その他裁判所関係

下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関

目次
1 総論
2 東京高裁及び大阪高裁における司法行政の機関
3 東京地裁における司法行政の機関
4 大阪地裁における司法行政の機関
5 関連記事その他

1 総論
    司法行政事務は,裁判官会議の議により,その一部を当該裁判官会議を組織する1人又は2人以上の裁判官に委任することができます (下級裁判所事務処理規則20条)。
    そのため,下級裁判所の場合,1年に2回ぐらいしか開催されない裁判官会議は,一定の権限を,2人以上の裁判官の会議体に委任していますし,さらに一定の権限を高裁長官及び地家裁所長に委任しています。

2 東京高裁及び大阪高裁における司法行政の機関
(1) 東京高裁の場合,12人の常置委員(うち,2名は民事部代表常置委員及び刑事部代表常置委員)から組織される常置委員会が設置されています(東京高裁常置委員会規程2条)。
(2) 大阪高裁の場合,8人の常任委員(うち,2名は民事上席裁判官1名及び刑事上席裁判官1名)から組織される常任委員会が設置されています(大阪高裁裁判官会議規則12条)。

3 東京地裁における司法行政の機関
(1) 東京地裁における司法行政の機関としては,裁判官会議のほか,本庁民事部会議,本庁刑事部会議及び立川支部会議並びに常置委員会が設置されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程2条)。
(2)ア   裁判官会議は,所長,所長代行者及び各部に配置された裁判官(判事及び特例判事補をいう。以下同じ。)の全員で組織されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程3条1項)。
イ   本庁民事部会議は,所長,本庁民事部の所長代行者及び本庁民事部に配置された裁判官の全員で組織されています。
    本庁刑事部会議は,所長,本庁刑事部の所長代行者及び本庁刑事部の各部に配置された裁判官の全員で組織されています。
    立川支部会議は,所長,立川支部長及び立川支部の各部に配置された裁判官の全員で組織されています(以上につき東京地方裁判所司法行政事務処理規程3条2項)。
(3) 常置委員会は,所長,所長代行者,本庁民事部から選出された7人の常置委員,本庁刑事部から選出された7人の常置委員,立川支部長及び立川支部から選出された1人の常置委員で組織されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程4条1項)。

4 大阪地裁における司法行政の機関
(1) 大阪地裁における司法行政の機関としては,裁判官会議のほか,常任委員会があります(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程2条)。
(2) 裁判官会議は,所長,所長代行者,本庁及び支部の判事及び特例判事補で組織されています(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程3条)。
(3) 常任委員会は,所長,所長代行者,堺支部長及び岸和田支部長,民事上席裁判官及び刑事上席裁判官,並びに本庁及び支部の民事部から選出された3人の裁判官及び本庁の刑事部から選出された3人の裁判官から組織されています(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程4条)。

5 関連記事その他
(1) 裁判所法逐条解説上巻168頁には以下の記載があります。
   官僚機構は、行政上の監督権者を非常に重視し、その地位を高くすることに特色をもっている。しかし、このことは、裁判所のようなところでは、もっとも望ましくないことである。わが国のように、旧憲法下ながく裁判官が官僚機構のなかに組み入れられていたところでは、とかく官僚一般に共通な右の思想が知らず知らずの間に裁判官の間にも流れ込んでくる危険があり、旧制度の下では、その弊害が特に著しかったといえよう。それは、行政を行う者の地位を裁判事務のみを行う者のそれよりも高いと考え、ひいては行政重視裁判軽視の傾向を生みかねない。その意味で、司法行政権を所長等の特定の裁判官に一任せず、裁判官会議にこれを与えたことは、裁判所における官僚制を打破する上において画期的な変革であったといえる。裁判所における官僚制の打破がきわめて望ましい要請である以上、司法行政専任の裁判官を認めることは、あくまで避けなければならない。
(2) 中小企業等協同組合は,法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて,理事会に属する業務執行の意思決定の権限を定款で代表理事に委任することができます(最高裁昭和40年9月22日判決)。
(3) 弁護士JPニュースの「“裁判官の会議”は「見られたら、とても恥ずかしい」… 現職の敏腕判事の“勇気ある発言”を待ち受けていた「運命」とは」に以下の記載があります。
裁判所の会議の「あり方」は、弁護士会はもとより、民間企業などと全く異なるように思う。
裁判官会議の議題は、5~10分程度で終わってしまう。
主要な議題は、その裁判所における事務分配(各裁判部・裁判官への事件の配点ルール)・開廷割(各裁判部・裁判官が何曜日にどの法廷を使用する権限があるか)を規定する裁判所規則の審議・可決である。
簡単に変更点を説明しただけで、議長である長官・所長の「よろしいでしょうか」の一言で可決される。
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 神戸地裁常任委員会の平性24年7月から9月までの議事録
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官会議
 最高裁判所裁判官会議の議事録
 最高裁判所に設置されている常置委員会は全く開催されていないこと
 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
 下級裁判所の裁判官会議に属するとされる司法行政事務

最高裁判所裁判官会議

目次
1 総論
2 最高裁判所審査室会議及び事務総局会議
3 関連記事
4 最高裁判所裁判官会議規程

1 総論
(1) 最高裁判所裁判官会議は,昭和38年頃から,毎週1回,原則として水曜日の午前中に開催されています(平成28年度(最情)答申第11号(平成28年6月3日答申)参照)。
(2) 平成24年4月以降の最高裁判所裁判官会議の議事録を見る限り,最高裁判所事務総局の事務総長,事務総局の局長又は事務総局の課長から説明があった事項について,最高裁判所裁判官会議が否決したり,変更したりした事例は確認できません。
    また,議題が少ない場合,最高裁判所裁判官会議は10分ぐらいで終わっていることがあります。
(3) 現代ビジネスHPの「最高裁判所という「黒い巨塔」~元エリート裁判官が明かす闇の実態」には,以下の記載があります。
     司法行政部門は、最高裁判所裁判官会議の統轄下にあるが、裁判官会議は、最高裁からみての下級裁判所、すなわち、高裁、地家裁の場合ほどではないにしてもやはり形骸化しており、実際には、最高裁長官とその意を受けた事務総長とが、全司法行政を取り仕切っているといってよい。

2 最高裁判所審査室会議及び事務総局会議
(1) 毎週月曜日開催の審査室会議
ア 最高裁判所は,毎週月曜日に審査室会議を開催し,毎週火曜日に事務総局会議を開催し,毎週水曜日に裁判官会議を開催しています。
イ 審査室会議は,秘書課長が議長となり,各局課の課長等1名が出席する会議で,司法行政上の事項を議題としています。
    ただし,その設置や開催について定めた最高裁判所規程等の定めはなく,局課間の情報交換や出席者の認識の共通を図る機会として開催されているものですから,議事録は作成されていません(平成28年度(最情)答申第11号(平成28年6月3日答申))。
ウ 最高裁判所審査室会議の資料を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和2年令和3年
(平成時代)
平成29年平成30年平成31年
(2) 毎週火曜日開催の事務総局会議
ア 最高裁判所事務総局会議は,最高裁判所事務総長が議長となり,7局長(総務局長,人事局長,経理局長,民事局長兼行政局長,刑事局長及び家庭局長の6人)及び3課長(秘書課長兼広報課長及び情報政策課長の2人)のほか,関係する局の課長が出席する会議で,司法行政上の事項を議題としており,各種事項を決定したり,最高裁判所裁判官会議に付議する事項を決定したりしています。
イ 実務上,最高裁判所裁判官会議に属する権限は,最高裁判所事務総局が決定しており,毎週1回,水曜日に開催される最高裁判所裁判官会議は,最高裁判所事務総局の決定を追認するだけの機関であるともいわれています。
ウ 最高裁判所事務総局会議の場合,審査室会議と異なり,議事録が作成されています。


3 関連記事その他
(1) 最高裁判所裁判官会議の運営方法等については,最高裁判所裁判官会議規程(昭和22年9月22日最高裁判所規程第1号)で定められています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 最高裁判所に設置されている常置委員会は全く開催されていないこと
・ 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 昭和24年7月16日発生の最高裁判所誤判事件に関する最高裁大法廷昭和25年6月24日決定

4 
最高裁判所裁判官会議規程
   最高裁判所裁判官会議規程(昭和22年9月22日最高裁判所規程第1号)は以下のとおりです。

第1条 最高裁判所の裁判官会議については、この規程の定めるところによる。
第2条 裁判官会議は、最高裁判所長官が、これを招集する。
第3条 裁判官会議は、毎年一回定期にこれを招集しなければならない。
2 緊急の必要がある場合には、随時これを招集することができる。
第4条 裁判官会議の議に附すべき事項は、あらかじめ、各裁判官にこれを通知しなければならない。但し、緊急やむを得ない場合は、この限りでない。
第5条 裁判官会議は、裁判官九人以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
第6条 緊急の必要のため裁判官会議を開くことができない場合には、最高裁判所長官は、応急の措置を講ずることができる。この場合には、遅滞なく、裁判官会議の承認を得なければならない。
第7条 司法行政事務は、裁判官会議の議により、その一部を裁判官会議を組織する一人又は二人以上の裁判官に委任することができる。
2 裁判官が、前項の規定により、その委任された事務を処理したときは、次の裁判官会議にこれを報告しなければならない。
第8条 裁判官会議は、公開しない。
第9条 最高裁判所事務総長は、裁判官会議に出席して意見を述べることができる。但し、裁判官会議において適当と認めたときは、出席を拒み、又は退席させることができる。
第10条 裁判官会議において適当と認めるときは、最高裁判所の裁判官でない者の出席を求めて説明又は意見を聴くことができる。
第11条 裁判官会議の議事は、出席裁判官の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第12条 裁判官会議の議事については、裁判所事務官に議事録を作成させる。
2 議事録には、出席者の氏名、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び出席した最高裁判所事務総長又は裁判所事務官が、これに署名しなければならない。
第13条 最高裁判所長官に差支のあるときは、裁判官会議に関する最高裁判所長官の権限は、司法行政事務について長官を代理する者が、これを行う。
第14条 この規程を改正するには、出席裁判官の三分の二以上の賛成がなければならない。

裁判所における主なシステム

目次
1 裁判所における主なシステム
2 用語の定義
3 霞が関WANを利用している主なシステム
4 関連記事その他

1 裁判所における主なシステム
(1)ア 以下の記載は,裁判所における主なシステム(平成27年度判事任官者実務研究会の資料)に基づくものです。
① 裁判所間を結ぶ情報通信ネットワーク基盤としてJ・NET(司法情報通信システム)があります。
② 最高裁判所のシステムのうち,事務局関係として人事事務処理システムがあり,事件統計関係として,裁判統計データ処理システム及び保管金事務処理システムがあります。
③ 高等裁判所関係のシステムとして,裁判事務処理システム(民事)及び高裁事件管理システム(刑事)があります。
④ 地方裁判所関係のシステムのうち,訴訟事件関係として,裁判事務処理システム(民事・刑事),音声認識システム,裁判員候補者名簿管理システム及び量刑検索システムがあります。
   執行事件関係として,民事執行事件処理システム,民事執行事件配当管理プログラム及び債権執行事件管理プログラムがあります。
   倒産事件関係として,倒産事件処理システム(破産・通常再生・個人再生)があります。
⑤ 家庭裁判所関係のシステムのうち,家事事件関係として裁判事務処理システム(民事)があり,少年事件関係として少年事件処理システムがあります。
⑥ 簡易裁判所関係のシステムとして,簡裁事件管理システム(民事・刑事)及び督促手続オンラインシステムがあります。
⑦ 検察審査会関係のシステムとして,検察審査員候補者名簿管理システムがあります。
イ 高裁,地裁及び家裁のシステムについて裁判事務処理システムと記載されているものの,ロータス・ノーツを基盤とした同システムは平成16年5月に全国展開が中止されていますから,高裁,地裁及び家裁のシステムの正式名称は裁判事務「支援」システムと思います。
(2) 平成28年6月の「裁判所のシステム最適化計画」を踏まえ,異なる事件種類の情報システムであっても,可能な限り,共通の機能を利用するというコンセプトの下,複数の既存の情報ステムを順次統合していくことを視野に入れて,平成30年度にNAVIUSの開発が開始しました。


2 用語の定義
・ 民事裁判手続のIT化に向けたコンサルティング業務に関する,平成30年4月2日付の契約書(契約当事者は最高裁判所及びアビームコンサルティング)によれば,それぞれの用語の定義は以下のとおりです。
① 裁判所の情報化戦略計画(ISP)
・ 裁判所における情報化の基本計画(最上位の規範)であり,平成17年12月に策定,平成23年12月に改定された。情報化の基本理念のほか,基本理念を実現するための基本方針及び重点的課題とその取組について記述している。
② 裁判所のシステム最適化計画
・ 裁判所におけるITコスト削減等の課題を解決するために,真に必要かつ合理的な情報システムの在り方を検討するための指針,情報システムの具体的な整備,運用に当たっての指針及び実施態勢について定めたドキュメント
③ 情報セキュリティポリシー
・ 最高裁判所事務総長依命通達「裁判所の保有する情報及び情報システムの取扱いについて」及び情報政策課長通達「情報セキュリティに関する対策基準について」並びにこれらの通達に基づき最高裁判所が定める事項
④ 最高裁判所データセンタ
・ 本システムのネットワーク機器を設置した領域(最高裁判所から20km圏内)
⑤ 司法情報通信システム(J・NET)
・ 裁判所のメールやDNS,DHCP,ディレクトリ管理等の基盤機能を提供するシステム。ネットワーク機器及び各拠点を接続する回線も本システムに含む。

3 霞が関WANを利用している主なシステム
・ 内閣府HPに「霞が関WANを利用している主なシステム等」が載っています。共通情報システムとして,法令検索システム,国会会議録検索システム,閣議情報検索システム及び判例検索システムがあるみたいです。


4 関連記事その他
(1) 会報書記官第32号85頁には以下の記載があります。
    平成23年12月より,一部の例外を除いて,裁判所において利用する標準ワープロソフトはワード(Microsoft Word)のみとなりました。また,平成25年度のパソコンの更新時期までには,ほぼすべての職員貸与端末において標準ワープロソフトはワードのみとなります。
(2)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 法令・判例等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は第一法規株式会社)
→ 受注額は令和2年度から令和6年度までの5年間で2億130万円です。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所情報政策課長
 最高裁判所事務総局情報政策課
・ 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
・ 裁判所の情報化の流れ
・ 
民事事件の裁判文書に関する文書管理
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
・ 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会

司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長

目次
第1 総論
第2 最高裁判所の司法行政の担い手
1 最高裁判所裁判官会議
2 最高裁判所事務総長
3 最高裁判所事務総局
第3 高等裁判所の司法行政の担い手
1 高等裁判所の裁判官会議
2 高等裁判所事務局長
3 高等裁判所事務局及び高等裁判所支部庶務課
第4 地方裁判所の司法行政の担い手
1 地方裁判所の裁判官会議
2 地方裁判所事務局及び地方裁判所支部庶務課
第5 家庭裁判所の司法行政の担い手
1 家庭裁判所の裁判官会議
2 家庭裁判所事務局及び家庭裁判所支部庶務課
第6 簡易裁判所の司法行政の担い手
1 簡易裁判所の司法行政事務掌理裁判官
2 簡易裁判所事務部及び庶務課
第7 裁判所の司法行政に関する国会答弁
第8 明治憲法下の取扱いとの比較
1 司法行政権の主体の違い
2 裁判事務の分配方法の違い
3 代理順序等の定め方等の違い
4 裁判所法では,司法行政専任の裁判官を認めることは避けるべきとされたこと
5 戦前の大審院が下級裁判所に対する監督権を有していなかった理由
第9 司法行政部門の意思決定
第10 下級裁判所の裁判官会議に関する下級裁判所事務処理規則の条文
第11 関連記事その他

第1 総論
1 最高裁判所及び下級裁判所の組織は,裁判部門及び司法行政部門に分かれます。
2 裁判所HPの「裁判所の組織について」には以下の記載があります。
① 司法行政部門では,事務局(総務課,人事課,会計課等)が設置され,裁判事務の合理的・効率的な運用を図るため,人や設備などの面で裁判部門を支援する職務を行っています。
② 裁判部門では,各種の事件を裁判官が審理・裁判しますが,その裁判を支える職種として裁判所事務官,裁判所書記官,家庭裁判所調査官が置かれています。
3 昭和34年頃から昭和35年頃にかけて,全国各地の裁判所において,長官・所長,常置委員会に対して大幅な権限の委任が決議された結果,裁判官会議の形骸化は決定的になり,下級裁判所の場合,裁判官会議は年2回程度開催されるだけであり,正式な議題は裁判事務に関する事項に限られ,常置委員会の決定事項の報告・承認などを加えても,裁判官会議の所要時間は1時間にも満たないといわれています(判例時報2141号17頁参照)。
4 西川伸一Onlineの「司法行政からみた裁判官」も参考になります。


