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裁判文書の文書管理に関する規程及び通達(AIリライト)

裁判所の事件記録は,事件の受付,記録の編成,閲覧・謄写,保管,保存,廃棄及び特別保存という各段階について,最高裁判所の規程及び通達により管理されている。

また,令和8年5月21日に民事裁判手続の全面デジタル化が施行されたことに伴い,電子事件記録には紙の事件記録とは別の保存規程が適用される。

本記事では,裁判文書の管理に関する現行の規程及び通達を,実務上の利用場面に沿って整理する。

第1 裁判文書を管理する規程・通達の全体像

1 裁判文書と司法行政文書

「裁判文書」と「司法行政文書」は,管理の根拠が異なる。

本記事で扱う裁判文書は,裁判手続のために作成又は取得された事件記録,事件書類その他の文書である。

これに対し,裁判所の人事,会計,施設,統計等の司法行政事務に関する文書は,司法行政文書として別の体系で管理される。

両者の区別及び司法行政文書の管理については,裁判文書及び司法行政文書の管理及び司法行政文書の管理に関する規程及び通達で整理している。

2 最高裁判所規則・規程・通達の違い

裁判所の文書管理に関する法規範・内部規律には,おおむね次のような役割分担がある。

種類主な役割本記事に関係する例
最高裁判所規則憲法77条1項に基づいて最高裁判所が制定する規則のうち,公布を要するものをいう。事件記録等の特別保存に関する規則
最高裁判所規程憲法77条1項に基づいて最高裁判所が制定する規則のうち,公布を要しないものをいう。事件記録等保存規程電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程
最高裁判所通達上級庁等が下級庁等に対し,職務運営上の細目的事項,法令の解釈又は行政運営の方針等を指示する文書をいう。民事訴訟事件記録の編成について

最高裁判所の規程及び通達は,裁判所ウェブサイトの規程・通達に分野別に掲載されている。

また,裁判所法80条1号は,最高裁判所が下級裁判所及びその職員を監督することを定めており,規程・通達による事務処理の統一は,この司法行政上の監督とも関係する。

なお,同サイトのPDFは改正のたびに差し替えられることがあるため,実務で使用するときは,PDF本文の改正履歴も確認する必要がある。

3 紙事件・電子事件・特別保存の関係

事件記録の保存制度は,次の3層に分けると理解しやすい。

① 電子事件記録保存規程が適用されない事件の記録には,事件記録等保存規程が適用される。

② 電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の電子事件記録には,電子事件記録保存規程が適用される。

③ 保存期間を満了した記録であっても,歴史資料又は重要な研究資料となるものは,事件記録等の特別保存に関する規則により永久に保存されることがある。

民事裁判手続のデジタル化の全面施行日は令和8年5月21日である。

したがって,同日前から係属していた事件を含め,個別の記録にどの規程が適用されるかは,事件の種類,申立ての時期及び記録の媒体を確認して判断する必要がある。

第2 事件受付段階の規程・通達

1 事件の受付及び分配

事件の受付,事件番号の付与及び担当部への分配に関する基本的な事務処理は,事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについてに定められている。

事件の種類ごとの事件簿,受付簿,事件票その他の帳簿・帳票は,事件に関する記録及び帳簿諸票の備付け等についてに掲載された各通達で確認できる。

2 予納郵便切手及び保管金

予納郵便切手を用いる事件における取扱いについては,予納郵便切手の取扱いに関する規程及び同規程の運用についてが定めている。

事件に関して裁判所が保管する金銭及び有価証券については,裁判所の事件に関する保管金等の取扱いに関する規程が定めている。

これらは狭義の事件記録そのものではないが,事件の受付後に記録と対応付けて管理されるため,文書管理の全体像を把握する上で重要である。

第3 事件係属中の記録管理

1 事件記録に共通する取扱い

事件記録の閲覧・謄写その他の閲覧事務については,事件記録等の閲覧等に関する事務の取扱いについてが定めている。

裁判所内での記録の保管,担当部署間の授受及び他庁への送付については,事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについてが定めている。

