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令和3年度最高裁民事破棄判決等の実情-25判決・8決定と統計の読み方(AI作成)

第1 対象と結論

宮﨑朋紀・大竹敬人「最高裁民事破棄判決等の実情-令和3年度-」が取り上げる破棄裁判は,判決25件と決定8件である。
対象は令和3年1月から12月までに言い渡された裁判であり,「年度」という表題でも4月から翌年3月までの集計ではない。
民事事件に加えて行政・労働事件を含み,複数の事件番号があっても,一つの裁判書にまとめられたものは1件として数えている。

同論文の破棄判決の割合は1.0%,許可抗告事件の破棄決定の割合は26.7%である。
ただし,事件統計年表には異なる既済件数が載っており,分母を置き換えると割合も変わる。
以下では,論文の件数,公的統計の登録事件数及び各裁判の主文を分けて整理する。

第2 件数と割合をどう読むか

1 原論文の集計

(1) 新受・既済と破棄件数

原論文が掲げる通常の上告事件と上告受理申立事件の新受件数は,それぞれ1944件と2437件である。
合計は4381件であるが,同じ原判決に対する並行申立てを1件に換算した数は2654件とされる。
これに対し,破棄率の分母は新受ではなく既済件数である。

区分原論文の既済件数破棄裁判と割合
上告・上告受理申立て合計4178件,並行申立て換算後2529件判決25件,25÷2529≒1.0%
許可抗告30件決定8件,8÷30≒26.7%

これらの割合は,最高裁で処理された事件の概況を示すものである。
個別事件の勝訴確率や,高等裁判所で許可抗告が許可される割合を示すものではなく,複数の当事者をそれぞれ成功者として数えた割合でもない。

(2) 差戻しと自判の重複

原論文による判決の処理は,差戻し12件,自判16件である。
両方の処理を含む判決が3件あるため,12+16-3=25となり,単純合計が28件になることは矛盾ではない。
決定は,差戻し1件,自判6件,その他1件と整理されている。

原論文によれば,判決・決定とも,当事者の論旨に基づく破棄であり,職権による破棄はなかった。
民集・裁判集民事への登載状況は,判決が12件・8件,決定が5件・1件であり,いずれにも登載されていないものは判決5件・決定2件である。
この登載区分と,裁判所ウェブサイトに本文が公開されているかどうかとは別の問題である。

2 事件統計年表との違い

(1) 判決の件数と既済件数

最高裁判所訟廷事務室作成の「令和3年度最高裁判所事件統計年表」は,速報値である。
第10表の破棄は,上告1件・上告受理29件の計30件であり,原論文の「25判決」とは計上単位が異なる。
複数事件を含む裁判書の数と,登録された事件の数をそのまま比較することはできない。

既済件数にも相違がある。
年表の上告・上告受理の合計4178件から,第11表の併行申立て既済1653件を差し引くと2525件となるが,原論文の換算後既済は2529件である。
4件の差が生じた理由は両資料の記載だけでは特定できず,本記事では同じ数値として扱わない。

(2) 許可抗告の分母

年表第14表の許可抗告は,新受22件,既済32件,破棄8件である。
同表の既済を分母とする計算は8÷32=25.0%となり,原論文の8÷30≒26.7%と異なる。
したがって,「26.7%」を引用する場合は原論文の集計であることを添え,年表の32件と混ぜて説明しないことが必要である。

第3 破棄判決25件の一覧

次表は,原論文の判決一覧を基に,事件を探すための年月日・事件番号と論点を整理したものである。
年月日の年はすべて令和3年であり,「ほか」は同じ裁判書に含まれる他の事件番号を示す。
論点欄は判旨の全文ではなく,具体的な主張に用いる際の入口となる。

