第1 対象と結論
この記事は、令和8年司法試験論文式試験問題・知的財産法第1問(問題冊子20~21頁)のうち、特許法の第1問だけを対象とする。令和8年9月30日時点で、同年度の出題の趣旨と採点実感は公表されていない。以下の評価項目、重み、解説、答案は、問題文、法令、裁判例と公開再現答案を照合して独自に作成した予想であり、法務省の採点基準・配点を示すものではない。
設問1の結論は、X2社が特許法74条1項に基づく特許権の移転登録を請求することは考えられるが、提示された事実だけでは認められない、というものである。職務発明規程は通知時の承継を定め、発明時の原始帰属を定めていないため、ZからX2社への先行譲渡は有効である。しかし、同じ権利についてX1社が先に出願しており、X2社は先行譲渡を対抗できない。X1社を背信的悪意者とする具体的事実もない。
設問2の結論は、Y製品の製造販売の停止、廃棄、損害賠償はいずれも認められない、というものである。分子量599は「600以上」に文言上含まれない。均等論では境界の非本質性を肯定する余地があるが、任意の整数値600で下限を明示した外形から、第5要件の意識的除外等を認めるのが有力である。さらに、明細書の実験結果だけで請求項の下限付近を支えられるかというサポート要件上の問題がある。ただし、第5要件とサポート要件の個別の結論は、出題の趣旨が未公表の段階では本記事の推論である。
第2 本記事独自の評価項目と重みの付け方
各項目は答案に何が書かれていれば満たされるかを示した。重み5は請求の帰趨を決める中心論点、4はその判断に必要な規範・主要事実、3は重要な補強、2は区別すべき周辺論点、1は設問の指示への対応を意味する。数字は点数ではなく、本記事が予想する相対的重要度である。同じ結論に至っても、反対説を正確に示して事実に即して評価した答案は、十分に評価され得る。
設問1と設問2は独立している。設問1でX2社の移転請求を否定したことを、設問2でX1社の権利帰属を省略する理由と取り違えない。また、設問1では無効審判請求、設問2では損害額の検討が不要とされている。
第3 問題文の骨格
| 時点・事実 | 意味 |
|---|---|
| ZがX1社の指示による研究で発明を完成 | 職務発明。発生時の特許を受ける権利の帰属が問題となる。 |
| X1社の規程は「承継すると決定し、通知した時点で承継」 | 特許法35条3項の発生時帰属と、通知による事後承継を区別する。 |
| 通知前にZがX2社へ譲渡し、その後X1社が承継通知 | 同一の特許を受ける権利の二重譲渡・対抗関係が生じる。 |
| X1社が先に出願し、X2社の同一請求項の後願が拒絶 | 特許法34条1項と39条1項の役割を区別する。 |
| 請求項は樹脂A~Dの少なくとも1種と吸収剤の分子量600以上 | Y製品のA・Cは樹脂要件を満たすが、599が数値要件を満たすか問題となる。 |
| 明細書には558の失敗と656の成功だけが記載され、600は任意 | 均等論の本質的部分・意識的除外、サポート要件の検討材料となる。 |
| 登録は令和5年8月25日、公報発行は11月10日、Y社は10月23日以降に製造販売 | 差止め、廃棄、損害賠償及び過失推定の時期を区別する。 |
第4 予想される評価項目(法務省の資料ではない)
1 共通の前提
| № | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 二つの設問を独立の法律関係として扱う | 4 | 21頁の独立指示 |
| 2 | 発明、譲渡、通知、二つの出願、登録、実施、公報発行の順序を取り違えない | 2 | 20~21頁の時系列 |
| 3 | 設問1の無効審判請求と設問2の損害額を論じない | 1 | 各設問の末尾 |
| 4 | 請求の根拠、相手方の反論、再反論、各請求の結論を対応させる | 2 | 各設問の文言 |
2 設問1――職務発明と特許権移転請求
| № | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 5 | X1社の業務範囲とZの現在の職務から職務発明と評価する | 4 | 20頁・特許法35条1項 |
