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TreeeS利用規約を読む―免責,規約変更,著作権,アカウント削除及び個人情報(AI作成)

第1 TreeeS利用規約を確認する意味

TreeeS(ツリーズ)は,民事裁判手続で電子申立て,電子記録の閲覧等を行うために裁判所が導入するシステムである。
裁判所の案内によれば,令和9年1月4日から名古屋地区等で先行導入され,対象となる新規申立て等にはTreeeSを利用する予定である。

TreeeS利用規約は,利用を開始した時点で全条項に同意したものと扱う。
利用者にとって任意性の低い公的手続の基盤であるからこそ,同意前に,免責,規約変更,アカウントの停止・削除,個人情報及び著作権の範囲を確認する必要がある。

結論として,確認した利用規約には直ちに無効又は違法と断定できる条項があるとはいえない。
他方,規約の版・改定履歴が表示されていないこと,アカウント削除と最高裁判所規則の文言が一致しないこと,個人情報と事件記録の扱いが規約だけでは分かりにくいことなど,運用開始前に説明を補うことが望ましい点がある。

第2 規約の制定日・版番号・改定履歴が分からない

令和8年10月29日に確認したTreeeS利用規約は全9頁であり,末尾まで読んでも,制定日,施行日,改定日,版番号又は改定履歴の記載を確認できなかった。
PDFの配信情報では令和8年10月27日に更新されているが,何が変更されたかは本文から分からない。

規約12条は,利用者一般の利益に適合する場合又は契約目的,変更の必要性,相当性等に照らして合理的な場合に,裁判所が規約を変更できると定める。
原則として効力発生日の7日前までに変更内容等を公開し,変更後も利用を続けた場合は変更に同意したものとみなす。

変更条項を置くのであれば,利用者が同意した版と現在の版を後から照合できるよう,制定日,改定日,効力発生日及び改定内容を残すことが望ましい。
比較すると,mints利用規約は,末尾に令和4年2月15日の制定から令和8年4月10日の改定までの履歴と効力発生日を記載している。

第3 「本システム」の範囲と著作権・第三者提供

1 マニュアルとウェブサイトの文章・図表も含まれる

規約2条は,プラットフォームだけでなく,関連するマニュアル及びウェブサイト上の一切の文章・図表等も「本システム」に含める。
そのうえで,3条はダウンロードしたマニュアルの複製を自己又は所属組織内部での利用に限定し,5条は本システムの全部又は一部を第三者に配布,送信又は提供する行為を禁止する。

この文言だけを読むと,法律事務所が依頼者へ画面やマニュアルの一部を示して手続を説明する場合,研修資料で必要な範囲を引用する場合又はウェブページへリンクする場合との境界が分かりにくい。

もっとも,裁判所の「このサイトについて」は,写真・イラスト等を除き,著作権法上認められる範囲でサイト内容を利用でき,リンクは原則として自由であると説明している。
また,著作権法32条の引用その他の法定利用まで利用規約によって全面的に禁止されると解することは適切でない。
規約は,法令及び裁判所自身のサイト方針と整合するよう,禁止される「第三者への提供」の具体例を示すことが望ましい。

2 著作権が最高裁判所にあるという記載の範囲

規約4条1項は,「本システムの著作権は,最高裁判所が有します」と包括的に記載する。
しかし,同条2項は,第三者から利用許諾を受けたソフトウェアが含まれることを認めている。
また,著作権法13条は,法令,裁判所の判決等を著作権の目的から除外している。

最高裁判所が権利を有するプログラム・文章・図表があることと,本システムに含めた全ての情報について最高裁判所が単独で著作権を有することは同じではない。
対象ごとの権利帰属と,法令上認められる利用を妨げないことを明確にする方が分かりやすい。

第4 アカウント削除と識別符号の使用停止は同じか

規約9条は,裁判所が「規則第4条の規定に基づき本システムのアカウントを削除したとき」に利用契約が終了すると定める。

ここでいう規則は,民事事件等に関する手続において用いる識別符号の付与等に関する規則である。
ところが,同規則4条の表題と本文は,虚偽登録,不正取得,不正アクセス,長期間の不使用,資格喪失その他の特別な事情がある場合に「識別符号の使用を停止することができる」と定めており,アカウントの削除を定めていない。

使用停止と削除は,通常,復旧の可否,登録情報・操作履歴の保持及び利用契約の終了時点が異なり得る。
規約9条の「削除」が規則4条の使用停止を意味するのか,停止後に別の手続で削除するのか,単なる表現上の誤りなのかは,規約だけでは分からない。