第2 最高裁判所の司法行政の担い手
1 最高裁判所裁判官会議
(1) 最高裁判所の司法行政の担い手は,最高裁判所裁判官会議であり(裁判所法12条1項),最高裁判所長官がその議長となります(裁判所法12条2項)。
(2) 最高裁判所裁判官会議は,毎年12月,翌年分の,各小法廷の裁判官の配置,裁判官に差支あるときの代理順序及び各小法廷に対する事務の分配を定めています(最高裁判所裁判事務処理規則4条)。
(3) 最高裁判所裁判官会議の議事録に関する平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)には以下の記載があります。
    本件不開示部分のうち最高裁判所長官及び秘書課長の署名及び印影については,法5条1号に規定する個人識別情報と認められる。裁判官会議の議事録の署名及び押印は,その固有の形状が文書の真正を示す認証的機能を有していることからすれば,これらを公にすれば,偽造され,悪用されるなどして,特段の支障が生じるおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえず,同号ただし書ロ及びハに相当する事情も認められない。
(4) 以下の裁判所職員の任免又は勤務場所の指定は,最高裁判所が行います(裁判所法64条及び65条,並びに裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則2条)。
① 最高裁裁判所事務総長
② 最高裁判所長官秘書官及び最高裁判所判事秘書官
③ 司法研修所教官
④ 裁判所職員総合研修所教官
⑤ 裁判所調査官
⑥ 高裁,地裁,家裁又は簡裁の首席書記官,次席書記官又は総括主任書記官
    知財高裁首席書記官
⑦ 首席家裁調査官,次席家裁調査官又は総括主任家裁調査官
⑧ 高裁,地裁又は家裁の事務局長又は事務局次長
    知財高裁事務局長
⑨ 簡易裁判所事務部長
⑩ 最高裁判所に勤務する裁判所書記官,裁判所速記官,裁判所事務官,裁判所技官及び廷吏
⑪ 弁護士職務従事職員たる裁判所事務官
2 最高裁判所事務総長
(1) 最高裁判所の庶務を掌る機関として,最高裁判所事務総局が設置されていて(裁判所法13条),そのトップが最高裁判所事務総長となります(裁判所法53条)。
(2) 最高裁判所事務総長(「裁判官以外の裁判所職員」を定める裁判所法53条1項参照)に就任する場合,いったん,裁判所事務官となります(平成30年度(最情)答申第83号(平成31年3月15日答申)参照)。
(3) 31期の瀬木比呂志裁判官が著した絶望の裁判所には以下の記載があります。
(54頁の記載)
    私の知る限り、やはり、良識派は、ほとんどが地家裁所長、高裁裁判長止まりであり、高裁長官になる人はごくわずか、絶対に事務総長にはならない(最高裁判所事務総局のトップであるこのポストは、最高裁長官の言うことなら何でも聴く、その靴の裏でも舐めるといった骨の髄からの司法官僚、役人でなければ、到底務まらない)し、最高裁判事になる人は稀有、ということで間違いがないと思う。
(88頁の記載)
    現在では、所長や所長代行時代に事務総局に対して言うべきだと思うことをきちんと言っていたら、まず、その人のその後の人事はよい方向へは向かわないといって間違いはないと思う。
3 最高裁判所事務総局
(1) 裁判所法逐条解説上巻109頁及び110頁には以下の記載があります。
    「庶務」とは事務一般を意味する。主として、司法行政権の主体としての最高裁判所の事務を補佐する事務であって、裁判権の主体としての最高裁判所の事務を補助する事務は、原則として、ふくまれない。具体的事件の審理及び裁判に関して必要な調査は、別に置かれる裁判所調査官(五六)の掌るところであり、訴訟記録の保管等は裁判所書記官(六〇)の掌るところであるから、具体的事件の処理に関する事務総局の職務の範囲は、調査官や書記官の職務に属さないきわめて事務的、機械的な事項にかぎられる。
(2) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)82頁には以下の記載があります。
    司法行政というと大袈裟だが、どこにでもある内部管理であって、裁判に対するサービスの提供を任務とするに過ぎない。しかも、最終責任は最高裁の裁判官会議にあり、事務総長はその命を受けて、許された範囲内で職務を行うに過ぎず、固有の権限などは何もない。ここが裁判と違うところである。
    ただ最高裁の本来の仕事が「裁判」である以上、裁判官方が些事に煩わされることのないよう心掛けなければならないが、重要な事項は、すべて報告して裁判官会議の議決を受けるのである。
(3) 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
    この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
    よって,原判断は相当である。

第3 高等裁判所の司法行政の担い手
1 高等裁判所の裁判官会議
(1) 各地の高等裁判所の司法行政の担い手は,各地の高等裁判所裁判官会議であり(裁判所法20条1項),高等裁判所長官がその議長となります(裁判所法20条2項)。
(2) 裁判所法逐条解説上巻167頁には以下の記載があります。
    とくに、高等裁判所は、同等の任命資格および権限を有する長官および判事で構成されているので、最高裁判所の場合と同様、その司法行政事務は、裁判官全員で組織する裁判官会議により行うものとすることが相当である。
(3) 以下の裁判所職員の任免又は勤務場所の指定は,高等裁判所が行います(裁判所法64条及び65条,並びに裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則3条)。
① 高等裁判所長官秘書官
② 高裁管内の地裁,家裁又は簡裁の主任書記官又は訟廷管理官
    高裁管内の地裁の裁判員調整官
③ 高裁管内の地裁の主任速記官又は速記管理官
④ 高裁管内の家裁の主任家裁調査官
⑤ 高裁管内の地裁,家裁又は簡裁の課長又は課長補佐
    高裁管内の地裁の文書企画官又は企画官
⑥ 高裁に勤務する裁判所書記官,裁判所速記官,家裁調査官,裁判所事務官,裁判所技官及び廷吏
2 高等裁判所事務局長
(1) 高等裁判所の庶務を掌る機関として,高等裁判所事務局が設置されていて(裁判所法21条),そのトップが高等裁判所事務局長となります(裁判所法59条)。
(2) 高等裁判所事務局長に就任するのは常に裁判官であり,高等裁判所事務局次長に就任するのは常に裁判官以外の裁判所職員です。
(3) 早稲田大学HPに載ってある「河合健司元仙台高裁長官講演会講演録 裁判官の実像」には「司法研修所の教官として, 4年間,刑事裁判教官をいたしました。それが終わった後は,札幌高裁の事務局長を 4 年間経験しました。皆さんは,「高裁の事務局長というのは一体何だ?」と思われるのではないでしょうか。これは,要するに,北海道管内の司法行政,つまり裁判官や職員の人事関係事務,会計事務,一般の庶務などの責任者です。裁判は全くしません。そういう仕事ばかりを 4 年間やりました。」と書いてあります(リンク先のPDF4頁)。
3 高等裁判所事務局及び高等裁判所支部庶務課
(1) 高等裁判所事務局には,総務課,人事課及び会計課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条1項)。
(2) 高等裁判所支部には庶務課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条2項)。
    ただし,知財高裁事務局には庶務第一課及び庶務第二課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条3項)。


第4 地方裁判所の司法行政の担い手
1 地方裁判所の裁判官会議
(1) 各地の地方裁判所の司法行政の担い手は,各地の地方裁判所裁判官会議であり(裁判所法29条2項),地方裁判所長がその議長となります(裁判所法29条3項)。
    そして,地方裁判所の庶務を掌る機関として,地方裁判所事務局が設置されていて(裁判所法30条),そのトップが地方裁判所事務局長となります(裁判所法59条)。
(2) 地方裁判所の裁判官会議につき,判事及び特例判事補がその構成員となります(裁判所法29条3項参照)。
    ただし,判事補は所属の裁判所の裁判官会議に出席して意見を述べることができます(下級裁判所事務処理規則14条2項)。
(3) 日本の裁判所―司法行政の歴史的研究110頁及び111頁には以下の記載があります。
各地方裁判所が定める地方裁判所事務処理規則では,従来,明文で列挙された事項についてのみ,裁判官会議から地方裁判所長へ権限の委任がなされるという形式がとられていた。ところが,1982年に東京地方裁判所は,従来の形式とは逆に,権限の委任をしない司法行政事務を列挙し,その他の事務は所長に委任するという原則委任の形式をとるにいたった(全司法労働組合「司法行政からみた最近の司法政策の特徴」法と民主主義174号(1983年)12頁)。この後,全国の地方裁判所は,所長への権限委任について,改正された東京地方裁判所事務処理規則の規定の仕方にならったと考えられる。
(4) 地裁及び管内の簡裁に勤務する裁判所書記官,裁判所速記官,裁判所事務官,裁判所技官及び廷吏の任免又は勤務場所の指定は,地方裁判所が行います(裁判所法64条及び65条,並びに裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則4条)。
(5) 以下の資料を掲載しています。
・ 東京地方裁判所司法行政事務処理規程(昭和57年6月17日東京地方裁判所規程第1号)
・ 大阪地方裁判所司法行政事務処理規程(平成16年9月15日大阪地方裁判所規程第1号)
(6) 検察審査会に勤務する者の任免又は勤務検察審査会の指定は,検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所が行います(裁判所法64条及び65条,並びに裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則6条)。
2 地方裁判所事務局及び地方裁判所支部庶務課
(1) 地方裁判所事務局長に就任するのは常に裁判官以外の裁判所職員です。
(2) 地方裁判所事務局には総務課及び会計課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条1項)。
(3) 地方裁判所支部には庶務課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条2項)。

第5 家庭裁判所の司法行政の担い手
1 家庭裁判所の裁判官会議
(1) 各地の家庭裁判所の司法行政の担い手は,各地の家庭裁判所裁判官会議であり(裁判所法31条の5・29条2項),家庭裁判所長がその議長となります(裁判所法31条の5・29条3項)。
    そして,家庭裁判所の庶務を掌る機関として,家庭裁判所事務局が設置されていて(裁判所法31条の5・30条),そのトップが家庭裁判所事務局長となります(裁判所法59条)。
(2) 家庭裁判所の裁判官会議につき,判事及び特例判事補がその構成員となります(裁判所法31条の5・29条3項参照)。
    ただし,判事補は所属の裁判所の裁判官会議に出席して意見を述べることができます(下級裁判所事務処理規則14条2項)。
(3) 家裁に勤務する裁判所書記官,裁判所速記官,家裁調査官,家裁調査官補,裁判所事務官,裁判所技官及び廷吏の任免又は勤務場所の指定は,家庭裁判所が行います(裁判所法64条及び65条,並びに裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則5条)。
2 家庭裁判所事務局及び家庭裁判所支部庶務課
(1) 家庭裁判所事務局長に就任するのは常に裁判官以外の裁判所職員です。
(2) 家庭裁判所事務局には総務課及び会計課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条1項)。
(3) 家庭裁判所支部には庶務課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条2項)。

第6 簡易裁判所の司法行政の担い手
1 簡易裁判所司法行政事務掌理裁判官
(1) 簡易裁判所の司法行政事務は,簡易裁判所の裁判官が一人のときはその裁判官が,2人以上のときは,最高裁判所の指名する一人の裁判官(=司法行政事務掌理裁判官)がこれを掌理します。
(2) 東京簡裁の場合,専属の東京簡裁司法行政事務掌理裁判官が設置されているのに対し,大阪簡裁の場合,大阪地裁民事上席裁判官(=大阪地裁第1民事部部総括判事)が大阪簡裁司掌裁判官を兼任しています。
2 簡易裁判所事務部及び庶務課
(1) 簡易裁判所には事務部又は庶務課が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条2項及び4項)。
    そして,簡易裁判所事務部には,事務部長が設置されています(下級裁判所事務処理規則24条7項)。
(2) 事務部を設置されている簡易裁判所は,東京簡易裁判所及び大阪簡易裁判所だけです(事務部を置く簡易裁判所の指定について(平成6年7月21日付の最高裁判所総務局長通知)参照)。

第7 裁判所の司法行政に関する国会答弁
・ 21期の竹崎博允最高裁判所事務総長は,平成16年3月25日の衆議院憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会において以下の答弁をしています。
    まず、裁判所の建前で申しますと、先ほど御指摘のとおり、それぞれの裁判所における司法行政事務はそれぞれの裁判所の裁判官会議が行うというのが建前でございます。
    ただ、ここでいいます司法行政事務といいますのは、言うならば、その庁における固有の司法行政事務というように考えられるわけでありまして、例えば開廷の日割りであるとか、あるいは事務の分配であるとかそういうことで、裁判官人事、特に裁判官に対する評価というのが、そのそれぞれの裁判官会議にゆだねられていたものではないというように理解しておりまして、これはやはり任免権を持っております、あるいは任免権というよりも指名権を持っております最高裁判所が、人事の評価については一元的に管理をしてきたのではないかというように思っているところでございます。
    ただ、この司法制度改革の過程で裁判官人事の問題が取り上げられまして、私どもも、裁判官につきましては、これまでもそうでありますが、これからますます重要な職責を果たしていかなければならないというように思っておりますので、そういう意味での裁判官人事のあり方について、国民的理解を得ることは必要であろうと。
    ただ、事柄の性質上、本人のプライバシーの関係もありますから、その調和を図りながら、言うならば、国民的理解の得られるような人事体制を築いていく必要があるということで、今回、新たに、最高裁判所規則によりまして、裁判官指名諮問委員会という委員会を最高裁の外に設けたわけでございます。
    また、裁判官の人事評価につきましても、一定の評価のシステムを明らかにいたしまして、例えば、裁判所の外部からの意見についても根拠のはっきりしているものについてはこれを受け付けるとか、あるいは人事評価の結果は希望があれば本人に開示をする、また人事評価をするに当たっては評価権者が本人と面接をするといった手続の透明化を図っているところでございます。


第8 明治憲法下の取扱いとの比較
1 司法行政権の主体の違い
(1) 日本国憲法下の取扱い
    最高の司法行政権は,最高裁判所長官ではなく,最高裁判所裁判官会議が掌握し(裁判所法12条1項),各裁判所における司法行政事務は,それぞれの裁判所の長ではなく,その裁判所の裁判官会議が行うべきものとされています(裁判所法20条1項,29条2項及び31条の5)。
(2) 明治憲法下の取扱い
    最高の司法行政権は,行政府の一員である司法大臣が掌握し(裁判所構成法135条第一),各裁判所における司法行政事務は,その裁判所ではなく,それぞれその裁判所の長が行うべきものとされていました(裁判所構成法135条第二ないし第五)。
    実際,大審院長は大審院の行政事務を監督する権限を有し(裁判所構成法44条2項),控訴院長は控訴院の行政事務を監督する権限を有し(裁判所構成法35条2項),地方裁判所長は地方裁判所の行政事務を監督する権限を有していました(裁判所構成法20条2項)。
2 裁判事務の分配方法の違い
(1) 日本国憲法下の取扱い
・ 最高裁判所の裁判事務の分配については,毎年12月の最高裁判所裁判官会議が定めています(最高裁判所裁判事務処理規則4条)。
・ 下級裁判所の裁判事務の分配については,毎年あらかじめ当該裁判所の裁判官会議が定めています(下級裁判所事務処理規則6条1項)。
・ 部内の事務分配は,各部の裁判官の申合せで定められていると思います(広島地裁の,裁判事務の分配等に関する申合せ集(平成27年7月2日現在)参照)。
(2) 明治憲法下の取扱い
・   大審院の裁判事務は,大審院長が大審院部長と協議した上で分配していて,部内の事務分配は各部の部長が定めていました(裁判所構成法44条3項)。
・   控訴院の裁判事務は,司法大臣が定めた通則に従い,毎年あらかじめ,所長,部長及び部の上席判事の会議に基づき,各部に分配され(裁判所構成法36条・22条1項及び3項),部内の事務分配は各部の部長が定めていました(裁判所構成法35条3項)。
・   地裁の裁判事務は,司法大臣が定めた通則に従い,毎年あらかじめ,所長,部長及び部の上席判事の会議に基づき,各部に分配され(裁判所構成法22条1項及び3項),部内の事務分配は各部の部長が定めていました(裁判所構成法20条3項)。
3 代理順序等の定め方等の違い
(1) 日本国憲法下の取扱い
・ 裁判官の配置及び裁判官に差し支えのあるときの代理順序については,毎年あらかじめ当該裁判所の裁判官会議が定めています(下級裁判所事務処理規則6条1項)。
(2) 明治憲法下の取扱い
・ 大審院の判事に差し支えのあるときの代理順序については,毎年あらかじめ,大審院長が大審院部長と協議した上で決めていました(裁判所構成法45条1項)。
・  控訴院の判事の配置及び判事に差し支えのあるときの代理順序については,毎年あらかじめ,所長,部長及び部の上席判事の会議に基づき定められました(裁判所構成法36条・22条2項及び3項)。
・  地裁の判事の配置及び判事に差し支えのあるときの代理順序については,毎年あらかじめ,所長,部長及び部の上席判事の会議に基づき定められました(裁判所構成法22条2項及び3項)。
4 裁判所法では,司法行政専任の裁判官を認めることは避けるべきとされたこと
・ 裁判所法逐条解説上巻168頁には以下の記載があります。
    官僚機構は、行政上の監督権者を非常に重視し、その地位を高くすることに特色をもっている。しかし、このことは、裁判所のようなところでは、もっとも望ましくないことである。わが国のように、旧憲法下ながく裁判官が官僚機構のなかに組み入れられていたところでは、とかく官僚一般に共通な右の思想が知らず知らずの間に裁判官の間にも流れ込んでくる危険があり、旧制度の下では、その弊害が特に著しかったといえよう。それは、行政を行う者の地位を裁判事務のみを行う者のそれよりも高いと考え、ひいては行政重視裁判軽視の傾向を生みかねない。その意味で、司法行政権を所長等の特定の裁判官に一任せず、裁判官会議にこれを与えたことは、裁判所における官僚制を打破する上において画期的な変革であったといえる。裁判所における官僚制の打破がきわめて望ましい要請である以上、司法行政専任の裁判官を認めることは、あくまで避けなければならない。
5 戦前の大審院が下級裁判所に対する監督権を有していなかった理由
 「司法権独立の歴史的考察」(昭和37年7月30日出版)103頁には以下の記載があります。
    明治憲法下の裁判所構成法によれば、大審院長は大審院を監督するのみで、下級裁判所に対する監督権を与えられていなかった。長島毅は前引「裁判所構成法」において、その理由を想像し、「大審院は上告審の裁判に依て下級裁判所の裁判に対し具体的の批評を下しつつある。此批評は実際に於て肢も痛切な監督である。此監督で充分である。是以上に行政上の監督権迄を大審院の手に収めることは、左なきだに判例に畏伏する傾向を有する下級裁判所を益其傾向に導かんとする」虞のあることを、立法理由の一つであろうと言っているが、裁判所構成法において、長島の想像したような配慮が存在したのであったとしたならば、現在の最高裁判所が最高上級裁判権と司法行政権とを併有しているのは、まさにその配慮をあえて度外視したものといわねばなるまい。


