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他人の文章や講演を要約してブログ・SNSに載せると著作権侵害か―翻案,要約引用,公開の演説及び時事の事件の報道(AI作成)

第1 この記事の対象と確認の方法

1 対象と結論の要旨

(1) 取り上げる場面

他人の書籍,論文,新聞記事,講演,セミナー又は動画の内容を要約して,自分のブログ,SNS,社内報又は研修資料に載せることは多い。
本記事は,このような要約の掲載が著作権侵害になるかを,権利者の主張と利用者の反論に分けて整理し,削除請求と損害賠償の根拠を示す。
あわせて,動画を歪めて表示するソフトの提供と著作者人格権の問題を短く扱う。

(2) 結論の要旨

①原文の表現上の本質的な特徴を直接感得できるほど詳しい要約は,翻案に当たり得る。
②そのような要約をブログ等に載せることは,二次的著作物の公衆送信であり,原著作者が著作権法28条を介して有する公衆送信権(23条1項)の問題となる。
③要約が短く,事実やアイデアだけが原文と共通するにとどまるときは,翻案に当たらない。
④引用(32条1項)に伴う利用として47条の6第1項2号が挙げるのは翻訳だけであり,要約による引用が許されるかは解釈に委ねられているが,原文の趣旨に忠実な要約による引用を認めた下級審裁判例(東京地裁平成10年10月30日判決)がある。
⑤公開の政治上の演説(40条1項)と時事の事件の報道(41条)は,要件が限られており,一般の講演や記事の紹介に広く使える規定ではない。
⑥権利者は,差止請求(112条)として削除を求め,故意又は過失があれば損害賠償(民法709条,著作権法114条)を求めることができる。
⑦アニメや映画の内容を文章で詳しく説明したウェブサイトの記事が翻案に当たり引用にも当たらないとして,運営会社の代表者に有罪判決が言い渡された下級審裁判例(東京地裁令和8年4月16日判決)もある。

2 確認の方法と資料の性質

(1) 確認日と確認した資料

令和8年9月26日に,e-Gov法令検索の法令APIで著作権法の現行条文と施行前の改正を確認し,裁判所HPの裁判例検索で裁判例の書誌と判決全文を確認した。
裁判所HPに掲載されていない裁判例は,判例データベース(判例秘書)で判決本文を確認したものに限り,掲載誌と判例番号を付けて取り上げた。
また,法務省HPに掲載されている令和7年司法試験論文式試験の選択科目(知的財産法)第2問の問題,出題の趣旨及び採点実感を読んだ。
以下で「採点実感」「出題の趣旨」の頁を示すときは,いずれも各PDFに印刷された頁である。

(2) 司法試験の資料の位置付け

出題の趣旨と採点実感は,司法試験考査委員が答案に何を期待したかを示す資料であり,判例でも行政解釈でもない。
本記事では,論点の並べ方と見落としやすい点を知るために用い,結論の根拠には条文と裁判例を用いる。

令和7年司法試験の設例では,政治家を目指すAが約1万字の文章Pを早朝の駅前広場で披露し,その様子を撮影した映像を編集した動画Qを自己のウェブサイトに掲載した。
個人ブロガーBは,動画Qが注目を集めていることを紹介する投稿に,文章Pを1000字程度に要約した文章P’と,これを批判する3000字程度の文章を載せた。
プログラマーCは,インターネット上の動画ファイルを視聴するとその映像が変容して表示される再生ソフトRを公開しており,自己のウェブサイトで再生ソフトRを用いて動画Qを見るよう書き込み,多くの人がこれを用いて動画Qを視聴した(問題21頁)。

(3) 施行前の改正

e-Gov法令検索の改正履歴によれば,著作権法には,確認日の時点で施行されていない改正が三つ登録されている。
令和9年4月1日に施行予定の学校教育法等の一部を改正する法律(令和8年法律第37号)による改正後の本文では,47条の6第1項3号から33条の3第1項が除かれ,48条1項1号と20条2項1号の引用する条項も変わる。
民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和5年法律第53号)のうち未施行の部分については,e-Gov上の改正後の本文と比べても,本則の条文の文言に違いは見当たらなかった。
著作権法の一部を改正する法律(令和8年法律第48号)のうち,公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行される部分による改正後の本文では,113条9項など,本記事で扱わない条項の文言が変わる。
いずれの改正後の本文でも,本記事で扱う47条の6第1項2号,40条1項,41条,113条11項及び115条の文言は変わらない。

第2 要約は何の権利の問題になるか

1 著作物と翻案

(1) 文章と講演は言語の著作物になり得る

著作権法2条1項1号は,著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し,10条1項1号は,言語の著作物の例として「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」を挙げる。
著作者は,著作権を享有し(17条1項),その享有には「いかなる方式の履行をも要しない」(同条2項)。
採点実感は,著作物を例示した規定にすぎない10条1項各号だけを摘示し,著作物性を定めた2条1項1号に触れない答案が少なくなかったと指摘している(採点実感23頁)。

他方,10条2項は「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。」と定める。
東京地裁平成6年2月18日判決(平成4年(ワ)第2085号)は,争いのあった新聞記事について,その内容,長さ等に照らし,事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道ではなく,著作物に当たると認めた。

(2) 翻案の意義

最高裁平成13年6月28日判決(民集55巻4号837頁,江差追分事件)は,言語の著作物の翻案を「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」とした。
同判決は,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎない場合は,翻案に当たらないとした。
要約は,原文の表現を短くし,順序を入れ替えるなどの「修正,増減,変更等」を加える行為であるから,この基準で翻案に当たるかが判断される。

