裁判所HPの「各種委員会」は,司法行政に関する事項等を調査審議する「主な委員会」を紹介するページであり,裁判所に置かれる全ての委員会を網羅した現行組織表ではない。同ページには,最高裁判所の委員会等として25項目が掲載されているが,現に制度上存在する恒常的組織のほか,既に調査又は検討を終えた組織も含まれている。
本記事では,令和8年8月8日現在の規則・規程,裁判所データブック2026の組織図及び各委員会の公表資料に基づき,現行の主な委員会等と,活動終了・廃止・公表資料上の現状不明の組織とを区別して整理する。
なお,民事調停委員会,家事調停委員会及び労働審判委員会のように個別事件の手続を担当する合議体は,本記事の対象外である。
第1 委員会等を調べる際の基本的な区別
1 公式の「各種委員会」ページと組織図は役割が異なる
裁判所HPの「各種委員会」ページは,各組織の設立趣旨,活動内容及び会議資料を探す入口として有用である。もっとも,同ページは「主な委員会」の紹介であり,裁判所職員退職手当審査会,契約監視委員会,入札監視委員会及び総合評価審査委員会は掲載していない。
これに対し,裁判所データブック2026の司法行政部門の組織図12頁(PDF12頁)は,最高裁判所の恒常的な委員会・審査会等を22組織掲載するほか,各高等裁判所の判例委員会も掲載している。
したがって,現行組織を確認するには,紹介ページだけでなく,最新の組織図,最高裁判所規則集,最高裁判所の主な規程・通達等及び個別の会議ページを相互に照合する必要がある。
2 「設置」と「近時の活動」は同じではない
根拠となる規則又は規程が現行であり,組織図に掲載されていることは,制度上の存続を示す。しかし,それだけで毎年会議が開かれていることまで示すものではない。反対に,近時の会議資料が公表されていないことだけで,組織が廃止又は休止されたと断定することもできない。
本記事では,①現行の正式組織,②現に活動を確認できる懇談会等,③活動を終えた組織,④根拠規範が廃止された組織,⑤公表資料上の現状を確認できない組織を分けている。
第2 最高裁判所の現行の正式組織
1 裁判所データブック2026に掲載された22組織
裁判所データブック2026の組織図に掲載されている最高裁判所の委員会・審査会等は,次のとおりである。
| 根拠の類型 | 委員会等 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 最高裁判所規則 | 民事規則制定諮問委員会 | 民事手続等に関する最高裁判所規則の制定又は改廃について調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 刑事規則制定諮問委員会 | 刑事手続等に関する最高裁判所規則の制定又は改廃について調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 家庭規則制定諮問委員会 | 家事事件・少年事件等に関する最高裁判所規則の制定又は改廃について調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 一般規則制定諮問委員会 | 特定分野の規則制定諮問委員会に属しない一般的事項を調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 最高裁判所図書館委員会 | 最高裁判所図書館に関する事項を扱う。 |
| 最高裁判所規則 | 司法修習生考試委員会 | 司法修習生の考試に関する事務を行う。 |
| 最高裁判所規則 | 司法修習委員会 | 司法修習の基本方針及び重要事項を調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 簡易裁判所判事選考委員会 | 簡易裁判所判事の候補者を選考する。地方裁判所の推薦委員会とは別の組織である。 |
| 最高裁判所規則 | 医事関係訴訟委員会 | 医事関係訴訟における鑑定人候補者の推薦等の態勢を整備する。 |
| 最高裁判所規則 | 建築関係訴訟委員会 | 建築関係訴訟における鑑定人候補者の推薦等の態勢を整備する。 |
