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不動産競売の手続の流れと期間―申立て,差押え,現況調査・評価,期間入札,売却許可,代金納付,引渡命令及び配当(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,地方裁判所が行う不動産競売(強制競売及び担保不動産競売)について,申立てから配当までの手続の流れと,各段階にかかる期間の目安を整理するものである。
法令は令和8年9月28日現在の民事執行法をe-Gov法令検索で確認し,民事執行規則は裁判所ウェブサイトの規則集に掲載されたPDF(同日取得)で確認した。
期間の目安は,裁判所データブック2026,令和7年司法統計年報(民事・行政編)及び不動産競売物件情報サイト(BIT)に公表された売却スケジュールによる。

2 結論

①不動産競売は,申立て,開始決定・差押え,現況調査・評価,売却基準価額の決定と物件明細書の作成,売却の実施(通常は期間入札),売却決定期日,代金納付,配当の順に進む。

②法令・規則が期間を具体的に定めているのは,主に売却の公告以降の段階である。
入札期間は1週間以上1月以内,開札期日は入札期間の満了後1週間以内,売却決定期日は原則として開札期日から3週間以内,代金納付期限は売却許可決定の確定から1月以内,配当期日等は原則として代金納付から1月以内とされている(民事執行規則46条・56条・59条)。

③他方,開始決定から売却の実施までの現況調査・評価等の期間には一律の定めがなく,事件ごとの差が大きい。

④全国の地方裁判所の不動産執行事件の平均審理期間は,令和7年で9.1月である。
担保不動産競売等の既済事件でみると,6月を超え1年以内に終わったものが58.4%,1年を超え2年以内に終わったものが24.8%を占める。

⑤強制競売等の既済事件では取下げが半数を超え,担保不動産競売等でも約2割が取下げで終わっている。
競売の申立てが,最後まで売却・配当に進むとは限らない。

第2 不動産競売の種類と申立て

1 強制競売と担保不動産競売

不動産競売には,判決等の債務名義に基づく強制競売と,抵当権等の担保権に基づく担保不動産競売がある。
強制競売は,確定判決,仮執行の宣言を付した判決,執行証書,確定判決と同一の効力を有するもの(和解調書等)などの債務名義により行われ(民事執行法22条),原則として執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施される(同法25条)。
担保不動産競売は,担保権の登記(仮登記を除く。)がされた不動産についての申立てがあったとき,又は担保権の存在を証する確定判決等の文書の提出があったときに限り,開始する(同法181条1項)。

担保不動産競売には,強制競売の規定の多くが準用される(民事執行法188条)。
そのため,以下では両者を区別せずに述べ,違いがある主な箇所を注記する。

2 申立先

不動産執行は,その所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄し(民事執行法44条1項),この規定は担保不動産競売にも準用される(同法188条)。
もっとも,地方裁判所の支部の区域にある不動産であっても,不動産競売事件を本庁又は拠点となる支部で取り扱う地域がある。
実際の提出先は,対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所のウェブサイトの管轄区域表や集約の告知で確かめる必要がある(執行事件の地裁本庁・拠点支部への集約-不動産執行,債権執行等の状況と理由)。

3 申立書の添付書類と費用

強制競売の申立書には,執行力のある債務名義の正本のほか,登記事項証明書,不動産に課される租税その他の公課の額を証する文書等を添付しなければならない(民事執行規則23条)。
申立債権者は,公図や建物所在図の写し,債務者の住民票の写し,不動産の所在地に至るまでの経路を記載した図面等も提出するものとされている(同規則23条の2)。
これらの規定は,債務名義に関する部分を除いて担保不動産競売に準用される(同規則173条1項)。

裁判所ウェブサイトの案内によれば,申立てには,手数料(強制競売は請求債権1個につき4000円,担保不動産競売は担保権1個につき4000円),民事執行予納金(裁判所ごとに異なる。)及び差押登記のための登録免許税(原則として請求債権額の1000分の4)が必要である。
同じ案内は,裁判所が電子的に作成した債務名義による強制競売については,事件番号等の事件特定情報を提供すれば,債務名義の正本や送達証明書の準備は不要であるとしている。