第9 司法行政部門の意思決定
・ 文書事務における知識付与を行うためのツールの改訂版(平成31年3月7日付の配布文書)の「司法行政部門の意思決定」には以下の記載があります。
【権限】
・ 司法行政事務を行う主体は,当該事務を行う権限を持つ者であるから,ある事務を行おうとするときは,その事務を行う権限を有する者が意思決定をする。つまり,意思決定の権限を有する者は,その事務を行う権限を有する者である。
・ 司法行政事務を行う権限を有する者は,法令,通達等によって定まる。
・ 例えば,ある事務が,通達等で各裁判所が行うものとして定められている場合には,各裁判所の裁判官会議がその事務を行う権限を有する者となる(裁判所法第20条第1項,第29条第2項,第31条の5)が,各裁判所で定める司法行政事務処理規程等によって,長官又は所長に当該事務を行う権限が委任されている場合(下級裁判所事務処理規則第20条第1項参照)には,長官又は所長がその事務を行う権限を有する主体となる。ただし,庁によっては,当該裁判所の長から事務局長等の下位の者に更に委任されている場合がある。
【決裁】
・ 司法行政事務の意思決定は「決裁」によって行われる。
・ 「決裁」とは,意思決定の権限を有する者が,押印,署名又はこれらに類する行為を行うことにより,その内容を裁判所の意思として決定し,又は確認する行為をいう。
・ 最終決裁者は,意思決定の権限を有する者(その事務を行う権限を有する者)である。
・ 決裁文書を起案するときは,決裁事項の内容に応じて,法令,通達その他の資料を調査して,当該意思決定の権限を有する者を確認する必要がある。
【専決】
・ 通常は,最終決裁者は,法令,通達等で定められているその事務を行う権限を有する者(本来の意思決定の権限を有する者)であるが,本来の意思決定の権限を有する者があらかじめ補助者に本来の意思決定の権限を有する者の名において決裁し得る権限を付与している場合がある。このような場合に,補助者が決裁することを専決といい,最終決裁者は補助者となる。
・ 専決により文書を発出するときは,文書の発出名義は,本来の意思決定の権限を有する者の名となることに留意する。
・ 例えば,所長から事務局長に対して専決権限が与えられている場合には,発出名義が所長である文書の決裁を事務局長が行うことになる。
【補助者の名において事務を行う権限の委任】
・ 本来の意思決定の権限を有する者があらかじめ補助者に補助者の名において事務を行う権限を委任している場合がある。この場合には,最終決裁者は,委任された補助者となり,文書の発出名義も補助者となる。
・ 例えば,所長から事務局長に対して補助者の名において事務を行う権限が委任されている場合には,発出名義が事務局長である文書の決裁を事務局長が行うことになる。
【代決】
・ 最高裁実施通達記第3の5の(1)では,本来の意思決定の権限を有する者が出張等により不在であるときに,特に緊急に処理しなければならない決裁文書について,本来の意思決定の権限を有する者の直近下位の者が内部的に代理の意思表示をして決裁することの意味で用いられている。
・ 代決により文書を発出するときは,文書の発出名義は,本来の意思決定の権限を有する者の名となることに留意する。
・ 例えば,事務局長が所長不在時の代決者と指定されている場合には,発出名義が所長である文書の決裁を事務局長が行うことになる。


第10 下級裁判所の裁判官会議に関する下級裁判所事務処理規則の条文
・ 下級裁判所事務処理規則(平成24年3月12日最終改正)には以下の条文があります。
第十二条 裁判官会議は、高等裁判所においては高等裁判所長官が、地方裁判所においては地方裁判所長が、家庭裁判所においては家庭裁判所長が、必要に応じてこれを招集する。
第十三条 各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所の判事(判事の権限を有する判事補を含む。 )の三分の一以上が会議の目的及び招集の理由を明らかにして請求したときは、高等裁判所長官、地方裁判所長又は家庭裁判所長は、速やかに裁判官会議を招集しなければならない。
第十四条 裁判官会議の議に付すべき事項は、あらかじめ、当該裁判官会議を組織する各裁判官にこれを通知しなければならない。但し、緊急やむを得ない場合は、この限りでない。
第十五条 裁判官会議は、公開しない。但し、裁判官会議の許可を受けた者は、 これを傍聴することができる。
② 判事補(判事の権限を有する者を除く。 )及び高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の裁判官の職務を行う裁判官は、所属の裁判所又は当該職務を行う裁判所の裁判官会議に出席して、意見を述べることができる。
③ 事務局長は、裁判官会議に出席して、意見を述べることができる。但し、裁判官会議において適当と認めるときは、その出席を拒み、又はこれを退席させることができる。
④ 首席書記官及び首席家庭裁判所調査官は、所管事務に関し、裁判官会議に出席して、意見を述べることができる。 この場合においては、前項但書の規定を準用する。
⑤ 裁判官会議において適当と認めるときは、当該裁判官会議を組織する裁判官以外の者の出席を求めて、説明又は意見を聞くことができる。
第十五条の二 検察審査会事務局長は、当該検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所の定めるところにより、検察審査会の事務局の職員に関する事項について、裁判官会議に出席して、意見を述べることができる。
第十六条 裁判官会議は、当該裁判官会議を組織する裁判官の半数以上が出席しなければ決議をすることができない。
第十七条 裁判官会議の議事は、出席裁判官の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第十八条 裁判官会議の議事については、議事録を作らなければならない。
② 議事録には、出席者の氏名、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及びこれを作った者が、 これに署名しなければならない。
第十九条 緊急の事情のため裁判官会議を開くことができない場合には、高等裁判所長官、地方裁判所長又は家庭裁判所長は、応急の措置を講ずることができる。この場合には、次の裁判官会議において承認を得なければならない。
第二十条 司法行政事務は、裁判官会議の議により、その一部を当該裁判官会議を組織する一人又は二人以上の裁判官に委任することができる。
② 裁判官が、前項の規定により、その委任された事務を処理したときは、次の裁判官会議にこれを報告しなければならない。
第二十条の二 第十二条から前条まで(第十五条の二を除く。 )の規定は、知的財産高等裁判所に勤務する裁判官の会議について準用する。この場合において、第十二条中「高等裁判所においては高等裁判所長官が、地方裁判所においては地方裁判所長が、家庭裁判所においては家庭裁判所長が」 とあるのは「知的財産高等裁判所長が」 と、第十三条中「各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所の判事(判事の権限を有する判事補を含む。 ) 」 とあるのは「知的財産高等裁判所に勤務する判事」 と、同条及び第十九条中「高等裁判所長官、地方裁判所長又は家庭裁判所長」 とあるのは「知的財産高等裁判所長」と、第十五条第二項中「判事補(判事の権限を有する者を除く。)及び高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の裁判官の職務を行う裁判官」とあるのは「高等裁判所の裁判官の職務を行う裁判官のうち知的財産高等裁判所に勤務する裁判官」と、同条第三項中「事務局長」とあるのは「知的財産高等裁判所事務局長」と、同条第四項中「首席書記官及び首席家庭裁判所調査官」 とあるのは「知的財産高等裁判所首席書記官」 と読み替えるものとする。

第11 関連記事その他
1 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)22頁及び23頁には,筆者が北海道の苫小牧税務署長をしていた当時の体験として,以下の記載があります。
    組織というのはどうしても、上部組織の嫌がるようなことを耳に入れないようにする習性があるのです。だから不祥事などはできるだけ末端でもみ消して上に伝えない。たとえば、こんな施策をやってみたらどうかと企画立案をして現場で試行してもらう。後で「どうだった?」と聞くとたいてい「うまくいっています」という話になるのですが、本当はそうではない。そういう声は、組合交渉のような場を通じてしか上がってこないのです。だから組合というのは-御用組合ではない本当の組合が-とても大事だということを学ばせてもらいました。
2 裁判官の人事評価制度に関して,40期の浅見宣義裁判官らが平成13年12月までに提出した意見書が,裁判所HPの「最高裁判所事務総局に直接寄せられた裁判官の意見」に載っていますところ,例えば,裁判官の人事評価情報の本人開示に関して以下の発言をしています(リンク先26頁)。
    これまで日本の裁判官は、他の人の訴訟指揮は知らない、判決も知らない。唯我独尊的で、こもりたがる、それで何とか済んできた。ほかのことは全部無視していいから、司法行政なんかでもね。何があっても、とにかく殻に閉じこもれば済んできたんですけど、これからはお互いに批判すべきところは批判し合って、特に当事者からの批判意見もちゃんと聞いて、自分を変えていくというようなことがもう義務とならざるを得ない。非常につらいし、こんなことを言うと,みんなから嫌われるというか、うらまれる可能性もあるけども。
3 司法制度改革審議会の質問に対する最高裁判所の回答として,以下の記載があります(判例時報2144号(平成24年5月21日号)40頁)。
・ 最高裁人事局に各裁判官の人事関係記録があるほか、高裁、地家裁にも、所属裁判官の人事関係記録がある。下級裁判所の人事関係記録は、異動に伴って移転される。高裁長官、高裁事務局長、所長のように裁判官の人事に関与する者が、この記録を見ることができる。
・ 異動計画原案は、高裁管内の異動については主として各高裁が、全国単位の異動については最高裁人事局が立案し、いずれについても最高裁と各高裁との協議を経て異動計画案が作成される。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の勤務時間等について(平成28年3月25日付の最高裁判所事務総長の通達)
→ 略称は「勤務時間等総長通達」です。
・ 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の育児休業等について(平成28年3月25日付の最高裁判所事務総長通達)
→ 略称は「育児休業等総長通達」です。
・ 最高裁判所に勤務する裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の勤務時間等について(平成28年3月30日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 最高裁判所に勤務する裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の勤務時間等の運用について(平成28年3月30日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程(昭和43年6月10日最高裁判所規程第4号)
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程の運用について(昭和60年12月28日付の最高裁判所経理局長依命通達)
(2) 以下の記事も参照してください。
(最高裁判所関係)
・ 最高裁判所裁判官会議
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 最高裁判所事務総局の各係の事務分掌(平成31年4月1日現在)
・ 最高裁判所事務総局の組織に関する法令・通達
・ 最高裁判所に設置されている常置委員会は全く開催されていないこと
・ 裁判所の指定職職員
・ 司法行政の監督権
(高等裁判所関係)
・ 東京高裁の歴代の代表常置委員
・ 大阪高裁の歴代の上席裁判官
・ 下級裁判所事務局の係の事務分掌
・ 司法行政部門における役職と,裁判部門における裁判所書記官の役職の対応関係
・ 下級裁判所の裁判官会議に属するとされる司法行政事務
・ 下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関
(地方裁判所関係)
・ 東京地裁の所長代行者
・ 大阪地裁の所長代行者,上席裁判官等

最高裁判所事務総局会議の議事録

目次
1 最高裁判所事務総局会議の議事録
2 裁判所の情報公開の場合,裁判所職員の署名押印は不開示情報であること
3 東京地裁令和4年7月13日判決の判示内容等
4 関連記事その他

1 最高裁判所事務総局会議の議事録
(1) 以下のとおり,最高裁判所事務総局会議の議事録を掲載しています。
→ 「令和◯年◯月の,最高裁判所事務総局会議の議事録」というファイル名です。
令和7年
1月分2月分3月分4月分5月分,6月分
7月分,8月分,9月分,10月分,11月分,12月分
令和6年
1月分2月分3月分4月分5月分6月分
7月分8月分9月分10月分11月分12月分
令和5年
1月分2月分3月分4月分5月分6月分
7月分8月分9月分10月分11月分12月分
令和4年
1月分2月分3月分4月分5月分6月分
7月分8月分9月分10月分11月分12月分
令和3年
1月分2月分3月分4月分5月分6月分
7月分8月分9月分10月分11月分12月分
令和2年
1月分2月分3月分4月分5月分6月分
7月分,8月分(なし。),9月分10月分11月分12月分
令和元年
5月分6月分7月分8月分
9月分10月分11月分12月分
平成31年分
1月15日(第 1回)~1月29日(第 3回)
2月 5日(第 4回)~2月19日(第 6回)
3月12日(第 7回)~3月26日(第 9回)
4月 9日(第10回)~4月23日(第12回)
平成30年分
1月16日(第1回)~1月30日(第3回)
2月 6日(第4回)2月13日(第5回)2月20日(第6回)
3月 6日(第7回)3月13日(第8回)3月27日(第9回)
4月10日(第11回)4月17日(第12回)5月8日(第13回)
5月29日(第14回)6月5日(第15回)6月12日(第16回)
6月26日(第17回)7月3日(第18回)7月10日(第19回)
7月17日(第20回)8月2日(第21回)8月24日(第22回)
9月 4日(第23回)9月18日(第24回)10月2日(第25回)
10月9日(第26回)10月16日(第27回)10月23日(第28回)
10月30日(第29回)11月6日(第30回)11月13日(第31回)
11月27日(第32回)12月4日(第33回)12月11日(第34回)
平成29年分
1月10日(第1回)~1月24日(第3回)
1月31日(第4回)
2月7日(第5回)~3月7日(第9回)
3月14日(第10回)~3月21日(第11回)
3月28日(第12回)
4月11日(第13回)~5月30日(第16回)
6月6日(第17回)1/42/43/44/4
6月13日(第18回)6月27日(第19回)7月4日(第20回)
7月11日(第21回)7月18日(第22回)8月1日(第23回)
8月25日(第24回)9月5日(第25回)9月12日(第26回)
9月26日(第27回)
10月3日(第28回)~12月5日(第34回)
12月12日(第35回)1/22/2
12月19日(第36回)
平成28年分

1月19日(第1回) 
1月26日(第2回)
2月2日(第3回)~2月23日(第5回)
3月1日(第6回)~3月14日(第8回)
3月22日(第9回)~3月29日(第10回)
4月12日(第11回)
4月15日(第12回)1/22/2

4月19日(第13回)~5月31日(第16回)
6月7日(第17回)~6月28日(第20回)
7月5日(第21回)~9月13日(第27回)
9月27日(第28回)
10月4日(第29回)~11月1日(第33回)
11月8日(第34回)~12月20日(第39回)
(2) 議論の記録は一切なく,議題及び配付資料しかありません。
(3) 裁判所の協議会等開催計画は,最高裁判所事務総局会議の配布資料です。


2 裁判所の情報公開の場合,裁判所職員の署名押印は不開示情報であること
(1) 裁判所の情報公開の場合,裁判所職員の署名押印は不開示情報であるのに対し,行政機関の情報公開の場合,行政機関職員の署名押印は開示情報です。
(2) 最高裁判所裁判官会議の議事録に関する平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)には以下の記載があります。
    本件不開示部分のうち最高裁判所長官及び秘書課長の署名及び印影については,法5条1号に規定する個人識別情報と認められる。裁判官会議の議事録の署名及び押印は,その固有の形状が文書の真正を示す認証的機能を有していることからすれば,これらを公にすれば,偽造され,悪用されるなどして,特段の支障が生じるおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえず,同号ただし書ロ及びハに相当する事情も認められない。
(3) 平成26年度(行情)答申第216号・11頁に以下の記載があります。
一般的な行政文書において,公務員が職務の遂行に関して氏名を自署する場合は,当該職務の遂行者又は責任者として氏名が記録されるにすぎず,諮問庁において必ずしも自署とすべき必要性があるものではないとしていることからも,活字により記載された氏名に比して,自署の固有の形状等が単なる氏名の記録以上の特段の意味を持つものとは認められず,本件の場合,その固有の形状等が明らかになることにより,悪用され,当該個人の権利利益を害することとなるなど,上記申合せ〔注:「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて」(平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議申合せ)〕における特段の支障が生ずるおそれがあるとも認められない。


3 東京地裁令和4年7月13日判決の判示内容等
(1) 東電株主代表訴訟ブログ「7月13日認容判決」に載ってある東京地裁令和4年7月13日判決の判決要旨には一般論として以下の判示があります(リンク先28頁及び29頁)ところ,結論として,平成21年2月11日午前10時から午前11時50分にかけて行われた中越沖地震対応打合せに出席した清水社長及び勝俣会長は,津波の襲来可能性があるとする見解の信頼性や成熟性が不明であるとして速やかな津波対策を講じない原子力・立地本部の判断が「原子力発電所の安全性確保の観点から著しく不合理であることを容易に理解できた。」と判断されました(リンク先30頁)。
    被告清水及び被告勝俣は、福島第一原発の安全対策に関する社長等の対応としては、特段の事情がない限り、会社内外の専門家の評価ないし判断を尊重すべきところ、原子力発電所の安全確保を担当する原子力・立地本部原子力設備管理部長であつた吉田部長が、前提となる津波をどう考えるか整理する必要があると発言している以上、これに容喙を差し控えることこそ、適切な対応であった旨主張する。
    確かに、取締役が、業務執行の際、特に専門部署からの専門技術的事項に係る情報等については、特に疑うべき事情があるとか、著 しく不合理な評価ないし判断でない限り、それを信頼しても、直ちに善管注意義務違反とはならないと解されるし、東京電力のような、専門性のある各部署における業務分担を前提として組織運営がされる大企業では、原則として、各専門部署における判断を尊重して経営が行われることこそが適切といえる。
    しかし、そのことは、取締役の経営判断において、専門部署からの情報等であれば、どのようなものであっても直ちに信頼することが許されることまで意味しない。著しく不合理な評価ないし判断であった場合には、信頼することは許されず、また、これを特に疑うべき事情がある場合には、調査、検討義務を負うものと解すべきであり、この理は、判断すべき案件の重要性が高い場合には殊更である。
(2)ア 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
     最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
    この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
   よって,原判断は相当である。
イ 最高裁回想録34頁には以下の記載があります。
     最高裁における司法行政なるものは、事務総局からの報告・提案につき、二〜三の裁判官から若干の質問が出ることはあっても、結果的には裁判官会議としてこれを了承する、ということにならざるを得ないのであって、全国の裁判組織に関するヒト・カネ・モノについて、それがどうあるべきかの詳細を、一五人の裁判官がいちいち検討する等ということが、時間的にも能力的にも出来るわけはないのである。こういった問題については、自ら裁判所組織の内部で長年司法行政に携わって来たキャリアの裁判官はともかくとして、そうでない者にとっては、これを実質的に議論しようとすれば、その準備に莫大な労力を必要とする。そういったことのために、それでなくとも過大な負担となっている裁判事件の処理に当てる時間を割くだけの意義があるとは、到底思われない。

