法は,運送契約を締結する第一種荷主だけでなく,主として貨物を受け取る第二種荷主も対象とする。
同法の中心は,積載効率,荷待ち及び荷役等時間を改善する事業運営であり,すべての荷主には努力義務と判断基準が適用される。
取扱貨物重量が年度9万トン以上の荷主は特定荷主として指定され,中長期計画,定期報告及び物流統括管理者の選任等が必要となる。

2 貨物自動車運送事業法は発注と再委託を証拠化すること

貨物自動車運送事業法は,真荷主と運送事業者等との運送契約に法定事項の相互交付を求める。
元請事業者が他の運送事業者等を利用するときは委託先への書面交付が必要であり,一定の場合には実運送事業者,運送区間及び請負階層を実運送体制管理簿に記録する。
この制度は,誰が契約当事者であり,誰が実際に運び,どの階層で対価が決まったかを追跡可能にするものである。

3 取適法と物流特殊指定は対価及び追加作業を規律すること

取適法は,取引内容と資本金又は従業員数の基準を満たす特定運送委託について,発注内容等の明示,支払期日,記録保存及び禁止行為を定める。
物流特殊指定は,取適法の適用外となる取引も含め,一定の規模差又は優越的地位がある継続的な物流取引における不公正な行為を規律する。
両制度は重なり得るが,適用要件,記載事項及び保存期間は同一ではないため,個別に判定した上で必要な事項を充足する必要がある。

第3 物流効率化法が契約実務に与える影響

1 すべての荷主に求められる取組

(1) 判断基準が求める現場改善

国の判断基準は,リードタイムの確保,繁閑差の平準化,納品日の集約,販売・調達・物流部門の連携,予約受付システムの導入,混雑時間を避けた日時指定,パレットの標準化,事前出荷情報による検品の効率化及びフォークリフト・作業員の配置等を挙げる。
これらは努力義務であり,個々の運送について一律に特定の待機時間を超えれば直ちに契約違反になるという制度ではない。
しかし,継続的に改善措置を講じない場合には指導・助言の対象となり,特定荷主では勧告,公表,命令等へ進む可能性がある。

(2) 協力義務への翻訳

契約実務では,納品時刻を一方的に指定する条項だけでなく,予約枠の確定方法,予約変更の期限,早着・遅着時の扱い,荷役設備と作業員の配置責任,使用パレット,事前に共有する貨物情報及び実績データの提供方法を定めるべきである。
これらは,法定の努力義務を当事者間の具体的な協力義務へ翻訳する作業である。

2 特定荷主の中長期計画,定期報告及びCLO

(1) 物流統括管理者の役割

特定荷主には,中長期計画の作成,定期報告及び物流統括管理者の選任が求められる。
物流統括管理者は,単なる物流担当者ではなく,事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者であり,調達,生産,販売,在庫及び物流の部門横断的な調整を担う。

(2) 契約管理台帳との接続

契約改定の承認権限を法務・購買だけに閉じるべきではない。
CLO又は物流責任者が,取引条件,発注量,納品頻度,設備投資及び物流データを中長期計画・定期報告と整合させる仕組みが必要である。
契約管理台帳には,第一種・第二種荷主の別,年間取扱重量,対象拠点,改善指標及び責任部署を持たせることが望ましい。

3 契約条項へ落とし込む際の注意点

(1) 改善責任を運送事業者だけに転嫁しないこと

物流効率化法上の判断基準をそのまま「受託者はすべて遵守する」と転嫁する条項は適切でない。
荷待ちの発生原因が着荷主の受入能力,発荷主の出荷遅延又は予約変更にある場合まで,運送事業者だけに改善責任を負わせるからである。
発荷主,着荷主,元請及び実運送事業者ごとに,管理可能な事項とデータ提供義務を分ける必要がある。

(2) 変更可能な運用と法定書面を分けること

目標値や運用ルールは変更され得るため,基本契約には法令変更時の協議条項を置き,詳細な予約枠,単価及び記録項目は別紙・発注システムで更新できる構造とするのが実務的である。
もっとも,法定事項の変更について必要な書面交付を省略できるわけではない。

