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民事裁判はどのくらいかかるか―事件類型別・代理人の有無別の平均審理期間と長くなる要因(令和6年)(AI作成)

第1 この記事の対象と資料

1 使用する資料と対象期間

本記事は,最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)の統計を基に,地方裁判所の民事第一審訴訟がどのくらいの期間で終わっているかを整理するものである。
対象は令和6年に終局した事件であり,統計は令和7年4月15日現在の数値である。
同報告書は,裁判の迅速化に関する法律8条1項に基づき,最高裁判所が2年ごとに公表している検証結果である。
事件類型ごとの細かな数値は,同報告書の資料2-2-1(事件類型別平均審理期間等)及び資料2-6・2-9(地方裁判所管内別の数値)から取った。

「民事第一審訴訟」には,地方裁判所の通常訴訟のほか人事訴訟も含まれる(報告書45頁注1)。
平均審理期間は,訴えの受理から終局までの期間の平均である。
報告書の本文が「前回」と書くときは第10回報告書,すなわち令和4年の数値を指し,前年の令和5年の数値ではない。

2 平均値を依頼者への説明に使うときの前提

裁判の迅速化に関する法律2条1項は,「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ」ることを目標として掲げている。
これは目標であり,個々の事件を2年以内に終わらせる義務を裁判所に課す規定ではない。
平均審理期間は既に終わった事件の平均であり,係属中の事件がいつ終わるかを示すものでもない。

平均値は,短期間で終わる事件が多いと大きく下がる。
そのため,本記事では,全体の平均よりも,代理人の付き方・人証調べの有無・事件類型に分けた数値を重視する。

第2 民事第一審全体の審理期間

1 令和6年の平均と分布

令和6年の既済事件は13万9370件で,平均審理期間は9.2月であった(報告書47頁)。
平均審理期間は,平成20年の6.5月まで短くなった後に長期化し,令和3年・4年の10.5月を経て,令和6年は9.2月に短縮した。

審理期間の分布は,6月以内が58.1%,6月超1年以内が17.8%,1年超2年以内が16.5%,2年超が7.6%であった(報告書49頁,資料2-6)。
2年を超える割合は,前回(令和4年)の9.9%から下がっている。

2 平均を押し下げている事件

全体の平均が9.2月にとどまるのは,争いがほとんどなく短期間で終わる事件が多いためである。
例えば,建物の明渡し等の「建物」事件は4万0474件あり,平均審理期間は3.8月であった(資料2-2-1)。
判決で終局した事件のうち,被告が出頭しない欠席判決は平均3.4月で終わっている。

報告書は,第9回報告書から,過払金返還請求等の事件を統計から除く処理をやめ,全体の統計だけを分析している(報告書45頁注2)。
したがって,「民事裁判の平均は9.2月」という数値を,当事者双方が争う事件の目安として使うことはできない。

第3 代理人・人証調べ・合議で変わる期間

1 代理人の付き方

資料2-2-1によれば,訴訟代理人の付き方ごとの平均審理期間は次のとおりである。

訴訟代理人事件数平均審理期間
双方に代理人5万6385件15.9月
原告側のみ6万7205件4.5月
被告側のみ3978件10.6月
双方とも本人1万1802件3.2月

原告だけに代理人が付く事件が短いのは,被告が争わずに欠席判決や和解で終わる事件が多いためと考えられる。
依頼者に見通しを説明するときは,相手方にも代理人が付いて争う事件であれば,全体の平均ではなく1年半前後(15.9月)を出発点にするのが実態に近い。

2 人証調べ・鑑定・合議

証人尋問又は本人尋問(人証調べ)を実施した事件は全体の11.4%で,その平均審理期間は23.6月であった(報告書56頁)。
人証の数ごとに見ると,1人で20.7月,2人で21.9月,3人で24.1月であり,尋問まで進む事件はおおむね2年前後かかる(資料2-2-1)。
なお,人証調べを実施した事件の91.1%では,人証調べが1回の期日で済んでいる(報告書57頁)。