4 関連記事その他
(1) 高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官は,平成11年11月27日に東京九段の専修大学で開催された,第17回全国裁判官懇話会全体会において,「司法改革の背景と課題-法と日常生活-」と題する講演を行いました(判例時報1698号3頁ないし20頁)ところ,同号15頁には以下の発言が載っています。
     司法行政というのが問題になりますと、ある程度部内の経験を持たないとできないんです。今のシステムで、手持ちの資料なくして司法行政をやれと言っても、それは無理です。それから、事務総局で全部やっているように思っていられますが、事務総局などというものは、権限は持ってないです。人事担当者は、元に人事配置の案を立てますから、これはやらざるを得ませんが、それ以外の、例えば民事局とか刑事局とか、そういったところなぞ、なんの権限もない。立法権もないし何にもない。ルール制定といったところで、これは弁護士から検察官からみんな入った諮問委員会の諮問によってやるわけです。
(2) 最高裁判所事務総局会議に関する事項は,最高裁判所事務総局秘書課会議係が担当しています。
(3) 家庭裁判所の設立等を定めた裁判所法の一部を改正する法律(昭和23年12月21日法律第260号)及び最高裁判所事務局規則の一部を改正する規則(昭和23年12月28日最高裁判所規則第40号)に基づき,最高裁判所事務局は最高裁判所事務総局となりました。
(4) 最高裁判所事務総局に勤務している裁判官の人事評価は最高裁判所事務総長又はその勤務する局課の局課長が行います(裁判所HPの「裁判官の新しい人事評価制度の概要について」参照)。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 司法行政文書開示手続の手引(平成29年3月21日版)
・ 一元的な文書管理システム教材の改訂版(令和2年3月24日付の配布文書)
・ 文書事務における知識付与を行うためのツールの改訂版(平成31年3月7日付の配布文書)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所職員総合研修所の研修実施計画
→ 最高裁判所事務総局会議資料としての,裁判所職員(裁判官以外)研修の実施に関する重要な事項(案)も掲載しています。
・ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
・ 最高裁判所裁判官会議

・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長

裁判官の法服等

目次
1 総論
2 裁判官の法服
3 裁判所書記官の職服
4 裁判官の法服及び裁判所書記官の職服の購入契約書等
5 裁判官の法服に関する国会答弁
6 関連記事その他

1 総論
(1) 裁判官の制服に関する規則(昭和24年4月1日最高裁判所規則第5号)(平成4年7月29日最高裁判所規則第9号(平成4年8月1日施行)による改正後のもの)は以下のとおりです。
① 裁判官は、法廷において、制服を着用するものとする。
② 前項の制服に関し必要な事項は、別に最高裁判所が定める。
(2)ア 平成4年改正前の「裁判官の制服に関する規則」2項の条文は,「前項の制服は、黒色羽二重の地質とし、その制式は、別表の図表の通りとする。」でした。
イ Wikipediaによれば,羽二重(はぶたえ)は,平織りと呼ばれる経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に交差させる織り方で織られた織物の一種であり,絹を用いた場合は光絹(こうきぬ)とも呼ばれます。

2 裁判官の法服
(1) 裁判官の法服については,
「裁判官の制服について」(平成4年7月29日付の最高裁判所事務総長通達)で定められています。

(2) 平成4年8月1日付で以下の点が変わりました。
① 裁判官の制服に関する事項は最高裁判所事務総長通達で定められることとなったこと
② 裁判官の制服について「羽二重の地質」という指定がなくなったこと。
③ 裁判官制服(男性用)及び裁判官制服(女性用)の2種類が定められたこと。
(3) 49期の佐藤建弁護士(平成29年4月に任期終了退官)は弁護士法人中村利雄法律事務所HPのリレーコラムで以下のとおり書いています。
   以前は、法服の素材について「黒色羽二重の地質」と定められていましたので(平成4年改正前の同規則2項)、法服を着るたびに、日本の誇る絹織物の素晴らしい手触りを実感することが出来ました。 
   他方、洗濯機では洗えないため、ちょっと汚れが目立つ気もする、というときには、クリーニングをお願いすることになるのですが、衣服の種類をクリーニング屋さんにどう説明するかが悩みの種でした(私は「コート」と分類されていた記憶がありますが、「スモック」(幼稚園児や保育園児のものにしては大きすぎるような気も…)や「ワンピース」(!?)としてクリーニングをお願いした、という話を聞いたことがあります)。
   その後、上記の規則が変わり、素材の指定がなくなりましたので(現在はナイロン製ではないかと思われます)、洗濯(選択)の悩みからは解放されることになりました。 


3 裁判所書記官の職服
(1) 裁判所書記官の職服については,「裁判所書記官の職服について」(平成4年7月29日付の最高裁判所事務総長通達)で定められています。
(2)   「裁判所書記官の職服に関する規程の運用について」(昭和30年7月18日付の最高裁判所事務総長通達)に基づき,酷暑の時期については,裁判長又は一人の裁判官において,法廷の品位を害さないよう配慮の上,裁判所書記官等の職服の着用につき,しかるべく適宜の取扱いをして差し支えないことになっています。

4 裁判官の法服及び裁判所書記官の職服の購入契約書等
(1) 最高裁判所と
辰野株式会社(大阪市中央区南本町)が締結した,平成28年11月4日付の,裁判官制服,書記官職服等の購入契約書を掲載しています。

(2) 裁判所の予算との関係でいえば,①ポリエステル100%の裁判官制服130着(税抜き単価1万4250円・税抜き金額185万2500円)及び②ポリエステル100%の書記官職服270着(税抜き単価1万円・税抜き金額270万円)は,「項:最高裁判所,目:裁判官等法服費」に該当するのかもしれません。
   また,守衛及び法廷警備員の上衣,ズボン及びネクタイは,「項:最高裁判所,目:庁費,目の細分:被服費」及び「項:下級裁判所,目:庁費,目の細分:被服費」に該当するのかも知れません。
(3) 裁判所の平成30年度歳出概算要求書によれば,29年度予算としては,「項:最高裁判所,目:裁判官等法服費」が529万4000円,「項:最高裁判所,目:庁費,目の細分:被服費」が181万円,「項:下級裁判所,目:庁費,目の細分:被服費」が782万6000円となっています。
(4) 心と体の健康.com「ポリエステル100%なら家庭で洗濯OK?こんな注意点が! 」が載っています。
(5) AOKI HPの「サイズ表」に,スーツ・ジャケットのサイズ表,スラックスのサイズ表,ワイシャツのサイズ表,コートのサイズ表等が載っています。

5 裁判官の法服に関する国会答弁
(1) 9期の山口繁
最高裁判所総務局長は,昭和59年4月7日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています)。
    裁判官が法廷で法服を着用することにつきましては、裁判官の制服に関する規則と申します最高裁判所の規則がございまして、そこで、「裁判官は、法廷において、制服を着用するものとする。」というふうに定めでございます。
    その規則にその法服のデザイン等も規定しているわけでございまして、そのような規則に基づいて法服を着用しているわけでございますが、このように裁判官の法服着用の定めがございます実質的な理由について考えてみますと、結論的には、法廷が非常に手続きが厳粛にかつ秩序正しく行われなければならない場所であるということからいたしまして、一方ではその公正さと人を裁く者の職責の厳しさをあらわすとともに、他方では法服を着用することによりまして裁判官みずからそのような立場にあることを自覚させるものとしてこのような法服の着用が規定されているものというふうに考えております。

(2) 
40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成30年5月9日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。

    現在、裁判官が法廷でいわゆる法服というのを着用しておりますのは、裁判官の制服に関する規則という昭和二十四年に定められた最高裁判所規則に基づくものでございます。そこでは、「裁判官は、法廷において、制服を着用するものとする。」とされておりまして、現在、細目を定めた通達におきまして、制服の色は黒色ということで定められているところでございます。
    いつ始まったかという御質問でございますが、これは明治憲法下の、明治二十三年制定の裁判所構成法にも制服を着用する旨の規定があったようでございまして、何分古いことで、いつからということの正確なところは確認できませんでしたが、現行の裁判所制度が発足いたしまして、先ほどの最高裁判所規則が制定されて以降は一貫して裁判官の制服は黒色とされているところでございます。
    なぜというところでございますが、制服を着用する実質的な理由、これは、法廷というのが厳粛かつ秩序正しく手続が行われなければならない場所であることからいたしまして、一方ではその公正さと人を裁く者の職責の厳しさをあらわすとともに、制服を着用することによりまして、裁判官みずからがそのような立場にあることを自覚させるという意味があるものと承知しているところでございます。
    色がなぜ黒かということですが、これはどうも諸説あるようでございますが、黒色が他の色に染まることがないという意味で、公正さを象徴する色として最適なものであると考えられたためと言われていることが多いものと承知しているところでございます。

6 関連記事その他
(1) Wikipediaの「法服」には以下の記載があります。
   戦後、裁判所構成法が廃止され、裁判所法が制定されたとき、特に法服の規定はなかった。そのため、従来の法服を着用する者、法服を着用しない者とが混在した。
   最高裁は1949年(昭和24年)に「裁判官の制服に関する規則」(最高裁判所規則)で裁判官について新しく「制服」(法服)を定めた[22]。なお、裁判所書記官も裁判官に似た法服を着用している。
(2) 弁護士ドットコム58号(2021年3月号)45頁及び46頁に,戦後に起こった弁護士の「法服復活」論が載っています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所職員に関する記事の一覧

裁判所の協議会等開催計画

目次
1 裁判所の協議会等開催計画
2 関連記事その他

1 裁判所の協議会等開催計画
(1) 平成18年度以降の,裁判所の協議会等開催計画(最高裁判所事務総局会議の配布資料)を以下のとおり掲載しています(「最高裁判所の,令和4会計年度における協議会等開催計画(令和4年2月15日の最高裁判所事務総局会議資料)」といったファイル名です。)。
・ 令和7年度
令和 6年11月12日付令和 7年2月18日付
・ 令和 6年度
令和 5年12月 5日付令和 6年2月26日付
・ 令和 5年度
令和 4年12月 6日付令和 5年2月14日付
・ 令和 4年度
令和 3年11月 9日付令和 4年2月15日付
・ 令和 3年度
令和 2年11月10日付令和 3年2月16日付
・ 令和 2年度
令和 元年11月12日付令和 2年2月 4日付
・ 平成31年度→令和元年度
平成30年11月13日付平成31年2月 5日付
・ 平成30年度
平成29年11月 7日付平成30年2月 6日付
・ 平成29年度
平成28年11月 8日付平成29年2月 7日付
・ 平成28年度
平成27年11月10日付平成28年2月 2日付
・ 平成27年度
平成26年11月11日付平成27年2月 3日付
・ 平成26年度:平成26年2月頃
・ 平成25年度:平成25年1月29日付
・ 平成24年度:平成24年2月 7日付
・ 平成23年度:
平成23年2月 8日付
・ 平成22年度:平成22年2月 9日付
・ 平成21年度:平成21年2月17日付
・ 平成20年度:平成20年2月26日付
・ 平成19年度:平成19年2月27日付
・ 平成18年度:平成18年2月21日付
(2) 令和元年5月14日付の不開示通知書によれば,平成7年度から平成17年度までの,裁判所の協議会等開催計画は存在しません。


2 関連記事その他
(1)ア ダイヤモンド・オンラインの「「最高裁は政治権力の“忠犬”」元エリート裁判官が暴く司法の闇」(2017年2月22日付)には以下の記載があります。
    事務総局が全国の裁判官の司法判断を統制した役目を担ったのが、「黒い巨塔」にも登場する裁判官協議会だ。
    全国の高等裁判所や地方裁判所の裁判官が出席し、事務総局が決めたテーマについて裁判官から意見を聞き、事務総局の担当局が見解を述べる。この局見解が裁判官に及ぼす影響は絶大で、その実態は「上意下達、上命下服会議、事務総局の意向貫徹のためのてこ入れ会議」(瀬木氏)だ。瀬木氏によれば、1976年10月と1988年10月に開かれた裁判官協議会で、原発訴訟については却下、棄却の方向を示唆した局見解が示され、これが司法判断の基本路線となったという。
イ 昭和49年の裁判所時報639号以降の号においては,会同・協議会に関する記事は消滅しました(裁判官の専門性と独立性(1)のリンク先PDF20頁参照)。
(2) 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。
(3)ア Chatwork HPの「対面会議とオンライン会議の特徴とメリット・デメリットとは?」によれば,オンライン会議のデメリット及びデメリットは以下のとおりです。
(メリット)
・ 場所を選ばずに開催できるので出張経費や移動時間が不要
・ 会議室の確保や紙の会議資料の準備などの手間が不要
(デメリット)
・ 参加者の表情や雰囲気をつかみづらい
・ 通信状況や機器の調子の影響を受けやすい
・ ITリテラシーが必要になる
イ PR TIMESに「WEB会議と対面会議どっちがいい?男女527人にアンケート調査」(2020年10月7日付)が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 裁判所職員総合研修所の研修実施計画
→ 最高裁判所事務総局会議資料としての,裁判所職員(裁判官以外)研修の実施に関する重要な事項(案)も掲載しています。
・ 毎年6月開催の長官所長会同
 平成17年度から平成30年度までの長官所長会同の資料等
・ 令和元年度以降の長官所長会同の資料及び議事概要
 高等裁判所長官事務打合せ
 高等裁判所事務局長事務打合せ
→ 初開催は,平成28年2月25日です。

裁判所沿革誌第7巻の編さん作業

裁判所沿革誌第7巻の編さん作業について(平成29年2月7日の最高裁判所事務総局会議配布資料)の中身は以下のとおりです。
ただし,裁判所沿革誌第7巻の最終原稿(平成29年10月上旬に付議されたはずのもの)は,平成29年の最高裁判所審査室会議の資料に含まれていませんでした平成29年の最高裁判所審査室会議の資料,及び平成31年1月18日答申(平成30年度(最情)答申第57号)参照)。

1 基本方針
裁判所沿革誌は,第1巻から第6巻まで既に刊行されている。第7巻は,記録の連続性を勘案し,第6巻の編さん方針を踏襲して,平成19年1月1日から同28年12月31日までの10年間分の裁判所に関係のある事項を網羅的に暦年方式で集録する。
2 記事の収集及び編集
各局課等(2研修所及び図書館を含む。)において当該局課等関係事項の原稿作成,資料収集を行い,総務局においてこれを編集する(平成19年から平成27年までの原稿は,各局課等から総務局に提出済。) 。
3 掲載事項
(1)  法律,政令,条約,規則,規程等の制定,改廃(担当各局課等)
(2)  委員会,審議会等の開催,委員の任免(担当各局課等)
(3)  最高裁判所長官等の任命,退官(担当人事局)
(4)  訴追,懲戒,叙勲等(担当秘書課,人事局)
(5)  会同等の開催(担当各局課等)
(6)  国際会議出席等(担当秘書課)
(7)  裁判官の各種研究等(担当人事局,司研)
(8)  司法修習生の修習等(担当人事局,司研)
(9)  庁舎等の新営等(担当経理局)
(10)  裁判所の行事等(担当秘書課,広報課,総務局,司研,総研,図書館)
(11)  著名判決等(担当民事局,刑事局,行政局,家庭局)
(12)  その他(担当各局課等)
(13)  司法制度改革に関連する事項(担当各局課等)
(14)  付録(担当各局課等)
4 スケジュール
平成29年2月上旬 平成28年分の原稿作成依頼(3月中旬提出期限)
10月上旬 最終原稿を,審査室・総局会議に付議
10月中旬 業者に原稿交付
平成30年3月 中旬刊行
5 今後の原稿作成手順について
本巻においては,大部分の事務記録の保存期間が5年以下であることを考慮し,毎年,各局課等に対し,上記項目についての原稿作成を依頼してデータの蓄積積を図ることとしたが,第8巻以降も同様の方針としたい。

最高裁判所調査官事務取扱要領

最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)は以下のとおりです。

1 首席調査官の事務
最高裁判所首席調査官(以下「首席調査官」という。)は,最高裁判所首席調査官等に関する規則(以下「首席調査官等規則」という。) 3条の規定に基づく最高裁判所上席調査官(以下「上席調査官」という。)を補佐する者の指名を行うほか,首席調査官等規則1条3項の規定に基づく最高裁判所の裁判所調査官の事務の総括として,次に掲げる事務を行う(以下,首席調査官及び上席調査官以外の最高裁判所の裁判所調査官を「調査官」という。)。
(1)  調査官及び上席調査官の事務の指定
(2)  調査官及び上席調査官の調査に係る事務に関する相談及び調整
(3)  判例集及び裁判集に係る案件の整理
(4)  最高裁判所の裁判所調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官に対する指導
(5)  最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
(6)  その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の総括に係る事務

2 調査官の事務
調査官は,それぞれ,事件の調査に係る事務として,次に掲げる事務のうち首席調査官の指定するものを担当する(以下,次の(1)に掲げる事務を担当する調査官を「民事調査官」,次の(2)に掲げる事務を担当する調査官を「刑事調査官」,次の(3)に掲げる事務を担当する調査官を「行政調査官」という。)。
(1)  民事事件の調査に係る事務(後記(3)に掲げる事務を除く。)
(2)  刑事事件の調査に係る事務
(3)  民事事件のうち次のアからオまでに掲げる事件の調査に係る事務
ア 行政に関する事件(知的財産権に関する事件を除く。)
イ 労働に関する事件
ウ 行政処分の違法を理由とする国家賠償法に基づく損害賠償請求事件
エ 裁判官分限事件
オ その他事案又は争点からみてアからエまでの事件の調査に係る事務を担当する調査官の担当とするのが相当と認められる事件