第3 開始決定,差押え及び配当要求の終期

1 開始決定と差押えの登記

申立てが適法にされていると認められると,執行裁判所は強制競売の開始決定をし,その開始決定において,債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言する(民事執行法45条1項)。
開始決定は債務者に送達され(同条2項),裁判所書記官は,直ちに差押えの登記を嘱託する(同法48条1項)。

2 差押えの効力

差押えの効力は,開始決定が債務者に送達された時に生じるが,その送達前に差押えの登記がされたときは,登記がされた時に生じる(民事執行法46条1項)。
差押えは,債務者が通常の用法に従って不動産を使用し,又は収益することを妨げない(同条2項)。
したがって,開始決定があっても,債務者が直ちに退去しなければならないわけではない。
もっとも,債務者又は占有者が不動産の価格を減少させる行為をするときは,差押債権者の申立てにより,売却のための保全処分が命じられることがある(同法55条1項)。

3 配当要求の終期

差押えの効力が生じると,裁判所書記官は,物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して,配当要求の終期を定める(民事執行法49条1項)。
そのうえで,開始決定がされた旨と配当要求の終期を公告し,差押えの登記前に登記された仮差押えの債権者や抵当権者等,租税その他の公課を所管する官庁等に対し,債権の届出を催告する(同条2項)。
配当要求の終期は,配当等を受けるべき債権者の範囲を画する基準の一つとなる(同法87条1項)。

第4 現況調査,評価及び売却基準価額

1 執行官による現況調査

執行裁判所は,執行官に対し,不動産の形状,占有関係その他の現況について調査を命じなければならない(民事執行法57条1項)。
執行官は,不動産に立ち入り,債務者や占有者に質問をし,文書の提示を求めることができ(同条2項),必要があるときは閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることもできる(同条3項)。
調査の結果は,占有者の表示,占有の状況,占有権原についての関係人の陳述の要旨及び執行官の意見等を記載した現況調査報告書にまとめられ,見取図及び写真が添付される(民事執行規則29条)。

2 評価人による評価

執行裁判所は,評価人を選任し,不動産の評価を命じなければならない(民事執行法58条1項)。
評価人は,近傍同種の不動産の取引価格,不動産から生ずべき収益,不動産の原価等を勘案し,強制競売の手続において売却を実施するための評価であることを考慮して評価する(同条2項)。
評価に当たっては,取引事例比較法,収益還元法,原価法その他の評価の方法を適切に用いなければならない(民事執行規則29条の2)。
現況調査報告書と評価書は,執行裁判所が定めた所定の日までに提出される(同規則29条1項・30条1項)。

3 売却基準価額と買受可能価額

執行裁判所は,評価人の評価に基づいて,不動産の売却の額の基準となるべき価額(売却基準価額)を定める(民事執行法60条1項)。
買受けの申出の額は,売却基準価額からその10分の2に相当する額を控除した価額(買受可能価額)以上でなければならない(同条3項)。
例えば,売却基準価額が1000万円であれば,買受可能価額は800万円である。

第5 物件明細書,三点セット及びBIT

1 物件明細書と売却による権利の消滅

裁判所書記官は,売却によっても効力を失わない権利の取得や仮処分の執行,売却により設定されたものとみなされる地上権の概要等を記載した物件明細書を作成する(民事執行法62条1項)。
売却により,不動産の上に存する先取特権,使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は消滅し(同法59条1項),これらの権利を有する者や差押債権者に対抗することができない権利の取得は効力を失う(同条2項)。
物件明細書は,買受人が何を引き受けることになるかを示す書面である。
売却により設定されたものとみなされる地上権(法定地上権)の成否が争われた例は,先順位抵当権が競売前に消滅した場合の法定地上権―最高裁平成19年7月6日判決で扱っている。

2 三点セットの公開

物件明細書の写しは,執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供されるか,インターネットを利用した措置により公開される(民事執行法62条2項,民事執行規則31条1項)。
この公開は,売却の実施の日の1週間前までに開始しなければならず(同規則31条2項),その期間中は現況調査報告書及び評価書の写しも同様に公開される(同条3項)。
裁判所ウェブサイトの案内は,これら3つの書類を「三点セット」と呼び,BITで売却物件の情報を提供していると説明している。