| 6 | 発明完成時にZに特許を受ける権利が生じることを出発点とする | 4 | 20頁・29条1項、33条1項 |
| 7 | X1社の法定通常実施権を、権利そのものの帰属と区別する | 2 | 35条1項 |
| 8 | 35条3項の「発生した時から使用者に帰属」の要件を示す | 5 | 20頁の職務発明規程 |
| 9 | 本件の「通知した時点で承継」は事後承継であり、発明完成時に遡る原始帰属ではないと論じる | 5 | 20頁の規程の文言・特許庁資料 |
| 10 | 通知前にZが有した権利のX2社への譲渡を有効と評価する | 4 | 20頁の譲渡時期・33条1項 |
| 11 | 一方的な規程策定・事前関与の欠如と、相当の利益の合理性を、権利帰属と分けて論じる | 4 | 20頁の「事前関与はなかった」・35条4~7項 |
| 12 | X2社への先行譲渡とX1社への後行承継を二重譲渡と把握する | 5 | 20頁の譲渡・通知の順序 |
| 13 | 出願前の承継は承継人の特許出願がなければ第三者に対抗できないと示す | 5 | 34条1項 |
| 14 | X1社の出願が先である事実を対抗関係に当てはめる | 5 | 20頁の二つの出願 |
| 15 | 後願が拒絶された39条1項の結果を、34条1項の対抗要件と混同しない | 3 | 20頁の後願拒絶 |
| 16 | 先願者が背信的悪意者なら出願の先後だけで保護されない可能性を検討する | 4 | 知財高判平成22年2月24日 |
| 17 | X1社が先行譲渡を知っていた事実や不当取得の事実がないことを評価する | 4 | 20頁の事実全体 |
| 18 | 真の権利者による74条1項の移転登録請求と、登録後の2項の効果を示す | 5 | 20頁・74条1・2項 |
| 19 | X2社の請求を否定しつつ、背信性が立証された場合は結論が変わり得ることを示す | 4 | 20~21頁・34条1項、74条 |
3 設問2――文言侵害、均等、サポート要件、各請求
| № | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 20 | 設定登録日から特許権が生じ、Y社の製造販売が業としての実施に当たると示す | 3 | 20頁・66条1項、68条、2条3項1号 |
| 21 | 停止を100条1項、廃棄を同条2項、賠償を民法709条に位置付ける | 4 | 21頁の請求内容 |
| 22 | 樹脂A及びCが「少なくとも1種」を満たすと読む | 3 | 20頁の請求項とY製品 |
| 23 | 分子量599は600以上に含まれず、文言侵害を否定する | 5 | 20頁・70条1・2項 |
| 24 | 作用効果の同一性や近接値を理由に、600という下限を丸めたり「程度」と読んだりしない | 4 | 知財高判令和7年3月4日 |
| 25 | ボールスプライン事件最判の均等5要件を正確に示す | 5 | 最判平成10年2月24日 |
| 26 | 600の任意性、558の失敗・656の成功、599の同効を第1要件の本質的部分に当てはめる | 5 | 20頁・知財高判令和7年3月4日 |
| 27 | 599への置換後も本件発明と同じ作用効果を生む事実を第2要件に当てはめる | 4 | 20頁のX1社の分析 |
| 28 | 出願時の技術水準の下で599への置換が容易かを第3要件として検討する | 2 | 均等論第3要件 |
| 29 | 599の構成が出願時の公知技術等に当たるとの事実は示されていないと指摘する | 2 | 均等論第4要件 |
| 30 | 任意に整数の下限600を選んだ外形と、599を含む記載が可能だった点を第5要件に当てはめる | 5 | 20頁・知財高判令和7年3月4日 |
| 31 | 「思い付いた別構成を単に書かなかった」だけでは除外といえない平成29年最判と本件を区別する | 4 | 最判平成29年3月24日 |
