目次
民事訴訟では,無断録音であるという一事だけで,録音及び反訳書が常に証拠から排除されるわけではない。
他方,録音の目的・態様,侵害される秘密又は人格的利益,録音者が会話の当事者か,録音範囲が包括的・探索的か,証拠としての重要性等により,訴訟上の信義則に反するとして排除されることがある。
本記事では,無断録音の採否を判断する際の視点と,一つの判決の中で録音の対象と態様によって結論が分かれた例を説明する。
第1 「常に有効」でも「常に無効」でもない
無断録音の証拠能力は,録音であることだけで決まらない。
考慮される主な要素は,次のとおりである。
①録音の目的
②録音の態様(会話への参加の有無,隠し方,継続性)
③侵害される秘密又は人格的利益の要保護性
④録音範囲が特定の会話に限られるか,包括的・探索的か
⑤当該録音の証拠としての重要性
これらを総合して,訴訟上の信義則に反するかどうかが判断される。
第2 同じ判決の中で結論が分かれた例
東京高裁平成28年5月19日判決(平成28年(ネ)第399号,判例秘書L07120857,裁判所ウェブサイト未掲載)は,二つの録音について異なる判断をした。
1 排除された録音
大学の非公開のハラスメント防止委員会を第三者が無断録音した録音体については,委員が守秘義務を負う審議の秘密の要保護性が高く,録音体の証拠価値が乏しいこと等を踏まえ,提出者自身が録音に関与していない場合も含め,証拠として提出することは訴訟上の信義則に反するとして排除した。
2 排除されなかった録音
これに対し,提出者自身が参加した面談の無断録音については,面談内容の秘密性が高くなく,保護される秘密が主として提出者自身に関わること等から,証拠能力を否定しなかった。
3 読み取れること
一つの判決内でも録音の対象と態様を区別している。
したがって,「無断録音は常に有効」又は「無断録音は常に無効」と一般化することはできない。
会話に自ら参加した録音か,第三者が非公開の場を録音したものかは,判断を分ける重要な違いである。
第3 mintsが受け付けたことは採否の判断ではない
mintsがファイルを受け付けたことは,その証拠能力又は証明力が認められたことを意味しない。
提出前に,録音の取得経緯,対象者,場所,期間及び目的を確認する必要がある。
包括的・探索的な録音や,非公開の会議体を対象とする録音は,提出の可否を慎重に検討する。
第4 提出を検討するときの確認事項
①録音者は会話に参加していたか。
②録音の場は公開のものか,守秘義務を伴う非公開のものか。
③録音の範囲は特定の会話に限られるか,長期間にわたる包括的なものか。
④録音により侵害される秘密又は人格的利益は何か。
⑤当該録音以外に立証手段はあるか。
⑥元データを保全し,変換・切出しの経過を説明できるか。
元データの保全と変換記録の残し方は反訳書の作り方で,音声・動画のファイル形式と提出手順は音声・動画をmintsで提出する方法で説明している。
第5 関連記事
①音声・動画をmintsで提出する方法
②反訳書の作り方
③AIで作成・加工された証拠と民事訴訟の対応
④民事裁判における証拠の目的外使用禁止
⑤mintsの証拠説明書の作り方・提出方法
出典・参考資料
①東京高等裁判所平成28年5月19日判決(平成28年(ネ)第399号,判例秘書L07120857,裁判所ウェブサイト未掲載)
②民事訴訟規則149条・149条の4
③mints「mints操作マニュアル」