3 上席調査官の事務
上席調査官は,それぞれ,前記2の(1)から(3)までに掲げる事務のうち首席調査官の指定するものを担当し,首席調査官等規則2条3項の規定に基づく当該事務の整理として,首席調査官を補佐して次に掲げる事務を行う(以下,前記2(1)に掲げる事務及びその整理を所掌する上席調査官を「民事上席調査官」,同(2)に掲げる事務及びその整理を所掌する上席調査官を「刑事上席調査官」,同(3)に掲げる事務及びその整理を所掌する上席調査官を「行政上席調査官」という。)。
(1)   首席調査官の事務の一般的補佐
(2)調査官の調査に係る事務に関する相談及び調整
(3)判例集及び裁判集に係る案件の整理
(4)各上席調査官及び調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官
に対する指導
(5)  最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
(6)  その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の整理に係る事務

4 事件の担当
調査官(上席調査官を含む。)は,事件の分配を受けたときは,その分配された事件を担当してその調査を行い,首席調査官により最高裁判所の裁判所調査官の中から他に当該事件を担当する者の指定がされたときは,その指定された者と共同してその調査を行う。

5 上席調査官を補佐する者
首席調査官は,首席調査官等規則3条の規定に基づき,民事上席調査官及び民事調査官の事務,刑事上席調査官及び刑事調査官の事務若しくは行政上席調査官及び行政調査官の事務又はこれらのいずれにも関係する事務の円滑な遂行に資するため,民事上席調査官,刑事上席調査官若しくは行政上席調査官又は各上席調査官の事務を補佐する者として,調査官の中から,毎年又はこれが欠けたときに,それぞれ若干名を指名することができる。

附則
1 この事務取扱要領は,平成27年4月1日から実施する。
2 最高裁判所調査官室事務取扱要領(昭和56年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)は,廃止する。

東京地裁裁判官会議の概況説明資料

目次
1 東京地裁裁判官会議の概況説明資料
2 関連記事その他

1 東京地裁裁判官会議の概況説明資料
* 一件資料のファイル名は「東京地方裁判所の概況説明資料(令和4年12月期)」といったものです。
(令和5年6月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
→ 一件資料にもしています。
(令和4年12月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
→ 一件資料にもしています。
(令和4年6月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
(令和3年12月期)
・ 一件資料
(令和3年6月期)
・ なし。
(令和2年12月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
 東京地方裁判所刑事部の概況
 東京地方裁判所立川支部の概況
 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
(令和2年6月期)
・ なし。
(令和元年12月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
(令和元年 6月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料
(平成30年12月期)
・ 東京地方裁判所民事部の概況
・ 東京地方裁判所刑事部の概況
・ 東京地方裁判所立川支部の概況
・ 東京地方裁判所管内簡易裁判所の概況
・ 東京地裁の定例裁判官会議検察審査会関係資料


2 関連記事その他
(1) 林総合法律事務所HP「東京地裁での民事訴訟 – 通常部・専門部・集中部」が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 東京高裁裁判官会議の概況説明資料
 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 東京修習の情報

東京高裁裁判官会議の概況説明資料

目次
1 東京高裁の概況説明資料
2 関連記事

1 東京高裁の概況説明資料
・ 東京高裁の裁判官会議で配布された,東京高裁の概況説明資料を以下のとおり掲載しています。
(令和 6年度)
・ 令和 6年度民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 6年度刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 6年度知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
→ 一件資料にもしています。
(令和 5年度)
・ 令和 5年度民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 5年度刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 5年度知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
→ 一件資料にもしています。
(令和 4年度)
・ 令和 4年度民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 4年度刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 4年度知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
→ 一件資料にもしています。
(令和 3年度)
・ 令和 3年度後期裁判官会議 民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 3年度後期裁判官会議 刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 3年度後期裁判官会議 知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
(令和 2年度)
・ 令和 2年度後期裁判官会議 民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 2年度後期裁判官会議 刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 2年度後期裁判官会議 知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
(令和 元年度)
・ 令和 元年度後期裁判官会議 民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 令和 元年度後期裁判官会議 刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 令和 元年度後期裁判官会議 知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
(平成30年度)
・ 平成30年度後期裁判官会議 民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 平成30年度後期裁判官会議 刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 平成30年度後期裁判官会議 知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)
(平成29年度)
・ 平成29年度後期裁判官会議 民事事件概況説明資料(東京高裁民事部)
・ 平成29年度後期裁判官会議 刑事事件概況説明資料(東京高裁刑事部)
・ 平成29年度後期裁判官会議 知的財産関係事件概況説明資料(知財高裁)

2 関連記事
・ 裁判所の司法行政
・ 歴代の東京高裁長官
・ 東京高裁の歴代の代表常置委員
・ 高裁の部総括判事の位置付け
・ 高等裁判所の集中部
・ 東京地裁裁判官会議の概況説明資料

裁判官の年収及び退職手当(推定計算)

目次
1 総論
1の2 裁判官・検察官の給与月額表
2 裁判官の初任給調整手当
3 裁判官の昇給
4 裁判官昇給候補者名簿の大部分は不開示情報であること
5 簡易裁判所判事としての給料を決める方法は不開示情報であること
6 裁判官の早期退職
7 裁判官の報酬等に関する規則及び通達,並びに関連資料
8 国家公務員退職手当法の改正関係資料
9 退職所得に関するメモ書き
10 退職手当と否認対象行為
11 関連記事その他

*1 裁判官の号別在職状況も参照してください。
*2 studyFIRE「年収別 手取り金額一覧(年収100万円~年収1億円まで)」が載っています。

1 総論
(1) 裁判官の年収及び退職手当に関して,以下のデータを掲載しています。ボーナス込みで税引き前の金額です(元データは「裁判官の号別在職状況」です。)。
・ 令和 2年7月1日時点
① 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表
② 地域手当20%の場合
③ 地域手当16%の場合
④ 地域手当15%の場合
⑤ 地域手当12%の場合
⑥ 地域手当10%の場合
⑦ 地域手当 6%の場合
⑧ 地域手当 3%の場合
⑨ 地域手当 0%の場合
・ 令和 元年7月1日時点
① 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表
② 地域手当20%の場合
③ 地域手当16%の場合
④ 地域手当15%の場合
⑤ 地域手当12%の場合
⑥ 地域手当10%の場合
 地域手当 6%の場合
⑧ 地域手当 3%の場合
⑨ 地域手当 0%の場合
イ 令和3年以降につき,総括表の更新予定は未定です。
(2) 裁判官の報酬の支給日は原則として毎月18日ですものの,18日が土日である場合,その直前の金曜日になります(令和2年3月16日最高裁判所規則第5号による改正後の,裁判官の報酬等に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)1条の2第1項)。
(3) 預金保険機構(預金保険法に基づく認可法人)及び日本司法支援センター(総合法律支援法に基づく法人。愛称は「法テラス」)の職員は国家公務員ではありませんが,国家公務員法106条の2第3項・裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の退職管理に関する規則2条に基づく退職手当通算法人の使用人に該当します。
   そのため,裁判官としての退職手当を計算する場合,預金保険機構又は日本司法支援センターの職員であった期間も含まれることとなります。
(4)ア 人事院HPの「国家公務員の退職手当制度の概要」によれば,平成18年度ベースでいえば,判事1号棒と同じ給料をもらっている事務次官のモデル退職手当額は7594万円でした。
イ 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
   憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。


1-2 裁判官・検察官の給与月額表
(1) 最高裁判所が作成した裁判官・検察官の給与月額表を以下のとおり掲載しています。
平成30年1月1日現在平成31年4月1日現在
令和2年1月1日現在令和3年1月1日現在
令和4年4月13日現在令和5年1月1日現在
令和6年1月17日現在令和7年4月24日現在
(2) 裁判官の初任給調整手当,扶養手当,地域手当,広域異動手当,住居手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当,裁判官特別勤務手当,期末手当,勤勉手当及び寒冷地手当は,「裁判官の報酬以外の給与に関する規則」で定められています。
(3) study FIRE HP「年収別 手取り金額一覧(年収100万円~年収1億円まで)」が載っています。


2 裁判官の初任給調整手当
(1) 30期の菊池洋一法務省大臣官房司法法制部長は,平成19年11月6日の衆議院法務委員会において以下のとおり答弁しています。
 初任給調整手当についてのお尋ねでございますけれども、これは、司法修習生の修習を終えた者の中から判事補、検事を採用するということが困難な状況になったことはございます。要するに、委員御指摘のとおり、弁護士さんの中で給料が高い方がいらっしゃるということが背景にあるんだろうと思います。
 そこで、判事補と検事の給与面での待遇を改善して、裁判官、検察官への任官希望者を増加させるという目的で、昭和四十六年四月に初任給調整手当という制度を設けたところでございます。その後、弁護士の給与と初任の判事補、検事の給与との格差が大きくなりましたので、日本弁護士連合会にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与の実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて、昭和六十一年と平成元年に初任給調整手当を増額したところでございます。
 そして、その増額の結果、ここ数年の任官者を見てみますと、毎年、司法修習生の中から、判事補については百十名前後、それから検事については八十名程度の任官者を得ることができておりまして、裁判官、検察官にふさわしい適材を確保することができているというふうに現時点では考えております。これは、初任給調整手当が任官者を確保するという効果を果たしているというふうに考えております。
 ただ、今後情勢がどうなるかわかりませんので、今後の任官者の状況等を見守っていくとともに、その支給額の改定を検討する際には、必要に応じて、また日弁連にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与水準といったようなものを調査して、その結果を踏まえて対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
(2) 裁判官の初任給調整手当は現在,裁判官の報酬以外の給与に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)2条で定められていますところ,別表第一によればその金額は以下のとおりであって,検察官の初任給調整手当に関する準則(昭和46年4月1日付の法務大臣訓令)記載の金額と同じです。
判事補 5号の場合,1万9000円
判事補 6号の場合,3万 900円
判事補 7号の場合,4万5100円
判事補 8号の場合,5万1100円
判事補 9号の場合,7万    円
判事補10号の場合,7万5100円
判事補11号の場合,8万3900円
判事補12号の場合,8万7800円


3 裁判官の昇給
(1)ア 最高裁HPにある,平成14年7月16日付の「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」「第2 裁判官の人事評価の現状と裁判官人事の概況」には,「任官後,判事4号まで(法曹資格取得後約20年間)は,長期病休等の特別な事情がない限り,昇給ペースに差を設けていない。」と書いてあります。
イ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成30年11月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
   裁判官の昇給の運用に当たりましては、裁判官に任官いたしました後、一定期間は、約二十年の間でございますが、同期がおおむね同時期に昇給する運用を行っているところでございます。
   その後は、それぞれの裁判官の経験年数のほか、ポストや勤務状況等を考慮いたしまして報酬を決定しているところでございます。
(2) 平成30年9月30日に依願退官した35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「裁判官の身分保障について(2)」(平成30年12月31日付)には,以下の記載があります。
   「実際的」にも、私自身、記憶は定かでないが(捨ててはいないので実家に送った荷物をひっくり返せば、最高裁判所からの俸給辞令が出てくるとは思うが)、たしか、上野支部に着任した年であるから、多分、世間で言われているように任官18年目に判事4号俸を頂くようになってから、任官約35年半後に退官するまでずっと4号俸のままであったが、その給与額は、一番多かった時期で、月額額面90万6000円だったから(ご承知のように、裁判官の俸給額もいったん減額され、私が退官した時点では81万8000円。注1)、経営責任や、部下の不祥事について責任を負う必要がある管理職でもない(注2)、単なる「サラリーマン」としては破格の高給取りといえるであろう。
(3) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)87頁には以下の記載があります。
   裁判官の生活が世間一般とは異なった環境に置かれていることは否定できない。一般の企業人のように取引先と懇談するような機会は通常ないし、周囲の目があるから酒を飲むにも場所や相手は限られる。住まいは裁判官宿舎で、盆暮れの付け届けはないし、あったら送り返すのが夫人の仕事である。ともすると昇給や転勤といった話題ばかりがとびかう、一種の閉鎖社会が育つ可能性がある。
(4) 平成30年7月1日時点の裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表によれば,37期までが判事1号棒であり,38期ないし40期が判事2号棒であり,41期ないし45期が判事3号棒であり,46期ないし51期が判事4号棒です。


4 裁判官昇給候補者名簿の大部分は不開示情報であること
   平成28年度(最情)答申第13号(平成28年6月3日答申)には以下の記載があります(ナンバリングを置き換えて,改行を追加しています。)。
① 本件対象文書(山中注:平成27年9月16日の最高裁判所裁判官会議の議事録に添付された平成27年10月1日付けの裁判官昇給候補者名簿で,最高裁判所事務総局人事局が作成したものであり,表紙のほか3枚からなるもの)を見分したところ,本件不開示部分には,具体的な昇給候補者の氏名,期別,昇給号報,官職名等が記載されていることが認められるところ,これらの情報は,昇給候補者ごとに個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものであると認められるから,これらの情報は,法5条1号に規定する不開示情報に相当する情報であり,同号ただし書イ,ロ及びハのいずれにも相当せず,取扱要綱記第3の2による部分開示も相当でない。
②  また,本件対象文書を見分したところ,本件不開示部分に記載されている情報には,具体的に昇給する者の期別や昇給号報,その人数等の情報が含まれていることが認められるところ,そのような情報は,最高裁判所事務総長が説明するとおり,人事事務担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない性質のものであると推測される。
 そうすると,これらが公になると,当該情報を知った者から不当な働き掛けがされたり,裁判官の職務遂行に無用の影響を与えたりすることがあり,今後の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとする最高裁判所事務総長の説明も,十分首肯できるものである。
 したがって,これらの情報については,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当すると認められる。
苦情申出人は,様々な主張をするが,いずれも上記判断を左右するものではない。


5 簡易裁判所判事としての給料を決める方法は不開示情報であること
(1) 平成30年12月12日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
ア 本件対象文書に記載されている情報は,簡易裁判所判事に任命された際の報酬の決定事務に関与するごく一部の職員にしか知られることのない極めて機密性の高い性質のものであるところ,文書の標題も含め, これを公にすると, この情報を知った者に無用な憶測を生じさせたり,職員の適正かつ円滑な職務遂行に好ましくない影響が及ぶなどして,裁判所の人事事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,全体として行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)第5条第6号二に定める不開示情報に相当する。
   さらに,本件対象文書には,簡易裁判所判事に任命された際の報酬の決定に関する情報が記載されており, これを明らかにすると,特定の者の報酬に関する情報が明らかになる可能性があり,同情報は法第5条第1号に定める不開示情報である個人識別情報に相当する。
イ よって,本件対象文書を不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件対象文書は,「裁判所書記官又は裁判所事務官から簡易裁判所判事に任用された場合, どのような基準で簡易裁判所判事としての給料を決めることになっているかが分かる文書(最新版)」です。


6 裁判官の早期退職
(1) 以下の裁判官については定期的に,国家公務員退職手当法8条の2第1項1号に基づく早期退職希望者の募集が実施されています。
① 下級裁判所の裁判官(簡易裁判所判事を除く。)で,基準日現在の年齢が50歳以上65歳未満の者
② 簡易裁判所判事で,基準日現在の年齢が55歳以上70歳未満の者
(2) 早期退職に応募しようとする裁判官は,早期退職希望者の募集に係る応募申請書(国家公務員退職手当法の規定による早期退職希望者の募集及び認定の制度に係る書面の様式等を定める内閣官房令(平成25年総務省令第58号)別記様式第一)に必要事項を記入の上,募集の期間内に,地家裁所長又は高裁事務局長に提出します。
(3) 46期の岡口基一裁判官のように裁判官分限法に基づく懲戒処分(戒告又は1万円以下の過料)を受けたことがある場合,国家公務員法82条の規定による懲戒処分に準ずる処分を受けたこととなるため,早期退職に応募できません(国家公務員退職手当法8条の2第3項4号)。
(4) 早期退職の認定を受けて退職した場合,定年退職と同じ基準で退職手当を支給してもらえます(国家公務員退職手当法5条1項6号)から,35年以上勤務した後に早期退職した場合,定年退職と同じ退職手当をもらえます「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」参照)。
(5) 11年以上勤務した裁判官が,任期の終了に伴う裁判官の配置等の事務の都合により任期終了1年前に依願退官した場合,定年退官に準ずる支給率で退職手当を支給してもらえます(勤続期間25年未満の裁判官につき国家公務員退職手当法4条1項2号・国家公務員退職手当法施行令3条1号,勤続期間25年以上の裁判官につき国家公務員退職手当法5条1項5号・国家公務員退職手当法施行令4条・3条1号)。

7 裁判官の報酬等に関する規則及び通達,並びに関係資料
(1) 規則及び通達
・ 裁判官の報酬以外の給与に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)
・ 裁判官の報酬以外の給与に関する規則の運用について(平成29年3月28日付の最高裁判所長官の通達)
・ 裁判官の報酬以外の給与の支給について(平成29年3月28日付の最高裁判所事務総長の通達)
・ 裁判官の報酬等に関する規則の運用について(令和2年11月5日付の最高裁判所長官の通達)
・ 裁判官の報酬以外の給与の支給について(令和2年11月30日付けの最高裁判所事務総長の通達)
(2) 関連資料
・ 裁判官以外の裁判所職員の俸給等の支給に関する規則及び裁判官の報酬以外の給与に関する規則の一部を改正する規則並びに関連する議決(令和2年2月26日付)
・ 裁判官特別勤務手当等について(平成30年1月1日現在)


