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裁判所への電子提出を支援するAIサービスの導入・検収―mints・TreeeS対応と情報管理(AI作成)

第1 書類の作成完了と裁判所への提出完了を分ける

裁判所への電子提出を支援するAIサービスを導入するときは,「書類を作れたこと」と「裁判所への提出が完了したこと」を別々に確認する必要があります。以下は,2026年10月4日に確認した公開資料を基に整理した,法律事務所での導入・検収の確認事項です。特定製品の動作や安全性を検証した結果ではありません。

提供資料であるAILEXのTreeeS解説は,AILEXの支援範囲を提出書類の作成・確認・PDF出力と提出後の管理として説明し,裁判所への提出操作は弁護士又は事務職員が行うとしています。TreeeSへの対応は将来の対応方針として示されています。これは提供事業者による説明であり,裁判所の認定や接続保証を示すものではありません。

また,TreeeSの調達仕様書に記載された予定と,実際に利用できる入口・手順は区別します。現在の事件では,裁判所の案内と担当裁判所の最新の指示を確認し,将来の名称だけで提出先を決めない運用が必要です。

第2 契約と仕様の確認対象を固定する

1 機能名よりも対象業務を具体化する

「mints対応」「TreeeS READY」などの表示だけでは,導入する機能の範囲は確定しません。書面案の生成,証拠との対応確認,PDF出力,入力フォーム用の情報整理,実際の送信,提出後の記録取得のうち,どこまでを提供するかを書き分けます。提供時期,対象裁判所,利用条件,手動操作が残る部分も確認します。

検収の対象は,現在提供されている機能と,将来の追加予定とを分けます。将来の裁判所システムに依存する機能は,現時点の稼働実績として扱わず,仕様確定後の再確認事項にします。

2 公開規約と個別契約を照合する

AILEX利用規約の2026年10月1日改定版は,事務所との利用契約書に秘密保持・データ処理等の詳細を定め,矛盾する場合はその利用契約書を優先するとしています。公開ページだけで導入可否を確定せず,実際に締結する契約,適用プラン,委託先一覧,データ処理の条件を照合します。

同規約は,AI出力の完全性・正確性を保証せず,裁判所や依頼者に出す前の弁護士の確認を求めています。「要確認」の表示がない出力も確認対象に含めます。

第3 検収は出力物と手順の両方で行う

1 公開情報又は架空データで試行する

導入前の試行は,秘密を含まない公開情報又は架空データから始めます。元資料,入力内容,生成結果,修正履歴,最終PDFの版を対応付け,文章の見栄えだけで合格としないことが大切です。

確認事項には,事件・当事者の識別,日付,金額,引用した条文・判例,証拠番号と本文の対応,別紙の欠落,文字化け,ページ順序,現在の裁判所のファイル要件を含めます。表現の自然さは,事実や根拠の正確さを保証しません。判例等は原文と照合し,原文を確認できなかった部分は未確認のまま記録します。

2 提出状態を段階ごとに記録する

事務所内では,①作成・レビュー,②最終PDF確定,③裁判所システムへの送信,④システム上の受領確認,⑤事件への関連付け等の確認を分けて記録します。手数料納付,送達,期限管理もそれぞれ別の確認事項です。AI側の「完了」を,裁判所側の受領・送達の証拠に置き換えません。

担当者,確認者,操作日時,対象ファイルの版,裁判所側の受付情報を残し,送信の失敗や結果不明の際には,現在の受付状態を確認してから次の操作を判断します。具体的な受付表示や法的効果は,その手続の公式案内に従います。事務所全体の準備は,TreeeS導入準備の記事も参照してください。

第4 情報管理は五つの観点を別々に確認する

東京弁護士会のLIBRA 2026年6月号25~27頁は,生成AIの安全利用を検討する観点として,学習利用,人的アクセス,越境移転,第三者への提供,暗号化等を挙げています。同資料は特定サービスの安全性を保証するものではありません。契約の記載と,事務所が実際に有効にした設定も区別します。

1 学習利用と保持・人的アクセス

「学習に使わない」という説明だけでは,保存期間,ログ,バックアップ,保守担当者によるアクセスまで確定しません。何を学習と呼ぶか,例外の有無,人が利用データを見る条件,承認・記録・監査の方法を確認します。

個人情報保護委員会の2023年6月2日注意喚起は,個人データの入力について,利用目的に照らした必要性や,応答以外の目的で取り扱われないかの確認を求めています。入力する資料の範囲を先に決め,契約を確認しないまま実事件の資料を試行に使わないことが実務上の確認事項になります。

2 国内処理と外部連携

AILEXの公開規約・プライバシーポリシーは,国内のAI処理基盤について説明する一方,利用者が有効にする外部連携や電子メールの送信先等を別に扱っています。国内リージョンという一項目から,すべての送信先・保存先が国内であると判断しないことが必要です。

連携するカレンダー,メール,ストレージ等については,送信項目,送信の契機,受領者,受領先の保持・削除条件を確認します。連携の解除は将来の送信停止であり,過去に送信したデータの削除とは別の手順です。

第5 権限・終了・削除を導入前に設計する

1 便利な機能と有効な統制を区別する

二要素認証,アクセス制限,事件単位の権限,操作ログなどは,機能が用意されていることと,事務所で適切に設定・運用していることを分けて確認します。担当者の異動,退職,共同受任の終了時に,誰がどの権限を見直すかまで決めます。

AIが生成した期限や予定は,原資料と担当者による確認を経て採用します。カレンダーへの自動連携があっても,生成結果を裁判所の指定や正式な期限の根拠として扱わない運用にします。

2 課金停止・退会・データ削除を分ける

AILEXの現行規約は,有料プランの終了,利用者個人の退会,事務所としてのサービス終了と削除申請を区別しています。個人の退会だけで,事務所の事件データまで削除されるとは扱いません。通常の削除,復元可能な期間,バックアップからの消去,操作等の記録の保持も別々の確認事項です。

導入時に,必要な事件記録と履歴の出力方法,出力したデータの読取り確認,終了後のアクセス,削除依頼の対象・期限,完了報告の範囲を決めます。規約上の手順だけで,個別データが実際に消去されたことまで確認済みとはしません。

第6 未確認事項を残して検収結果を管理する

検収記録には,確認した版・プラン・設定,確認方法,結果,証拠となる出力物,担当者,未確認事項を残します。公開資料の説明,契約で合意した条件,実際の試行結果はそれぞれ区別します。これにより,サービスや裁判所側の仕様が変わったとき,どこを再確認すべきか判断しやすくなります。

なお,今回確認したAILEXの法令対応説明ページには請求書機能の変更に関する記載がありますが,公開規約・プライバシーポリシーには弥生株式会社・Misocaに関する記載が残っています。実際に適用される委託先・連携機能は,導入時の最新の契約・一覧で確認する事項です。この記載の差だけから,実際の送信や契約違反を認定することはできません。

参照資料:AILEX TreeeS解説,利用規約,プライバシーポリシー,法令等との対応説明,裁判所の民事裁判デジタル化案内,東京弁護士会LIBRA,個人情報保護委員会の注意喚起。確認日は2026年10月4日です。公開資料を基にした一般的な確認事項であり,個別契約,実事件の資料,サービスの内部設計・実動作は検証していません。

本記事では,個別データ処理契約に基づく導入・検収と,TreeeS正式稼働後の提出支援の再検収は扱っていません。また,実際の委託先一覧,人的アクセスの統制,バックアップ・ログの保持と削除証明,プラン別の設定・試行結果,障害時の提出手順及び正式な接続仕様は確認していません。