| 32 | 出願時の明細書と技術常識から請求項の範囲で課題解決を認識できるかを検討する | 5 | 558・656のみの実験・36条6項1号 |
| 33 | サポート要件違反の判断を無効審判の結論と混同せず、104条の3第1項の抗弁と結び付ける | 4 | 36条6項1号、123条1項4号、104条の3 |
| 34 | 下限を599にする訂正は権利範囲拡張、上げればY製品を捕捉できないと整理する | 2 | 126条6項・訂正の効果 |
| 35 | 公報発行前でも登録後の実施には103条の過失推定が及び得ると示す | 4 | 登録8月25日、実施10月23日、公報11月10日 |
| 36 | 文言・均等・無効の抗弁を踏まえ、差止め、廃棄、賠償のそれぞれについて結論を示す | 4 | 21頁の三つの請求 |
| 37 | 設問の指示どおり損害額の算定には進まない | 1 | 21頁の末尾 |
重み5が11項目、4が15項目、3が3項目、2が6項目、1が2項目で、重みの合計は138である。これは本記事の整理用の数字であり、50点満点の配点に換算したものではない。特に、①35条3項と通知時承継の区別、②34条1項と74条の接続、③599と600の文言解釈、④均等第1・第5要件の区別、⑤サポート要件の時点と範囲の5点が答案の中心になる。
第5 模範解答
1 答案の前提
以下は設問1・2を合わせて1問分、1行最大30文字・全92行に収めた答案である。見出し・空白を含む本文は2,645字で、選択科目の上限(4頁、1頁23行、1行30字)内に収まる。改行は答案入力時の行数を想定したものである。法令は令和8年の試験時点、裁判例はそれまでに言い渡されたものを前提とする。
2 答案
第1 設問1
1 X2社は、特許法74条1項に基づき、X1社に本件特許権
の移転登録を求める。同条は、特許を受ける権利を有する者が、
無権利者への特許を取り戻す制度である。移転登録がされれば、
権利は設定登録日に遡り請求者に帰属したものとみなされる(同
条2項)。X2社がX1社に優先する権利者かが問題となる。
2 本件発明は、樹脂の研究開発を業とするX1社の業務範囲に
属し、社長の指示によるZの現在の職務に属する職務発明である。
発明者Zに特許を受ける権利が発生するが、使用者X1社には法
定通常実施権がある(同法29条1項、35条1項)。契約、勤務
規則等があらかじめ使用者に権利を取得させると定めれば、権利は
発生時から使用者に帰属する(同条3項)。X1社は、開示済みの
職務発明規程により原始取得した、ゆえにZからの譲渡は無効だと
反論し得る。しかし、規程は取得の可否を事後に検討し、承継の決
定をZに通知した時に承継する旨を明記する。発生時帰属を定めた
ものではない。あらかじめ使用者へ取得させる約束と、完成後に使
用者が取得を選択する約束は法的段階が違う。発明完成時の権利者
はZであり、通知前のX2社への譲渡は当事者間では有効である。
3 規程は一方的に策定されたが、勤務規則による職務発明
の予約承継は許される。Zも開示された規程を知っていた。
策定への事前関与がないだけで承継規程は無効とならず、X1社の
通知時承継も直ちには否定できない。相当の利益の定めがあれば、
協議等の欠如はその給付の合理性及び額に作用し得るが、権利帰属
と混同してはならない(同条4~7項)。本件には相当の利益を定
めた基準や支払額の記載もないから、その合理性を断定できない。
4 Zは同じ権利を先にX2社、後にX1社へ譲った。先の譲
渡だけで第三者に勝てるわけではない。出願前の権利承継は、
承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できない(同法34
条1項)。X1社は後の譲受人としてX2社と対抗関係に立つ。
先に出願したのはX1社であり、X2社の後願は拒絶された。
39条1項による後願拒絶は出願順の結果であり、譲渡の先後や
対抗関係を直接決する規定ではない。よってX2社は自己の先行
譲受けをX1社に対抗できず、同社の特許を冒認とはいえない。