8 国家公務員退職手当法の改正関係資料
(1) 内閣官房HPの「国家公務員退職手当法等の改正について」には,平成17年以降の改正情報が載っています。
(2) 国家公務員退職手当法の改正関係資料を以下のとおり掲載しています。
・ 平成29年12月15日法律第79号(平成30年1月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案 御説明資料(平成29年9月の内閣人事局の文書)
・ 平成26年11月19日法律第107号(平成27年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 説明資料(平成26年9月の内閣人事局の文書)
・ 平成24年11月26日法律第96号(平成25年1月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法等の一部改正法【解説】(退職手当関係)(平成24年10月16日の総務省人事・恩給局の文書)国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案(国家公務員共済組合法関係)の逐条解説(平成24年10月の,財務省主計局給与共済課の文書)
・ 平成20年12月26日法律第95号(平成21年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 逐条解説(平成20年10月の総務省人事・恩給局の文書)
・ 平成17年法律11月7日第115号(平成18年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 逐条解説(平成17年9月の総務省人事・恩給局の文書)


9 退職所得に関するメモ書き
(1)ア 最高裁昭和58年9月9日判決は,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    退職所得について、所得税の課税上、他の給与所得と異なる優遇措置が講ぜられているのは、一般に、退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金員は、その内容において、退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきたことに対する報償及び右期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質をもつとともに、その機能において、受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合いわゆる老後の生活の糧となるものであつて、他の一般の給与所得と同様に一律に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから、かかる結果を避ける趣旨に出たものと解される。
    従業員が退職に際して支給を受ける金員には、普通、退職手当又は退職金と呼ばれているもののほか、種々の名称のものがあるが、それが法にいう退職所得にあたるかどうかについては、その名称にかかわりなく、退職所得の意義について規定した前記法三〇条一項の規定の文理及び右に述べた退職所得に対する優遇課税についての立法趣旨に照らし、これを決するのが相当である。かかる観点から考察すると、ある金員が、右規定にいう「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」にあたるというためには、それが、(1) 退職すなわち勤務関係の終了という事実によつてはじめて給付されること、(2) 従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、(3) 一時金として支払われること、との要件を備えることが必要であり、また、右規定にいう「これらの性質を有する給与」にあたるというためには、それが、形式的には右の各要件のすべてを備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、右「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである。
イ 所得税基本通達30-1ないし30-15は,所得税法30条の退職所得に関するものです。
ウ 税務署の見解を否定して退職所得に該当すると判断された事例として,国税不服審判所平成23年5月31日裁決があります。
(2)ア 課税退職所得金額は,(退職に基因する源泉徴収前の収入金額-退職所得控除額)×2分の1で計算します(1000円未満切り捨て)。
イ 「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合,課税退職所得金額から①所得税の源泉徴収(5%ないし45%),並びに②6%の市町村民税(東京都の場合,特別区民税)及び③4%の道府県民税(東京都の場合,都民税)の特別徴収をされた(①ないし③につき100円未満切り捨て)だけで課税関係が終了しますから,自分で確定申告をする必要はありません(国税庁HPの「退職金と税」参照)。
ウ 生活や実務に役立つ計算サイト「退職金の税金」を使えば,退職金から退職金手取額の計算ができます。

10 退職手当と否認対象行為
・ 最高裁平成2年7月19日判決は,国家公務員退職手当法に基づく退職手当に関して,以下の判示をしています。
    退職者に対し退職手当が支払われたことにより、退職手当請求債権は消滅し、既に支払われた金員について、債権に対する差押禁止を規定する民事執行法一五二条二項の適用はないから、その後右退職者が破産宣告(現在の破産手続開始決定に相当するもの)を受けたときは、右退職手当相当の金員は破産財団を構成するというべきであり、破産者が右退職手当をもって特定の債権者に対し債務を弁済した後破産宣告を受けた場合に、その金額が退職手当の四分の三の範囲内であっても、その弁済は破産法七二条二号(現在の破産法162条1項1号イ)の否認の対象となり得るものと解するのが相当である。

11 関連記事その他
(1) 酒居会計マネーブログ ~税金・転職・起業・株式投資・ふるさと納税~「年収別 手取り金額 一覧 (年収100万円~年収1億円まで対応)」が載っています。
(2) 民間労働者の場合,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されます(最高裁平成28年2月19日判決)。
(3) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には「憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。」と書いてあります。
(4)ア 以下の資料も参照してください。
・ 裁判官の報酬等に関する規則の運用について(令和3年8月19日付の最高裁判所長官の文書)
・ 一般職員に対する期末手当及び勤勉手当の一時差止処分に関する報告及び勤勉手当決定調書の作成等について(令和3年8月19日付の最高裁判所人事局長の文書)
・ 裁判所職員の退職手当の取扱いについて(平成18年3月31日付の最高裁人事局長通達)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の昇給
・ 裁判官の給料と他の国家公務員の給料との整合性に関する答弁例
・ 裁判官の兼職
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 裁判官の退官情報
・ 裁判官の早期退職
・ 50歳以上の裁判官の依願退官
・ 平成18年度以降の,公証人の任命状況
・ 裁判官の「報酬」,検察官の「俸給」及び国家公務員の「給与」の違い
・ 戦前の裁判官の報酬減額の適法性に関する国会答弁
・ 裁判官の報酬減額の合憲性に関する国会答弁

裁判所職員制度の概要-参考資料-
52頁です。

裁判所の所持品検査

目次
1 所持品検査を実施している下級裁判所の庁舎

2 入庁時の所持品検査を免除されている人
3 所持品検査の適法性に関する最高裁判例
4 エックス線検査の適法性に関する最高裁判例
5 最高裁判所長官「新年のことば」等
6 所持品検査実施に関する大阪弁護士会宛の連絡文書の一部は開示されないこと
7 最高裁判所判事等は襲撃の対象となるおそれが高いと考えられていること等
8 所持品検査の根拠となる最高裁判所規程は存在しないこと等
9 法廷内で過去に発生した事件等
9の2 所持品検査に関する平成28年3月16日の国会答弁
9の3 所持品検査に関する平成30年11月22日の国会答弁
10 所持品検査を実施していた東京家裁1階の玄関で殺人事件が発生したこと等
11 「法廷秩序維持問題」(昭和28年1月)の記載
12 関連記事その他

1 所持品検査を実施している下級裁判所の庁舎
(1) 令和元年10月現在,所持品検査を実施している下級裁判所の庁舎は以下のとおりであり,合計18の庁舎で実施されています。

ア 東京高裁管内の庁舎
① 東京高裁及び東京地裁の庁舎(平成 7年 5月16日開始)
② 東京家裁及び東京簡裁の庁舎(平成25年10月 1日開始)
③ 東京地家裁立川支部の庁舎 (平成31年 4月 1日開始)
④ 横浜地裁の庁舎      (平成30年 3月 1日開始)
⑤ 横浜家裁の庁舎      (平成31年 4月 1日開始)
⑥ さいたま地家裁の庁舎   (平成30年 3月 1日開始)
⑦ 千葉地家裁の庁舎     (平成30年 2月13日開始)
イ 大阪高裁管内の庁舎
① 大阪高裁及び大阪地裁の庁舎(平成30年 1月 9日開始)
② 大阪家裁の庁舎      (平成31年 4月 1日開始)
③ 京都地裁の庁舎      (平成31年 4月 1日開始)
④ 神戸地裁の庁舎      (平成30年 9月 3日開始)
ウ 名古屋高裁管内の庁舎
① 名古屋高裁及び名古屋地裁の庁舎(平成30年7月4日開始)
エ 広島高裁管内の庁舎
① 広島高裁及び広島地裁の庁舎(平成30年10月 1日開始)
② 広島高裁岡山支部及び岡山地家裁の庁舎(令和元年10月 1日開始)

オ 福岡高裁管内の庁舎
① 福岡高裁,福岡地裁及び福岡家裁の庁舎(平成27年1月5日開始)
・ 福岡家裁の所持品検査については,福岡高等・地方・家庭・簡易裁判所及び検察審査会合同庁舎となったことに伴い,開始しました。
カ 仙台高裁管内の庁舎
① 仙台高裁及び仙台地裁の庁舎(平成30年 1月15日開始)
キ 札幌高裁管内の庁舎
① 札幌高裁及び札幌地裁の庁舎(平成25年 3月 1日開始)
ク 高松高裁管内の庁舎
① 高松高裁及び高松地裁の庁舎(平成31年 4月 1日開始)
(2)ア 42期の村田斉志最高裁判所総務局長は,平成31年4月9日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(最高裁のほか,千葉地裁及び千葉家裁を別にカウントしています。)。
 本日現在で常時検査を実施しております裁判所は、庁舎の数で申し上げますと全部で十九ございまして、具体的に申し上げますと、最高裁、東京高地裁、大阪高地裁、名古屋高地裁、広島高地裁、福岡高地家裁、仙台高地裁、札幌高地裁、高松高地裁、東京地家裁立川支部、東京家裁、横浜地裁、横浜家裁、さいたま地家裁、千葉地裁、千葉家裁、大阪家裁、京都地裁、神戸地裁、これら全部で十九庁舎でございます。
イ 千葉地裁及び千葉家裁は同じ敷地にありますから,別の庁舎としてカウントするのは変であると思います。

2 入庁時の所持品検査を免除されている人
(1) 仙台地裁HPに掲載されている平成30年5月15日開催の仙台地方裁判所委員会(第33回)議事概要3頁に以下の記載があります。
○ 入庁時の所持品検査を免除されている人やケースはあるかお聴きしたい。
□ 裁判所職員以外では,例えば,検察庁で身分を確認しているということでバッジや身分証明書を携帯する検察官や検察事務官,弁護士会で身分を確認しているということでバッジや身分証明書を携帯する弁護士や弁護士事務所の事務員,そのほかにも裁判所にほぼ毎日のように出入りする業者の方で,事前に申請をした上で一定の条件の下で入庁許可証を発行されている方などがあげられる。また,裁判員の方も,選任後は裁判所職員の身分になるということで,特に検査を受けずに入庁している。
(2) ニュースサイト ハンターHPの「裁判所「所持品検査」フリーパス 司法記者クラブに資格はあるか? 」(平成27年1月15日付)には以下の記載があります。
裁判所側に尋ねたところ、所持品検査をパスして入庁できるのは、まず裁判官、次に検察官、弁護士、裁判所職員だという。こちらから言い出すまで出てこなかったが、じつは「司法記者クラブ」所属の記者もフリーパス。民間人では唯一といっていい「例外」なのである。記者クラブ側は、“大手メディアの記者なら当たり前”と思っているのだろうが……。

3 所持品検査の適法性に関する最高裁判例
(1) 最高裁昭和43年8月2日判決は以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
①   おもうに、使用者がその企業の従業員に対して金品の不正隠匿の摘発・防止のために行なう、いわゆる所持品検査は、被検査者の基本的人権に関する問題であつて、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとつて必要かつ効果的な措置であり、他の同種の企業において多く行なわれるところであるとしても、また、それが労働基準法所定の手続を経て作成・変更された就業規則の条項に基づいて行なわれ、これについて従業員組合または当該職場従業員の過半数の同意があるとしても、そのことの故をもつて、当然に適法視されうるものではない。
 問題は、その検査の方法ないし程度であつて、所持品検査は、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない。
②   そして、このようなものとしての所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行なわれるときは、他にそれに代わるべき措置をとりうる余地が絶無でないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受忍すべき義務があり、かく解しても所論憲法の条項に反するものでないことは、昭和二六年四月四日大法廷決定(民集五巻五号二一四頁)の趣旨に徴して明らかである。
(2)ア   最高裁昭和53年9月7日判決は以下のとおり判示しています。
   警職法二条一項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべぎである最高裁判所昭和五二年(あ)第一四三五号同五三年六月二〇日第三小法廷判決参照)。
イ 最高裁昭和63年9月16日決定最高裁平成7年5月30日決定及び最高裁平成15年5月26日決定は,最高裁昭和53年9月7日判決を先例として引用しています。

4 エックス線検査の適法性に関する最高裁判例
   最高裁平成21年9月28日決定は以下のとおり判示しています(改行を追加しました。)。
   本件エックス線検査は,荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察したものであるが,その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上,内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって,荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから,検証としての性質を有する強制処分に当たるものと解される。
そして,本件エックス線検査については検証許可状の発付を得ることが可能だったのであって,検証許可状によることなくこれを行った本件エックス線検査は,違法であるといわざるを得ない。

5 最高裁判所長官「新年のことば」等
(1)ア 平成29年1月1日付の最高裁判所長官「新年のことば」には以下の記載があります。
   昨年4月に,ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書及び最高裁判所裁判官会議談話が公表され,かつての開廷場所指定の運用が違法と判断されたことは御承知のとおりです。報告書は,司法行政事務に携わる職員に対し,人権に対する鋭敏な感覚を持って事務処理を行うよう求めていますが,このことは裁判所で働く全ての裁判官及び職員に対し向けられるべきものでもあります。長らく続けられてきた事務処理であっても,それが法令等に則ったものであるかを再確認する意識を失わず,併せて社会通念上是認されるものであるかといった観点にも目配りをして,改めるべきは躊躇なく見直すという姿勢が求められます。
イ 平成31年1月1日付の最高裁判所長官「新年のことば」には以下の記載があります。
 改めていうまでもなく,裁判所は,法にのっとり社会に生起する紛争の解決を図ることによって法の支配を実現する使命を託されています。裁判所に働く者一人一人が,それぞれの職場において,安易に先例に頼るのではなく,常にその行為が適正なものといえるかを問う姿勢で職務に当たることが求められていることに思いを致し,自らを戒めなければならないと感じています。
(2) 最高裁判所長官「新年のことば」は毎年,裁判所時報1月1日号に掲載されています(「裁判所時報」参照)。
(3)ア 平成29年11月22日付の司法行政文書不開示通知書によれば,札幌高裁及び福岡高裁で実施されている所持品検査が,最高裁昭和53年6月20日判決が判示する所持品検査の適法性の要件を満たしているかどうかを検討した際に作成した文書は存在しません。
イ 平成29年12月25日付の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁判所が,平成25年3月1日以降に,東京高裁,福岡高裁及び札幌高裁の所持品検査の運用状況に関して取得した文書は存在しません。

6 所持品検査実施に関する大阪弁護士会宛の連絡文書の一部は開示されないこと
(1) 大阪高等・地方・簡易裁判所庁舎における入庁検査の実施について(平成29年12月12日付の大阪高裁事務局長の文書)(黒塗りあり)につき,黒塗りの理由として,平成31年3月12日付の理由説明書の「最高裁判所の考え方及びその理由」には以下の記載があります。

ア 原判断庁[山中注:大阪高裁のこと。]が開示しないこととした部分には,入庁検査の具体的な方法や所持品検査の使用機器,所持品検査除外者に関する事項などが記載されているところ,これらの情報を公にすると,入庁検査の妨害等を企てられて庁舎内に危険物を持ち込まれるおそれがあり,ひいては裁判所利用者等の生命又は身体に危険が及ぶおそれがある。
   よって,これらの情報を公にすることは,適正な警備事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから, これらの情報は行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
イ なお,苦情申出人は,原判断において不開示とした情報のうち,入庁検査の実施時間帯,障がい者等の入館時の検査方法及び所持品検査の使用機器については,原判断庁の当直室の利用実態や原判断庁の入口を観察することによって誰でも認識できる情報として, 同使用機器及び所持品検査除外者に関する事項については, 「仙台地方裁判所委員会(第33回)議事概要」において開示されている情報であるとして不開示情報に相当しないと主張する。
   しかし, これらの情報(以下「本件不開示情報」という。)については,いずれも原判断庁において公表していない情報であり,原判断庁を観察すること等により認識できる情報及びその他の庁の入庁検査につき公表されている情報からは,いずれも原判断庁における取扱いが推測されるのみであり,本件不開示情報が明らかになるものではない。また,警備態勢については,各庁の規模や構造等の事情を踏まえて決められるものであるところう入庁検査の情報につき他の庁で公表されていることをもって,各庁における当該情報を開示しなければならないとすると,それらの情報を分析されることにより,総合的に裁判所の警備態勢の傾向が予測され,今後の裁判所全体における警備実施に支障を及ぼすおそれがある。
ウ したがって,本件不開示情報を含む不開示部分についての原判断は相当であると考える。
(2) 全く黒塗りのない文書が大阪弁護士会HPに「大阪高等・地方・簡易裁判所庁舎における入庁検査の実施について(平成29年12月12日付の大阪高裁事務局長の文書)」として載っていますところ,令和元年10月4日付の理由説明書の「理由」には以下の記載があります。
   本件対象文書中の不開示部分は,いずれも公にすることにより適正な警備事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,原判断庁である大阪高等裁判所が不開示と判断したものである。
   苦情申出人は,本件対象文書は,マスキングされていない状態で大阪弁護士会ホームページにおいて公表されているにもかかわらず,入庁検査の妨害等を企てられて庁舎内に危険物を持ち込まれるといった事態は発生していないことから,上記不開示部分は,不開示情報には当たらない旨主張する。
   この点,文書開示手続においては,開示申出を受けた各裁判所が,対象となる文書の内容を個別具体的に検討し,各裁判所が独自に開示・不開示の判断を行うものであるところ,対象文書が特定団体のホームページ上で公表されているとしても,それは当該特定団体が自らの判断で公表しているに過ぎず,開示申出を受けた裁判所の判断を拘束するものではない。
   なお,対象文書中の不開示部分は,警備に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすることは,警備レベルの低下を招くことになるから, この情報の流通を拡大させることは,原判断庁にとって,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれにつながる。また,現在まで庁舎内の安全が脅かされる事態が発生していないからといって,今後も発生するおそれがないとはいえない。
   よって,原判断は相当であると考える。