証明書その他の用紙のうち,改ざん防止等のため特別な管理を要するものについては,認証等用特殊用紙に関する事務の取扱いについてが定めている。

訴訟記録に住所等を記載しない措置及び閲覧等を制限する措置については,民事訴訟手続における住所・氏名等の秘匿制度も参照されたい。

2 民事事件及び行政事件

民事訴訟事件の紙の記録をどの順序・区分でつづるかは,民事訴訟事件記録の編成についてが定めている。

行政訴訟事件及び民事非訟事件には,事件の性質に応じた個別の記録編成通達があり,現行版は裁判所ウェブサイトの裁判事務に関する通達で確認できる。

控訴事件では,原審記録の到着後に,控訴状,送達関係書類,控訴理由書,答弁書その他の書類の有無を点検する。

大阪高等裁判所民事部が作成した次の記録点検表は,控訴審における点検項目を具体的に示す実務資料である。

大阪高裁民事部作成の記録点検表

「初めて控訴審の事務を担当するあなたへ」大阪高裁Qmac民事小委員会資料には,控訴審での記録確認の考え方が説明されている。

3 刑事事件

刑事訴訟事件の記録については,刑事訴訟事件記録の編成等についてが,書類を5分類してつづる方法その他の編成事務を定めている。

押収物の管理及び事件終局後の記録送付・保存には別の規程及び通達がある。

事件終局後の取扱いについては,刑事事件記録等の事件終結後の送付及び保存に関する事務の取扱いを参照されたい。

4 家事事件,少年事件その他の事件

家事事件の記録編成については,家事事件記録の編成についてが定めている。

少年保護事件については,少年保護事件記録等の編成について及び少年調査記録規程がある。

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づく事件については,医療観察事件記録の編成についてがある。

法廷等の秩序維持に関する法律違反事件については,同事件記録の取扱い及び保存についてがある。

このほかの事件類型を含む現行通達は,裁判事務に関する通達から確認するのが確実である。

第4 事件終了後の保存,廃棄及び特別保存

1 紙の事件記録等の保存

事件記録等保存規程は,電子事件記録保存規程が適用される事件を除き,事件記録及び事件書類の保存を定める基本規程である。

同規程3条は,原則として第一審裁判所が事件記録等を保存するものとし,別表は事件の種類及び文書の性質に応じた保存期間を定めている。

例えば,民事通常訴訟事件では,事件記録の保存期間は5年,判決原本は50年,和解,請求の放棄又は請求の認諾を調書に記載した場合のその調書は30年である。

もっとも,事件類型及び文書の種類によって保存期間は異なるため,個別の事件では同規程の別表を確認する必要がある。

保存期間を満了した事件記録等は,特別保存の対象となる場合を除き廃棄されるが,廃棄には所定の決裁又は指示が必要である。

同規程の具体的な運用は,事件記録等保存規程の運用についてが定めている。

2 電子事件記録の保存

電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程は,令和7年12月17日付け最高裁判所規程第4号として制定された。

同規程は,対象となる電子事件記録の保存期間を原則10年とし,電子判決書は50年,和解,請求の放棄又は請求の認諾を記録した電子調書は30年としている。

紙の事件記録における原則5年と,電子事件記録における原則10年を混同しないことが重要である。

電子事件記録についても,保存期間の伸長,特別保存,廃棄,内閣総理大臣への移管及び国立公文書館への送付に関する定めが置かれている。

3 保存期間の伸長と特別保存

(1) 両制度の違い

保存期間の伸長と特別保存は,別の制度である。

保存期間の伸長は,事件記録等保存規程9条又は電子事件記録保存規程8条に基づき,特別の事由があるため,通常の保存期間を超えて一定期間保存する措置である。

これに対し,特別保存は,事件記録等の特別保存に関する規則に基づき,重要な記録を永久に保存する制度である。

(2) 特別保存の基準及び手続

事件記録等の特別保存に関する規則は,令和5年11月22日に制定され,令和6年1月30日に施行された。

特別保存に付するかどうかの具体的な基準及び手続は,事件記録等の特別保存に関する規則の運用についてに定められている。

同通達は,次のような事件記録を特別保存の対象候補としている。

① 重要な憲法判断が示された事件

② 法令の解釈・運用上特に参考となる判断が示された事件

③ 審理・調査の方法において特に参考となる事件

④ 世相を反映し,歴史的価値が高い事件

⑤ 全国的に社会の耳目を集めた事件又は地域において特殊な意義を有する特に重要な事件

⑥ 民事・家事上の紛争,少年非行等に関する調査研究上重要な事件

⑦ 少年事件の調査において特に参考となる事件

最高裁判所判例集又は最高裁判所裁判集に掲載された事件,主要日刊紙(地域面を含む。)のうち2紙以上に終局に関する記事が掲載された事件又は事件担当部等から申出があった事件は,要望の有無にかかわらず特別保存に付する認定の対象となる。