| 最高裁判所規則 | 下級裁判所裁判官指名諮問委員会 | 下級裁判所裁判官の指名の適否について最高裁判所の諮問に答申する。8つの地域委員会が置かれる。 |
| 法律・最高裁判所規則 | 裁判所職員倫理審査会 | 裁判所職員の職務に係る倫理の保持に関する事項を扱う。 |
| 法律・最高裁判所規則 | 裁判所職員再就職等監視委員会 | 裁判所職員の再就職等に関する規制の運用を監視する。 |
| 法律・最高裁判所規則 | 裁判所職員退職手当審査会 | 退職手当の支給制限等に関する審査を行う。 |
| 最高裁判所規則 | 最高裁判所行政不服審査委員会 | 最高裁判所が裁決をする行政不服審査に関する諮問を調査審議する。 |
| 最高裁判所規則 | 記録の保存の在り方に関する委員会 | 事件記録等の特別保存の運用について意見を述べる。 |
| 最高裁判所規程 | 判例委員会 | 当該裁判所の裁判を判例集に登載するか否かを審議する。 |
| 最高裁判所規程 | 裁判所書記官等試験委員会 | 裁判所書記官等の試験に関する事務を行う。 |
| 最高裁判所規程 | 家庭裁判所調査官試験委員会 | 家庭裁判所調査官の試験に関する事務を行う。 |
| 設置要領 | 契約監視委員会 | 裁判所の調達契約を点検し,必要な意見を述べる。 |
| 法律・最高裁判所規程 | 入札監視委員会 | 公共工事の入札・契約手続を監視する。 |
| 法律・最高裁判所規程 | 総合評価審査委員会 | 公共工事等の総合評価方式に関する技術的事項を審査する。 |
規則制定諮問委員会については,分野別の会議ページで開催状況を確認できる。一般規則制定諮問委員会の公開会議資料は平成15年分までであるが,このことだけで同委員会が廃止されたとはいえない。
2 判例委員会と訴訟支援型委員会の実務
判例委員会規程1条・2条は,最高裁判所及び各高等裁判所に判例委員会を置き,当該裁判所の裁判を判例集に登載するか否かを審議すると定めている。泉徳治ほか『一歩前へ出る司法』69頁は,平成29年の刊行当時における最高裁判所の運用として,各小法廷から2人ずつの裁判官が参加し,月1回,登載の当否を検討していたことを紹介しているが,現在の委員構成又は開催頻度を示すものではない。
また,医事関係訴訟委員会及び建築関係訴訟委員会は,抽象的な意見交換の場にとどまらず,鑑定人候補者の確保を支える役割を持つ。岡口基一『民事訴訟マニュアル 第3版 上巻』408頁~409頁は,裁判所だけでは候補者を確保できない場合に,医事関係訴訟委員会が関係学会を選定して推薦を求める仕組み及び建築関係訴訟委員会が建築関係団体を通じて推薦を得る仕組みを説明している。
3 組織図外で現に活動を確認できる主な組織
個別課題のために設置された懇談会・検討会等は,恒常的な組織図に載らないことがある。令和8年8月8日現在,近時の活動を公表資料で確認できる主な組織は,次のとおりである。
| 委員会等 | 公表資料上の状況 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会 | 第38回会合が令和7年9月18日に開催された。 | 裁判員制度の運用状況について意見交換を行う。 |
| 裁判の迅速化に係る検証に関する検討会 | 第74回会合が令和7年10月2日に開催された。 | 裁判の迅速化に関する検証の方法及び結果を検討する。 |
| 情報公開・個人情報保護審査委員会 | 令和8年にも答申が公表されている。 | 司法行政文書の開示等に関する苦情申出について調査審議し,答申する。 |
第3 高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所の委員会
1 高等裁判所
各高等裁判所には,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の地域委員会と,判例委員会が置かれる。地域委員会は,下級裁判所裁判官の指名候補者に関する情報収集等を担当し,中央の下級裁判所裁判官指名諮問委員会に結果を報告するのに対し,判例委員会は,当該高等裁判所の裁判を判例集に登載するか否かを審議する別の組織である。
