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遺産分割調停・審判はどのくらいかかるか―調停に代わる審判と二期日指定(令和6年)(AI作成)

第1 この記事の対象と資料

1 使用する資料と対象期間

本記事は,最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)の家事事件の統計を基に,家庭裁判所の遺産分割事件(調停及び審判)がどのくらいの期間で終わっているかを整理するものである。
対象は令和6年に終局した事件であり,統計は令和7年4月15日現在の数値である。
主に,報告書152頁~156頁(遺産分割事件の概況),185頁~193頁(実情調査の結果等),資料4-1・4-2(事件類型別の数値),資料4-4・4-5(家庭裁判所管内別の数値)及び資料5の表42~表44(遺産額・特別受益・寄与分別の数値)を使った。

2 数え方の注意

遺産分割事件の既済件数と審理期間は,調停が不成立になって審判に移行した事件のように,調停と審判の両方を経た事件も1件として数えている(報告書152頁【図10】の注)。
したがって,平均審理期間は,最初の申立てから調停又は審判で終わるまでの期間と考えてよい。
他方,新受件数は,調停としての係属と審判としての係属を別々に数えている。

報告書の本文が「前回」と書くときは第10回報告書,すなわち令和4年の数値を指す。
平均期日間隔は,平均審理期間を平均期日回数で割った数値である(報告書155頁【表16】の注)。

第2 遺産分割事件の平均審理期間

1 令和6年の平均と分布

令和6年の遺産分割事件の既済件数は1万5379件で,平均審理期間は12.1月であった(報告書153頁,資料4-1)。
同じ年の民事第一審訴訟の平均審理期間(9.2月)より長い。
新受件数(調停と審判を別々に数えたもの)は1万9550件で,前回(1万6687件)から約17%増えた。

審理期間件数割合
6月以内5361件34.9%
6月超1年以内5016件32.6%
1年超2年以内3575件23.2%
2年超3年以内958件6.2%
3年超469件3.0%

1年を超える事件は32.5%であり,おおむね3件に1件が1年を超えている。
前回(令和4年)は,6月以内が32.8%,1年超が35.0%であったから,短い側へ少し移っている。

2 平均審理期間の推移

報告書によれば,平均審理期間は,令和元年までの数年間は12月を下回っていたが,令和2年に大きく長くなって12月を上回り,令和4年から緩やかに短くなっている(報告書152頁~153頁)。
資料4-5の数値では,令和2年12.7月,令和3年13.2月,令和4年12.9月,令和5年12.5月,令和6年12.1月である。

報告書は,令和4年以降の短縮の要因として,新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いたことのほか,各家庭裁判所が同感染症の拡大を契機に進めてきた調停運営改善の取組の効果が現れてきたことが考えられるとしている(報告書153頁)。

第3 期間を左右する事情

1 手続代理人弁護士の関与

遺産分割事件のうち,当事者のいずれかに手続代理人弁護士が付いた事件は1万2336件(80.2%)であった(資料4-1)。
報告書は,関与率が長らく6割台であったものが15年ほど前から上がり,平成30年頃から80%前後で高止まりしているとしている(報告書155頁)。

平均審理期間は,代理人の関与がある事件で13.2月,関与がない事件で7.9月であった(資料4-2)。
報告書も,関与がある事件の方が平均審理期間が長いという傾向に変化はないとしている。
代理人が付く事件は,もともと争いが深い事件であることが多いと考えられるため,この差を代理人が付いたこと自体の効果と読むことはできない。

2 当事者の人数

当事者が2人の事件は4618件で平均11.4月,3人は12.3月,4人は12.6月,8人以上(1818件)は12.4月であった(資料4-2,資料5)。
当事者の人数が増えても,平均審理期間はそれほど変わらない。
ただし,8人以上の事件の平均期日間隔は3.4月で,2人の事件(2.2月)より長く,関係者が多いと期日が入りにくいことがうかがわれる。
報告書によれば,平均当事者数は4.7人前後で推移している(報告書154頁)。

3 遺産の額・特別受益・寄与分

資料5の表42~表44は,調停成立又は審判認容で終局した事件(7974件,平均14.4月)について,遺産の額,特別受益及び寄与分ごとの数値を示している。

区分件数平均審理期間
遺産の額1000万円以下2835件10.8月
遺産の額1000万円超5000万円以下3373件14.2月
遺産の額5000万円超1億円以下949件19.6月
遺産の額1億円超5億円以下546件24.1月
遺産の額5億円超51件32.1月
特別受益の考慮なし6658件13.7月
特別受益の考慮あり641件21.5月
寄与分の定め0件7789件14.2月
寄与分の定め1件以上154件25.6月

遺産の額が大きいほど,また特別受益や寄与分が問題になるほど,期間は長くなる。
特別受益が考慮された事件の平均期日回数は9.8回,寄与分の定めがある事件は11.7回であり,期日の回数も多い。
寄与分の定めがあった事件は,表44の対象となった7943件のうち154件(1.9%)にとどまる。

4 期日の回数と間隔

令和6年の平均期日回数は5.1回(調停4.7回,審判0.4回),平均期日間隔は2.4月であり,いずれも前回(5.2回,2.5月)から少し減った(報告書155頁)。
調停期日が16回以上に及んだ事件は503件あり,その平均審理期間は46.8月であった(資料4-2)。

第4 終局の仕方と期間

1 終局区分ごとの割合と期間

資料4-1・4-2によれば,終局区分ごとの件数と平均審理期間は次のとおりである。

終局区分件数(割合)平均審理期間
調停成立6776件(44.1%)13.0月
調停に代わる審判4817件(31.3%)10.4月
取下げ2289件(14.9%)7.8月
審判(認容)1198件(7.8%)21.9月
審判(却下)27件(0.2%)10.9月

