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敵国条項の条文・全文と意味-国連憲章53条・77条・107条を読む(AI作成)

第1 敵国条項の3条文は異なる機能を持つ

国連憲章の敵国条項として挙げられるのは,53条,77条及び107条の敵国への言及である。
53条は地域的取極等による強制行動,77条は国際信託統治,107条は第二次世界大戦の結果としての行動を扱っており,3条文とも同じ意味の軍事行動の許可規定であるという説明は正確ではない。

本記事は令和8年10月4日を調査基準日とし,国連広報センター掲載の日本語訳から3条文の全文を引用した上で,敵国への言及の前後に置かれた条件を説明する。
引用文の用字・読点を保ち,条項の番号は自動番号表示に代えて本文に示している。
憲章111条が正文とするのは中国語,フランス語,ロシア語,英語及びスペイン語であり,日本語訳自体は正文ではないため,以下の解説では国連法務局掲載の英語本文も照合している。

第2 53条の全文と意味-地域的取極等の強制行動

1 第8章「地域的取極」に置かれた条文

次の2項は,53条の日本語訳の全文である。
英語正文の掲載箇所は,国連法務局「Article 53」で確認できる。

「1. 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。」

「2. 本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。」

2 1項の原則と例外を読む

(1) 安全保障理事会の許可を要する原則

1項の第1文は,安保理がその権威の下で地域的取極又は地域的機関を利用することを定める。
第2文は,地域的取極に基づく又は地域的機関による強制行動に,安保理の許可を求めている。
条文が直接扱う主体・経路は地域的取極等であり,あらゆる国の単独行動を一律に許可する規定ではない。

(2) 敵国に対する措置の範囲と時間的な条件

第3文の例外は,①107条に従って規定される措置,又は②敵国の侵略政策の再現に備える地域的取極において規定される措置を挙げている。
また,関係政府の要請に基づき国連が新たな侵略を防止する責任を負うときまで,という限定を置く。
敵国という語だけを残してこれらの条件を省くと,条文が定めた例外の範囲を広げてしまう。

3 2項の定義と対象国

2項は,第二次世界大戦中に憲章のいずれかの署名国の敵国であった国という歴史的な定義である。
日本だけを名指ししておらず,現在の政治的な敵対国を指定する仕組みでもない。

第3 77条の全文と意味-信託統治の対象地域

1 第12章「国際信託統治制度」に置かれた条文

以下は77条の日本語訳の全文である。
1項の地域の区分は,原資料の小文字アルファベットによる番号表示を(a),(b),(c)で示している。
英語正文の掲載箇所は,国連法務局「Article 77」である。

「1. 信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。」
「(a) 現に委任統治の下にある地域」
「(b) 第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域」
「(c) 施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」

「2. 前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。」

2 (b)だけでは適用の条件が分からない

(1) 1項の柱書と地域の3類型

1項は3種類の地域を挙げるが,柱書には信託統治協定によって制度の下に置かれることが書かれている。
敵国から分離される地域はそのうちの(b)であり,その記載だけで国連による統治が自動的に始まるという構造ではない。

(2) 2項が協定に委ねる対象と条件

2項は,実際にいずれの地域をいかなる条件で信託統治の下に置くかを,今後の協定で定めるとしている。
77条は地域と信託統治制度の関係を扱う条文であり,敵国に対して武力を行使する権限を定める条文として読むことはできない。

第4 107条の全文と意味-第二次世界大戦の結果としての行動

1 第17章「安全保障の過渡的規定」に置かれた条文

次の1文が107条の日本語訳の全文である。
英語正文の掲載箇所は,国連法務局「Article 107」である。

「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」

2 無効にし,又は排除しない行動の条件

(1) 責任を有する政府による行動

107条は,敵国に関するすべての行動を保存するとは書いていない。
その行動について責任を有する政府が取った又は許可したものであるという主体に関する限定が置かれている。

(2) 第二次世界大戦との結び付き

行動は,第二次世界大戦の結果として取られ,又は許可されたものとされている。
敵国という歴史的な属性だけで,現在の新たな攻撃を恒久的かつ無条件に許す条文と理解することは,この結び付きを落とすものである。

第5 条文の残存と現在の適用を分ける

条文置かれた章省略できない条件・内容
53条地域的取極安保理の許可原則,限定された敵国措置の例外及び時間的条件
77条国際信託統治制度地域の類型,信託統治協定及び今後の協定で定める条件
107条安全保障の過渡的規定責任を有する政府と,第二次世界大戦の結果としての行動

令和8年10月4日に確認した国連広報センターの掲載本文には,3条文の敵国への言及が残っている。
ただし,残存する文言を読むことと,現在の具体的な行動に適用できるかを判断することは別である。
平成7年及び平成17年の決議,憲章改正の手続並びに日中の公式見解は,敵国条項の死文化・未削除と日中の公式見解で説明している。

第6 出典・参考資料

①国連広報センター「国連憲章テキスト」53条,77条,107条及び111条(令和8年10月4日の掲載本文を確認)。本文中の3条文の引用は同センター掲載の日本語訳であり,番号表示の変更を除いて引用箇所の用字・句読点を保持している。
②国連法務局「国連憲章」53条,77条,107条及び111条(英語正文の掲載)。