(3) 新聞記事の要約を翻案とした裁判例

前記の東京地裁平成6年2月18日判決は,新聞記事を要約して英語に翻訳し,定期購読サービスとして頒布し,送信した事案で,「著作権法二七条所定の翻案には、原著作物を短縮する要約を含む」とした。
同判決は,翻案である要約を,原著作物に依拠して作成され,内容の一部が省略され又は表現が短縮されていても,その主要な部分を含み,原著作物の表現している思想,感情の主要な部分と同一の思想,感情を表現しているものと説明した。
その上で,11本の記事の要約の翻訳が翻案権を侵害し,その印刷は二次的著作物の複製権を,ファクシミリ及びオンラインでの送信は判決当時の条文に基づく有線送信権を侵害したと認めた。
この判決は江差追分事件よりも前のものであり,本記事では,現在は,表現上の本質的な特徴を直接感得できるかという江差追分事件の基準に照らして読むのが適切と考える。

(4) 要約した文章自体が著作物となる場合

他方,要約した文章自体が著作物となることもある。
東京地裁平成27年3月27日判決(平成26年(ワ)第7527号)は,9頁の文献を簡潔に要約した記述について,「選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表現上の創作性がないということはできない。」とし,これをそのまま用いた記述を複製に当たるとした。
他人が作った要約をそのまま転載する場合は,原文の著作者だけでなく,要約の作成者の権利も問題となる。

2 ブログ・SNSへの掲載と公衆送信権

(1) 二次的著作物と28条

著作権法2条1項11号は,二次的著作物を「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」と定義する。
28条は,二次的著作物の原著作物の著作者が,二次的著作物の利用に関し,二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定める。
23条1項は,著作者が「公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」と定める。
したがって,要約が翻案に当たるときは,その要約をブログやSNSに載せる行為は,原著作者が28条を介して有する公衆送信権の問題となる。
出題の趣旨も,文章P’のブログ掲載に対し,28条を介して有する公衆送信権(23条1項)の侵害を理由として削除を求める差止請求(112条)が可能であると述べることを求めている(出題の趣旨32頁)。

(2) 翻案権だけを主張しない

採点実感は,ブログからの削除請求であるにもかかわらず公衆送信権ではなく翻案権侵害を理由にする答案,二次的著作物であることを認定しながら23条1項だけを摘示して28条に触れない答案が散見されたと指摘している(採点実感23頁)。
要約を作る行為そのものは翻案権(27条)の問題であるが,ブログに載っている要約の削除を求めるのであれば,掲載を続けている行為,すなわち公衆送信を差し止める構成が請求の内容に対応する。
また,採点実感は,要約を複製権侵害とする一方で,要約が翻案に当たる場合にのみ問題となる47条の6第1項2号を論じる一貫性のない答案も見られたと指摘する(採点実感24頁)。
要約といっても,原文の文章をほぼそのまま抜き出したものであれば複製(21条)と公衆送信(23条1項)の問題となり,原文の表現を作り替えたものであれば翻案(27条)と28条の問題となるので,まず要約がどちらに当たるかを決めておく必要がある。

第3 利用者の反論1―そもそも類似していない

1 表現上の本質的な特徴を直接感得できるか

(1) 江差追分事件が考慮した事情

江差追分事件では,テレビ番組のナレーションが,ノンフィクション作品のプロローグと,町の歴史,現在の様子及び年に一度のにぎわいを表現している点と,その順序において共通していた。
しかし,最高裁は,共通する部分は一般的知見に属するありふれた事実,著作権法上保護されない認識又はアイデア,独創的とはいい難い記述順序にすぎないとした。
さらに,ナレーション全体についても,「その量は本件プロローグに比べて格段に短く」,別に創作された影像を背景として放送されたことから,プロローグの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとした。

(2) 事実とアイデアは自由に使える

前記の東京地裁平成6年2月18日判決も,「報道すべき主題の発見、取材源の探知、素材の収集は著作権による保護の対象ではない」とし,同じ取材源から同様の素材を集めて同様の事実を含む記事を作成しても,元の記事の著作権を侵害するものとはいえないとした。
同判決が侵害を認めたのは,被告の文章が原告の記事以外の情報源に基づくと認められず,記事の主要な部分を含む要約であったからである。
原文を読んで得た事実や論旨を,自分の言葉で,自分の構成により短く伝えるだけであれば,翻案に当たらない方向に働く。

2 約1万字を1000字程度にした要約

(1) 採点実感が求めた反論

出題の趣旨は,Bの反論として,引用,公開の演説の利用及び時事の事件の報道という権利制限規定の適用のほか,文章Pと文章P’の間に創作的表現の共通性が認められないとして類似性がない旨を主張することを求めている(出題の趣旨32頁)。
採点実感は,権利制限規定に基づく抗弁とは別に類似性が否定されるとする反論に言及した答案は僅かであったとしている(採点実感24頁)。
権利制限規定は侵害の成立を前提とする抗弁であるから,実務でも,まず類似性を争い,それが通らない場合に備えて権利制限規定を主張するという順序で組み立てることになる。

(2) 分量だけでは決まらない

分量が約10分の1になったことは,江差追分事件が考慮した「量」の違いに当たる事情である。
しかし,東京地裁平成6年2月18日判決は,新聞記事の要約についても翻案を認めており,短くしたことだけで類似性が否定されるわけではない。
本記事では,要約に原文特有の言い回し,比喩,論証の運びが残っているか,原文を読まなくても原文の表現の主要な部分を認識できるほどの密度があるかを,原文と要約を並べて確かめることが,判断の中心になると考える。
東京地裁平成26年12月24日判決(平成26年(ワ)第4088号)は,史料集の解題を紹介した研究会の会報の書評(被告は,解題を約10分の1の量で要約して紹介したものと主張していた。)について,問題とされた記述のいずれについても翻案に当たらないとした。
同判決は,「史料を分析して歴史的な事実を明らかにしようとする場合,個々の分析結果は,他の方法により表現する余地が小さく,学術的な思想ないし発見された事実それ自体であって,創作的表現とならないことが多いというべきである。」と述べている。
学術書や解説書の要約では,共通するのが事実や分析結果か,著者に固有の表現かを分けて検討することになる。