審判まで進んで認容で終わる事件は,平均21.9月かかっている。
調停段階で合意に至るか,調停に代わる審判で終わるかによって,期間は大きく違う。

2 調停に代わる審判の活用

家事事件手続法284条1項は,家庭裁判所は,調停が成立しない場合において相当と認めるときは,「当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を考慮して,職権で,事件の解決のため必要な審判」をすることができると定めている。
これが調停に代わる審判である。

遺産分割事件で調停に代わる審判で終局した割合は,前回(29.2%)から31.3%に増えた。
報告書は,婚姻関係事件や子の監護事件よりかなり高い割合であり,遺産分割事件で簡易迅速な紛争解決手段として調停に代わる審判が更に積極的に活用されていることがうかがわれるとしている(報告書154頁)。

調停に代わる審判に対しては,当事者は異議を申し立てることができ(家事事件手続法286条1項),異議の申立ては2週間の不変期間内にしなければならない(同条2項による279条2項の準用)。
適法な異議の申立てがあると,調停に代わる審判は効力を失い(286条5項),遺産分割のような別表第二の事項については,調停の申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされる(286条7項)。
異議の申立てがなければ,別表第二の事項についての調停に代わる審判は,確定した審判と同一の効力を有する(287条)。

したがって,少数の相続人が期日に出頭しない,あるいは明確に反対はしないが合意書面に署名しないといった理由で調停が止まっている事案では,調停に代わる審判を求めることが期間の短縮につながり得る。
ただし,当事者の一人でも異議を申し立てれば審判手続に移るため,実質的な対立が残っている事案には向かない。

第5 期日間隔を縮める家庭裁判所の取組

1 実情調査で紹介された取組

報告書は,令和6年5月に大規模家庭裁判所1庁,同年10月に中規模家庭裁判所1庁と,それぞれに対応する弁護士会で実情調査を行った結果を紹介している(報告書185頁)。
大規模家庭裁判所からは,次回期日の候補日として1か月以内の日を示す工夫,係の間での調停室の融通,繁忙な調停委員同士を組み合わせない工夫に加え,遺産分割事件について,次回期日だけでなく次々回期日も指定しておく「二期日指定」を原則化する取組により,おおむね1か月ごとに期日を指定できているとの紹介があった(報告書186頁)。
報告書の原文は数字を算用数字で表記しているが,本記事では「二期日指定」と表記する。

中規模家庭裁判所からは,次回期日の候補日を2週間後から1か月半後までの範囲で示し,その範囲で調整できない場合には,ウェブ会議の利用や,2回分の期日をまとめて指定することを提案するといった取組が紹介されている(報告書186頁)。

2 代理人の側の工夫と課題

弁護士の側からは,準備事項の期限を守ることのほか,期日間に書面を一往復できるように書面の提出期限を設定してもらう工夫が紹介されている(報告書186頁)。
他方で,候補日が1か月より先になることが多く,支部を含めると期日間隔が2か月以上空く例も複数あるという意見も出ている。

報告書は,期日間隔が長くなった要因の一つとして,新型コロナウイルス感染症の影響による長期化の中で,調停委員の側や当事者(代理人弁護士)の側に,次回期日までの間隔がある程度長くなることへの抵抗感が薄れ,その意識が定着したまま期日調整がされてきたことが考えられるとしている(報告書192頁注1)。
代理人の日程の都合で期日間隔を空けることは,裁判所が進めている運営改善と逆方向に働くことになる。

第6 大阪家庭裁判所管内の数値

資料4-4によれば,大阪家庭裁判所管内の令和6年の遺産分割事件の既済件数は1109件で,平均審理期間は12.5月であり,全国平均(12.1月)とほぼ同じである。
審理期間の分布は,6月以内が33.0%,1年超が約34.6%であった。
平均調停期日回数は4.3回,平均審判期日回数は0.6回,平均期日間隔は2.6月であり,期日間隔は全国平均(2.4月)よりやや長い。

資料4-5によれば,大阪家庭裁判所管内の平均審理期間は,令和2年12.4月,令和3年13.7月,令和4年13.0月,令和5年13.3月,令和6年12.5月と推移している。

第7 依頼者への説明と代理人の準備

本記事では,依頼者への見通しの説明を,次の考え方で行うことを基本形とする。
①出発点は「平均1年強,3件に1件は1年を超える」(全国12.1月,大阪家庭裁判所管内12.5月)
②遺産の額が大きい事件,特別受益・寄与分が争点になる事件は,1年半から2年以上を見込む(第3の3の表)
③審判まで進めば平均2年近く(21.9月)かかる

期間を短くするために代理人が取り得る対応としては,次のものが考えられる。
①遺産の範囲と評価,特別受益,寄与分のうち,実際に争いになる点を早い段階で特定する
②期日間に書面を一往復できるよう,提出期限を裁判所と共有する
③期日間隔が長くなりそうなときは,二期日指定やウェブ会議の利用を求める
④合意に近いが一部の相続人の協力が得られない事案では,調停に代わる審判を提案する

いずれも既済事件の平均に基づく整理であり,個々の事件の終結時期を保証するものではない。

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第9 出典

1 法令

家事事件手続法(平成23年法律第52号)279条2項・284条1項・286条・287条(e-Gov法令検索)

2 統計・データ

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)目次
同報告書 第5章「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」(152頁~156頁,185頁~193頁を使用)
同報告書 資料4-1~資料4-5(資料4-1,4-2,4-4,4-5を使用)
同報告書 資料5「第3回及び第4回報告書において指摘した長期化要因の継続的検証」(表42~表44を使用)
* 本記事は特定の裁判例を根拠としていないため,判例秘書による判例本文の確認は行っていない。