第4 貨物自動車運送事業法が契約実務に与える影響

1 運送契約締結時の書面交付

(1) 書面に記載する事項

真荷主と貨物自動車運送事業者又は貨物利用運送事業者が運送契約を締結するときは,法定事項を記載した書面を相互に交付する。
主な事項は,①運送の役務の内容及び対価,②荷役作業・附帯業務等の内容及び対価,③有料道路利用料・燃料サーチャージ等の特別費用,④当事者の名称及び住所,⑤支払方法並びに⑥交付年月日である。

積込み,取卸し,検品,棚入れ等は,原則として運送以外の役務として内容と対価を分ける。
時間制運賃に荷役等の対価を含める場合でも,荷役が発生する旨は書面に明記する必要がある。
「運賃一式」とだけ記載し,現場で必要になった作業を無償で追加する運用は見直すべきである。

(2) 複数書面の組合せ

法定事項を一つの契約書にまとめる必要はない。
基本契約書,覚書,運送依頼書,送り状及び単価表を相互に関連付け,対価を一義的に算定できればよい。
逆に,基本契約があっても,附帯業務の有無や運送内容が個別に変動するなら,個々の発注時に変動事項を記載した書面が必要である。

2 既存契約,電子メール及びスポット輸送

(1) 既存契約を変更する場合

施行日前に締結した既存契約は,新制度に合わせることだけを理由として直ちに再締結する義務まではない。
ただし,施行日後に内容を変更する場合,従前の書面が法定事項を満たさなければ,変更内容にかかわらず法定事項を満たす書面を改めて交付する必要がある。
この経過的取扱いは,すべての既存契約を無条件に放置できるという意味ではない。

(2) 電話発注を残さないこと

相手方の承諾を得れば,電子メール又はウェブサイトからのダウンロード等の電磁的方法を利用できる。
電子メール本文に法定事項を記載し,相手方が引用返信で引受けを示す方法も認められる。
もっとも,電話だけの依頼は書面交付義務を満たさず,通常のスポット輸送も災害等の例外には当たらないため,発注システム障害時の代替手順を準備すべきである。

3 再委託及び実運送体制管理簿

(1) 再委託を抑制する努力義務

元請事業者には,真荷主から引き受けた運送について,二次委託先以降への再委託を抑制する努力義務がある。
これは一律の再委託禁止ではないが,無制限な多重委託を前提とする契約・配車を見直す根拠となる。

(2) 実運送情報を遡上させる仕組み

真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物について,全部又は一部を他の運送事業者等に委託するときは,元請事業者が原則として運送ごとに実運送体制管理簿を作成し,運送完了日から1年間営業所に据え置く。
記載事項は,実運送事業者の名称,実運送する貨物の内容・区間及び請負階層である。
各委託先から元請まで情報を遡上させる必要があるため,再委託先には通知義務,再委託制限,正確性保証及び変更連絡の期限を契約で課す必要がある。

真荷主は元請事業者に対して実運送体制管理簿の閲覧・謄写を請求できる。
したがって,元請だけでなく,荷主側も,契約締結前の許可確認,白トラ利用の禁止,再委託構造の監査及び閲覧請求の社内手続を整備すべきである。

4 適正原価に関する未施行部分

令和7年法律第60号には,国土交通大臣が定める適正原価を継続して下回らないことに関する規律及び事業許可の更新制度等が含まれるが,令和8年10月8日現在,これらは公布後3年以内に施行される部分である。
将来の価格改定を見越した協議条項を置くことには意味があるが,未施行の適正原価を既に確定した強行的な最低運賃であるかのように扱うべきではない。

第5 取適法及び改正物流特殊指定との重なり

1 特定運送委託における明示,支払及び価格協議

(1) 取適法が適用される場合

取適法の特定運送委託は,販売,製造,修理等の取引の相手方に引き渡す物品の運送を他の事業者に委託する場面を対象とし,資本金基準又は従業員基準を満たす場合に適用される。
運送の役務と荷積み,荷下ろし,倉庫内作業等の運送以外の役務は,その内容と対価を区別して明示しなければならない。