3 アニメや映画の内容を文章で説明した記事が翻案とされた刑事事件

(1) 事案と判断

東京地裁令和8年4月16日判決(令和7年特(わ)第704号,著作権法違反被告事件,判例秘書の判例番号L08130058)は,アニメや映画の内容を文章で紹介するウェブサイトを運営する会社の代表者が,著作権法違反で起訴された事案である。
判決は,問題の記事が,アニメの画像と一致する静止画像12点を掲載するとともに,「ほとんどの台詞を逐一文字で抜き出し、登場人物の名前、動作、情景、場面展開等を文字で説明・描写するなどしたもの」であり,アニメと異なる独自の叙述等は見当たらず,論評を目的としたものでもないと認定した。
その上で,映像や音声を伴わず表現形式は異なるものの,これに接する者がアニメの本質的な特徴を感得し得る別の著作物を創作したと評価できるとして,記事はアニメを翻案したものであるとした。
弁護人は,記事は物語の骨組み,出演人物の紹介,ネタ等にとどまると主張したが,判決は,その点は「表現形式が異なることにより当然生じ得るもの」であって翻案の認定に直接影響しないとした。
同判決は,映画「ゴジラ-1.0」の内容を3000文字余りで説明した別の記事についても,主要なストーリーを感得でき,場面展開上重要な3つの場面については情景の描写とともに特徴的な台詞が抜き出されており,「単なるあらすじの紹介にはとどまっていない」とした。
その上で,映像・画像や音声を伴っておらず,映画の上映時間に比して文字数がさほど多くはないことを考慮しても,映画の本質的な特徴を感得し得るとして,この記事も翻案に当たるとした。
引用(32条1項)の主張についても,判決は,記事は翻案してその内容を公表するものにすぎず,引用部分を明瞭に区別したり作成者の感想,論評を記載したりするものではなく,翻案すること自体で収益を図る目的によるもので,引用の目的上正当な範囲内ともいえないとして退けた。
被告人は,懲役1年6月及び罰金100万円(懲役刑は執行猶予4年)に処せられている。

(2) 要約の掲載への示唆

この判決は第一審の判断であり,確定したかどうかは確認できなかった。
また,対象は,台詞をほぼそのまま抜き出して場面を逐一描写した記事と,映画のストーリーを具体的に感得させる3000文字余りの記事であり,数行のあらすじや,自分の論評を主とした紹介文についての判断ではない。
それでも,映画一本を3000文字余りにまとめた記事が翻案とされている点は,分量を大きく減らした要約でも翻案に当たり得ることを示している。
それでも,文章や動画の内容を詳しく書き起こしたブログ記事は,表現形式が変わっていても翻案に当たり得ること,論評のない書き起こしは引用として説明しにくいこと,著作権侵害には民事責任だけでなく刑事罰もあり得ることを示す例として参考になる。
現行の著作権法119条1項は,著作権を侵害した者(私的使用目的の複製をした者等を除く。)を「十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めている。

第4 利用者の反論2―引用(32条1項)

1 条文と判断の枠組み

(1) 32条1項の要件

著作権法32条1項は,「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と定める。
採点実感によれば,引用の一般的な要件論と要件該当性を詳細に検討した答案は多く認められた(採点実感23頁)。

(2) 明瞭区別性と主従関係

最高裁昭和55年3月28日判決(民集34巻3号244頁,パロディ事件)は,旧著作権法30条1項2号の引用について,「引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない」とした。
この判決は現行の著作権法32条1項の判断ではないが,引用部分をかぎ括弧等で区別し,自分の文章を主とするという基準は,現在の実務でも確認の出発点となっている。

(3) 利用の目的と態様の総合考慮

知財高裁平成22年10月13日判決(平成22年(ネ)第10052号)は,32条1項の引用に当たるかの判断においては,「他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない」とした。
同判決は,現行法の32条1項は利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることを要件としていないとも述べている。
ブログの要約についても,批評のために必要な範囲か,原文を読まずに済ませる代替物になっていないかといった事情が考慮の対象となる。

2 要約による引用

(1) 47条の6第1項2号は翻訳だけを挙げる

著作権法47条の6第1項は,同項各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には,当該規定の例により当該各号に定める方法による利用を行うことができると定める。
その2号は,32条,40条2項,41条等を掲げた上で,利用の方法として「翻訳」だけを定めており,「翻案」を挙げていない。
これに対し,同項1号(30条1項等)と3号(47条等)は「翻案」を挙げている。
そのため,引用のために原文を要約すること,すなわち翻案に当たる要約をした上での引用が32条1項で許されるかは,条文から直接には答えが出ない。
この規定は,平成30年の著作権法改正(平成30年法律第30号,平成31年1月1日施行)の前は43条に置かれており,改正前の43条2号も,32条,41条等による利用について「翻訳」だけを定めていた。
文化庁の「著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)」は,47条の6について「現行法第43条と同様に,権利制限規定によって著作物の利用が認められる場合において,それぞれの権利制限規定の趣旨に応じて当該著作物を翻訳,編曲,変形又は翻案して利用することができることを規定している。」と説明している(同解説50頁)。
したがって,要約による引用が許されるかという問題は,改正の前後を通じて同じ形で残っている。

(2) 解釈の対立と採点実感の指摘

条文の文言を重視すれば,引用に伴う利用として翻訳しか認められていない以上,翻案に当たる要約による引用は許されないという考え方になる。
他方,長い論文や講演を批評するときは要約でしか紹介できない場面があることから,引用の目的上正当な範囲内であれば要約による引用も許されるという考え方もあり得る。
採点実感は,47条の6第1項2号に言及できていない答案や,同号が翻訳のみを許容しているにもかかわらず,なぜ翻案に当たる要約を容認すべきかを十分に説明できていない答案が散見されたとしている(採点実感23頁~24頁)。
本記事の確認範囲では,要約による引用の可否を判断した最高裁判例は確認できなかった。

(3) 要約による引用を認めた下級審裁判例(血液型と性格事件)

