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裁判の迅速化に係る検証に関する報告書と検討会―第1回から第11回までの報告書と第12クールの論点(AI作成)

第1 検証の仕組み

1 裁判の迅速化に関する法律

裁判の迅速化に関する法律(平成15年法律第107号)は,平成15年7月16日に公布され,同日に施行された(附則1項)。
同法2条1項は,第一審の訴訟手続については「二年以内のできるだけ短い期間内に」終局させることを目標として,充実した手続の実施と,これを支える制度及び体制の整備を図ることを定めている。

同法8条1項は,最高裁判所が,裁判所における手続に要した期間の状況,その長期化の原因その他必要な事項の調査及び分析を通じて,裁判の迅速化に係る総合的,客観的かつ多角的な検証を行い,その結果を「二年ごとに」国民に明らかにするため公表すると定めている。
最初の公表は施行の日から2年以内に行うものとされ(附則2項),政府は,施行後10年を経過した場合に施行の状況について検討を加えるものとされていた(附則3項)。

2 検証に関する規則と検討会

最高裁判所は,裁判の迅速化に係る検証に関する規則(平成15年最高裁判所規則第26号)を定めている。
同規則1条は,検証を行うに当たり,最高裁判所事務総長が検討会を開催して,裁判官,検察官,弁護士及び学識経験のある者の意見を聴くものとし,3条は,検証結果をインターネットの利用その他の適切な方法で公表するものとしている。

この規則に基づく「裁判の迅速化に係る検証に関する検討会」は,平成15年12月22日に第1回が開かれ,令和7年10月2日の第74回まで開かれている。
裁判所ウェブサイトの説明によれば,委員は11人で,その内訳は学識経験者6人,弁護士2人,検察官1人,裁判官2人であり,合計15人の範囲で増やすことも考えているとされている。

第2 第1回から第11回までの報告書

1 各回の概要

報告書は,平成17年7月から2年ごとに,いずれも7月に公表されてきた(第11回報告書「はじめに」1頁)。
各回の公表時期,統計の対象,民事第一審訴訟全体の平均審理期間及び主な特色は次のとおりである。
「主な特色」は,各回の報告書の「はじめに」又は概要を本記事で要約したものである。

回(公表)統計の対象民事第一審の平均審理期間主な特色
第1回(平成17年7月)民事は平成16年4月~12月,刑事は平成16年8.2月統計により民事・刑事の第一審の審理期間の全体像を初めて示し,長期化要因の仮説を提示
第2回(平成19年7月)平成18年7.8月控訴審の分析を加え,裁判官からの聴取を基に事件類型ごとに長期化要因を考察
第3回(平成21年7月)平成20年6.5月弁護士からの聴取も行い長期化要因を実証的に分析。過払金等を除いた統計の併用と遺産分割事件の検証を開始
第4回(平成23年7月)平成22年6.8月長期化要因を解消するための施策を示し,裁判員裁判と上告審も検証
第5回(平成25年7月)平成24年7.8月紛争の動向に影響する社会的要因と外国の実情を検証
第6回(平成27年7月)平成26年8.5月統計分析を中心とするフォローアップ型の検証へ移行
第7回(平成29年7月)平成28年8.6月争点整理での認識共有,合議体の活用,家事調停の運営
第8回(令和元年7月)平成30年9.0月刑事事件で初めて実情調査を実施(公判前整理手続の長期化要因)
第9回(令和3年7月)令和2年9.9月新型コロナウイルス感染症の影響と裁判所の対応
第10回(令和5年7月)令和4年10.5月10回目の節目として迅速化検証の現在地を振り返る
第11回(令和7年7月)令和6年9.2月裁判手続のデジタル化の現状と今後を章として検証

平均審理期間は各回の報告書に掲載された値であり,第1回の8.2月は平成16年4月から12月までの9か月分の値である。
第3回から第5回までの値は,過払金返還請求訴訟の急増により短く出ており,過払金等を除いた値は,平成20年8.1月,平成22年8.3月,平成24年8.9月とされている。
第11回報告書は,第9回報告書から過払金等を除く処理をやめ,全体の統計だけを分析している(第11回報告書45頁注2)。

2 統計数値の訂正

裁判所ウェブサイトの「裁判の迅速化検証」のページには,第2回から第9回までの報告書について,統計数値を訂正するお知らせが掲載されている。
過去の報告書の数値を引用するときは,訂正のお知らせの対象になっていないかを確かめる必要がある。

第3 検証の方法の変化

1 第1回から第5回まで

第1回から第5回までは,手続全体の審理期間の検証を一巡させる期間であった。
第11回報告書の「はじめに」は,この間に,長期化要因の分析(第3回),長期化要因を解消するための施策の提示(第4回),社会的要因の検証(第5回)が行われたと整理している(第11回報告書「はじめに」1頁~2頁)。

2 第6回以降のフォローアップ型の検証

施行後10年の節目には,附則3項に基づく政府の検討会が開かれ,法律の基本的な枠組みと最高裁判所による検証・公表を維持すべきであるとされた(第11回報告書「はじめに」1頁~2頁)。
最高裁判所は,これを受けて,第6回以降,第5回までの検証結果を前提に,統計データの分析を中心として従来の検証結果をフォローアップする形で検証を続けている。

第8回からは刑事事件でも実情調査が行われ,第11回では,民事・刑事・家事のそれぞれについて2か所ずつの実情調査が行われた。
第12クールの方針も,第6クール以降に引き続き統計データの分析を中心とする形で進めるとされている(第74回検討会開催結果概要1頁)。