月日事件番号主な論点
1月12日令和元年(受)第1166号仮差押え後の示談と転付された債権の額
1月18日平成31年(受)第427号ほか自筆証書遺言の日付と後日の押印
1月22日令和元年(行ヒ)第393号地方公営企業管理者の代表権と審査庁
1月22日令和元年(受)第861号履行請求に要した弁護士費用と債務不履行
2月24日令和元年(行ツ)第222号・(行ヒ)第262号孔子廟の敷地使用料免除と住民訴訟
3月2日令和2年(受)第763号間接補助に係る財産の処分承認
4月15日令和2年(受)第488号障害特別支給金の控除と弁論主義
4月16日令和2年(受)第645号遺言有効確認後の訴えと信義則
4月26日令和元年(受)第1287号B型肝炎による慢性肝炎の発症と除斥期間
5月14日令和2年(行ヒ)第238号知事の演奏会出席の公務性
5月17日平成30年(受)第1447号ほか神奈川建設アスベスト事件の国・建材メーカーの責任
5月17日平成31年(受)第596号東京建設アスベスト事件の建材到達の立証
5月17日平成31年(受)第290号ほか京都建設アスベスト事件の屋外作業者等の責任判断
5月17日平成31年(受)第491号ほか大阪建設アスベスト事件の国・建材メーカーの責任
5月25日令和2年(受)第170号・(オ)第135号懲罰的損害賠償を含む外国判決と弁済充当
6月4日令和元年(行ヒ)第388号被災者生活再建支援金の支給決定取消し
6月4日令和2年(行ヒ)第133号被災者認定の誤りと支援金支給決定取消し
6月15日令和2年(行ヒ)第102号刑事施設の診療情報の開示
6月22日令和2年(行ヒ)第337号滞納処分の配当金の他年度住民税への充当
6月24日令和2年(行ヒ)第103号相続税の増額更正取消判決の拘束力
6月29日令和2年(受)第205号・令和3年(オ)第577号宅建業の名義貸しによる利益分配と公序良俗
7月5日令和2年(受)第4号株式買取請求者による計算書類の閲覧
7月19日令和元年(受)第1968号会計限定監査役の任務懈怠
11月2日令和2年(受)第1252号同一事故の人損・物損と時効の起算点
12月21日令和2年(行ヒ)第335号岡山市議会の政務活動費と不当利得返還

第4 破棄決定8件の一覧

1 原論文が取り上げる決定

決定8件はいずれも許可抗告事件である。
次表も原論文の決定一覧を基に整理したものであり,年はすべて令和3年である。
同じ日の2決定でも,面会交流と監護者指定は別の申立てである。

月日事件番号主な論点
3月18日令和2年(許)第10号通信の送信者情報と証拠保全の検証物提示命令
3月29日令和2年(許)第4号祖父母による面会交流の申立て
3月29日令和2年(許)第14号祖母による監護者指定の申立て
4月14日令和2年(許)第37号弁護士職務基本規程57条と訴訟行為の排除
6月2日令和3年(許)第2号個人情報保護審議会委員の所属事務所と訴訟行為の排除
6月21日令和3年(許)第7号免責後に死亡した債務者の相続人による競売不動産の買受け
10月26日令和3年(許)第10号上告受理申立て理由書の法令違反の具体的記載
10月28日令和2年(許)第44号財産分与申立ての却下と相手方の即時抗告

2 月別の開示一覧との掲載範囲

最高裁の開示資料「最高裁の破棄判決等一覧表(令和3年分)」の民事関係の行は,判決25行・決定7行である。
原論文にある6月2日の令和3年(許)第2号決定は,この資料の6月欄には掲げられていない。
その理由は資料から明らかでなく,月別表の掲載行数だけを原論文の対象全件数とみなすことはできない。

第5 個別裁判は主文まで読む

1 人損・物損の時効-11月2日判決

(1) 請求権ごとの起算点

最高裁令和3年11月2日第三小法廷判決は,同一事故による身体損害と物の損害について,改正前民法724条前段の時効を請求権ごとに判断した。
身体について生じた損害の範囲を知らなくても,物について生じた損害及び加害者を知ったときには,物損の時効が進行するという判断である。
物損の起算点が人損の把握まで当然に繰り下がるという理解は採っていない。

(2) 破棄された請求の範囲

主文は,物損請求に関する上告人敗訴部分を破棄し,その部分の第1審判決を取り消して請求を棄却した。
その余の上告は却下されており,すべての損害賠償請求を棄却した判決と読むことはできない。
また,適用条文は改正前のものであり,現在の時効期間をこの判決だけから説明することもできない。

2 会計限定監査役-7月19日判決

(1) 帳簿との一致だけでは足りない場合

最高裁令和3年7月19日第二小法廷判決は,従業員が預金残高証明書を偽造していた会社の会計限定監査役の責任を扱った。
会計帳簿と計算書類の内容が一致することだけを確認すれば,常に任務を尽くしたことになるという原審の判断を否定したものである。
具体的な監査の内容は,預金の重要性,管理状況及び監査時の事情を踏まえて検討される。