利用者側では,資格の更新,担当者の退職,長期間利用しないアカウント及び不正利用が疑われる場合について,停止・復旧・削除の手続と連絡先を確認する必要がある。

第5 無保証・免責とサービス停止

1 規約7条の内容

規約7条は,正常,安全又は完全な動作,正確性,特定目的への適合性等を保証しないと定める。
また,裁判所に故意又は重過失がある場合を除き,利用者に生じた損害について責任を負わないとする。

ただし,利用契約が消費者契約に該当する場合で,裁判所の軽過失によって損害が生じたときは,現実に発生した通常かつ直接の損害に限って責任を負うとの例外がある。

消費者契約法2条は,事業として又は事業のために契約する個人を「消費者」から除外している。
業務として利用する弁護士又は法律事務所について,同法の消費者契約に関する規定が当然に適用されるとはいえない。
本人訴訟の当事者についても,公的手続システムの利用関係の法的性質を含めた検討が必要であり,規約7条が同法8条又は10条により当然に無効であると断定することはできない。

2 事前通知のない停止

規約11条は,保守,事故その他一定の場合に,裁判所が事前通知なくシステムの提供を停止又は中断できると定める。

TreeeSは,対象となる事件では電子申立て,記録閲覧及び送達に用いる公的手続の基盤となる。
そのため,免責条項だけでなく,計画停止の告知方法,障害発生時の連絡先,受付結果の確認方法,期限がある場合の代替提出及び復旧後の処理を,裁判所の案内と事務所内の手順の両方で準備する必要がある。

民事訴訟法132条の11第3項は,裁判所の電子計算機の故障その他本人の責めに帰することができない事由により電子申立てができない場合の例外を定める。
障害時にどの方法を採るかは,エラー画面,発生時刻,障害告知及び裁判所への連絡を記録した上で判断すべきである。

第6 規約変更と継続利用による同意

規約12条の変更要件は,民法548条の4が定める定型約款の変更要件に近い。
同条は,変更が相手方一般の利益に適合する場合又は契約目的,必要性,変更後の内容の相当性等に照らして合理的な場合に変更を認め,効力発生日と変更内容の周知を求めている。

TreeeS利用規約は,変更の重要性を問わず原則7日前までの公開とし,緊急時には7日前という期間を適用しない。
また,変更後に利用を続けた場合は変更へ同意したものとみなす。

しかし,提出期限や送達に関わるシステムでは,利用を止めることが実際上困難な場合がある。
継続利用を同意と扱うだけでなく,重要な変更はログイン時に明示し,旧版・新旧対照表・効力発生日を保存し,利用者が変更内容を後から確認できる仕組みが必要である。

第7 個人情報と事件記録を分けて考える

規約13条は,個人情報の取扱いについて,裁判所ウェブサイトに掲載された個人情報保護制度に従うとする。

裁判所の個人情報保護制度の説明によれば,裁判所には個人情報保護法が適用されず,司法行政文書に含まれる保有個人情報は裁判所の内規に基づく開示制度で扱われる。
一方,事件記録に含まれる個人情報は原則としてその開示制度の対象外であり,各手続法の閲覧・謄写制度によって扱われる。

TreeeSでは,氏名,メールアドレス,資格確認,認証情報及びアクセスログ等のアカウント情報と,訴状,準備書面,証拠等の事件記録が同じ利用者画面に現れ得る。
規約13条だけでは,それぞれの利用目的,保有主体,保持期間,削除,委託先,外部連携,漏えい等の通知及び利用終了時の取扱いを区別して確認できない。

裁判所サイトのプライバシーポリシーも「当サイト」を対象としており,その記載だけでTreeeSアプリ全体の取扱いが分かるわけではない。
これはTreeeSに保護措置がないという意味ではなく,利用規約と今回確認した公開資料だけでは必要な説明を確認できないという問題である。

第8 利用開始前に確認する事項

TreeeSの利用開始前には,少なくとも次の事項を確認する必要がある。

①現在表示されている利用規約の制定日,版及び効力発生日
②規約変更の告知場所と旧版・新旧対照表の保存場所
③識別符号の使用停止,アカウント削除及び復旧の違い
④障害時の告知,裁判所への連絡,代替提出及び受付結果の保存方法
⑤アカウント情報,操作ログ及び事件記録ごとの保持・削除・開示制度
⑥マニュアル,画面及びウェブサイト情報を依頼者説明や事務所研修に利用できる範囲

TreeeSの導入時期,対象裁判所,mintsとの使い分け及び法律事務所の準備は,TreeeS(ツリーズ)とは―mintsとの違い,導入時期,アカウント及び法律事務所の準備を参照されたい。
最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeSでは,システム開発の経緯,mintsからの移行及びRoootSとの関係を説明している。

第9 確認した主な一次資料

①TreeeS利用規約
②TreeeSについて
③民事事件等に関する手続において用いる識別符号の付与等に関する規則
④民法
⑤消費者契約法
⑥著作権法
⑦裁判所の個人情報保護制度