取適法が適用されると,発注内容等の明示,取引記録の作成・2年間保存,役務提供日から60日以内のできる限り短い期間内における支払期日の設定等が必要になる。
手形払等,減額,買いたたき,不当な経済上の利益の提供要請,不当な内容変更・やり直し及び協議に応じない一方的な代金決定等は禁止される。
取適法の全体像は,中小受託取引適正化法(取適法)の企業実務も参照されたい。

(2) 貨物自動車運送事業法と一通化する場合

貨物自動車運送事業法の書面と取適法の明示を一通にまとめることはできる。
ただし,取適法固有の支払期日等を補い,保存期間は長い2年間に合わせる必要がある。

着荷主が契約外の荷役又は長時間の荷待ちを求めた場合でも,発荷主が運送事業者に対応を求めたと評価されれば,発荷主の不当な経済上の利益の提供要請又は不当な給付内容変更が問題となり得る。
発荷主は「着荷主の指示だから関係がない」と処理せず,発注時に想定作業,対価及び現場での承認手順を明示すべきである。

2 令和9年4月からの着荷主規制

(1) 規制対象となる行為

改正物流特殊指定は,令和9年4月1日から,一定の特定着荷主が,継続的な取引の相手である特定発荷主に対し,その委託先運送事業者を通じて運送以外の役務その他の経済上の利益を提供させる行為又は運送内容の変更・やり直しをさせる行為により,特定発荷主の利益を不当に害することを新たに規制する。
典型例は,契約外の荷下ろし,検品,仕分け,長時間の荷待ち,急な納品場所・時間変更又は再配達を無償でさせる場面である。
報復的取扱いも禁止行為に含まれる。

このため,売買基本契約・納入仕様書にも物流条件を置く必要がある。
具体的には,受入可能時間,予約方法,バース,待機上限,荷役分担,検品基準,納品拒否事由,再配達費用,緊急連絡先及び追加費用の負担者を,売主と買主の間で合意すべきである。
運送契約だけを改定しても,着荷主側の購買・倉庫運用が変わらなければ問題は解消しない。

(2) 着荷主規制の限界

公正取引委員会の公表資料によれば,運送事業者が特定発荷主に相談又は確認をせず,独自に特定着荷主の要請に応じた場合には,特定着荷主の禁止行為に該当しないとされる。
また,指定された到着時刻より前に運送事業者が到着したために生じた待機は,通常,特定着荷主の行為によるものとは扱われない。
もっとも,これらの事情があっても,他の法令又は契約に基づく責任が当然に否定されるわけではない。

事前の合意,対価又は費用負担の手当て及び協議経過の記録は,「利益を不当に害する」かを判断する上で重要である。
現場担当者の口頭指示だけで処理せず,発荷主と着荷主の間の合意及び運送事業者への発注を連動させる必要がある。

3 各制度の適用範囲を個別に判定すること

(1) 一つの制度が適用外でも終わらないこと

取適法と物流特殊指定は,すべての物流取引に一律適用されるわけではない。
取適法では取引類型と資本金・従業員基準を,物流特殊指定では継続性,規模差又は優越的地位,発荷主・着荷主・物流事業者の関係を確認する必要がある。
他方,物流効率化法の荷主の努力義務や貨物自動車運送事業法の真荷主に関する書面規律は別の要件で適用されるため,一つの制度が適用外であることだけから他も適用外とはいえない。

(2) 行政規制と私法上の効果を分けること

行政法上の書面交付義務又は努力義務への違反が,当然に運送契約を私法上無効にするとは限らない。
契約の効力,未払運賃・料金,追加作業の対価請求,損害賠償及び行政上の措置は分けて検討する必要がある。

第6 運送契約及び発注運用の見直し方

1 基本契約で定める事項

(1) 運賃・料金と変更手続

基本契約では,①適用法令と当事者の役割,②個別契約の成立方法,③運賃・料金の体系,④荷役・附帯業務の範囲,⑤燃料・高速道路・待機・再配達等の費用,⑥支払期日と方法,⑦価格協議,⑧再委託,⑨実運送事業者の情報,⑩記録保存・監査,⑪事故・遅延・現場変更,⑫法令変更時の協議及び⑬契約終了後の記録保持を定めるべきである。