(2) 責任を確定した判決ではないこと

主文は原判決を破棄し,事件を東京高裁へ差し戻した。
任務懈怠の有無に加え,損害との因果関係等について更に審理するためであり,最高裁が損害賠償責任を最終確定したわけではない。
草野耕一裁判官の補足意見も,会計限定監査役に公認会計士と同じ専門的監査を当然に求めるものではない点を述べている。

3 競売不動産の買受け-6月21日決定

(1) 免責の効果を受ける債権であること

最高裁令和3年6月21日第一小法廷決定は,免責許可決定を受けた債務者が死亡し,その相続人が担保競売の買受けを申し出た事案である。
競売の基礎となる担保権の被担保債権が免責の効果を受ける場合には,相続人は民事執行法188条により準用される68条の「債務者」に当たらないとした。
相続人であるというだけで買受けを一律に禁止する判断を退けたものである。

(2) 「自判」でも原々審へ戻る場合

原論文はこの決定を「破棄自判」に分類しているが,主文は原決定を破棄し,原々決定を取り消して,横浜地裁へ事件を差し戻している。
理由も,その他の売却不許可事由の有無を更に審理するとしている。
統計上の分類だけから,買受けが最終的に許可されたと結論付けることはできない。

4 訴訟行為の排除-4月14日決定

(1) 法律と会規の区別

最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定は,弁護士職務基本規程57条違反を理由とする訴訟行為の排除申立てを扱った。
同条に違反するにとどまる場合は,その違反を理由に相手方当事者が裁判所へ訴訟行為の排除を求めることはできないとした。
弁護士法25条違反の問題まで同じ結論で処理したものではない。

(2) 倫理上の適否とは別の判断

主文は原決定を破棄し,排除申立てを却下した原々決定に対する抗告を棄却した。
会規違反が懲戒の原因となり得ることと,訴訟行為の効力に影響することを区別した判断である。
草野耕一裁判官の補足意見も,問題となった弁護士の受任が行動として適切であったという判断を含むものではないと述べている。

第6 関連記事

年度別の記事と判例時報の掲載号は,最高裁民事破棄判決等の実情(平成元年度~令和7年度)―年度別記事と判例時報の掲載号の一覧にまとめている。

年度を横断して件数の推移を見る場合は,最高裁民事破棄判決の分析を参照されたい。
本記事の令和3年分の一覧に対し,同記事は複数年の比較を扱うものである。

月別の開示資料を探す場合は,最高裁の破棄判決等一覧表が入口となる。
原判決の点検に進む場合は,原判決監査チェックリストを参照されたい。

3月29日の祖父母の面会交流決定とその後の法改正は,祖父母等と子との交流で整理している。
令和3年の旧法下の決定と,令和8年4月1日施行の民法766条の2による規律は,適用時点を分けて読む必要がある。

第7 出典

1 文献

① 宮﨑朋紀・大竹敬人「最高裁民事破棄判決等の実情-令和3年度-」判例時報2524・2525合併号(令和4年9月11日・21日号)5~39頁。件数・集計方法は5~9頁,判決・決定一覧は6~8頁及び38~39頁(出版社の掲載案内)。

同論文は個別執筆者による解説であり,最高裁判所の公式見解を示す文書ではない。
論文中でも見解は執筆者個人のものである旨が示されている。

2 公的統計・開示資料

① 令和3年度最高裁判所事件統計年表,最高裁判所訟廷事務室作成。凡例,第2・第10・第11・第14表。
② 最高裁の破棄判決等一覧表(令和3年分),最高裁判所事務総長の令和4年2月10日付け司法行政文書開示通知に添付された月別一覧。PDF3~14頁。

3 裁判例

① 最高裁令和3年11月2日第三小法廷判決,令和2年(受)第1252号。判決書1~3頁。
② 最高裁令和3年7月19日第二小法廷判決,令和元年(受)第1968号。判決書1~5頁(4~5頁は補足意見)。
③ 最高裁令和3年6月21日第一小法廷決定,令和3年(許)第7号。決定書1~3頁。
④ 最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定,令和2年(許)第37号。決定書1~4頁(4頁は補足意見)。

4 改正法の案内

① 父母の離婚後等の子の養育に関する見直し,法務省。令和6年法律第33号による改正の令和8年4月1日施行に関する案内。