東京地裁平成10年10月30日判決(平成7年(ワ)第6920号,判例時報1674号132頁,判例タイムズ991号240頁,判例秘書の判例番号L05330474)は,血液型と性格の社会史についての書籍の著者が,その内容を要約して記述した別の書籍の著者と出版社に対し,翻案権等の侵害を主張した事案である。
同判決は,被告書籍の該当部分が原告書籍の要約として翻案に当たると認めた上で,引用の要件を満たす形で他人の言語の著作物を新たな言語の著作物に引用して利用する場合には,「他人の著作物をその趣旨に忠実に要約して引用することも同項により許容されるものと解すべきである」とした。
理由として,同判決は,原文のまま引用するのでは他人の著作物の全部又は広範な部分の複製を認めることになり,著作権者の権利を侵害する程度が大きくなって,公正な慣行に合致するとも正当な範囲内ともいえなくなるおそれがあること,引用しようとする者にとって一定の観点から要約したものを利用すれば足り全文を引用するまでの必要はない場合があること,原文の一部を省略しながら切れ切れに引用することしか認めないよりも「原文の趣旨に忠実な要約による引用を認める方が妥当である」ことを挙げている。
当時の著作権法43条2号(現在の47条の6第1項2号に当たる規定)が引用について翻訳だけを挙げていた点については,要約による引用は許されないという解釈も考えられるとしつつ,同号には「翻案の一態様である要約によって利用する場合を含むものと解するのが相当である」とした。
当てはめでは,被告書籍の第2刷については要約部分の前後の記載によって要約部分がその余の部分から明瞭に区別されているとし,第1刷についても一応明瞭に区別されているとした上で,200頁以上ある書籍のうち要約部分は11頁程度であり書籍全体が主,要約部分が従の関係にあることを認め,引用に当たるとして請求を棄却した。
もっとも,同判決は,第1刷の「などを参考にしました」という表示について,本来あるべき著作者名の表示の形式によったものとはいい難いとも述べている(ただし,氏名表示権の侵害は否定している。)。
同判決は下級審の判断であり,要約による引用を一般的に認めた最高裁判例ではない。
なお,同判決は裁判所HPの裁判例検索には掲載されておらず,裁判所HPで「要約して引用」「要約による引用」等の語で検索しても,要約による引用を32条1項により適法とした裁判例は確認できなかった。
また,同判決が認めたのは「趣旨に忠実な」要約であり,原文の論旨を歪めた要約や,自分の論評が従になるほど長い要約まで許されるとしたものではない。

(4) 実務での選び方

結論が最高裁判例で定まっていない以上,実務では,要約による引用が許されることを前提にしない方が安全である。
具体的には,原文の核心部分は短くかぎ括弧で正確に引用し,それ以外は事実や論旨を自分の言葉で紹介するにとどめ,自分の論評を主にするという形が考えられる。
また,著作権法50条は「この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」と定めているから,引用として許される場合でも,原文の趣旨を歪める要約は同一性保持権(20条)の問題を残す。

(5) 要約の正確さと同一性保持権・名誉

最高裁平成10年7月17日判決(平成6年(オ)第1082号)は,評論の中で他人の著作部分の内容を3行に要約して紹介した部分について,「本件著作部分の内容を要約して紹介するものとして適切を欠くものであるが、本件著作部分の内容の一部をわずか三行に要約したものにすぎず、三八行にわたる本件著作部分における表現形式上の本質的な特徴を感得させる性質のものではないから」,同一性保持権を侵害しないとした。
同判決は,他人の著作物についての論評では,その著作物の内容自体が論評の前提となる事実に当たり,「当該意見ないし論評における他人の著作物の引用紹介が全体として正確性を欠くものでなければ」,前提事実が真実でないとの理由で論評が違法となることはないとも述べている。
裏返せば,要約が不正確で論評全体の前提を誤らせるものであれば,名誉毀損の問題が生じ得る。
東京地裁令和6年1月24日判決(令和4年(ワ)第70079号)は,ツイートのほぼ全文を引用したニュース記事に,ツイートの内容について読者に誤った理解を与える見出しを付けて配信した行為について,著作権法113条11項の「名誉又は声望」は「社会的かつ外部的な名誉又は声望であると解される」とした上で,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として著作者の社会的評価を低下させるものであるとして,同項による名誉声望保持権の侵害を認め,名誉毀損とあわせて慰謝料の支払を命じた。
要約や見出しは原文の趣旨を短く言い換えるものであるから,短くするほど不正確になりやすく,著作者人格権と名誉の双方の観点から確認が必要になる。

3 出所の明示(48条)

著作権法48条1項は,32条により著作物を複製する場合(1号)や,32条により複製以外の方法で利用する場合又は41条により利用する場合で出所を明示する慣行があるとき(3号)などに,「その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない」と定める。
同条2項は,一定の場合を除き,著作物に表示されている著作者名を示さなければならないとする。
同条3項2号は,47条の6第1項により創作された二次的著作物を利用する場合に原著作物の出所を明示することを求めている。
ブログでは,著作者名,題名,媒体又は講演の名称,日付を書き,ウェブ上の原文があればリンクを付けておくのが通常の方法となる。

第5 利用者の反論3―公開の演説(40条1項)

1 40条1項の要件

(1) 条文

著作権法40条1項は,「公開して行われた政治上の演説又は陳述並びに裁判手続及び行政審判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続をいう。第四十一条の二において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。」と定める。
「いずれの方法によるかを問わず」とあり,48条3項1号も40条1項により創作された二次的著作物の利用を前提とする定めを置いているから,要件を満たす演説については要約(翻案)も許されると解される。
文化庁の平成30年改正の解説も,権利制限の性質上,二次的著作物の創作行為を含め全ての利用行為が権利制限の対象となる類型については,改正前の43条(現在の47条の6)の規定を待つまでもなく,著作物等を翻訳等することやこれにより創作された二次的著作物の利用をすることができるとし,その類型の規定として40条1項を挙げている(同解説51頁)。
この場合も,48条1項2号により出所の明示が求められる。