5 ただしX1社が背信的悪意者なら、出願順を盾にできない。単
なる先行譲渡の認識だけでなく、秘密の不当取得や妨害など、信義
則上保護に値しない事情が必要である。X1社は自社の職務発明規
程に従い出願した。X2社への譲渡を知っていた事実は示されず、
背信性を認める具体的事情は示されていない。本件発明をX1社
が指示した研究で得た事実も、その出願を不当な横取りと評価し難
くする。仮に背信性が立証されれば対抗関係が逆転し、74条請求
を再検討するが、現状では足りない。したがってX2社の74条の
移転請求は棄却される。Zに対する別途の責任は本問の外である。
第2 設問2
1 設問1とは独立に、X1社が特許権者とする。設定登録によ
り特許権は令和5年8月25日に発生し、Y社の同年10月23日
以降の製造、販売は業としての実施に当たる(66条、2条)。
X1社は100条1項により製造販売の差止め、同条2項により
侵害品の廃棄を求め、民法709条により損害賠償を求め得る。
2 技術的範囲は請求項に基づき、明細書を参酌して定める(特
許法70条1・2項)。Y製品の樹脂A及びCは「少なくとも1
種」に当たる。しかし吸収剤の分子量599は、請求項の明確
な下限600に達しない。同じ作用効果や1だけの差を理由に、
599を600以上と読めず、文言侵害は成立しない。「600
以上」は整数の下限として示され、問題文に別の端数処理や測定法
の指定はない。権利範囲の公示を効果から逆向きに広げられない。
3 X1社は均等侵害を主張し得る。相違点が発明の本質的部分
でなく、置換しても目的・作用効果が同じで、置換を容易に想到で
き、出願時の公知技術と同一又は容易推考でなく、意識的除外等の
特段の事情がないことを要する。前3要件は権利者が、後2要件を
妨げる事情は侵害を争う側が主張立証する枠組みとなる。本件は従
来にない発明であり、599への置換で同じ効果を奏する。558
では効果がなく、656ではあるが、600自体は任意の数値で、
境界に臨界的意義があるとは示されていない。ゆえに非本質性、
置換可能性及び容易想到性は肯定し得る。公知技術からの容
易推考を示す事実もない。しかし請求項は600を明示し、
直下の値を権利範囲から外す線引きをした。任意の整数値を選び
ながら599を含めなかった外形は、下限未満の除外を承認した
と評価できる。令和7年の知財高裁判決も、700の直下の値につ
き非本質性を認めつつ、この公示上の線引きから均等を否定した。
本件も下限直下で同趣旨が妥当する。これは単に代替構成を記載
し忘れた場合と異なる。第5要件を欠き、均等侵害も成立しない。
4 さらにY社は、仮に均等でも、36条6項1号(123条1項
4号)の無効理由により、104条の3第1項の権利行使制限を主
張できる。同要件は、出願時の明細書と技術常識から、請求項の範
囲で課題を解決できると当業者が認識できることを要する。558
の失敗と656の成功だけでは、600から655を含む全範囲
の効果を推認し難い。600は任意で、一般化を支える機序も記載
されていない。X1社は高分子量ほど効果が強いと反論し得るが、
その技術常識は与件から確認できず、後発のY製品の効果で出願
時の開示不足を補えない。記載のない600~655で効果を得る
技術的理由を、656の一例から当然に導けないからである。しか
も実際に599で効果が生じた事実は、600を臨界値とする説明
とは整合しない。したがって無効理由が認められる蓋然性が高く、
この場合も本訴での権利行使は許されない。これは訴訟上の制限
で、特許権の対世的な無効そのものではない。訂正で下限を599
へ下げれば権利範囲が拡張し、上げればY製品を捕捉できない。
5 以上より差止め、廃棄、賠償は認められない。
仮に侵害と有効性が認められるなら、差止めと侵害品廃棄に加え、
登録後の損害を賠償すべきである。103条の過失推定は公報発行
前の行為にも及び、11月10日以前というだけでは覆らない。
登録で権利が生じ、公報発行は推定の法定要件でない。
反証すべき特段の事情も与件にない。損害額は検討しない。