裁判所外部の者も,記録を保存する裁判所に対し,特別保存に付するよう要望することができる。

令和7年11月からは,オンラインによる特別保存の要望も受け付けられている。

制度の経緯,申出先及び手続の詳細は,裁判所ウェブサイトの事件記録等の特別保存について及び事件記録等の特別保存ガイドで確認できる。

4 内閣総理大臣への移管と国立公文書館への送付

事件記録等保存規程10条及び電子事件記録保存規程9条は,歴史公文書等として内閣総理大臣に移管することとされた記録を,最高裁判所の指示を受けて独立行政法人国立公文書館に送付することを定めている。

永久保存となる特別保存と,内閣総理大臣への移管及び国立公文書館への送付は,いずれも歴史資料を残す仕組みであるが,根拠及び保存主体が異なる。

特別保存制度の見直しに至った経緯は,裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書に詳しい。

第5 記録管理の点検及び裁判官等の所持資料

1 裁判所書記官事務等の査察

裁判所書記官事務等の査察は,書記官事務の適正,迅速かつ統一的な処理を確保し,事務過誤を防止するために行われる。

最高裁判所による査察については,最高裁判所による裁判所書記官事務等の査察についてが定めている。

各裁判所における査察については,裁判所書記官事務等の査察についてが定めている。

査察の概要及び資料は,裁判所書記官の事務に対する査察で整理している。

2 裁判官等が所持する写し等の廃棄

裁判官が職務上所持する訴訟記録の写し,メモその他の資料は,裁判所が正規の事件記録として保存する原本とは区別して管理される。

退官,転任その他の機会に所持資料を廃棄する際の取扱いについては,裁判官等の保有する文書の廃棄に関する資料を参照されたい。

第6 関連資料の探し方

1 裁判所ウェブサイトから探す場合

現行の規程・通達を探す場合は,まず裁判所ウェブサイトの規程・通達を開き,次の順で確認するのが効率的である。

① 最高裁判所の主な規程で基本規程を確認する。

② 裁判事務に関する通達で事件類型ごとの編成・運用通達を確認する。

③ 保存期間を調べるときは,事件記録等保存規程又は電子事件記録保存規程の別表まで確認する。

④ 特別保存を調べるときは,特別保存に関する規則・通達等も確認する。

PDFのURL又はファイル名だけでは改正時点が分からないことがあるため,PDF冒頭の制定日及び末尾の改正履歴を確認する必要がある。

2 本サイトの関連記事

裁判所の文書管理を横断的に調べる場合は,次の記事も参照されたい。

① 裁判文書及び司法行政文書の管理

② 司法行政文書の管理に関する規程及び通達

③ 司法行政文書の書き方

④ 事件記録等の特別保存ガイド

⑤ 裁判所書記官の事務に対する査察

第7 出典

1 法令

① e-Gov法令検索「日本国憲法」

② e-Gov法令検索「裁判所法」

2 最高裁判所の規則,規程及び通達

① 裁判所「規程・通達」

② 事件記録等保存規程

③ 事件記録等保存規程の運用について

④ 電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程

⑤ 事件記録等の特別保存に関する規則・通達等

⑥ 民事訴訟事件記録の編成について

⑦ 刑事訴訟事件記録の編成等について

⑧ 家事事件記録の編成について

⑨ 事件記録等の閲覧等に関する事務の取扱いについて

⑩ 事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについて

⑪ 最高裁判所による裁判所書記官事務等の査察について

3 裁判所の公表資料

① 事件記録等の特別保存について

② 改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要

③ 最高裁判所『裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書』(令和5年5月)PDF1頁~95頁

④ 最高裁判所事務総局秘書課『司法行政文書の書き方(9訂)』(令和6年12月)16頁~19頁(PDF16頁~19頁)

4 文献

① 最高裁判所事務総局秘書課監修『司法行政文書の書き方(新訂)』(司法協会,1995年)31頁,77頁~82頁

② 山本正名『コートマネージャーとしての裁判所書記官―協働の中の裁判実務―』(新日本法規出版,2019年)序章,第5章

③ 石塚伸一編著『刑事司法記録の保存と閲覧―記録公開の歴史的・学術的・社会的意義』(日本評論社,2023年)所収,瀬畑源「公文書管理法と司法文書の利用」39頁~48頁