(2) 「同一の著作者のものを編集して利用する場合」

採点実感は,公開の演説について論じた答案は相当数あったものの,要件を正しく当てはめていない答案が散見されたとする(採点実感24頁)。
特に,「同一の著作者のものを編集して利用する場合」は同一の著作者による複数の演説をまとめて出版するような場合が想定されているのに,一つの演説を要約した事案もこれに当たると誤解した答案が少なからず見られたと指摘している。
一つの演説を要約して紹介することは,この除外事由には当たらない。

(3) 「政治上の演説」の範囲

40条1項が対象とするのは,公開して行われた「政治上の」演説又は陳述と,裁判手続等における公開の陳述である。
企業の説明会,学会の講演,セミナー又は一般の講演会での話は,政治上の演説に当たらない限り,40条1項によっては利用できない。
国又は地方公共団体の機関等で行われた公開の演説又は陳述については40条2項があるが,同項は報道の目的上正当と認められる場合に新聞紙若しくは雑誌への掲載,放送等を認めるものであり,ブログやSNSへの掲載は列挙されていない。

2 裁判手続の陳述と未陳述の書面

東京地裁令和3年7月16日判決(令和3年(ワ)第4491号)は,別件訴訟の被告が,公開の法廷で陳述される前の訴状を自らのブログ記事からリンクを張ってアップロードした事案である。
同判決は,裁判手続における公開の陳述の自由利用は裁判の公開の要請を実質的に担保するためのものであり,「公開の法廷において陳述されていない訴状についてまでその自由利用を認めるべき理由はない」として,40条1項の類推適用又は準用を否定した。
同判決は,その後に訴状が公開の法廷で陳述されても,それ以前の侵害行為が遡って治癒されるとは解されないとも述べている。
訴訟の書面を要約してブログ等に載せるときは,その書面が公開の法廷で陳述されたものか,陳述前のものかを先に確かめる必要がある。

第6 利用者の反論4―時事の事件の報道(41条)

1 41条の要件と要約

(1) 条文

著作権法41条は,「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。」と定める。
「その他の方法」とあるので,新聞社や放送局による報道に限られず,ウェブ上の投稿が報道に当たるかも問題となる。
48条1項3号により,41条による利用で出所を明示する慣行があるときは,出所を明示しなければならない。

(2) 41条と要約

47条の6第1項2号は,41条による利用についても「翻訳」だけを定めている。
そのため,時事の事件を構成する著作物を要約(翻案)して報道することが41条で許されるかも,引用の場合と同じく解釈の問題となる。
採点実感は,41条を論じた答案は多くなく,特に同条に伴って許容される行為として翻訳のみを掲げる47条の6第1項2号を検討した答案は僅かであったとしている(採点実感24頁)。

2 報道に当たるかを判断した裁判例

(1) ウェブサイトへの投稿が報道に当たるとされた例

東京地裁令和5年3月30日判決(令和4年(ワ)第2237号)は,写真の著作権侵害が争われた別件訴訟の判決を紹介するウェブサイトへの投稿に,その写真が掲載された事案について,発信者情報開示の請求を棄却した。
同判決は,その写真は別件訴訟の判決という時事の事件において侵害の有無が争われた写真そのものであり,事件を構成する著作物に当たるとした上で,投稿は判決の要旨を伝えるものであって「社会的な意義のある時事の事件を客観的かつ正確に伝えるもの」であるから報道に当たるとし,41条により適法とした。
控訴審の知財高裁令和6年1月18日判決(令和5年(ネ)第10046号)も,原判決を補正の上で引用し,控訴を棄却した。

(2) 報道に当たらないとされた例

前記の東京地裁令和3年7月16日判決は,訴状を掲載したブログ記事の趣旨が,訴えを提起されたことについて遺憾の意を表明し,訴状の内容の不当性を訴えるものであったことから,「公衆に対し,当該訴訟や別件訴状の内容を社会的な意義のある時事の事件として客観的かつ正確に伝えようとするものであると解することはできない」として,41条の適用を否定した。
二つの判決を並べると,報道機関による報道かどうかではなく,投稿が事件を客観的かつ正確に伝えようとするものかどうかが分かれ目となっている。
ただし,いずれの事案も,事件そのものの対象となった写真又は訴状をそのまま掲載したものであり,要約を掲載した事案ではない。

3 設例への当てはめ

令和7年司法試験の設例では,Bは動画Qが大きな注目を集めていることを紹介する中で文章Pの要約を載せており,出題の趣旨と採点実感は,これが時事の事件の報道のための利用として許容されるかを検討すべき論点として挙げている(出題の趣旨32頁,採点実感21頁)。
本記事では,Bの投稿の中心が3000字程度の批判の文章である点は,事件を客観的かつ正確に伝える報道といえるかという観点からは不利に働く事情と考える。
また,41条で許されるのが翻訳にとどまると解すれば,要約の掲載は同条によっては正当化できないことになる。

第7 削除請求と損害賠償の根拠

1 削除請求(差止請求)

(1) 112条

著作権法112条1項は,著作者,著作権者等が,その著作者人格権,著作権等を「侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる」と定める。
同条2項は,その請求をするに際し,侵害の行為を組成した物等の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求できると定める。
ブログやSNSに載っている要約については,投稿者に対し,公衆送信の停止として投稿の削除を求めることになる。
差止請求は侵害の事実があれば足り,故意又は過失を要件としていない。