東京高等裁判所の組織紹介も,裁判官会議の下に事務局及び判例委員会が置かれると説明している。
2 地方裁判所
各地方裁判所には,簡易裁判所判事推薦委員会と地方裁判所委員会が置かれる。簡易裁判所判事選考規則上,地方裁判所の推薦委員会が候補者を推薦し,最高裁判所の選考委員会が選考するという二段階の構造になっている。
地方裁判所委員会規則は,地方裁判所の運営に広く国民の意見を反映させるため,各地方裁判所に地方裁判所委員会を置いている。
3 家庭裁判所
家庭裁判所委員会規則は,家庭裁判所の運営に広く国民の意見を反映させるため,各家庭裁判所に家庭裁判所委員会を置いている。
地方裁判所委員会及び家庭裁判所委員会は,各地の裁判所がテーマ,議事概要及び委員名簿等を公表している。
第4 現行組織として扱うべきでない委員会等
1 活動を終えたことを確認できる組織
裁判官の人事評価の在り方に関する研究会は,平成14年7月16日の第20回会合及び研究会報告書までが公表されている。これは,下級裁判所裁判官の人事評価制度を検討した歴史的な研究会であり,現行の恒常的委員会ではない。
最高裁判所長官公邸の整備に関する有識者委員会は,平成21年6月26日の第4回会合を最終会合として結論を取りまとめた個別課題型の委員会である。また,ハンセン病を理由とする開廷場所指定の調査に関する有識者委員会は,平成28年4月25日の第7回会合及び調査報告書により調査を終えている。
2 平成29年に廃止された3委員会
裁判所書記官制度調査委員会,裁判所経費審査委員会及び最高裁判所統計委員会は,平成29年最高裁判所規則第2号「裁判所経費審査委員会規則等を廃止する規則」により,平成29年7月19日に根拠規則が廃止された。日本法令索引でも,裁判所書記官制度調査委員会規則及び最高裁判所統計委員会規則は「効力なし」とされ,同日の廃止が記録されている。
したがって,この3委員会を現在設置されている委員会として列挙するのは正確でない。なお,確認できた公開資料からは,3委員会を廃止した具体的理由までは判明しない。
3 公表資料上の現状を確認できない組織
明日の裁判所を考える懇談会は,現在も裁判所HPの「各種委員会」ページに掲載されているが,公開された会合は平成19年5月7日の第17回までである。その後の開催又は正式な終了を確認できないため,現に活動中とも,廃止済みとも断定できない。
裁判員制度広報企画評価等検討会は,設置要領及び平成20年12月4日の第5回会合までは確認できるものの,現在の「各種委員会」ページ及び裁判所データブック2026の組織図には掲載されていない。同検討会についても,公開資料上,正式な廃止又は終了を確認できないため,現在設置されている委員会として扱うべきではない。
第5 委員会等の現行性を確認する手順
①裁判所HPの「各種委員会」ページで名称,設立趣旨及び個別ページを確認する。
②最新の裁判所データブックの組織図で,恒常的な組織として掲載されているかを確認する。
③規則集又は規程・通達集で根拠規範が現行かを確認し,廃止規則の有無も調べる。
④個別ページの議事概要,報告書,答申及び予算資料で,近時の活動又は目的の終了を確認する。
この順序で調べると,「公式紹介ページに名称が残っていること」「制度上存在すること」「近時に活動していること」「目的を終えたこと」を混同せずに済む。
第6 関連記事
地方裁判所委員会及び家庭裁判所委員会では,両委員会の設置目的,委員構成及び各地の開催状況を整理している。
第7 出典・参考資料
1 裁判所・法令資料
②裁判所データブック2026「第1部 組織関係」12頁(PDF12頁)
⑤判例委員会規程1頁~2頁
⑧裁判所HP「契約監視委員会」,「入札監視委員会」及び「総合評価審査委員会」
2 書籍
①泉徳治・渡辺康行・山元一・新村とわ『一歩前へ出る司法 泉徳治元最高裁判事に聞く』(日本評論社,平成29年)69頁,317頁~318頁
②岡口基一『民事訴訟マニュアル 第3版 上巻』(ぎょうせい,令和3年)408頁~409頁