3 答案の読み方
設問1では「Zが先に譲渡した」だけでX2社を勝たせないことが重要である。特許法34条1項は、出願前の特許を受ける権利の承継を第三者に対抗するための規定であり、後願の拒絶を定める39条1項とは別の段階で働く。X1社が規程に基づき承継を通知した以上、事後の譲受人として対抗関係を検討する。平成22年2月24日の知財高裁判決は、旧法下の職務発明について、先の譲受人が未出願でも、後の譲受人が秘密の取得・利用を認識して出願した事実などから背信的悪意者に当たるとし、先の譲受人の特許を受ける権利の確認請求を認容した。本問には同様の背信性を示す事実がない。同判決は、現在の特許法74条に基づく登録済み特許の移転請求を直接判断した判例ではないため、その請求への接続は本記事の推論である。
設問2では、樹脂A・Cを含むことと、分子量599であることを別々に評価する。599が600に極めて近いとしても、文言侵害の判断で数値境界を緩めるのは適切でない。令和7年3月4日の知財高裁判決は、「700以上」に699.91848が含まれないとしつつ、700の臨界的意義がないため均等の第1要件は肯定し、第5要件で均等を否定した。同判決がサポート要件違反まで認定したわけではない。本問の599・600にも直ちに機械的に結論を移せないが、数値限定の役割を分けて考える手掛かりとなる。
均等の第5要件には反対方向の重要な判例がある。平成29年3月24日の最高裁判決は、容易に思い付く構成を請求項に書かなかっただけでは意識的除外にならないとした。本問は、599を知りながら外したという明示の事実がないため、第5要件を肯定する反対答案も成り立ち得る。本記事は、明細書に558の失敗と656の成功を示しながら、600という任意の整数の下限を外形上明示した点を重視して否定する。単に「1しか違わない」「同じ効果」とするだけでは、最高裁と知財高裁の射程の違いを説明できない。
サポート要件の判断では、出願後に判明したY製品599の効果を明細書の開示に加算しない。558と656の2点から、600以上の全範囲、特に600~655について当業者が課題解決を認識できたかを問う。ただし、分子量と効果の関係について出願時の技術常識が与えられていないため、違反の断定には留保が必要である。本答案の「無効理由が認められる蓋然性が高い」は、問題文の事実からの予想判断であって、上記令和7年判決の判示ではない。
第6 公開された参考答案・再現答案との照合
令和8年司法試験の本問について、一般公開された本文を検索し、次の2件を読んだ。いずれも受験者による再現答案・答案構成であり、法務省の正解例でも講師の公式見解でもない。表現を転載せず、争点の拾い方と判断を一次資料で再検討した。
| 公開資料 | 照合して採用した点 | 本記事で異なる扱いとした点 |
|---|---|---|
| Taka「令和8年司法試験再現答案(知的財産法)」 | 設問1の74条移転請求、職務発明、二重譲渡、先の出願を主要論点とする点。 | 通知時承継を35条3項の発生時帰属と同一視せず、両者を分けた。設問2では599を「実質的に600」として文言侵害を肯定せず、均等で検討した。「選択発明」の進歩性を判断する先行技術は問題文にない。 |
| ひろじぇー「令和8年司法試験_再現答案構成」 | 74条の発見が設問1の入口となること、設問2で均等侵害、とくに意識的除外を検討することを確認した。 | 設問1の仮専用実施権の構成は、X2社の特許権移転という直接の救済に比べて遠い。設問2の第5要件は条文・両判例の理由付けを補った。 |
検索は「令和8年司法試験」「知的財産法」「第1問」「参考答案」「再現答案」「599」「600」等を組み合わせ、一般検索と公開記事を確認した。令和8年予備試験の解答速報や令和7年以前の司法試験参考答案は別問題なので、本問の比較対象から外した。公開ウェブ上の全答案や有料教材の網羅を意味しない。再現答案の結論が割れる点は、評価項目を「どの根拠・事実を論じるか」として設定し、結論そのものを唯一の採点基準とはしなかった。