3 内覧

差押債権者の申立てがあるときは,執行裁判所は,執行官に対し,内覧(買受けを希望する者を不動産に立ち入らせて見学させること)の実施を命じなければならない(民事執行法64条の2第1項本文)。
この申立ては,売却を実施させる旨の裁判所書記官の処分の時までにしなければならない(同条2項)。
ただし,占有者の占有の権原が差押債権者等に対抗することができる場合で,その占有者が同意しないときは,内覧は実施されない(同条1項ただし書)。

第6 無剰余による取消し

執行裁判所は,差押債権者の債権に優先する債権がない場合に買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとき,又は優先する債権がある場合に買受可能価額が手続費用と優先債権の見込額の合計額に満たないときは,その旨を差押債権者に通知しなければならない(民事執行法63条1項)。
差押債権者が,通知を受けた日から1週間以内に,一定の額で自ら買い受ける旨の申出と保証の提供等をしないときは,強制競売の手続は取り消される(同条2項本文)。
ただし,差押債権者が,その期間内に,無剰余に当たらないことを証明したときや,一定の場合に優先債権を有する者の同意を得たことを証明したときは,取り消されない(同項ただし書)。
先順位の抵当権の被担保債権が大きい不動産では,後順位の債権者の申立てがこの段階で取り消されることがある。

令和7年司法統計年報(民事・行政編)第101表によれば,同年の「不動産等に対する強制競売、強制管理」の既済事件5707件のうち,終局区分が「取消し」のものは1085件である。
ただし,この「取消し」には,無剰余以外の理由によるものも含まれる。

第7 売却の実施―期間入札と開札

1 売却実施処分と公告

不動産の売却は,裁判所書記官の定める売却の方法により行い(民事執行法64条1項),その方法は,入札又は競り売りのほか,最高裁判所規則で定める(同条2項)。
入札には,入札期日に入札をさせた後に開札を行う期日入札と,入札期間内に入札をさせて開札期日に開札を行う期間入札がある(民事執行規則34条)。
裁判所ウェブサイトの案内では,第1回目の売却方法としては期間入札が一般的であるとされている。

裁判所書記官は,売却の日時及び場所を定めて執行官に売却を実施させ(民事執行法64条3項),その処分と同時に売却決定期日を指定し(同条4項),不動産の表示,売却基準価額並びに売却の日時及び場所を公告する(同条5項)。
期間入札の公告は,入札期間の開始の日の2週間前までにしなければならない(民事執行規則49条・36条1項)。

2 入札期間と開札期日

期間入札の入札期間は1週間以上1月以内の範囲内で定め,開札期日は入札期間の満了後1週間以内の日としなければならない(民事執行規則46条1項)。
入札は,入札書を入れて封をした封筒を執行官に差し出すか,郵便等で執行官に送付する方法により行う(同規則47条)。
いったんした入札は,変更し,又は取り消すことができない(同規則49条・38条6項)。

開札の結果,最も高い価額で入札した者が最高価買受申出人となる。
それに次ぐ高額で入札した者は,その額が買受可能価額以上で,かつ,最高価買受申出人の申出の額から買受けの申出の保証の額を控除した額以上である場合に限り,次順位買受けの申出をすることができる(民事執行法67条)。

3 保証と暴力団員等に該当しない旨の陳述

期間入札における買受けの申出の保証の額は,原則として売却基準価額の10分の2であり(民事執行規則49条・39条),執行裁判所の預金口座に金銭を振り込んだ旨の金融機関の証明書等を提出する方法で提供する(同規則48条)。
また,買受けの申出をしようとする者は,自らが暴力団員等に該当しないこと等を陳述しなければ,買受けの申出をすることができない(民事執行法65条の2)。
BITの案内は,東京地方裁判所民事執行センターの取扱いを例として,この陳述書が入札時に提出されないと入札が無効となり,追完もできないと説明している。