7 最高裁判所判事等は襲撃の対象となるおそれが高いと考えられていること等
(1) 最高裁判所判事の視察日程は不開示情報に該当するとした,平成28年度(情)答申第14号(平成28年10月24日答申)の記載
・ 最高裁判所は,司法権及び司法行政権の最高機関であるから,最高裁判所判事が要人として犯罪行為等の標的となることは否定できない。そして,憲法週間における最高裁判所判事による下級裁判所の視察が毎年行われるものであることも考慮すると,視察の際の日程等の詳細が公になると,それを蓄積して移動手段や日程等の傾向を分析され,今後の視察の行動を予測されるなどして,犯罪行為等の実行に利用されるおそれがあるとする上記説明も,不合理とはいえない。
(2) 最高裁判所長官室の写真等を不開示情報に該当するとした,平成29年度(最情)答申第27号(平成29年8月7日答申)の記載
・ 本件不開示部分(注:最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の写真並びにその撮影場所)のうちその余の部分については,その記載等の内容からすれば,上記部分を公にすると,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の位置及び構造が明らかになるものと認められる。そうすると,最高裁判所長官及び最高裁判所判事は,裁判所の業務に係る意思決定において極めて重要な役割を担っており,最高裁判所首席調査官は,最高裁判所の裁判所調査官の事務を総括していることから,いずれも襲撃の対象となるおそれが高く,上記各室は極めて高度なセキュリティが要請されるという最高裁判所事務総長の上記説明が不合理とはいえず,上記部分を公にすることにより,庁舎管理事務及び警備事務に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
(3) 最高裁判所の,大法廷棟,小法廷棟,図書館棟,裁判官棟,裁判部棟,事務北棟及び事務西棟の位置関係等は不開示情報に該当するとした,平成28年度(最情)答申第48号(平成29年3月17日答申)
・ 原判断において不開示とした部分は,本件対象文書中の傍聴人や裁判所見学者が立ち入る場所を除く場所に係る部分であり,当該部分については,法5条6号に相当するとしている。このように判断した理由は,次のとおりである。
   すなわち,最高裁判所の庁舎は,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止していることから明らかなとおり,庁舎全体についての高度なセキュリティを確保する必要のある建物であることから,原則として最高裁判所の間取りや位置関係等が分かる部分は,これらを公にすることにより全体として警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,不開示とすべきものである。
   一方で,最高裁判所庁舎のうち,法廷等来庁者の出入りが予想され,一般に公開されていると評価できる部分については,例外的に当該部分の位置関係等が分かる情報を開示したとしても特段の警備事務等の支障はない。原判断においては,このような考え方に従って,開示すべき部分と不開示とすべき部分とを決したものである。
   なお,下級裁判所では,書記官室において,当事者に対する手続教示や書面の授受等が行われており,当事者等の出入りが予定されていることから,書記官室の位置関係を開示しても警備事務に支障を及ぼすものではない。しかし,最高裁判所においては,手続教示や書面の授受といった下級裁判所の書記官室で行われている対外的業務を全て第二訟廷事務室で行っており,書記官室への当事者等の出入りは予定されていない。そうすると,最高裁判所の書記官室は一般に公開されている部分とはいえないことから,書記官室の位置関係が分かる部分については,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,不開示とすることが相当である。

8 所持品検査の根拠となる最高裁判所規程は存在しないこと等
(1)   平成30年2月13日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所における所持品検査の根拠となっている最高裁判所規程(条文中に「所持品検査」という文言を含むもの。)は存在しません。
(2) 以下の最高裁判所規則を掲載しています。
① 法廷等の秩序維持に関する規則(昭和27年9月1日最高裁判所規則第20号)
② 裁判所傍聴規則(昭和27年9月1日最高裁判所規則第21号)
(3) 以下の通達を掲載しています。
① 裁判所の庁舎等の管理に関する規程の運用について(昭和43年6月10日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 別紙として,裁判所の庁舎等の管理に関する規程(昭和43年6月10日最高裁判所規程第4号)が含まれています。
② 裁判所の庁舎等の管理に関する規程の運用について(昭和60年12月28日付の最高裁判所事務総局経理局長通達)
③ 法廷秩序維持等のための警備状況の報告について(平成4年12月24日付の最高裁判所刑事局長通達)

9 法廷内で過去に発生した事件等
(1) 昭和27年5月13日の午後,広島地裁で実施された勾留理由開示において,多数の傍聴人が法廷の柵を乗り越えて4人の被疑者を奪還するという事件が発生しました(Wikipediaの「広島地裁被疑者奪回事件」参照)。
(2) 昭和49年10月29日の午後,社青同解放派(日本の新左翼)の5人が東京高裁長官室及び東京高裁事務局長室に乱入するという事件が発生していました(Wikipediaの「東京高裁長官室乱入事件」参照)。
(3) 昭和51年9月17日,社青同解放派(日本の新左翼)の3人が公用車乗車中の東京高裁刑事部部総括を殴打するという事件が発生していました(Wikipediaの「東京高裁判事襲撃事件」参照)。
(4) 平成29年6月16日,盗撮等の罪で懲役1年の実刑判決を受けた保釈中の被告人Aが,判決宣告中にあらかじめ法廷内に持ち込んだ刃物で,傍聴席にいた2名の警察官(被告人Aを取り押さえようとした人です。)に斬りつけて怪我を負わせ,殺人未遂罪によりその場で現行犯逮捕されたという事件が発生しました(刑事被告事件の法廷等の入口における所持品検査の実施について(平成29年6月16日付の最高裁判所刑事局第二課長の事務連絡),及びM家の実情ブログ「【○○○○】経歴は?YouTube動画が超絶キモイ!過去の犯罪歴~」(○○○○は被告人Aの実名につき省略)参照)。

9の2 所持品検査に関する平成28年3月16日の国会答弁
・ 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長は,平成28年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 委員御指摘のとおり、裁判所におきましては、さまざまな利害の相対立する事件等を日常的に扱っております。その中で、適切に裁判を実施していくとともに、来庁する国民が安全かつ安心して裁判所を利用できるということ、そのために庁舎内の安全を確保するということ、これは裁判所の重要な責務であるというふうに考えているところでございます。
 そのために、日常的に、庁舎敷地内への入構、あるいは庁舎内への入庁、法廷内への入退出、法廷での審理、そういった場面におきまして、事案に応じまして適切な警備体制を整えているというところでございます。

② さらに、事件の内容等によりまして具体的な危険が予測されるという場合もございます。そういう場合につきましては、必要に応じまして、庁舎の出入り口を一部閉鎖したり、庁舎の出入り口あるいは法廷の出入り口で金属探知機等による検査を行うなど、危険の態様、度合いに応じまして警備体制をとっているところでございます。
 さらに、配慮すべき事案におきましては警察官への派遣要請なども行っているところでございますが、そういった警備体制につきましては、構内、庁舎全般の日常的な警備、これは、守衛それから外注の警備員によって業務を行っているという体制でございます。
 また、法廷に関しましては、これは必要に応じまして裁判所の職員を配置させていただいて対応させていただいている、また場合によっては警察官への派遣要請を行う、そういった形で対応させていただいているところでございます。

9の3 所持品検査に関する平成30年11月22日の国会答弁
(1) 42期の村田斉志最高裁判所総務局長は,平成30年11月22日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
・ 入庁時のゲート式による所持品検査につきましては今委員から御指摘のあったとおりでございますけれども、それ以外にも法廷警備という形での警備にも努めておるところでございまして、これは事案に応じて裁判体が適切な判断をしているものと承知をしております。一般的には、具体的な警備の方策を検討する際には、裁判の公平ということについても意識をしながら検討されるものと考えられます。
 なお、御指摘の中で、警備を行うことが裁判の公開の関係からも問題があり得るかという点ですけれども、傍聴席にいる方に危害が加えられるようなことになりますと、これは裁判の公開という理念を脅かすということにもなりかねませんので、裁判の公開を確保するためにも法廷の安全確保が必要であると考えております。
 また、法曹三者あるいは関係者との合意形成といった点についての御指摘ございましたけれども、裁判所での安全を確保するというのは、これは裁判所の責任で行うべきものでございますので、事案に応じて裁判体が判断するということになりますので、法曹三者等と合意をしなければ実施ができないというものではないと考えておりますけれども、裁判所がこの責任を果たすためには、関係者の御意見をちゃんと踏まえて、その上で実施するか否かを検討しているということになろうかと思います。
 それからまた、最初に御指摘のあった入庁時の一般的な所持品検査については、弁護士会あるいは検察庁に対しても事前に丁寧な説明を行った上で実施に至っているものというふうに承知をしております。
(2) 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長は,平成30年11月22日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
・ 裁判所を安全、安心な形で利用していただくということ、そのために庁舎内の安全を確保すること、これは裁判所の重要な責務の一つであるというふうに考えているところでございます。
 先ほど委員から御指摘がありました金属探知機を用いた所持品検査、それにつきまして、入庁時に行うというものもございますし、それ以外に、各庁の実情に応じて法廷入廷時の所持品検査、こういったものにつきましても、外注警備員によるスポット的な対応を行うなどして体制を整えているところでございます。
 今後でございますけれども、このような予算を確保していくということ、これ自体は非常に重要なことであるというふうに考えておりますので、裁判所としても、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
(3) 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成30年11月22日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
・ 法廷警備員の警備業務に関する研修につきましては、各裁判所の実情に応じて行われているところでございます。
 例えば、東京地裁におきましては、法廷警備員の採用時に約半年間にわたって警備技術の教育を行っておりますほか、所持品検査の基本的動作等をまとめたDVDを整備しておりまして、このDVDについては、研修等での利用を希望する他の裁判所にも送付をして、警備に関する知識、技能の共有を図っているところでございます。
 また、警備に関するマニュアルを整備したり、あるいは県警の職員を講師に招いて警備に関する講義を実施している裁判所もございまして、こうした取組により、法廷警備員に必要な知識、技能の習得が図られているものと認識しております。
 今後とも、昨今の裁判所における加害行為の状況を踏まえつつ、各裁判所の実情に応じて、法廷警備員が必要な法廷警備に関する知識、技能の習得を図れるように取り組んでまいりたいと考えております。
(4) 「平成30年11月22日の参議院法務委員会に関する国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するもの」の不開示判断に関する令和元年度(最情)答申第53号(令和元年10月18日答申)には以下の記載があります。
 苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する。しかし,当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し,出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
 したがって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。

10 所持品検査を実施していた東京家裁1階の玄関で殺人事件が発生したこと等
(1) 平成31年3月20日,東京家裁1階の玄関前で離婚調停中の妻(31歳)が,待ち伏せしていたアメリカ国籍の夫(32歳)に首を刺されて殺されました「平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁」参照)。
(2) 京都弁護士会HPの「京都地方・簡易裁判所合同庁舎への入庁方法等の変更に関する意見書」(平成31年1月24日付)には以下の記載があります。
   北側玄関に出入口を一本化すると、それだけ事件の当事者や関係者がその付近で顔を合わせる可能性が高くなり、DV事案や、当事者同士の感情のもつれが激しい事案などでは、当事者・関係者同士が顔を合わすことで暴力等のトラブルが惹起されるおそれがある。トラブルが予想される事案での個別対応は検討するとしても、事案の全てでトラブル発生が予見できるわけではない。
(3) BLOGOSに「裁判所の所持品検査の持つ意味 当事者を守ることはできない 」(平成31年3月21日付)が載っています。
(4) 宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき会社に安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任があるとされた事例として,最高裁昭和59年4月10日判決があります。


11 「法廷秩序維持問題」(昭和28年1月)の記載
・ 法曹時報5巻1号(昭和28年1月発行)に掲載されている「法廷秩序維持問題」(筆者は田中耕太郎最高裁判所長官)には以下の記載があります。
(6頁の記載)
    我が国における法廷の状態は、とくに特定の思想的傾向を帯びた事件又はかかる思想的傾向の者に関する事件の審理について、特別の立法的措置を必要とするにいたった。かような事件についての公開の法廷の情況は誠に遺憾なものがあった。傍聴人や被告人被疑者等の拍手喝采、喧騒、怒号、罵り等は往々裁判長の訴訟指揮を不可能ならしめる程度に達したこと新聞の報道や、もっと具体的には情況の録音によって明瞭である。さらに裁判官の命令や係員の制止を無視して暴力を振い、係員を傷害し建物や施設を破壊するがごとき事態も再三ならず発生するにいたった。しかも法廷のかような状態は、多くの場合に「法廷闘争」として指導され、計画的組織的に準備し遂行されているところから来ているものと推定しても誤りないのである。
(23頁及び24頁の記載)
    (山中注:法廷等の秩序維持のために)採るべき措置の第二は刑法第九十五条の公務執行妨害罪や職務強要罪の規程を活用することである。私はこれ等の規定が従来裁判官、検察官等裁判関係者の職務執行に関しどの位の程度において適用されてきたかを知らないのであるが、恐らくこれ等の規定が眠っているのではないかを疑わしめるのである。しかるに法廷の内外における情況は痛切にこれ等の規定の発動を要求するような状態にある。法廷の内外における計画的な暴行主義を以てする、裁判所の職務執行に対する妨害行為は、正に第一項の構成要件を充足するものと認められる。暴行については疑問の余地は存しない。裁判官やその家族に対し日夜を分たず書面や電報によって繰り返される脅迫ことに「人民政府成立の暁には裁判官自らが絞首刑に処せられるだろう」というごとき脅迫を以て被告人や被害者の無罪や釈放を強要するがごときことは、第一項又は第二項の罪に該当する行為ではなかろうか。

12 関連記事その他
(1) 以下の文書を掲載しています。
① 裁判員裁判における金属探知機による所持品検査の実施について(平成29年3月27日付の最高裁判所刑事局第二課長の事務連絡)
② 刑事被告事件の法廷等の入口における所持品検査の実施について(平成29年6月16日付の最高裁判所刑事局第二課長の事務連絡)
③ 平成30年度新しい日本のための優先課題推進枠説明資料1/2(最高裁判所秘書課,広報課,情報政策課,総務局,経理局,民事局及び刑事局)
→ 末尾49頁及び50頁(PDF44頁及び45頁)(最高裁判所経理局の資料の一部です。)に,ゲート式金属探知機及びエックス線検査装置のことが書いてあります。
(2)ア 平成29年11月29日付の札幌高裁の司法行政文書不開示通知書によれば,以下の文書は廃棄済みです。
① 札幌高裁が平成25年3月1日に来庁者に対する所持品検査を開始することを決めた際に作成し,又は取得した文書
② 札幌高裁の所持品検査に反対するという趣旨で,弁護士会その他の団体から送付されてきた文書
イ 北海道合同法律事務所HPに載ってある「裁判所入庁者に対する所持品検査に関する抗議書兼要求書」(平成25年3月1日付)には以下の記載があります。
   貴庁は、北海道弁護士連合会や札幌弁護士会に対して、一切の意見聴取を行わず、一切の協議の場を設けることもなく、本年2月18日に一方的に本件所持品検査の実態を通告してきた。そればかりでなく、貴庁は、かかる通告を受けた札幌弁護士会からの、書面による正式な協議申し入れに対し、これを拒絶した。
(3) 法曹時報5巻1号(昭和28年1月発行)に掲載されている「法廷秩序維持問題」(筆者は田中耕太郎最高裁判所長官)6頁には以下の記載があります。
    我が国における法廷の状態は、とくに特定の思想的傾向を帯びた事件又はかかる思想的傾向の者に関する事件の審理について、特別の立法的措置(山中注:法廷等の秩序維持に関する法律の制定)を必要とするにいたった。かような事件についての公開の法廷の情況は誠に遺憾なものがあった。傍聴人や被告人被疑者等の拍手喝采、喧騒、怒号、罵り等は往々裁判長の訴訟指揮を不可能ならしめる程度に達したこと新聞の報道や、もっと具体的には情況の録音によって明瞭である。さらに裁判官の命令や係員の制止を無視して暴力を振い、係員を傷害し建物や施設を破壊するがごとき事態も再三ならず発生するにいたった。しかも法廷のかような状態は、多くの場合に「法廷闘争」として指導され、計画的組織的に準備し遂行されているところから来ているものと推定しても誤りないのである。

(4)ア 平成30年6月22日付の司法行政文書不開示通知書によれば,保釈中の被告人の判決宣告期日については原則として被告人に対する入廷前所持品検査を実施する旨を記載した,最高裁判所刑事局作成の文書は存在しません。
イ 平成31年3月19日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成17年から平成30年までの,裁判所職員に対する加害行為の件数を年単位で取りまとめた文書は同日までに廃棄されました。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 全国の下級裁判所における所持品検査の実施状況
・ 平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用

諸外国の司法制度

目次
1 諸外国の司法制度に関する最高裁判所の開示資料
2 関連記事その他

1 諸外国の司法制度に関する最高裁判所の開示資料
① 諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)
② アメリカ合衆国の司法制度
③ イギリス連邦(イングランド及びウェールズ)の司法制度
④ ドイツ連邦共和国の司法制度
⑤ フランス共和国の司法制度
⑥ オーストラリア連邦の司法制度
⑦ カナダの司法制度

2 関連記事その他
(1) 令和元年5月以降に作成された,諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)等は存在しません(令和6年10月9日付の司法行政文書不開示通知書参照)。
(2) 私自身は諸外国の司法制度について特に知りません。
(3) 外務省HPに「外国の裁判所が日本に裁判文書の送達及び証拠調べを要請する方法」が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 判事補の海外留学状況
 判事補の外部経験の概要
・ 外国送達
 裁判官の民間企業長期研修等の名簿

部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)

目次
第1 部の事務を総括する裁判官の名簿
第2 部総括裁判官の名簿に対する補足説明
第3 部総括判事は「部長」といわれていること
第4 部総括裁判官が陪席裁判官を評価するシステムの問題点等
第5 昭和30年11月17日の下級裁判所事務処理規則の改正
第6 合議率に関する国会答弁
第7 民訴法251条に関する国会答弁
第8 新任部総括裁判官研究会
第9 関連資料
第10 関連記事その他