鑑定を実施した事件(741件)は平均26.9月,専門委員が関与した事件(550件)は平均37.3月であった。
合議体で審理された事件(7010件)は平均27.0月で,単独事件の8.2月を大きく上回る。
合議体は複雑な事件に付されることが多いため,この差は合議体で審理したこと自体によるものではない。

3 訴額

訴額が大きくなるほど,審理期間は長くなる傾向がある(資料2-2-1)。
平均審理期間は,訴額500万円以下で6.9月,1000万円以下で12.1月,5000万円以下で16.0月,1億円以下で18.2月,5億円以下で23.3月であった。
ただし,10億円以下・50億円超の区分には,平均がかえって短い区分があり,件数の少ない区分の数値は安定しない。

第4 事件類型別の審理期間

報告書は,専門的知見を要する事件類型を個別に分析している。
主な類型の令和6年の数値は次のとおりである。

事件類型平均審理期間特徴
医療損害賠償(医事関係訴訟)24.9月2年超が42.9%,鑑定をした事件は54.8月,和解51.5%(報告書62頁~71頁)
建築関係(瑕疵の主張あり)27.2月2年超が47.0%,調停に付される割合41.4%(報告書72頁~82頁)
建築関係(瑕疵の主張なし)14.0月被告が瑕疵を主張しない建築請負代金事件(報告書73頁注1)
労働関係16.1月和解62.2%,人証調べ27.5%(報告書88頁~98頁)
知的財産権15.4月人証調べ10.5%,上訴率48.7%(報告書83頁~87頁)
行政事件14.8月判決79.2%,和解0.9%(報告書99頁~105頁)
交通損害賠償12.3月1万3746件,和解で終わる事件が1万0487件(資料2-2-1)
貸金7.6月5646件(資料2-2-1)

交通損害賠償と貸金の数値は,資料2-2-1の事件票上の区分による。
その他の類型は,報告書本文の分析対象の区分(例えば「労働関係訴訟」は労働金銭と労働の区分の合計)による。
事件類型によって和解の比重が大きく違うので,期間とともに,判決まで行くのか和解が中心かも説明に含める必要がある。

第5 手続段階と期日

1 第1回口頭弁論期日までの期間

人証調べを実施して対席判決で終局した事件について,訴え提起から第1回口頭弁論までの平均期間は9.3月で,前回(令和4年)の5.4月から長くなった(報告書55頁)。
他方,第1回口頭弁論から人証調べ開始までは,前回の14.0月から10.2月に短くなった。

報告書は,第1回口頭弁論期日を開かずに最初から争点整理手続に付し,ウェブ会議で協議を始める運用が広がったことが影響していると分析している(報告書55頁注16)。
したがって,訴えを起こしてから法廷での口頭弁論が開かれるまで数か月かかっても,それだけで手続が止まっているとは限らない。
依頼者には,この運用を事前に説明しておく必要がある。

2 期日の回数と間隔

令和6年の平均期日回数は3.6回(口頭弁論1.2回,争点整理2.5回),平均期日間隔は2.5月であった(報告書54頁)。
争点整理手続の実施率は41.2%である。
報告書は,平均期日回数に和解期日及び進行協議期日が含まれないため,統計上の期日回数は実際より少なく,期日間隔は実際より長めに出ると注記している(報告書54頁注11)。

第6 大阪地方裁判所管内の数値

資料2-6によれば,大阪地方裁判所管内の令和6年の既済事件は1万5539件で,平均審理期間は8.6月であり,全国平均(9.2月)より短い。
審理期間の分布は,6月以内が61.0%,2年超が約6.7%であった。

他方,大阪地方裁判所管内の平均期日間隔は3.1月であり,全国平均の2.5月より長い。
争点整理手続の実施率は40.0%で全国並みであるが,平均争点整理期日回数は1.7回と全国平均(2.5回)より少ない。
期日間隔は平均審理期間を期日回数で割って出す数値であるため,期日回数の少なさが間隔を長く見せている可能性がある。