(2) ブログやSNSの運営事業者への削除の申出

投稿者に対してではなく,ブログやSNSを運営する事業者に削除を求めることもできる。
特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法)は,令和6年法律第25号による改正で,令和7年4月1日から,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律から題名が改められた(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」)。
同法3条1項は,事業者は,送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって,権利侵害を知っていたとき,又は情報の流通を知っていた場合で権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときでなければ,権利の侵害によって生じた損害の賠償の責めを負わないとしている。
同条2項2号は,権利を侵害されたとする者から申出を受けた事業者が発信者に照会し,発信者が照会を受けた日から7日を経過しても同意しない旨の申出をしなかったときは,削除による発信者の損害について事業者は賠償の責めに任じないとしている。
総務大臣の指定を受けた大規模特定電気通信役務提供者は,被侵害者からの申出を受け付ける方法を公表し(22条),申出があったときは「遅滞なく必要な調査を行わなければならない」(23条)とされ,原則として「当該申出を受けた日から十四日以内の総務省令で定める期間内に」,削除したかどうか,削除しなかったときはその旨及び理由を申出者に通知しなければならない(25条1項)。
なお,同法には確認日の時点で施行されていない改正が登録されており,令和5年法律第53号の未施行部分による改正後の本文では,大規模特定電気通信役務提供者に関する規定が1条ずつ繰り下がる(22条,23条及び25条がそれぞれ23条,24条及び26条となる。)。
令和8年法律第58号による未施行の改正も登録されているが,本記事で扱う3条,5条,8条,22条,23条及び25条の文言は,いずれの改正後の本文でも実質的に変わらない。

(3) 請求の組立て

採点実感は,削除請求のためには,権利の発生(著作物性),権利の帰属(著作者性と著作権の帰属)を前提として,差止請求が可能である旨を条文を摘示して論じるべきであり,これらの記述が十分でない答案は相当低い評価にとどまったとしている(採点実感23頁)。
実務の書面でも,①2条1項1号の著作物であること,②2条1項2号の著作者であり17条1項により著作権を有すること,③要約が2条1項11号の二次的著作物に当たること(又は複製に当たること),④投稿が23条1項の公衆送信に当たること,⑤112条1項により削除を求めることの順に組み立てると漏れが少ない。

2 損害賠償

(1) 根拠と損害額の推定

損害賠償の根拠は民法709条であり,故意又は過失が要件となる。
著作権法114条は,著作権侵害による損害額について,侵害者が侵害組成公衆送信等を行ったときの計算(1項),侵害者の利益の額を損害額と推定する規定(2項),権利の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額,すなわち使用料相当額を損害額として請求できる規定(3項)を置いている。
ブログの要約のように権利者の販売額や侵害者の利益を立証しにくい場合は,使用料相当額による請求が中心になると考えられる。

(2) 裁判例に現れた金額

東京地裁平成6年2月18日判決は,原告が記事を第三者に利用させる際の使用料を基に,1記事につき少なくとも900円を通常の使用料と認め,11本分の9,900円の賠償を命じた。
東京地裁令和3年7月16日判決は,「公衆送信権の侵害は,財産権の侵害であるから,特段の事情がない限り,その侵害を理由として慰謝料を請求することはできない」とした上で,公表権(著作者人格権)の侵害について慰謝料2万円を認めた。
要約の掲載について損害賠償を請求しても,認められる額は大きくないことが多いと考えられ,権利者にとっては削除が主な目的になる。

第8 動画を歪めて表示するソフトと著作者人格権

1 問題となる権利

著作権法20条1項は,著作者が「その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」と定める。
同条2項は,著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変等を適用除外としている(同項4号)。
また,113条11項は,「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。」と定める。
出題の趣旨は,令和7年司法試験の設例で,Aが動画Qの著作者として,再生ソフトRを開発・公開しているCに対し,同一性保持権の侵害を理由とする差止請求,損害賠償請求及び名誉回復等措置請求をすることができるかを,ときめきメモリアル事件を踏まえて検討することを求めている(出題の趣旨32頁)。

2 ときめきメモリアル事件と請求の相手方

(1) ときめきメモリアル事件

最高裁平成13年2月13日判決(民集55巻1号87頁,ときめきメモリアル事件)は,ゲームソフトのパラメータを本来あり得ない高数値に置き換えるメモリーカードの使用が,主人公の人物像とストーリーを改変し,同一性保持権を侵害するとした。
その上で,「専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた上告人は,他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う」とした。
同判決は,現実に使用する者がいることを予期して流通に置いたことや,購入者が現実に使用したと推認できることを理由としており,この判断は損害賠償責任についてのものである。

(2) 差止請求と損害賠償の相手方の違い

採点実感は,自ら改変行為をしているとは言い難いC自身が請求の相手方となり得るかについて,理由を示さずにCを侵害主体とする答案が散見され,差止請求と損害賠償請求の相手方の違いを意識する答案は少数であったとしている(採点実感24頁)。
損害賠償は,侵害を惹起した者に対して民法709条により求めることができるが,差止請求は112条1項の「侵害する者又は侵害するおそれがある者」に対するものであるから,改変を自ら行わない者がこれに当たるかが別に問題となる。
採点実感は,差止請求に関し侵害行為の幇助者に対する差止請求の可否をめぐる従来の議論を踏まえた検討を評価しており(採点実感22頁),本記事の確認範囲では,この点を判断した最高裁判例は確認できなかった。
下級審の判断は分かれている。
大阪地裁平成15年2月13日判決(平成14年(ワ)第9435号,ヒットワン事件)は,無許諾の店舗に通信カラオケ装置をリースしていた業者について,幇助者であっても,幇助行為の内容・性質,侵害行為に対する管理・支配の程度,利益との結び付き等を総合して「侵害主体に準じるものと評価できるから、同法112条1項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に当たる」場合があるとし,楽曲データの使用禁止措置を命じた。
大阪地裁平成17年10月24日判決(平成17年(ワ)第488号,選撮見録事件)は,販売業者を複製の主体とは認めなかったが,販売によってほぼ必然的に侵害が生じることなどの事情から,「著作権法112条1項を類推して」販売の差止めを認めた。
その控訴審の大阪高裁平成19年6月14日判決(平成17年(ネ)第3258号等)は,販売業者を「規範的な意味において,独立して著作権,著作隣接権の侵害主体となる」と認めて差止めを認めた。
他方,知財高裁平成22年8月4日判決(平成22年(ネ)第10033号)は,113条が一定の幇助行為に限って侵害とみなしていることから,同条に該当しない「著作権等侵害の幇助者にすぎない者」に対する112条による差止請求を認めることは,「明文で同法113条が規定されたことと整合せず,法的安定性を害するものである」とした。
最高裁は,まねきTV事件(最高裁平成23年1月18日判決,民集65巻1号121頁)でサービス提供者を送信の主体と判断し,ロクラクⅡ事件(最高裁平成23年1月20日判決,民集65巻1号399頁)でサービス提供者が複製の主体と解される場合を示して,いずれも原判決を破棄して差し戻したが,幇助者に対する差止請求の可否そのものは判断していない。
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の司法救済ワーキングチームの「「間接侵害」等に関する考え方の整理」(平成24年1月12日)は,「あくまで立法論としての考え方を整理したもの」とした上で,一定の範囲の間接行為者も差止請求の対象とすべきとし,専ら侵害の用に供される物品・場を提供する者などの3類型を示し,その第一の類型の例としてときめきメモリアル事件のメモリーカードを挙げている。
また,ときめきメモリアル事件は専ら改変を目的とする商品を流通に置いた事案であるから,再生ソフトの用途,公開の態様,特定の動画を名指しした書込みの有無など,事案の違いを具体的に検討する必要がある。