第1 部の事務を総括する裁判官の名簿
1 令和時代
令和 2年度令和 3年度令和 4年度
令和 5年度令和 6年度令和 7年度
令和 8年度,

2 平成時代
平成 2年度平成 3年度平成 4年度
平成 5年度平成 6年度平成 7年度
平成 8年度平成 9年度平成10年度
平成11年度平成12年度平成13年度
平成14年度平成15年度平成16年度
平成17年度平成18年度平成19年度
平成20年度平成21年度平成22年度
平成23年度平成24年度平成25年度
平成26年度平成27年度平成28年度
平成29年度平成30年度平成31年度

3 昭和時代
昭和37年度昭和38年度昭和39年度
昭和40年度昭和41年度昭和42年度
昭和43年度昭和44年度昭和45年度
昭和46年度昭和47年度昭和48年度
昭和49年度昭和50年度昭和51年度
昭和52年度昭和53年度昭和54年度
昭和55年度昭和56年度昭和57年度
昭和58年度昭和59年度昭和60年度
昭和61年度昭和62年度昭和63年度
昭和64年度

第2 部総括裁判官の名簿に対する補足説明
1(1) 「部の事務を総括する裁判官の名簿」(部総括裁判官の名簿)は,毎年12月の最高裁判所裁判官会議の議事録資料に含まれています。
(2) 例えば,令和6年度の部総括裁判官は,令和5年12月6日の最高裁判所裁判官会議で指名されました(令和5年12月の最高裁判所裁判官会議議事録参照)。
2 昭和47年5月15日に沖縄県が日本国に復帰したことを受けて,昭和48年度の部総括裁判官の名簿から那覇地裁及びその支部の部総括裁判官が掲載されるようになりました。
3 昭和64年度までの部総括裁判官の名簿には当初から修習期が記載されていませんでした。
4 部総括裁判官は合議体の裁判長になります(下級裁判所事務処理規則5条2項本文)。
5 裁判官の人事評価項目は,①事件処理能力,②部等を適切に運営する能力及び③裁判官として職務を行う上で必要な一般的資質・能力となっています(裁判官の人事評価に関する規則3条1項)。


第3 部総括判事は「部長」といわれていること
1   日本の裁判所-司法行政の歴史的研究-106頁には以下の記載があります(注番号等は省略しました。)。
    戦後の裁判所法のもとでは,裁判官の種類は,最高裁判所の裁判官としては最高裁判所長官と最高裁判所判事であり(裁判所法5条1項),高等裁判所以下の下級裁判所の裁判官としては高等裁判所長官,判事,判事補,簡易裁判所判事であって(同条2項),裁判所構成法の時代の「部長」は存在しない。しかし,総括裁判官は,高等裁判所長官,地方裁判所・家庭裁判所長との間で,人事に関する情報などについてひんぱんに連絡をとることによって,自分の「部」に所属する裁判官や裁判所書記官などを事実上監督する中間管理職的な立場となっており,総括裁判官のこのような立場を反映してか,裁判所内においては,総括裁判官を「部長」と呼ぶのが一般的である。さらに,1972年から導入された新任判事補を対象とした研修制度(新任判事補研さん制度)においては,新任判事補は,総括裁判官のもとで,裁判実務の研修の指導をあおぐ立場に置かれることになった。このように,裁判官会議の権限が移譲されることによって,高等裁判所長官,地方裁判所・家庭裁判所長の地位が相対的に高まっただけでなく,総括裁判官が,合議体で裁判長をつとめるだけでなく,中間管理職,さらには新任判事補研さん制度導入後は判事補の指導役として,裁判所内で司法行政上の一定の地位をもつことになったということができるであろう。
2 下級裁判所事務処理規則4条4項は「部に属する裁判官のうち一人は、部の事務を総括する。」と定めています。


第4 部総括裁判官が陪席裁判官を評価するシステムの問題点等
1 裁判所HPの「最高裁判所事務総局に直接寄せられた裁判官の意見」に載ってある「人事評価の在り方に関する研究会に対する意見の送付について 東京地方裁判所刑事部人事評価関係検討チーム」には以下の記載があります。
o 陪席裁判官については,その能力・資質を最も身近で把握する機会の多い部総括裁判官において評価を行うべきであるとの意見があるが,部総括裁判官が陪席裁判官を評価するシステムには,1.裁判官の独立に対する国民の疑念を招きかねないこと,2.若い裁判官が萎縮しかねないこと,ひいては 3.自由闊達な合議の支障となりかねないこと等の点で疑問があり,そのようなシステムは採用すべきではないと思われる。再任するかしないかという点が10年に1回のことであり,通常の場合の人事評価の重要な目的が人材の適切な配置にあることからすれば,陪席裁判官の資質能力を最もよく把握できる立場にある部総括裁判官の意見が貴重であるのは間違いないが,上記のような弊害を考えると,裁判官の人事評価に関する部総括裁判官の役割は,陪席裁判官の特性(長所,短所)を一つの情報として評価権者に提供し,評価権者による適正な判断を可能にすることに留めておくのが相当である。
2 弁護士森脇淳一HP「退官後1年」には以下の記載があります(35期の森脇淳一裁判官が筆者です。)。
(山中注:裁判官の)悪い点は、意見の合わない裁判長の陪席裁判官(裁判長の脇に座っている裁判官をこう言う)の仕事をしなければならないことである。裁判長が手を入れた(削った)起案に自分が手を入れることはできないから、意に染まない判決にも署名押印しなければならない。裁判長によっては、まともに記録も読まず、合議で議論に負けても、『それなら判決できない』とか、『判決(言渡期日)を伸ばす』とか、『とにかく、自分は嫌だ』などと言うので、結局、裁判長の意見に従わざるを得なかった」などと述べた。
3 原発に挑んだ裁判官194頁には以下の記載があります。
    地裁所長や高裁長官は、若い裁判官のひとりひとりの能力まで把握するのは難しい。西野さんは「わたしは裁判長になる年齢まで勤めていませんけど」と断りつつ、若手の評価については裁判長の主観が大きいはずだ、という。
    「あまり裁判長に楯突くようだと、人事評定に影響することがありえるでしょう。裁判長が『おれの言うことをよく聞いてくれる、かわいいやつだ』という目で見るか「おれの意見にしきりに楯突く、かわいくないやつだ』と見るか。本来あるべきは、たとえ意見が違っても『よく調べたうえで、恐れずにものを言う。なかなか骨のあるやつだ』という姿勢です。しかし、それぐらい人間のできた裁判長はどれほどいるのでしょうね」


第5 昭和30年11月17日の下級裁判所事務処理規則の改正
1 昭和30年11月17日最高裁判所規則第10号による改正前は,最高裁判所は,下級裁判所の裁判官会議に基づく意見を聞いて部総括裁判官を指名していたのに対し,改正後は,最高裁判所は,下級裁判所の長官又は所長の意見を聞いて部総括裁判官を指名することとなりました(下級裁判所事務処理規則4条5項)。
2 大阪地裁は,昭和31年4月9日の裁判官会議において以下の内容の決議を行い,最高裁に申し入れを行いました(「司法権独立の歴史的考察」166頁)。
    昭和三十年十一月十七日付下級裁判所事務処理規則の一部改正は、裁判所法の精神に反するものであり、しかもかかる重大な改正につき、なんら下級裁判所の意向を徴されなかったことは、まことに遺憾である。よって、当裁判所は、最高裁判所に善処方を期待するものである。
3 「司法権独立の歴史的考察」112頁には以下の記載があります。
    最高裁判所はまた昭和三十年一月十七日(山中注:正しくは昭和30年11月17日)下級裁判所事務処理規則を改正し、従来当該下級裁判所の意見をきいて行ってきた総括裁判官の指名を、当該下級裁判所の長の意見をきいて行うように改めたほか、これとほぼ同じ時期から、裁判官に対する管理職手当の支給や、「執務能力」その他に関する「考課調書」と称する勤務評定の実施を開始し、各裁判所の管理職を通じてのの最高裁の統制力を強化するさまざまな措置をやつぎ早にうち出してきた。このようにして、最高裁は、戦前の司法省が検事閥あるいは司法省閥と称せられる人たちをもって裁判所の要職に任命し、司法省の裁判所に対する統制力を確保したのと同様に、最高裁に忠実な人たちを要職につけることにより、最高裁を頂点とするヒエラルキーを確立することに成功しているように思われるのであって、確実な筋からの資料に基づくと推認せられる、「中央公論」昭和三十五年十月号所載の「下級審裁判官」と題する論説によれば、ここ数年、最高裁判所事務総局に入ることが裁判官の一般的な「栄達」の街道となってきて、戦前のそれを想起させる現場派と主流派との区別が再現しつつある、ということである。


第6 合議率に関する国会答弁
・ 42期の村田斉志最高裁判所総務局長は,令和3年3月12日の衆議院法務委員会において以下の東弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
①    合議率に関しましては少しずつではございますけれども上昇してきておりまして、既済事件における合議率は先ほど申し上げました約六%(山中注:令和元年の民事訴訟事件の合議率6.7%のこと。)、それから、未済事件におきましては約一五%となってきております。
    他方で、民事訴訟事件全体の平均審理期間は、長期的に見れば短縮傾向にございましたけれども、ここ数年はむしろ少しずつ長期化する方向へと転じてきております。
    では、その合議率の上昇が審理期間の短縮に結びつくかということに関して申し上げますと、両面あろうかなというふうに考えておりまして、複雑困難事件につきまして適正かつ迅速に終局に導いていくためには、三人の裁判官が議論を尽くして紛争の実相をつかむということが肝要でございまして、現場から聞こえる声としては、合議事件に付することによって期日の回数が減ったり和解が成立しやすくなったりする、こういう効果も聞かれますので、そのため、合議体による審理が個々の複雑困難事件の迅速かつ充実した解決につながっている、こういう面はあろうかと考えております。
    他方で、合議体による審理は、三人の裁判官が事件の内容について徹底的に議論するなど合議の時間を確保する必要がございますし、手続におきましても法廷での弁論や証拠調べに三人同時に関与する必要があるということがございますので、単独、一人でやる事件処理よりも時間と労力はかかる面がある、これも否定をできないところでございます。
    そこで、近年の複雑困難事件の増加を受けまして、合議体で審理すべき事件は適切に合議に付しつつ、訴訟関係人の理解と協力を得て、争点中心型の審理の実践に努めるなど、合議体による複雑困難事件の審理充実、促進と訴訟事件全体の審理期間の短縮と、この両立に努めていくように更に努力していく必要があるというふうに考えているところでございます。
② 委員御指摘の審理期間の短縮が非常に重要だということは、我々もそのように認識をしております。

    そのため、先ほど御答弁申し上げましたとおり、合議事件を非常に、ある意味、いろいろな工夫を凝らしてやることによって、結果的に迅速な解決に結びつく例、これも実際には見られるところでございます。ですので、ある意味、運営の改善の努力といいますか、これを重ねることによって、合議体による審理がむしろ迅速化に結びつく、そういう面をこれから更に伸ばしていく必要があるというふうに考えているところでございます。


第7 民訴法251条1項に関する国会答弁
・ 45期の門田友昌最高裁判所民事局長は,「判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から2月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。」と定める民訴法251条1項に関して,令和4年3月9日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 委員の方から民事訴訟法二百五十一条一項について御指摘がございました。今委員が御指摘された後にただし書がございまして、「ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。」というのが続いておるところでございます。
 この二百五十一条一項ですけれども、これは、判決の言渡しは口頭弁論の終結の日から二か月以内とすることを原則としたものでございますけれども、事件が複雑困難であるときその他特別の事情があるときには例外的に二か月以上後に判決を言い渡すことを許容したものと解されております。
 多くの事件においては、この原則が意識されて、口頭弁論終結の日から二か月以内に判決を言い渡しているものと承知しておりますが、近年は複雑困難な民事訴訟事件が増加しているほか、事案によっては口頭弁論終結後に和解の協議を行うことなどもございますので、口頭弁論終結の日から二か月以内に判決が言渡しされない例もあるというふうに承知しております。
 個別の事件についての言及は差し控えますけれども、いずれにせよ、判決言渡しの期日の指定は、個々の事件において裁判官が適切にしているものと承知しております。

第8 新任部総括裁判官研究会に関する資料
・ 新任部総括裁判官研究会に関する資料を以下のとおり掲載しています(「令和6年度新任部総括裁判官研究会に関する日程表及び参加者名簿」といったファイル名です。)。
平成30年度令和 元年度令和 2年度令和 3年度
令和 4年度令和 5年度令和 6年度令和 7年度



第9 関連資料

1  以下の名簿を掲載しています。
① 平成14年度から平成28年度までの部総括裁判官の名簿
② 昭和62年度から平成13年度までの部総括裁判官の名簿
③ 昭和48年度から昭和61年度までの部総括裁判官の名簿 

2 以下の資料を掲載しています。
① 新任部総括裁判官研究会
平成30年度令和元年度令和2年度
令和3年度令和4年度令和5年度
 下級裁判所事務処理規則(昭和23年8月18日最高裁判所規則第16号)
・ 4条2項は,「部の数は、最高裁判所が当該高等裁判所の長官又は当該地方裁判所若しくは家庭裁判所の所長の意見を聞いて、これを定める。」と定めています。
・ 4条5項は,「前項の規定により部の事務を総括する裁判官は、高等裁判所長官、地方裁判所長、 家庭裁判所長又は知的財産高等裁判所長若しくは高等裁判所、地方裁判所若しくは家庭裁判所の支部長が属する部においては、その者とし、その他の部においては、毎年あらかじめ、最高裁判所が、当該高等裁判所の長官又は当該地方裁判所若しくは家庭裁判所の所長の意見を聞いて、指名した者とする。」と定めています。

 下級裁判所の部の数を定める規程(昭和31年10月29日最高裁判所規程第10号)
 下級裁判所事務処理規則の運用について(平成6年7月22日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 記第1の2は,「高等裁判所長官は,規則第4条第5項の規定により,当該高等裁判所,管内の地方裁判所及び家庭裁判所並びにそれらの支部について,翌年度の部の事務を総括する裁判官を指名する必要がある場合には,毎年11月30日までに最高裁判所にその旨を上申する。」と定めています。

④ 部の事務を総括する裁判官の指名上申について(平成6年12月9日付の最高裁判所人事局長の通達)
・ 指名上申名簿の様式を定めています。
・ 実例として,平成27年度部の事務を総括する裁判官の指名について(平成26年11月27日付の大阪高裁長官の文書)(別添の指名上申名簿はほぼ真っ黒)を掲載しています。


第10 関連記事その他
1 令和3年1月現在,東京地裁の部総括は47期以上であり,大阪地裁の部総括は49期以上であり,名古屋地裁の部総括は51期以上です。
2 現代新書HPの「『絶望の裁判所』著:瀬木比呂志—『絶望の裁判所』の裏側」(2014年3月9日付)には以下の記載があります。
    そういう人物(山中注:最高裁判所事務総局系の司法行政エリートと呼ばれる人々のこと。)が裁判長を務める裁判部における日常的な話題の最たるものは人事であり、「自分の人事ならいざ知らず、明けても暮れても、よくも飽きないで、裁判所トップを始めとする他人の人事について、うわさ話や予想ばかりしていられるものだ」と、そうした空気になじめない陪席裁判官から愚痴を聞いた経験は何回もある。『司法大観』という名称の、七、八年に一度くらい出る、裁判官や検察官の写真に添えて正確かつ詳細なその職歴を記した書物が彼らのバイブルであり、私は、それを眺めるのが何よりの趣味だという裁判官にさえ会ったことがある。
3(1) 自由と正義2019年7月号94頁及び95頁に載ってある「弁護士しています~弁護士職務経験の声~《第20回》本多久美子判事(鳥取地・家裁所長)・熊野祐介弁護士(あさひ法律事務所)インタビュー」には,39期の本多久美子裁判官(弁護士任官者)が神戸地裁民事部の部装活をしていたときの体験談として,「私が他の裁判官と比べて判事補の「指導」において不利だと思うのは、自分に判事補の経験がないことですね。右陪席に「ここまで言っていいかな。」と聞いたりしていました。」と書いてあります。
(2) 西天満総合法律事務所のブログに「地裁の民事合議事件は危ない(なりたての判事補が主任になっている問題)」(2019年9月16日付)が載っています。
(3) 弁護士JPニュースの「裁判官の「中立公正」とは…実は“人をだます”のも仕事?「現職の裁判長」が明かす“意外な実像”」には「身近なところでは、次の自分の部の裁判長にはいつ、どこから、誰が来るかという予想は、陪席裁判官には死活問題なので、関心が強い。」と書いてあります。
4 東北大学HPの「裁判官の学びと職務」(令和5年11月22日に東北大学法科大学院で行われた、法科大学院学生を対象とした47期の井上泰士の講演原稿に大幅に加筆したもの)には以下の記載があります。
第1審での判断は、多くの場合に控訴審でレビューされますので、第1審の裁判官が書いた判決が控訴審でどのように扱われるのかを知っておくことは、適正な裁判を行う上でも大事なことです。そういうこともあって、特に民事畑の裁判官は、地方裁判所や家庭裁判所で部総括判事になる前に高等裁判所の陪席裁判官を経験することが少なくありません。
5 日本の裁判所-司法行政の歴史的研究-110頁には以下の記載があります。
    大阪地方裁判所においては, この規則改正にもかかわらず,総括裁判官を全裁判官による選挙によって推薦し,裁判所長はこの選挙結果を尊重して最高裁判所へ意見具申するという慣行が長く続いていた. しかしこの慣行は, 1996年3月15日の裁判官会議で廃止されたという (小林克美「裾野から見た裁判官人事の問題点」月刊司法改革10号(2000年) 43頁)。


6 以下の記事も参照してください。
・ 高裁の部総括判事の位置付け 
 幹部裁判官の定年予定日
・ 裁判官の退官情報
 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
 高等裁判所長官を退官した後の政府機関ポストの実例