第4 第11回報告書の要点

第11回報告書の主な内容は,次の記事で分野ごとに整理している。

分野主な数値(令和6年)記事
民事第一審平均9.2月,双方に代理人がいる事件15.9月,人証調べをした事件23.6月民事裁判はどのくらいかかるか
遺産分割平均12.1月,調停に代わる審判31.3%遺産分割調停・審判はどのくらいかかるか
家事調停婚姻関係事件7.0月,夫婦関係調整調停の期日間隔1.9月家事調停はどのくらいかかるか
人事訴訟平均14.8月,財産分与の申立てがある離婚訴訟19.2月離婚訴訟の標準審理モデル
刑事第一審裁判員裁判対象事件14.0月,公判前整理手続の期間11.8月公判前整理手続はなぜ長引くのか
上訴審民事控訴審6.4月,刑事控訴審4.0月東京高裁の民事控訴

第11回報告書は,民事訴訟手続のデジタル化について,いわゆるフェーズ3の全面施行を令和8年5月までと記載しているが,これは公表時点の見込みであり,改正民事訴訟法は令和8年5月21日に全面施行された。
また,報告書が引く条文は公表時点のものであり,例えば183頁が離婚原因として挙げる民法770条1項5号は,令和6年法律第33号の施行(令和8年4月1日)により同項4号となっている。

第5 第12クールの検証の方針

1 第74回検討会で示された方針

令和7年10月2日の第74回検討会では,第12クールの検証の方針と進め方が説明された(第74回検討会開催結果概要1頁~4頁)。

(1) 民事第一審

フェーズ3の開始を踏まえた審理運営の現状と課題として,フェーズ3に向けた準備の状況とフェーズ3開始後の審理運営の実情を,同じ庁を連続して調べる定点観測の形で調査する方針である。
合議体による審理を充実させる方策の進捗状況や,弁護士からの上申の取扱いに関する方策の検討状況も調査対象とされた。
委員からは,裁判官と裁判所書記官の役割分担や,序盤の口頭協議・ノンコミットメントルールの位置付けを調査の中心から外さないよう求める意見が出された。

(2) 刑事通常第一審

裁判員裁判における公判前整理手続を中心とした長期化要因の分析を引き続き検証テーマとし,裁判員裁判非対象事件の否認事件の公判準備についても聴取する方針である。
委員からは,精神鑑定を引き受ける医師の不足,客観的証拠の増加への対応,再審請求審の審理期間に関する統計の掲載を求める意見が出され,事務総局の担当課長は,再審請求事件の統計の掲載について前向きに検討するとしている。

(3) 家事事件

改正家族法の施行後における調停運営改善の取組の効果と新たな課題,人事訴訟の合理的な審理運営の方策を検証する方針である。
委員からは,子への配慮,特定の調停委員への事件の集中,本庁と支部の期日間隔の差,家庭裁判所調査官や裁判所書記官との職種間の連携,評議の質についても調査するよう求める意見が出された。

2 日程と委員

第74回検討会では,令和8年2月から6月にかけて前半の実情調査を行い,同年7月の検討会での意見交換を踏まえて,9月から11月に後半の実情調査を行う方針が説明された(第74回検討会開催結果概要15頁)。
令和8年9月19日に確認した時点では,裁判所ウェブサイトの開催状況一覧に第75回の開催結果概要は掲載されていない。

検討会の委員名簿(令和8年9月9日現在)には11人の委員が掲載されており,その内訳は,学識経験者6人,弁護士2人,検察官1人,裁判官2人である。
第74回に出席した委員のうち3人は,この名簿には掲載されておらず,交代した時期は公表資料からは確認できなかった。
第11回報告書の委員名簿は令和7年7月現在のものであるため,委員の構成を引用するときは名簿の基準日を示す必要がある。

第6 報告書を読むときの注意

報告書の本文が「前回」と書くときは,前年ではなく2年前の報告書の数値を指す。
平均審理期間は受理から終局までの期間の平均であり,控訴審は控訴審が記録を受理した日から数えるなど,手続ごとに起算点が異なる。

平均期日間隔は平均審理期間を平均期日回数で割った値であり,和解期日や進行協議期日が期日回数に含まれないため,実際より長めに出ることがあると報告書自身が注記している(第11回報告書54頁注11)。
実情調査の対象庁は公表されておらず,報告書も,調査結果が全国の平均的な実情とは必ずしも一致しない点に留意が必要であるとしている(第11回報告書106頁)。

第7 関連記事

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第8 出典

1 法令・規則

裁判の迅速化に関する法律(平成15年法律第107号)1条・2条1項・8条1項・附則(e-Gov法令検索)
裁判の迅速化に係る検証に関する規則(平成15年最高裁判所規則第26号)

2 裁判所の資料

裁判所「裁判の迅速化検証」(第1回から第11回までの報告書の一覧)
裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する検討会」(開催状況一覧)
同検討会の委員名簿(令和8年9月9日現在)
最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)「はじめに」
裁判の迅速化に係る検証に関する検討会(第74回)開催結果概要(令和7年10月2日)
* 各回の民事第一審の平均審理期間は,各回の報告書の該当箇所(第1回19頁,第2回序論,第3回概況・資料編4頁,第4回概況編5頁,第5回事件の概況7頁,第6回以降は民事の章の図1)による。本記事は特定の裁判例を根拠としていないため,判例秘書による判例本文の確認は行っていない。