3 名誉回復等の措置(115条)

著作権法115条は,著作者が,故意又は過失によりその著作者人格権を侵害した者に対し,損害の賠償に代えて,又は損害の賠償とともに,「著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる」と定める。
採点実感は,名誉回復等措置請求に言及した答案は限られていたとした上で,著作者人格権侵害に関する事案では必要に応じてこの請求の可否が検討されるべきであるとしている(採点実感24頁~25頁)。
115条の請求は著作者人格権の侵害に対するものであり,著作権(財産権)の侵害を理由とする要約の削除請求とは根拠が異なる。

第9 実務のチェックリスト

1 要約を載せる前の確認

(1) 掲載前に確かめる事項

①原文は著作物か(事実の伝達にすぎない雑報ではないか)を確かめる。
②要約に原文特有の言い回し,比喩,論証の運びが残っていないかを,原文と並べて確かめる。
③原文を読まなくても原文の表現の主要な部分が分かるほど詳しい要約になっていないかを確かめる。
④自分の論評が主で,要約や引用が従になっているかを確かめる。
⑤原文をそのまま使う部分はかぎ括弧で区別し,改変しない。
⑥著作者名,題名,媒体又は講演の名称,日付を示し,原文のリンクを付ける。
⑦政治上の演説として40条1項に頼る場合は,公開して行われた政治上の演説か,裁判手続の陳述であれば公開の法廷で陳述済みかを確かめる。
⑧時事の事件の報道として41条に頼る場合は,事件を客観的かつ正確に伝える投稿になっているかを確かめる。
⑨要約の仕方が原文の趣旨を歪めていないかを確かめる。
⑩原文中の図表,写真及びイラストは,要約とは別の著作物として扱い,引用の要件を満たすか又は許諾を得る。

(2) AIに要約させる場合

AIで要約を作っても,ブログ等に掲載するのは利用者自身であり,掲載された要約が翻案に当たるか,権利制限規定を満たすかは,人が書いた要約と同じ枠組みで判断されると考えられる。
著作権法30条の4は,著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合の利用を定める規定であり,読者に読ませるために要約を公開することをこの規定で説明するのは難しいと考えられる。
AIの要約は原文の文章をそのまま残したり,原文にない内容を付け加えたりすることがあるので,掲載前に原文と照合し,前記①~⑩を同じように確かめる必要がある。
文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)も,生成・利用段階については,「従前の人間がAI を使わずに行う創作活動の際の著作権侵害の要件と同様に考える必要がある。」としている(同文書32頁)。

(3) AIで要約を提供する事業者の側

同文書は,検索拡張生成(RAG)等による回答の生成に際して既存の著作物を利用することについて,「法第47 条の5第1項第1号又は第2号の適用があることが考えられる。」とする(同文書22頁)。
著作権法47条の5第1項は,電子計算機による情報処理の結果の提供に付随して,公衆提供等著作物を「軽微なもの」に限り利用することを認める規定である。
同文書は,他方で,「既存の著作物の創作的表現の提供を主たる目的とする場合は同項に基づく権利制限の対象となるものではない」こと,軽微利用の程度を超えて既存の著作物を利用するような場合は同項は適用されず原則として許諾が必要であることにも触れている(同22頁)。
この文書は法的な拘束力を有するものではないとされているが,要約サービスを提供する側の考え方を知る資料になる。
いずれにしても,47条の5は情報処理の結果の提供に付随する軽微な利用を認める規定であり,利用者がAIの出力した要約を自分のブログに原文の代わりとして載せることを正当化するものではないと考えられる。

(4) 社内報・社内チャットでの利用

著作権法2条1項7号の2は,公衆送信を「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信」を行うことと定義し,電気通信設備の一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除いている。
また,2条5項は「この法律にいう『公衆』には、特定かつ多数の者を含むものとする。」と定めている。
東京地裁平成20年2月26日判決(平成19年(ワ)第15231号)は,社会保険庁の職員が雑誌記事を庁内のLANシステムの電子掲示板に掲載した事案で,このシステムは各地の事務局や事務所を結ぶものであり「その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する」とし,公衆送信権(送信可能化を含む。)の侵害を認めた。
同判決は,行政目的の内部資料としての複製を認めていた当時の42条1項は公衆送信には適用されないとし,損害賠償と同じ記事の掲載の差止めを命じた。
なお,現行の42条は,令和5年法律第33号による改正(令和6年1月1日施行)で,立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合に「当該内部資料を利用する者との間で公衆送信を行い」うることを定めるに至ったが,同条は立法又は行政の目的のための規定であり,企業の社内報や社内チャットに当てはまるものではない。
社内報や社内チャットでも,複数の拠点を結ぶネットワークで社内の多数の者に配信すれば公衆送信の問題となり得るから,外部向けのブログと同じ確認をしておくのが無難である。