(2) 第三者による現場指示

発注者が現場指示を出せる者を限定し,着荷主その他の第三者による指示があった場合の照会先と承認方法も置くべきである。
「発注者又は荷受人の指示に従う」とだけ定めると,契約外作業とその対価が不明確になる。

2 個別発注で確定する事項

(1) 毎回の発注項目

個別発注では,貨物の品名・重量又は容積,集貨地・配達地,予定日時,車種・台数,運送区間,運賃,積込料,取卸料,待機時間料,附帯業務料,有料道路利用料,燃料サーチャージ,税額,支払方法,発注日,受付番号及び基本契約・単価表の版を記録する。
未定事項がある場合は,未定の理由と確定予定時期を示し,遅くとも運送前に補充書面を交付し,当初書面との関連を明らかにする必要がある。

(2) 単価表と緊急発注

単価表を参照する場合は,有効期間又は次回改定まで有効である旨を明記し,数量等から合計額を一義的に計算できるようにする。
電話で緊急発注する場合にも,直ちに電子メール等で法定事項を送り,受託者の引受けを記録する運用が必要である。

3 荷待ち,荷役及び着荷主指示への対応

(1) 待機と作業の時刻を記録すること

入退場時刻,受付時刻,バース到着時刻,作業開始・終了時刻及び退場時刻を記録し,どの時間が荷待ち又は荷役等時間に当たるかを後から確認できるようにする。
運転者のスマートフォン,受付システム,GPS又は入構記録を用いる場合は,記録主体,訂正権限,保存期間及び閲覧範囲を定めるべきである。

(2) 追加作業の承認経路を決めること

着荷主が契約外作業又は変更を求めたときは,運転者が独断で無償対応するのではなく,元請の窓口へ連絡し,発荷主と着荷主の間で費用負担を確定する。
安全確保等のため直ちに対応する必要がある場合は,事後承認の期限,証拠,単価及び拒否できる危険作業を定めておくことが重要である。

4 再委託,実運送事業者及び証拠保存

(1) 再委託条項の内容

再委託条項には,再委託の可否だけでなく,委託階層,許可・保険・安全情報,実運送区間,実運送事業者の名称,変更通知,情報の遡上,白トラ利用禁止及び監査権を定めるべきである。
元請が実運送体制管理簿を作成できるよう,各委託先は同じ情報を下位委託先へ伝え,実運送後に上位へ返す必要がある。

(2) 保存期間を長い制度に合わせること

保存期間は制度ごとに異なる。
貨物自動車運送事業法の交付書面及び実運送体制管理簿は原則1年間,取適法の取引記録は2年間であるため,両法が適用される書面は少なくとも2年間保存する。
紛争,税務,債権管理又は社内監査の必要からさらに長く保存する場合は,個人情報・機密情報の管理も併せて定める。

5 条項例を使用する際の考え方

(1) 荷待ち・追加作業と価格協議

荷待ち・追加作業については,例えば「受託者は,個別発注に記載のない荷役,検品,仕分け,棚入れ,待機その他の作業を第三者から求められたときは,緊急の場合を除き,委託者の指定窓口の承認を得る。委託者は,当該作業を承認したときは,別紙単価又は協議により定める対価を支払う」といった構造が考えられる。
ただし,契約当事者,現場の指揮系統及び適用法令に合わせて修正する必要がある。

価格協議については,例えば「燃料費,人件費,有料道路料金その他の費用が変動した場合,当事者は相手方の申入れに応じ,根拠資料を踏まえて誠実に協議する。協議の申入れ,提示資料,回答及び合意結果は電磁的記録で保存する」と定めることが考えられる。
単に「協議する」と記載するだけで,窓口,回答期限及び記録がなければ,実際に協議へ応じたことを示しにくい。