4 入札がなかった場合

入札等の方法により売却を実施させても適法な買受けの申出がなかったときは,裁判所書記官は,執行官に対し,やむを得ない事由がある場合を除き3月以内の期間を定めて,他の方法により不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができる(民事執行規則51条1項)。
BITの案内は,東京地方裁判所民事執行センターの例として,期間入札で落札されなかった物件は,開札期日の翌開庁日から3開庁日の間,先着順で買い受けることができる(特別売却)と説明している。
また,執行裁判所は,売却を実施させても適法な買受けの申出がなかった場合において,更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは,評価書の記載を参考にして売却基準価額を変更することができる(民事執行法60条2項,民事執行規則30条の3第1項)。

第8 売却決定期日と執行抗告

1 売却許可決定と売却不許可事由

執行裁判所は,売却決定期日を開き,売却の許可又は不許可を言い渡さなければならない(民事執行法69条)。
期間入札の場合,売却決定期日は,やむを得ない事由がある場合を除き,開札期日から3週間以内の日に指定される(民事執行規則46条2項)。

最高価買受申出人が暴力団員等に該当するか否かについては,執行裁判所が,原則として都道府県警察に必要な調査を嘱託する(民事執行法68条の4第1項)。
最高価買受申出人が暴力団員等に該当するときは,売却不許可決定がされる(同法71条5号)。
このほか,強制競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと,売却基準価額の決定や物件明細書の作成等に重大な誤りがあること等も,売却不許可事由とされている(同法71条)。

2 執行抗告と確定

売却の許可又は不許可の決定に対しては,その決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り,執行抗告をすることができる(民事執行法74条1項)。
執行抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に,抗告状を原裁判所に提出してしなければならない(同法10条2項)。
売却の許可又は不許可の決定は言渡しの時に告知の効力を生じ(民事執行規則54条),確定しなければその効力を生じない(民事執行法74条5項)。
執行抗告がされると確定が遅れ,その分だけ代金納付以降の手続も後ろにずれる。

第9 代金納付,所有権移転及び引渡命令

1 代金納付期限

売却許可決定が確定したときは,買受人は,裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付しなければならない(民事執行法78条1項)。
この期限は,売却許可決定が確定した日から1月以内の日としなければならない(民事執行規則56条1項)。
買受けの申出の保証として提供した金銭は,代金に充てられる(民事執行法78条2項)。
買受人が売却代金から配当等を受けるべき債権者であるときは,売却許可決定が確定するまでに申し出て,配当等を受けるべき額を差し引いた代金を配当期日等に納付することもできる(同条4項)。

2 所有権の取得と登記

買受人は,代金を納付した時に不動産を取得する(民事執行法79条)。
担保不動産競売では,代金の納付による買受人の不動産の取得は,担保権の不存在又は消滅により妨げられない(同法184条)。
代金が納付されると,裁判所書記官は,買受人の取得した権利の移転の登記や,売却により消滅した権利等の登記及び差押えの登記の抹消を嘱託する(同法82条1項)。
その登録免許税その他の費用は,買受人の負担である(同条4項)。
買受人が融資を受けて抵当権を設定する場合には,買受人とその抵当権者が代金の納付の時までに申出をすれば,嘱託は,登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人の指定するもの(司法書士等)に嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法で行われる(同条2項)。

3 代金を納付しなかった場合

買受人が代金を納付しないときは,売却許可決定は効力を失い,買受人は,提供した保証の返還を請求することができない(民事執行法80条1項)。
次順位買受けの申出があるときは,執行裁判所は,その申出について売却の許可又は不許可の決定をしなければならない(同条2項)。
次順位買受けの申出がないときは,再び売却の手続を進めることになる。
民事執行規則51条1項及び30条の3第1項も,買受人が代金を納付しなかった場合を,適法な買受けの申出がなかった場合と同様に扱っている。

4 引渡命令

買受人が代金を納付しても,占有者が任意に退去しないことがある。
執行裁判所は,代金を納付した買受人の申立てにより,債務者又は不動産の占有者に対し,不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる(民事執行法83条1項本文)。
ただし,事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては,引渡命令を発することができない(同項ただし書)。
この申立ては,代金を納付した日から6月(買受けの時に民法395条1項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあっては9月)を経過すると,することができなくなる(民事執行法83条2項)。