2 削除請求を受けたとき

①請求の対象となる投稿,請求者が著作者又は著作権者であるかを確かめる。
②原文と自分の要約を並べた対照表を作り,共通しているのが表現か,事実やアイデアかを仕分ける。
③類似性を争うか,引用,公開の演説又は時事の事件の報道の要件を満たすかを検討する。
④要約による引用に頼るしかない場合は,解釈が定まっていないことを前提に,要約部分を削り,直接引用と自分の論評に書き換えることを検討する。
⑤出所の明示が欠けていれば,直ちに補う。
⑥削除に応じるときも,投稿,原文,やり取りの記録を保存しておく。
⑦損害賠償を求められたときは,使用料相当額の根拠と,故意又は過失の有無を確かめる。

3 権利者として削除を求めるとき

①投稿のURL,掲載日時,画面を保存し,原文と要約の対照表を作る。
東京地裁平成6年2月18日判決も,原告の記事と被告の文章を並べた対比目録を別紙に付けて判断している。
②請求の根拠は,要約が翻案であれば28条と23条1項,ほぼそのままの転載であれば21条と23条1項とし,112条1項により削除を求める。
③原文の趣旨を歪める要約や,名誉又は声望を害する利用であれば,20条又は113条11項と115条も検討する。
④投稿者が分からないときは,情報流通プラットフォーム対処法5条1項の発信者情報開示請求,又は8条の発信者情報開示命令の申立てが必要となる。
開示請求では,侵害情報の流通によって請求者の権利が侵害されたことが明らかであること(5条1項1号)と,損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他開示を受けるべき正当な理由があること(同項2号)を示す必要がある。
⑤東京地裁令和5年3月30日判決のように,権利制限規定が認められて開示請求が棄却されることもあるので,請求前に40条,41条及び32条の要件を相手方の立場から検討しておく。

第10 関連記事

著作権の権利行使と著作者人格権については,次の記事で扱っている。
①共同著作物・二次的著作物の権利行使―単独差止め・損害賠償・原著作者の権利
②著作権全部譲渡後の改変と著作者人格権―著作権法20条・59条・61条
③訴訟資料に著作物を利用する場合の著作権―複製・mints提出・引用・事件外共有を分ける
④固定カメラ映像・編集映像の著作物性――撮影の工夫,シーンの選択・配列及び類似映像
⑤ウェブ上のリンク・YouTube・X埋込みと著作権―リツイート最高裁判決を含む
⑥ファイル共有ソフトの不適切な利用による著作権侵害-BitTorrentの自動アップロード,発信者情報開示及び意見照会への対応

AIによる要約と著作物の利用については,次の記事で扱っている。
①robots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるか――技術的効果と著作権法上の限界
②非享受目的の著作物利用はどこまで許されるか

インターネット上の投稿の削除と発信者情報開示については,次の記事で扱っている。
①SNSやネットで名誉毀損やプライバシー侵害があったときの法的対応
②SNS上の偽・誤情報と削除―投稿者・プラットフォーム・利用者の権利と現行法

司法試験の資料については,司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト及び法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧で扱っている。

第11 出典

1 法令

①著作権法(昭和45年法律第48号)(2条,10条,17条,20条,21条,23条,27条,28条,30条の4,32条,40条,41条,47条の6,48条,50条,112条~115条,119条,42条,47条の5。令和8年9月26日にe-Gov法令APIで取得。施行前の改正は同APIの改正履歴で確認。平成30年12月30日時点の43条と令和5年法律第33号による改正前の42条も同APIで取得)
②民法(明治29年法律第89号)(709条)
③特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)(3条,5条,8条,22条,23条,25条)

2 裁判例

①最高裁昭和55年3月28日判決(昭和51年(オ)第923号,民集34巻3号244頁)
②最高裁平成13年2月13日判決(平成11年(受)第955号,民集55巻1号87頁)
③最高裁平成13年6月28日判決(平成11年(受)第922号,民集55巻4号837頁)
④東京地裁平成6年2月18日判決(平成4年(ワ)第2085号)
⑤知財高裁平成22年10月13日判決(平成22年(ネ)第10052号)
⑥東京地裁令和3年7月16日判決(令和3年(ワ)第4491号)
⑦東京地裁令和5年3月30日判決(令和4年(ワ)第2237号)
⑧知財高裁令和6年1月18日判決(令和5年(ネ)第10046号)
⑨最高裁平成10年7月17日判決(平成6年(オ)第1082号,集民189号267頁)
⑩最高裁平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号,民集65巻1号121頁)
⑪最高裁平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号,民集65巻1号399頁)
⑫大阪地裁平成15年2月13日判決(平成14年(ワ)第9435号)
⑬大阪地裁平成17年10月24日判決(平成17年(ワ)第488号)
⑭大阪高裁平成19年6月14日判決(平成17年(ネ)第3258号等)
⑮東京地裁平成20年2月26日判決(平成19年(ワ)第15231号)
⑯知財高裁平成22年8月4日判決(平成22年(ネ)第10033号)
⑰東京地裁平成26年12月24日判決(平成26年(ワ)第4088号)
⑱東京地裁平成27年3月27日判決(平成26年(ワ)第7527号)
⑲東京地裁令和6年1月24日判決(令和4年(ワ)第70079号)
⑳東京地裁平成10年10月30日判決(平成7年(ワ)第6920号,判例時報1674号132頁,判例タイムズ991号240頁,判例秘書の判例番号L05330474)
㉑東京地裁令和8年4月16日判決(令和7年特(わ)第704号,判例秘書の判例番号L08130058)

3 法務省の資料

①法務省「令和7年司法試験の結果について」
②令和7年司法試験論文式試験問題(選択科目)(知的財産法第2問は21頁)
③令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨(知的財産法は31頁~32頁)
④令和7年司法試験の採点実感(選択科目)(知的財産法は20頁~26頁)

4 その他

①文化庁「著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)」(50頁~51頁)
②文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日,22頁・32頁)
③司法救済ワーキングチーム「「間接侵害」等に関する考え方の整理」(平成24年1月12日)
④総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」