(2) 再委託と実運送情報

再委託については,例えば「受託者は再委託先及び実運送事業者の名称,運送区間及び請負階層を委託者又は元請事業者へ通知し,変更時には遅滞なく更新する。受託者は下位委託先にも同等の通知義務を課す」と定めることが考えられる。
もっとも,二次委託先以降への再委託の抑制は努力義務であるため,法令が絶対的な再委託禁止を定めたかのような説明は避けるべきである。

第7 移行対応の手順

1 最初の30日で行う契約棚卸し

(1) 当事者と契約群の一覧化

第一に,運送契約,物流子会社,貨物利用運送事業者,運送会社,倉庫,主要な発送・受入拠点及び発注システムを一覧化する。
第二に,各取引について,真荷主,第一種・第二種荷主,特定荷主,取適法上の委託事業者・中小受託事業者,物流特殊指定上の特定荷主・特定物流事業者・特定着荷主・特定発荷主の該当性を確認する。
第三に,現行書面が法定事項,荷役・待機対価,支払期日,再委託情報及び保存期間を満たすかを点検する。

(2) 優先して直す取引

優先順位は,無書面・電話発注,運賃一式,附帯作業の無償化,長時間待機,支払期日の不明確さ,手形等,再委託先不明及び着荷主からの直接指示が多い取引から付けるべきである。
貨物軽自動車運送事業者を用いる場合の安全管理等については,貨物軽自動車運送事業の届出・安全管理・契約実務も参照されたい。

2 令和9年3月末までに行う着荷主対応

(1) 売買契約と納入仕様の見直し

改正物流特殊指定の施行前に,主要な着荷主との売買基本契約,納入仕様書及び物流条件を見直し,運送事業者が契約外の作業・待機・やり直しを求められた場合の連絡と費用負担を合意する。
着荷主側では,購買部門だけでなく,倉庫,店舗,工場,警備及び委託先作業員へ運用を周知する必要がある。

(2) 要請をそのまま転送しないこと

発荷主側は,着荷主の要請を運送事業者へそのまま転送せず,追加委託の要否,対価及び納期への影響を確認する。
運送事業者からの価格協議や追加料金請求を受ける窓口を一本化し,拒否理由又は代替案を記録することも必要である。

3 運用開始後の監査

(1) 契約から支払までをサンプル確認すること

監査では,契約書の有無だけでなく,個別発注の法定事項,受託者の返信,荷待ち・荷役記録,追加作業の承認,請求・支払,価格協議記録,実運送体制管理簿及び再委託先の許可をサンプル確認する。
契約台帳と配車・請求データを突合し,契約上有償である作業が無償処理されていないか,同じ作業名でも拠点ごとに扱いが食い違っていないかを確認する。

(2) 経営判断へ戻すこと

物流効率化法の取組は継続的改善であるため,荷待ち・荷役等時間,予約変更,積載率,附帯作業及び再配達のデータを定期的に経営層へ報告し,契約条件,設備,人員又は発注方法のどこを変えるかを決定する必要がある。
法令改正時だけでなく,少なくとも年1回は適用判定,単価表,拠点運用及び保存記録を再点検することが望ましい。

第8 出典・参考資料

1 法令・告示

物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索)
貨物自動車運送事業法(e-Gov法令検索)
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法,e-Gov法令検索)
特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法(公正取引委員会,令和9年4月1日施行)

2 国土交通省の解説・Q&A

物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)(国土交通省)
すべての荷主の対応(物流効率化法理解促進ポータルサイト)
荷主の判断基準等(物流効率化法理解促進ポータルサイト)
物流統括管理者(CLO)(物流効率化法理解促進ポータルサイト)
改正貨物自動車運送事業法に関するQ&A(令和8年3月31日時点)(国土交通省)
トラック適正化二法について(国土交通省)

3 公正取引委員会の解説・Q&A

取適法の概要(公正取引委員会)
委託事業者の義務(公正取引委員会)
よくある質問コーナー(取適法)(公正取引委員会)
物流特殊指定改正案等に対する意見の概要及び考え方(公正取引委員会)
令和7年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果(公正取引委員会)

本記事は一般的な制度整理であり,個別の契約又は取引への適用は,当事者の規模,取引類型,委託関係,優越性,実際の指示及び費用負担を確認して判断する必要がある。