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国選弁護人だと保釈されにくいのか―保釈率27.4%と70.7%を因果関係と読めない理由(AI作成)

第1 結論―統計の差だけでは弁護人の効果を比較できない

令和6年の地方裁判所通常第一審では,国選弁護人が選任された区分の保釈率は27.4%,国選弁護人が選任されなかった区分の保釈率は70.7%である。

しかし,この差から「私選弁護人なら70.7%の割合で保釈される」「国選弁護人は私選弁護人より能力が低い」と結論付けることはできない。
表の「国選弁護人が選任されなかった人員」は「私選弁護人が選任された勾留被告人」と同じ集団ではなく,事件の内容,資力,勾留の有無,保釈請求の有無等の条件もそろっていないからである。

裁判所の刑事事件Q&Aも,国選弁護人と私選弁護人とで弁護人としての役割に違いはないと説明している。
統計上の関連と,制度上の役割又は個々の弁護活動の評価は分けて考える必要がある。

第2 令和6年の国選弁護人の有無別統計

令和8年9月の開示文書の表7によれば,令和6年の人員は次のとおりである。

区分終局人員勾留人員勾留率保釈人員保釈率
国選弁護人が選任された人員4万410人3万124人74.5%8254人27.4%
国選弁護人が選任されなかった人員7148人3823人53.5%2702人70.7%

表7の保釈率の分母は勾留人員である。
したがって,27.4%は8254人を3万124人で割った値であり,70.7%は2702人を3823人で割った値である。
保釈請求をした被告人又は保釈請求件数を分母にした許可率ではない。

第3 「国選なし」は「私選あり」と同じではない

表7の区分は,「国選弁護人が選任された人員」と「国選弁護人が選任されなかった人員」である。
後者を,注記等による裏付けなく「私選弁護人が選任された人員」と読み替えることはできない。

また,二つの集団は,国選か私選かだけが異なる比較実験ではない。
国選弁護人の選任には,手続段階,事件類型,法定刑,資力,弁護人の有無その他の制度上・事実上の条件が関係する。
終局人員のうち勾留された割合自体も,国選あり74.5%,国選なし53.5%と異なる。

このように入口の集団が異なる以上,その後の保釈率の差を弁護人の選任形態だけの効果と説明することはできない。

第4 因果関係を示さない四つの理由

1 事件構成が異なる

罪名,事件の重大性,共犯関係,認否,証拠関係等の構成が二つの集団で同じとは限らない。
重い事件又は身柄拘束の必要性が問題となりやすい事件が一方に多ければ,弁護活動とは別に保釈率へ影響する。

2 資力及び選任条件が異なる

国選弁護人制度は,資力や私選弁護人の選任状況等と関係する。
表7は,資力,保証金の調達可能性,家族・監督者による支援等を調整していない。

3 保釈請求の有無が分からない

表7の保釈率の分母は勾留人員であり,保釈請求をした人ではない。
各区分で,何人が保釈を請求したか,何回請求したか,どの時期に請求したかは表から分からない。

4 個別の弁護活動及び判断理由が分からない

請求書の内容,疎明資料,住居・監督体制,保釈条件,保証金額,裁判所の判断理由等は集計表にない。
表7は個々の弁護人の能力又は活動内容を評価した調査ではない。

以上から,表7が示すのは二つの区分の統計上の関連であり,国選弁護人の選任が保釈率を下げたという因果関係ではない。

第5 国選弁護人選任率は罪名によっても異なる

開示文書の表3によれば,令和6年の通常第一審終局人員4万7558人のうち,国選弁護人が選任された人員は4万410人であり,国選弁護人選任率は85.0%である。
主要罪名別には次のとおりである。

罪名国選弁護人選任率
傷害85.9%
業務上過失致死傷(過失運転致死傷を含む。)68.9%
窃盗・常習累犯窃盗92.8%
強盗・強盗致死傷91.2%
詐欺81.3%
恐喝80.4%
覚醒剤取締法違反91.3%
道路交通法違反87.0%
出入国管理及び難民認定法違反96.6%

罪名別の選任率が異なることからも,国選あり・なしの二群で事件構成が同じでない可能性を考慮する必要がある。
ただし,この表3だけで,事件構成の差が表7の保釈率差のどの程度を説明するかまでは分からない。

第6 国選弁護人と私選弁護人の役割

裁判所の刑事事件Q&Aは,国選弁護人と私選弁護人について,選任方法や費用負担の仕組みは異なるものの,弁護人としての役割に違いはない旨を説明している。

したがって,表7の数字を国選弁護人一般の能力評価に使うことは,統計の目的と範囲を超える。
個々の弁護活動を検討する必要がある場合は,面会・記録検討,身柄解放に向けた準備,保釈請求の時期と内容,疎明資料,判断後の不服申立て等を具体的に確認することになる。

国選弁護人の選任手続及び接見交通権は,弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権で,報酬・費用及び身柄釈放・保釈の成果加算は,国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限で説明している。

第7 個別の保釈請求で確認すべき事項

国選か私選かというラベルだけでなく,個別事件では次の事項を具体的に確認する。

①起訴事実,争点,認否及び証拠の構造
②共犯者,証人,被害者等への接触可能性
③釈放後の住居,監督者,就労・通院等の生活基盤
④公判への出頭を確保する事情
⑤接触禁止,通信制限,居住制限等の条件で危険を抑えられるか
⑥保釈保証金の調達・納付方法
⑦請求時期,公判準備の進行及び判断後の不服申立て

この一覧は表7に書かれたものではなく,法令,裁判例及び保釈実務を踏まえて本記事が整理した確認事項である。
保釈の法的要件と手続の全体像は,被告人の保釈を参照されたい。

第8 統計の限界と適切な使い方

表7から確実にいえるのは,令和6年に地裁通常第一審で終局した事件について,国選弁護人選任あり・なしの各区分に記載された人員と割合である。

他方,次の命題は表7だけでは裏付けられない。

①私選弁護人を選任すれば70.7%の割合で保釈される。
②国選弁護人を私選弁護人に替えると保釈率が上がる。
③国選弁護人は私選弁護人より能力が低い。
④個別事件で国選弁護人を選任したことが不許可の原因となった。

統計の適切な使い方は,見かけ上の大きな差に注意を促し,分母,区分及び交絡要因を確認することである。
個別の弁護人又は事件の評価には,その事件の記録と活動内容を別に確認する必要がある。

第9 一次資料及び関連記事

1 一次資料

①表7 通常第一審における国選弁護人の有無別の身柄処遇状況(令和8年9月の開示文書)
②表3 通常第一審における国選弁護人が選任された罪名別終局人員(令和8年9月の開示文書)
③裁判所・刑事事件に関するQ&A
④刑事訴訟法(e-Gov法令検索)

2 関連記事

①保釈率の読み方―勾留率・保釈許可率との違いと令和6年の統計
②被告人の保釈
③弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権
④国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限