引渡命令の申立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができ(民事執行法83条4項),引渡命令は確定しなければ効力を生じない(同条5項)。
裁判所ウェブサイトの案内は,引渡命令があれば,執行官に対し強制的な明渡しの手続をとるよう申し立てることもできると説明している。

第10 配当

1 配当期日と計算書

代金が納付されたときは,執行裁判所は,配当期日又は弁済金の交付の日(配当期日等)を定めなければならない(民事執行規則59条1項)。
配当期日等は,特別の事情がある場合を除き,代金が納付された日から1月以内の日としなければならない(同条2項)。
裁判所書記官は,各債権者に対し,債権の元本,配当期日等までの利息その他の附帯の債権の額及び執行費用の額を記載した計算書を,1週間以内に提出するよう催告する(同規則60条)。

債権者が1人である場合や,売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合は,執行裁判所は,売却代金の交付計算書を作成して債権者に弁済金を交付し,剰余金を債務者に交付する(民事執行法84条2項)。
それ以外の場合は,執行裁判所が配当期日において配当の順位及び額等を定め,裁判所書記官が配当表を作成し,これに基づいて配当が実施される(同法84条1項・85条)。

2 配当を受けるべき債権者と順位

配当等を受けるべき債権者は,配当要求の終期までに強制競売等の申立てをした差押債権者,配当要求の終期までに配当要求をした債権者,差押えの登記前に登記された仮差押えの債権者,差押えの登記前に登記された抵当権等で売却により消滅するものを有する債権者である(民事執行法87条1項)。
配当の順位及び額は,民法,商法その他の法律の定めるところによる(同法85条2項)。
裁判所ウェブサイトの案内は,原則として抵当権を有している債権が債務名義しか有していない債権に優先し,抵当権を有している債権の間では設定登記が早いものが優先し,債務名義しか有していない債権同士は平等に扱われると説明している。

3 配当異議

配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は,配当期日において,配当異議の申出をすることができる(民事執行法89条1項)。
執行裁判所は,配当異議の申出のない部分に限り,配当を実施する(同条2項)。
配当異議の申出をした者が,配当期日から1週間以内に配当異議の訴え等を提起したことの証明等をしないときは,配当異議の申出は取り下げたものとみなされる(同法90条1項・5項・6項)。
配当を受けた債権者に対し,後から不当利得の返還を求めることができるかは,配当を受けた債権者に不当利得返還請求はできるか―抵当権者と一般債権者で結論が分かれる最高裁判例と配当異議で扱っている。

第11 期間の目安

1 法令・規則が定める期間

売却の公告以降の主な期間は,次のとおりである。

段階定められた期間根拠
公告入札期間の開始の日の2週間前まで民事執行規則49条・36条1項
三点セットの公開売却の実施の日の1週間前までに開始民事執行規則31条2項
入札期間1週間以上1月以内民事執行規則46条1項
開札期日入札期間の満了後1週間以内民事執行規則46条1項
売却決定期日原則として開札期日から3週間以内民事執行規則46条2項
執行抗告告知を受けた日から1週間民事執行法10条2項
代金納付期限売却許可決定の確定から1月以内民事執行規則56条1項
配当期日等原則として代金納付から1月以内民事執行規則59条2項
引渡命令の申立て代金納付から6月(抵当建物使用者が占有していた建物は9月)以内民事執行法83条2項

これに対し,申立てから売却の実施までの工程(開始決定,現況調査,評価,売却基準価額の決定,物件明細書の作成)には,法令・規則による具体的な日数の定めがない。
現況調査報告書と評価書の提出期限も,執行裁判所が事件ごとに定める(民事執行規則29条1項・30条1項)。
配当要求の終期も,物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して定められる(民事執行法49条1項)。