第7 関連記事
- 職務発明の特許を受ける権利と第三者への二重譲渡――35条3項、34条1項、74条の関係。
- 数値限定「700以上」と699.91848の均等論――文言解釈と均等第1・第5要件の関係。
第8 出典と確認状態
問題文・方式:法務省・令和8年司法試験知的財産法の問題20~21頁を確認した。答案の行数・文字数は伊藤塾のCBT方式の説明に掲げる選択科目の4頁×23行×30字と照合し、答案テキストについて機械的に数えた。
法令・特許庁資料:特許法(e-Gov法令検索)、特許庁・職務発明制度の概要、特許庁・職務発明に関する資料、特許庁・発明者等の表示について、特許・実用新案審査基準のサポート要件を参照した。
裁判例:知財高判平成22年2月24日(職務発明の二重譲渡と背信的悪意者)、最判平成10年2月24日・民集52巻1号113頁(ボールスプライン事件・均等5要件)、最判平成29年3月24日(出願時同効材と第5要件)、知財高判令和7年3月4日(数値限定の文言解釈と均等第1・第5要件)、知財高裁平成17年11月11日大合議判決(サポート要件)を参照した。
判例秘書での裏取り(令和8年9月30日):判例秘書&4誌解説プラス判例タイムズ電子復刻版の判例検索で、下表の条件を入力して検索結果と各判決本文を読んだ。件数は当該条件の検索結果であり、論点に関する判例総数ではない。判例番号は判例秘書内の識別番号である。
| 対象判決 | 入力した検索条件・該当件数 | 判例番号 | 本文で確認した範囲と記事への反映 |
|---|---|---|---|
| 最判平成10年2月24日 | 裁判日付=平成10年2月24日、16件 | L05310009 | 最高裁の理由を確認。均等の5要件を示し、原判決を破棄差戻しとした。最高裁が本件製品の均等成立を確定したという意味ではない。 |
| 知財高判平成17年11月11日 | 裁判日付=平成17年11月11日、37件 | L06020533 | 第6・1の理由を確認。請求項と詳細な説明を対比し、出願時の技術常識も踏まえて課題解決を認識できる範囲かを判断する。事件は旧36条5項1号の適用で、判決も現36条6項1号と同文言である旨を述べる。 |
| 知財高判平成22年2月24日 | 事件番号=平成21年(ネ)第10017号、1件 | L06520072 | 第4・5と結論を確認。後の譲受人を背信的悪意者とし、先の譲受人による特許を受ける権利の確認請求を認容した。現74条の移転登録請求についての直接の判断ではない。 |
| 最判平成29年3月24日 | 裁判日付=平成29年3月24日、54件 | L07210015 | 理由5を確認。容易想到の代替構成を請求項に書かなかっただけでは第5要件の特段の事情といえず、代替を認識しながらあえて記載しなかった旨の客観的・外形的表示がある場合を区別する。 |
| 知財高判令和7年3月4日 | 裁判日付=令和7年3月4日、11件 | L08020038 | 第8-3、第9-1・2、第10を確認。「700以上」への699.91848の文言充足を否定し、均等第1要件を肯定、第5要件を否定した。サポート要件は当事者が争ったが、裁判所は判断していない。 |
なお、全文キーワード「ボールスプライン」の単独検索は0件だったが、同じ判決は裁判日付検索から確認できた。0件を「判例が存在しない」とは扱わない。上表は引用した5判決の本文確認であり、判例秘書に登載された関連裁判例の網羅調査ではない。本問の599・600という数値設定に直接該当する判例や、特許法103条の公報発行前の適用を判示した判例の有無は、この検索範囲では未確認である。
確認と推論の区別:問題文の日時・数値・設問の除外指示、上記判例の結論は確認済みである。本問に対する74条請求の成否、均等第5要件、サポート要件の判断及び37項目の重みは本記事の予想である。出願時の具体的な技術常識、X1社のX2社への譲渡についての認識、令和8年度の出題の趣旨・採点実感・実際の採点基準は確認できない。後に公表された資料と照合する際は、この独立した予想と区別する。