資料2-9によれば,大阪地方裁判所管内の平均審理期間は,令和3年10.5月,令和4年10.6月,令和5年9.6月,令和6年8.6月と推移している。

第7 代理人の活動で審理期間が変わる場面

報告書106頁~116頁は,令和6年に2つの地方裁判所と対応する弁護士会で行った実情調査の結果を紹介している。
調査対象は,ウェブ会議による争点整理又はmintsを全国に先駆けて導入した庁であり,報告書自身が,調査結果は全国の平均的な実情とは必ずしも一致しない点に留意が必要であるとしている(報告書106頁)。
そのうち,代理人の側の準備で審理期間に影響し得る点は次のとおりである。

1 訴状と初期の書面

弁護士の側の工夫として,訴状に要件事実だけでなく,交渉段階で相手方とどこに認識の食い違いがあったかを記載し,交渉段階の書面を早期に提出する例が紹介されている(報告書107頁)。
被告代理人が選任された後の期日の入れ方については,実質的な反論書面の準備期間を踏まえて期日を入れる「実質答弁先行型」と,近い時期に期日を入れて口頭で争点を確認する「口頭協議先行型」を,事案に応じて使い分ける運用が紹介されている。

2 期日間の投稿と書面の提出期限

民事訴訟のウェブ会議では,裁判所が協議の結果や次回までの検討事項を投稿機能で共有する運用がある(報告書108頁)。
他方で,裁判所からの投稿を確認しない弁護士もいるという指摘があり,投稿を読んだらリアクションボタンを押して既読を通知するよう代理人に依頼している例がある(報告書109頁~110頁)。

書面の提出期限については,mints(民事裁判書類電子提出システム)を使う事件で,期限の数日前に自動的に督促のメールが送られ,期限を過ぎると毎日送られる仕組みが紹介されている(報告書109頁)。
弁護士の側からは,準備事項の内容にかかわらず漫然と長い準備期間を希望する代理人には,裁判所から合理的な期間で準備するよう指摘してほしいという意見も出ている。

3 合議体と付合議の上申

合議事件では,準備書面の提出期限から見て翌々週に期日を入れている例があり,裁判所は提出期限を守るよう求めている(報告書111頁)。
弁護士の側からは,付合議の上申をすると単独体の審理が不十分だと言っているように受け取られるとして,上申をためらうという意見があった。
検証検討会では,弁護士が積極的に付合議の上申をできるような方策を裁判所で検討すべきではないかという意見が出され(報告書114頁),報告書は,そのような方策について検討することも考えられるとしている(報告書116頁)。

第8 依頼者へ見通しを説明するときの注意

1 数値を選ぶ順序

本記事では,依頼者への説明に使う数値を,次の順序で選ぶことを基本形とする。
①相手方に代理人が付いて争う事件か(付けば15.9月が出発点)
②事件類型(医療・建築・労働等は第4の表)
③人証調べまで進む見込みか(進めば2年前後)
④管轄の地方裁判所の数値(大阪地方裁判所管内は第6)

いずれも既済事件の平均であり,個々の事件の終結時期を保証するものではない。
争点の数,証拠の量,鑑定の要否,和解の見込み及び当事者の対応によって,期間は大きく変わる。

2 控訴審を含めた期間

第一審で判決まで進み,控訴された場合は,さらに期間がかかる。
報告書によれば,令和6年の高等裁判所の民事控訴審の平均審理期間は6.4月であり,第一審の受理から控訴審の終局までの平均は29.0月であった(報告書195頁,199頁)。
控訴審の平均審理期間は控訴審が記録を受理した日から数えるため,控訴の提起から記録の送付までの期間は含まれない。

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第10 出典

1 法令

裁判の迅速化に関する法律(平成15年法律第107号)2条1項・8条1項(e-Gov法令検索)

2 統計・データ

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)目次
同報告書 第3章「地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情」(44頁~116頁)
同報告書 資料2-1-1~資料2-11(資料2-2-1,資料2-6,資料2-9を使用)
同報告書 第6章「上訴審における訴訟事件の概況」(195頁,199頁を使用)
* 本記事は特定の裁判例を根拠としていないため,判例秘書による判例本文の確認は行っていない。