2 売却日程の一例

BITに公表されている大阪地方裁判所本庁の期間入札の日程のうち,令和8年8月17日に売却実施処分がされた回は,次のとおりである。

手続日付前の手続からの日数
売却実施処分日令和8年8月17日―
公告日・閲覧開始日同年9月2日16日
入札期間同年9月16日から同月25日まで公告日から14日後に開始
開札日同年10月2日入札終了日から7日
売却決定日同年10月16日開札日から14日
確定日同年10月24日売却決定日から8日

この回では,売却実施処分日から売却許可決定の確定日まで68日である。
同じ庁の令和8年の他の回(農地専用の日程を除く。)でも,売却実施処分日から開札日までは46日から49日である。
この後,代金納付期限(確定から1月以内)と配当期日等(代金納付から原則として1月以内)が続くので,いずれも規則の上限近くに定められた場合には,売却実施処分から配当まで4か月余りとなる。
なお,BITの日程表では農地専用の日程が別に定められており,大阪地方裁判所本庁の令和8年11月5日開札の回では,開札日から売却決定日まで64日の間隔が置かれている。

3 統計から見た審理期間

裁判所データブック2026によれば,全国の地方裁判所の不動産執行事件の平均審理期間は,令和5年が8.4月,令和6年が8.6月,令和7年が9.1月である。
令和7年の不動産執行事件の新受件数は1万8109件,既済件数は1万7171件であった。

令和7年司法統計年報(民事・行政編)第102表により,同年の既済事件の審理期間の分布をみると,次のとおりである。
統計上の区分は「不動産等に対する強制競売、強制管理」及び「不動産等を目的とする担保権の実行としての競売等」であり,強制管理等を含む。

審理期間強制競売等(5707件)担保不動産競売等(1万1464件)
6月以内3464件(60.7%)1690件(14.7%)
6月超1年以内1511件(26.5%)6690件(58.4%)
1年超2年以内660件(11.6%)2844件(24.8%)
2年超72件(1.3%)240件(2.1%)

同年報第101表の終局区分をみると,強制競売等では取下げが3152件(55.2%),取消しが1085件(19.0%)で,「終結」は1344件(23.6%)である。
担保不動産競売等では,「終結」が8533件(74.4%),取下げが2345件(20.5%),取消しが330件(2.9%)である。
強制競売等で6月以内に終わる事件が多いのは,取下げや取消しで早期に終わる事件が多いためと考えられる。
もっとも,第101表と第102表は別々の表であり,終局区分と審理期間を掛け合わせた数値は示されていないので,売却・配当まで進んだ事件だけの期間は,これらの表からは分からない。

4 期間が延びる典型的な場面

次のような場面では,手続全体の期間が延びる。

①入札がなく,特別売却や売却基準価額の変更を経て再び売却を実施する場合(民事執行規則51条・30条の3)
②配当要求の終期が延期された場合(民事執行法49条3項)
③売却許可決定に対して執行抗告がされた場合(同法74条)
④買受人が代金を納付せず,改めて売却の許否を決め,又は売却を実施する場合(同法80条)
⑤占有者が退去せず,引渡命令とそれに基づく引渡しの強制執行を要する場合(同法83条)

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第13 出典

1 法令・規則

①民事執行法10条・22条・25条・44条~46条・48条・49条・55条・57条~60条・62条~64条の2・65条の2・67条・68条の4・69条・71条・74条・78条~80条・82条~85条・87条・89条・90条・181条・184条・188条(e-Gov法令検索)
②民事執行規則23条・23条の2・29条・29条の2・30条・30条の3・31条・34条・36条・38条・39条・46条~49条・51条・54条・56条・59条・60条・173条(裁判所ウェブサイト「規則集」掲載のPDF)

2 裁判所の資料

①裁判所「強制競売」
②裁判所「担保不動産競売」
③不動産競売物件情報サイト(BIT)「入札等の手続について」
④不動産競売物件情報サイト(BIT)「年間売却スケジュール/大阪地方裁判所本庁」

3 統計資料

①裁判所データブック2026「不動産執行事件の平均審理期間」
②裁判所データブック2026「民事事件の新受・既済・未済件数」(不動産執行事件は45頁)
③最高裁判所「令和7年司法統計年報(民事・行政編)」第101表・第102表