司法行政の監督権


目次
1 司法行政の監督権
2 司法行政の監督権の限界
3 裁判所の事務の取扱い方法に対する不服
4 一般職の管理職の権限は裁判官等の権限に影響を及ぼすことはないこと
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1 司法行政の監督権
(1)   司法行政の監督権は,以下のとおり行われています(裁判所法80条)。
①   最高裁判所は,最高裁判所の職員並びに下級裁判所及びその職員を監督します。
②   各高等裁判所は,その高等裁判所の職員並びに管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督します。
③   各地方裁判所は,その地方裁判所の職員並びに管轄区域内の簡易裁判所及びその職員を監督します。
④   各家庭裁判所は,その家庭裁判所の職員を監督します。
⑤   簡易裁判所司法行政事務掌理裁判官(裁判所法37条)は、その簡易裁判所の裁判官以外の職員を監督します。
(2)ア 司法行政の監督権の主体は組織体としての裁判所であって,長官又は所長ではありません。
   そのため,最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所における司法行政の監督権は,原則として裁判官会議の決議に基づいて行われています。
イ 明治憲法下の裁判所構成法135条では,司法行政の監督権の主体は司法大臣,大審院長,控訴院長及び地方裁判所長とされていました。

2 司法行政の監督権の限界
(1) 司法行政の監督権は,裁判官の裁判権に影響を及ぼし,又はこれを制限することはできません(裁判所法81条)。
(2) 裁判所構成法143条は「此ノ編ニ掲ケタル前各條ノ規程ハ裁判上執務スル判事ノ裁判權ニ影響ヲ及ホシ又ハ之ヲ制限スルコトナシ」と定めており,裁判所法81条と同趣旨のことを定めていました。

3 裁判所の事務の取扱い方法に対する不服
(1) 裁判所の事務の取扱い方法に対して申し立てられた不服は,司法行政の監督権により処分されます(裁判所法82条))(「裁判官の職務に対する苦情申告方法」参照)。
(2) 裁判所構成法140条は「司法事務取扱ノ方法ニ對スル抗告殊ニ或ル事務ノ取扱方ニ對シ又ハ取扱ノ延滞若ハ拒絶ニ對スル抗告ハ此ノ編ニ掲ケタル司法行政ノ職務及監督權ニ依リ之ヲ處分ス」と定めており,裁判所法82条と同趣旨のことを定めていました。

4 一般職の管理職の権限は裁判官等の権限に影響を及ぼすことはないこと
・ 大法廷首席書記官等に関する規則に定める大法廷首席書記官,小法廷首席書記官,訟廷首席書記官,首席書記官,知的財産高等裁判所首席書記官,次席書記官,総括主任書記官,主任書記官,主任速記官,訟廷管理官,裁判員調整官及び速記管理官の権限は,裁判所法その他の法令に定める裁判官,裁判所書記官及び裁判所速記官の権限に影響を及ぼし,又はこれを制限することはありません(大法廷首席書記官等に関する規則8条)。


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